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第46話:俺、実家に帰らせていただきます。(その3)
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「・・・・・・」
黒川は取り敢えず自分の部屋に騒ぐ姉を連れ込んだが、
茜はまだ驚いている。
「ど、どうしちゃったの?!その頭!」
もはや言い逃れは出来ない。
「・・・・。」
ベッドに座り込んア黒川は真っ赤になり、
俯いたまま更に黙り込む。
「何?なんか悪い事でもしたの?」
茜は心配そうに聞く。
「いや、別に・・・」
(まぁ、普通は急に坊主になっていたらそう思うよな・・・)
と黒川は思ったが口に出さない。
「じゃあ何でそんな頭になってんのよ?」
茜はなおも追及してくる。
「・・・」
(どうしよう・・・)黒川は悩んだ。
流石に姉妹との関係は話せない。
それに正直に話したところで信じてもらえるか怪しい。
黒川が考えあぐねていると・・・
「・・・あんたまさか?!」といきなり茜が叫び出した。
「な、何・・・?」黒川も少し引き気味な返す。
「大学で変な宗教サークルにでも入ったとか?」
「入ってないよ!!」
(変な宗教ってなんだよ!)と黒川は心の中で突っ込んだ。
「じゃあ、何で坊主になっちゃったのよ?」
茜が不思議そうに聞く。
「・・・それは・・・」
黒川はまた口ごもってしまう。「・・・」
(まさか、姉妹に剃られましたなんて言えない・・・)
黒川は頭を抱える。もう泣きたかった。
姉にこんな姿を見られただけでも恥ずかしいのに、
その上その理由を話すとなると・・・。
(二人に事を伏せたうえでの
理屈に合った説明なんか不可能だ・・・)
この地獄のような状態に目の前が真っ暗になった。
「・・・もしかして」と茜が少し考えて口を開いた。
(えっ!?)絶望していた黒川は内心ドキッとする。
だが茜の言葉は予想外のものだった。
「・・・彼女でしょ?」
「は?」
(え、か、彼女?)
黒川は一瞬ポカンとする。
「だから、さっきも言ったけど、
あんたやっぱり彼女ができたんでしょ?!」
茜が詰め寄る。
「・・・はぁ?」
(な、何を言ってるんだ・・・?)と黒川は思ったが、
すぐに姉の言わんとしていることが理解できた。
「いや!違うって!」
当たらずとも遠からずといったところだが、
黒川は慌てて否定する。
だが姉はニヤニヤと笑いこちらを見るのをやめない。
(まずいな・・・完全に誤解しているぞこれ・・・。)
そう考えているうちにも姉の顔はどんどん近付いてくる。
「だって、あれだけ見た目重視だったあんたが、
こんな潔く頭丸める理由なんて、
女絡みぐらいしか考えられないじゃん?」
茜はそう言って彼の頭をペチペチと叩く。
「いや、だから違うんだって!」黒川は必死に否定する。
(もう正直に話すしかないか・・・)
そう思い彼は覚悟しつつ話し出した。
「・・・まあ、姉さんの想像通りだよ」と黒川は言った。
「やっぱりそうじゃん!で?どんな子なの?」
茜が食いつくように聞いてくる。
「・・・彼女とも言えない人だけど」
と黒川は答える。
「何よそれ?」茜は少し不満げだ。
(言えるわけないよな・・・)黒川は思ったが、
これ以上誤魔化すのも面倒なので正直に話すことにした。
「付き合ってもない人だよ・・・好きだけど。
それだけだよ・・・これ以上は言えない。」
姉妹の事はなるべく伏せて事実を話す。
(うう、改めて言葉日すると恥ずかしい・・・)
黒川は恥ずかしさから、姉と目を合わせられない。
「え?なにそれ?」茜はポカンとした顔をしている。
(そりゃそうだろうな・・・)
黒川は思ったが、構わず続ける。
こんな事を主張するのは我ながらどうかしてると思う。
「だから姉さんの想像通りだよ」
すると茜は急に笑い出した。
「あははっ!何それ!?つまりあんたは
付き合ってもない片想いの子のために、そんな事してるの?」
彼女は大笑いしている。
「そ、そうだけど・・・」黒川は恥ずかしさから俯く。
(やっぱり言うんじゃなかったかも・・・)
と後悔したがもう遅い。
「へぇ、あんたって意外と純情なのね!」茜はまだ笑っている。
「笑いたきゃ笑えよ・・・」
黒川は投げやりに言った。
「ごめんごめん!馬鹿にしてるわけじゃないのよ!」
茜はまだ笑いつつも謝る。
(くそっ・・・)黒川は心の中で悪態をつく。
「まぁ、これでも飲んで機嫌直してよ」
茜はそう言いながら持参した缶ビールを差し出す。
(・・・ああそう言えば『飲みに付き合え』だっけ?)
黒川は今更ながら、姉がここに来た理由を思い出す。
「・・・うん」
と黒川はビールをもらうことにする。
(この騒ぎですっかり目が冷めちゃったしな)
「そう言えばなんでこんな真夜中に酒飲もうとか思ったの?」
黒川は尋ねた。
「いやぁ、ちょっとした愚痴を聞いてほしかったんだけど・・・
その頭見てなんか全部どっか吹っ飛んじゃったわ」
茜が答える。
「愚痴って?」
と黒川が尋ねる。
「・・・今のあんたに比べたら全然つまんないけど、
さっきさぁ、振った男が復縁求めて電話してきてさ。」
茜はビールを一口飲むと、愚痴り始めた。
「えぇ・・・?」黒川は思わず声が出た。
「まったく、未練がましいったらないわよね」
茜はグビッとビールを飲む。
(いや・・・もしかしなくてもそれ修羅場だったのでは?!)
黒川は心の中で思った。
「それにしても・・・」
茜は黒川の頭をまじまじと見る。
「あんたがここまでするなんてねぇ・・・」
茜はしみじみと言った。
(うぅ・・・)その視線に黒川は少し恥ずかしくなる。
「・・・だからあんまりジロジロ見ないで」
とだけ答えた。
「いやそれ無理だし」
と茜は即答する。
「・・・一応母さんたちには内緒にしておいてくれないか?」
「何で?」
「そりゃ・・・あんまり驚かせたくはないし」
両親だったら、きっと姉以上に仰天するだろう。
黒川はそれを心配した。
「えー?母さんなら安心しそうだけど」
と茜は言う。
「何でだよ!!」
「だって母さん、いつもあんたが女性絡みで
問題起こさないか心配してるしさ。
その頭だったら問題起こしようがないから
安心するかなって。」
と茜はあっけらかんと言う。
(いや、あの母さんに『剃髪しました』なんて言ったら卒倒するだろ!)
黒川は心の中で叫んだが、言葉にはしなかった。
「と、とにかくダメだよ!」
「うーん、修行僧っぽくて
チャラチャラした感じしなくていいと思うんだけどなぁ」
「ダメだって!」と黒川は姉の言葉を遮った。
(これ以上、この話題を続けたくない・・・)
「はいはい」茜は諦めたように返事した。
「まぁ、なんでそうなったのかはよく分からないけど、
よく見たら結構似合ってるから自信持ちなさい」
茜は黒川の坊主頭をペチペチ叩きながら言った。
(それ褒めてるのか・・・?)
黒川は恨めしそうに姉を見るが、彼女は気にした様子もない。
「じゃあ、もう少し私も飲もうかな」
と彼女は2本目の缶ビールを開ける。
(まだ飲むのかよ・・・)
黒川は呆れつつも、自分もとビールを一口飲んだ。
「夜中なんだし、あんまり飲み過ぎるなよ」
黒川は呆れ気味に注意する。
「分かってるって!」茜は軽く受け流した。
「しかしあのクソ生意気だった瞬ちゃんが
こんな可愛くなっちゃって~」
すっかり酔いが回った茜は、上機嫌気味に黒川の頭を撫でた。
「ちょ・・・姉さん、酔いすぎだ!」
黒川は姉の手を振り払う。
(この酔っぱらいめ・・・)
「え~?いいじゃん、減るもんじゃないしぃ~
それにそんな頭だと触りたくもなるよ~」
茜はニヤニヤしながら言う。
「いや、そういう問題じゃないだろ・・・」
黒川は少し呆れつつも答える。
だが姉には聞こえている様子もないようだ。
「寝るなら自分の部屋にしてくれ!」
と黒川は姉に声をかけるが、彼女は聞いていない。
(もうダメだな・・・)
「姉さん!」と黒川は強めの口調で言う。
「ん?なに?」茜はまだ酔っているらしく、
トロンとした目をしている。
「・・・ほら、寝るなら自分の部屋で寝ろよ」
と黒川は言ったが・・・。
「え~?まだ飲むぅ~!」と言って
彼女は缶ビールをグビッと飲み干す。
(だめだこりゃ・・・)黒川は頭を抱えた。
「もう、姉さんは飲み過ぎだよ・・・」と黒川は言う。
(俺なんかよりよっぽど酒癖が悪いじゃないか・・・)
彼は心の中で愚痴った。
(まぁでも、この状態の姉さんを
このままにしたら危なそうだな・・・。)
そう考えた黒川は仕方なく姉を部屋まで連れて行く事にした。
「ほら姉さん!部屋まで連れてくから!」
と言って黒川は茜の腕を掴む。
「・・・ん~?」茜はまだ酔っているようで反応が鈍い。
「あぁ・・・もう・・・」
黒川はため息を吐きながら姉に肩を貸した。
「ほら、行くよ」と黒川は姉に声をかける。
(・・・あれ?)
だが茜はボーッとしていて返事をしない。
(姉さん?)黒川は少し不安になったが、
そのまま彼女を自分の部屋まで連れて行った。
そしてベッドに横にさせると、ようやく彼女は口を開いた。
「・・・すぅ・・・」
(え?!寝てるの?!)黒川は思わず心の中でツッコんだ。
(嘘だろ・・・)彼は呆れつつも姉の寝顔を見る。
「弟の部屋に勝手に押しかけて、
俺の事散々弄って勝手に寝やがって・・・」
黒川は愚痴をこぼした。だが、同時に懐かしいとも思った。
(まぁ・・・弄られるのはいつもの事か)
彼は諦めて姉の部屋を出て行こうとしたが・・・。
「・・・瞬ちゃん・・・」と茜が寝言で彼の名前を呼んだ。
(え?)黒川は一瞬ドキッとする。
(なんだ今の夢でも見てんのか?)
「あんた・・・優しくなったねぇ」
「え?」黒川は姉の言葉に驚く。
(起きてるのか・・・?)
だが彼女は寝息を立てている。どうやら寝言だったようだ。
(姉さんが俺を褒めるなんて珍しいな・・・)
彼は姉の寝顔を見ながら思った。
そして、彼女の頭をそっと撫でてみた。
「・・・ん」と茜は少し反応するが、起きる気配はない。
(こうして見ると美人なんだがなぁ・・・。)
黒川はしみじみと思った。
すっかり寝入ってしまった茜の様子を確認すると、
彼は足早に部屋に戻った。
つづく
黒川は取り敢えず自分の部屋に騒ぐ姉を連れ込んだが、
茜はまだ驚いている。
「ど、どうしちゃったの?!その頭!」
もはや言い逃れは出来ない。
「・・・・。」
ベッドに座り込んア黒川は真っ赤になり、
俯いたまま更に黙り込む。
「何?なんか悪い事でもしたの?」
茜は心配そうに聞く。
「いや、別に・・・」
(まぁ、普通は急に坊主になっていたらそう思うよな・・・)
と黒川は思ったが口に出さない。
「じゃあ何でそんな頭になってんのよ?」
茜はなおも追及してくる。
「・・・」
(どうしよう・・・)黒川は悩んだ。
流石に姉妹との関係は話せない。
それに正直に話したところで信じてもらえるか怪しい。
黒川が考えあぐねていると・・・
「・・・あんたまさか?!」といきなり茜が叫び出した。
「な、何・・・?」黒川も少し引き気味な返す。
「大学で変な宗教サークルにでも入ったとか?」
「入ってないよ!!」
(変な宗教ってなんだよ!)と黒川は心の中で突っ込んだ。
「じゃあ、何で坊主になっちゃったのよ?」
茜が不思議そうに聞く。
「・・・それは・・・」
黒川はまた口ごもってしまう。「・・・」
(まさか、姉妹に剃られましたなんて言えない・・・)
黒川は頭を抱える。もう泣きたかった。
姉にこんな姿を見られただけでも恥ずかしいのに、
その上その理由を話すとなると・・・。
(二人に事を伏せたうえでの
理屈に合った説明なんか不可能だ・・・)
この地獄のような状態に目の前が真っ暗になった。
「・・・もしかして」と茜が少し考えて口を開いた。
(えっ!?)絶望していた黒川は内心ドキッとする。
だが茜の言葉は予想外のものだった。
「・・・彼女でしょ?」
「は?」
(え、か、彼女?)
黒川は一瞬ポカンとする。
「だから、さっきも言ったけど、
あんたやっぱり彼女ができたんでしょ?!」
茜が詰め寄る。
「・・・はぁ?」
(な、何を言ってるんだ・・・?)と黒川は思ったが、
すぐに姉の言わんとしていることが理解できた。
「いや!違うって!」
当たらずとも遠からずといったところだが、
黒川は慌てて否定する。
だが姉はニヤニヤと笑いこちらを見るのをやめない。
(まずいな・・・完全に誤解しているぞこれ・・・。)
そう考えているうちにも姉の顔はどんどん近付いてくる。
「だって、あれだけ見た目重視だったあんたが、
こんな潔く頭丸める理由なんて、
女絡みぐらいしか考えられないじゃん?」
茜はそう言って彼の頭をペチペチと叩く。
「いや、だから違うんだって!」黒川は必死に否定する。
(もう正直に話すしかないか・・・)
そう思い彼は覚悟しつつ話し出した。
「・・・まあ、姉さんの想像通りだよ」と黒川は言った。
「やっぱりそうじゃん!で?どんな子なの?」
茜が食いつくように聞いてくる。
「・・・彼女とも言えない人だけど」
と黒川は答える。
「何よそれ?」茜は少し不満げだ。
(言えるわけないよな・・・)黒川は思ったが、
これ以上誤魔化すのも面倒なので正直に話すことにした。
「付き合ってもない人だよ・・・好きだけど。
それだけだよ・・・これ以上は言えない。」
姉妹の事はなるべく伏せて事実を話す。
(うう、改めて言葉日すると恥ずかしい・・・)
黒川は恥ずかしさから、姉と目を合わせられない。
「え?なにそれ?」茜はポカンとした顔をしている。
(そりゃそうだろうな・・・)
黒川は思ったが、構わず続ける。
こんな事を主張するのは我ながらどうかしてると思う。
「だから姉さんの想像通りだよ」
すると茜は急に笑い出した。
「あははっ!何それ!?つまりあんたは
付き合ってもない片想いの子のために、そんな事してるの?」
彼女は大笑いしている。
「そ、そうだけど・・・」黒川は恥ずかしさから俯く。
(やっぱり言うんじゃなかったかも・・・)
と後悔したがもう遅い。
「へぇ、あんたって意外と純情なのね!」茜はまだ笑っている。
「笑いたきゃ笑えよ・・・」
黒川は投げやりに言った。
「ごめんごめん!馬鹿にしてるわけじゃないのよ!」
茜はまだ笑いつつも謝る。
(くそっ・・・)黒川は心の中で悪態をつく。
「まぁ、これでも飲んで機嫌直してよ」
茜はそう言いながら持参した缶ビールを差し出す。
(・・・ああそう言えば『飲みに付き合え』だっけ?)
黒川は今更ながら、姉がここに来た理由を思い出す。
「・・・うん」
と黒川はビールをもらうことにする。
(この騒ぎですっかり目が冷めちゃったしな)
「そう言えばなんでこんな真夜中に酒飲もうとか思ったの?」
黒川は尋ねた。
「いやぁ、ちょっとした愚痴を聞いてほしかったんだけど・・・
その頭見てなんか全部どっか吹っ飛んじゃったわ」
茜が答える。
「愚痴って?」
と黒川が尋ねる。
「・・・今のあんたに比べたら全然つまんないけど、
さっきさぁ、振った男が復縁求めて電話してきてさ。」
茜はビールを一口飲むと、愚痴り始めた。
「えぇ・・・?」黒川は思わず声が出た。
「まったく、未練がましいったらないわよね」
茜はグビッとビールを飲む。
(いや・・・もしかしなくてもそれ修羅場だったのでは?!)
黒川は心の中で思った。
「それにしても・・・」
茜は黒川の頭をまじまじと見る。
「あんたがここまでするなんてねぇ・・・」
茜はしみじみと言った。
(うぅ・・・)その視線に黒川は少し恥ずかしくなる。
「・・・だからあんまりジロジロ見ないで」
とだけ答えた。
「いやそれ無理だし」
と茜は即答する。
「・・・一応母さんたちには内緒にしておいてくれないか?」
「何で?」
「そりゃ・・・あんまり驚かせたくはないし」
両親だったら、きっと姉以上に仰天するだろう。
黒川はそれを心配した。
「えー?母さんなら安心しそうだけど」
と茜は言う。
「何でだよ!!」
「だって母さん、いつもあんたが女性絡みで
問題起こさないか心配してるしさ。
その頭だったら問題起こしようがないから
安心するかなって。」
と茜はあっけらかんと言う。
(いや、あの母さんに『剃髪しました』なんて言ったら卒倒するだろ!)
黒川は心の中で叫んだが、言葉にはしなかった。
「と、とにかくダメだよ!」
「うーん、修行僧っぽくて
チャラチャラした感じしなくていいと思うんだけどなぁ」
「ダメだって!」と黒川は姉の言葉を遮った。
(これ以上、この話題を続けたくない・・・)
「はいはい」茜は諦めたように返事した。
「まぁ、なんでそうなったのかはよく分からないけど、
よく見たら結構似合ってるから自信持ちなさい」
茜は黒川の坊主頭をペチペチ叩きながら言った。
(それ褒めてるのか・・・?)
黒川は恨めしそうに姉を見るが、彼女は気にした様子もない。
「じゃあ、もう少し私も飲もうかな」
と彼女は2本目の缶ビールを開ける。
(まだ飲むのかよ・・・)
黒川は呆れつつも、自分もとビールを一口飲んだ。
「夜中なんだし、あんまり飲み過ぎるなよ」
黒川は呆れ気味に注意する。
「分かってるって!」茜は軽く受け流した。
「しかしあのクソ生意気だった瞬ちゃんが
こんな可愛くなっちゃって~」
すっかり酔いが回った茜は、上機嫌気味に黒川の頭を撫でた。
「ちょ・・・姉さん、酔いすぎだ!」
黒川は姉の手を振り払う。
(この酔っぱらいめ・・・)
「え~?いいじゃん、減るもんじゃないしぃ~
それにそんな頭だと触りたくもなるよ~」
茜はニヤニヤしながら言う。
「いや、そういう問題じゃないだろ・・・」
黒川は少し呆れつつも答える。
だが姉には聞こえている様子もないようだ。
「寝るなら自分の部屋にしてくれ!」
と黒川は姉に声をかけるが、彼女は聞いていない。
(もうダメだな・・・)
「姉さん!」と黒川は強めの口調で言う。
「ん?なに?」茜はまだ酔っているらしく、
トロンとした目をしている。
「・・・ほら、寝るなら自分の部屋で寝ろよ」
と黒川は言ったが・・・。
「え~?まだ飲むぅ~!」と言って
彼女は缶ビールをグビッと飲み干す。
(だめだこりゃ・・・)黒川は頭を抱えた。
「もう、姉さんは飲み過ぎだよ・・・」と黒川は言う。
(俺なんかよりよっぽど酒癖が悪いじゃないか・・・)
彼は心の中で愚痴った。
(まぁでも、この状態の姉さんを
このままにしたら危なそうだな・・・。)
そう考えた黒川は仕方なく姉を部屋まで連れて行く事にした。
「ほら姉さん!部屋まで連れてくから!」
と言って黒川は茜の腕を掴む。
「・・・ん~?」茜はまだ酔っているようで反応が鈍い。
「あぁ・・・もう・・・」
黒川はため息を吐きながら姉に肩を貸した。
「ほら、行くよ」と黒川は姉に声をかける。
(・・・あれ?)
だが茜はボーッとしていて返事をしない。
(姉さん?)黒川は少し不安になったが、
そのまま彼女を自分の部屋まで連れて行った。
そしてベッドに横にさせると、ようやく彼女は口を開いた。
「・・・すぅ・・・」
(え?!寝てるの?!)黒川は思わず心の中でツッコんだ。
(嘘だろ・・・)彼は呆れつつも姉の寝顔を見る。
「弟の部屋に勝手に押しかけて、
俺の事散々弄って勝手に寝やがって・・・」
黒川は愚痴をこぼした。だが、同時に懐かしいとも思った。
(まぁ・・・弄られるのはいつもの事か)
彼は諦めて姉の部屋を出て行こうとしたが・・・。
「・・・瞬ちゃん・・・」と茜が寝言で彼の名前を呼んだ。
(え?)黒川は一瞬ドキッとする。
(なんだ今の夢でも見てんのか?)
「あんた・・・優しくなったねぇ」
「え?」黒川は姉の言葉に驚く。
(起きてるのか・・・?)
だが彼女は寝息を立てている。どうやら寝言だったようだ。
(姉さんが俺を褒めるなんて珍しいな・・・)
彼は姉の寝顔を見ながら思った。
そして、彼女の頭をそっと撫でてみた。
「・・・ん」と茜は少し反応するが、起きる気配はない。
(こうして見ると美人なんだがなぁ・・・。)
黒川はしみじみと思った。
すっかり寝入ってしまった茜の様子を確認すると、
彼は足早に部屋に戻った。
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