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第41話:結衣様の弱点(その3)
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「あー面白かった!」
「お、おぅ・・・」
「あ、あはは・・・ま、まぁまぁですのね」
巨大虫コーナーから出て、一人楽しそうなすみれと、
流石に憔悴し始めてるユキヤと友麻がいたが、
これは仕方ないかもしれない。
あの後、体調40㎝の巨大ムカデや、人の掌より大きい蜘蛛など、
かなり虫に耐性のない人間でないと、辛いものが
かなり多く続いたため、流石に2人ともかなり参っていた。
そして・・・。
「あの結衣さん・・・顔色がミドリ色になってます・・・」
黒川が更に心配そうに結衣に言う。
結衣はグロッキー寸前だった・・・。
(あんな巨大な虫が・・・あんなにたくさんの足を
まるで相談するかのように蠢かせて・・・!)
結衣は先ほど見たものを思い出し、身震いした。
ユキヤ達でもドン引きするような巨大な虫を
次々と目の当たりにしてしまい、
強い吐き気とめまいをおぼえる結衣だったが、
フラフラになりながらも、何とか耐えている状態だ。
(つ、次で最後ですわね・・・。)
彼女の精神はもう限界をとっくに超えていたが、
最後の気力を振り絞り、頑張っていた。
(こ、これ以上は・・・もう・・・!)
結衣のその祈りが届いたのか、最後のコーナーが目に入る。
『古代世界の虫たち』看板にはそう書かれていた。
「どういうコーナーなんだ?」
「ええとね、『人類が生まれるより、はるか昔に存在した虫たちを、
最新の研究をもとに忠実な模型で再現しています』だって。」
すみれがパンフレットの説明文を読み上げる。
(も、模型なのですね。それなら本物でないので大丈夫ですわ)
結衣は内心ホッとした。
(もう、虫を見ないですむのなら何でもいいですわ・・・)
「へぇー!面白そうじゃん!」
ユキヤも楽しそうに言う。
「えぇ、古代生物の実物大模型なんて興味ありますね」
黒川もパンフレットを見て頷く。
(よかったですわ・・・。これで何とか乗り切れそうですわ・・・)
そう思い安心して、最後のコーナーに
足を踏み入れる結衣だったが・・・。
そんな彼女を出迎えたのは、
1m近くある巨大なトンボの模型だった。
「・・・・・・・!?」
「うおっでけぇ!」
ユキヤがその模型を見て驚く。
「あら、良く出来ていますのね」
友麻も興味津々といった様子で眺めている。
「『メガネウラ:石炭紀に生息してた巨大トンボ』だって。」
すみれも興味深く模型をみている。
「こんなのが実際に今飛んでたら、小さい子供だったら泣くぞ・・・」
ユキヤも引き気味で感想を言う。
「・・・・・・・・・」
そんな3人の横で結衣は完全に硬直していた。
(あ、あぁ・・・もうダメですわ・・・。)
もう限界だった。虫なんて見るだけで吐き気がするというのに、
それが目の前に現れたのだ。しかもこんなに巨大なものが・・・。
一刻も早くこの場を去りたい!
結衣はそう思い振り向いた。
そこには・・・
2mほどの巨大ヤスデの模型が鎮座していた・・・。
「『アースロプレウラ:石炭紀及びベルム紀に生息した
史上最大級の節足動物』だって」
すみれがまたも説明を読み上げるが、
結衣にとってそんな事はどうでもよかった・・・
「・・・」
結衣はその場で失神した。
******
(うぅ・・・ここは?)
結衣が目を覚ますと、そこはモール内の休憩所だった。
「あ、目が覚めましたか?」
黒川が心配そうに覗き込んでくる。
今ここにいるのは結衣と彼だけだった。
「大丈夫ですか、いきなり倒れられたので、
イベントスタッフの方にお願いして、
暫くここで休ませていただくことになりました。」
黒川は気が付いたばかりの彼女に今の状況を説明する。
(あぁ・・・私ったらこんなところで・・・。)
「すみません、ご迷惑をおかけして・・・。」
そう言って立ち上がろうとしたが、
まだ頭がくらくらしていた。
そんな結衣を黒川が支える。
「・・・無理しないでください」
彼はそう言うと優しく頭を撫でてくれた。
「・・・」
(うう、無様を晒してしまいましたわ・・・)
結衣は恥ずかしさで顔が真っ赤になった。
「あの、もう大丈夫ですわ・・・」
そう言って黒川から離れようとするが、
彼は手を離そうとしない。
(・・・?)
不思議に思って彼の顔を見る。
すると彼は少し悲しげな表情をしていた。
「・・・すみません、友麻さんに
結衣さんが落ち着くまで・・・傍にいてあげて欲しいと」
「え・・・?」
一瞬固まる結衣に黒川は照れたように顔を赤らめる。
(・・・もう、友麻ったら)
結衣は心の中でため息をつく。
「それで、他の皆様はどうされたのです?」
「友麻さんたちなら茶木先輩たちと一緒に
ショッピングモールを回って来るとの事です」
結衣が倒れた後、黒川だけは残って、
彼女を見守ってくれていたのだ。
「あなたにも迷惑をかけてしまいましたわね・・・」
「いえ、気にしないでください」
黒川はそう言って微笑む。
(それにしても・・・)
結衣はそんな黒川を見て、あらためて自分が彼の前で
失態を晒してしまったと思い知る。
(いくら虫が苦手だからって、倒れるなんて。)
結衣は自分が少し情けなくなっていた。
「結衣さん、大丈夫ですか?まだお顔の色がすぐれませんが。」
黒川が再び心配そうに尋ねる。
「えぇ、もう大丈夫ですわ」
結衣は彼に心配をかけまいと気丈に振る舞う。
しかし彼はそんな結衣の心を見透かしたかのように言った。
「・・・お願いですから、無理しないでくださいね?」
結衣が黒川見ると彼はとても心配そうな顔していた。
「・・・し、心配には及びませんわよ」
結衣はなおも強がって見せる。
「でも、お二人に何かあったら・・・俺」
黒川は俯いて黙ってしまった。
そんな黒川を見て、結衣はため息を吐き
「・・・貴方にそんな顔をさせてしまうなんて、
私もまだまだ主人失格ですわ。」
苦笑まじりにそう呟いた。
「い、いえ!そんなつもりは!」
黒川が慌てて否定する。
「わかりましたわ。」
「・・・え?」
「今日のところは貴女のお願いを聞いてあげます。」
結衣は黒川に優しく微笑みかける。
「無理をせず、もうしばらくこのまま休んでいましょう。」
「あ、ありがとうございます!」
黒川が嬉しそうに笑う。
(まったく・・・)
そんな彼の笑顔を見て、結衣も思わず笑みをこぼすのだった。
***
同じ頃、友麻とすみれ、ユキヤの3人は
ショッピングモールを回っていた。
「・・・何ジロジロ見てるんだよ?」
二人を見つめる友麻にユキヤが恥ずかしそうに言う。
「あら失礼、お二人ともとても仲が良さげなので。」
友麻は上機嫌で答える。
(ふふ、仲の良い恋人同士見るのは、やはり楽しいですのよ)
「それとも、私どこかに行っていましょうか?」
友麻はますますニヤニヤする。
「・・・雑な気の使い方すんな!」
ユキヤは顔を赤くしながら叫んだ。
「でもいいの友麻ちゃん?結衣ちゃん達をあのままにして?」
すみれが結衣たちの事を友麻に聞く。
「ふふふ、あの二人はああでもしないと・・・」
「え?」
「いえ、何でもありませんわ」
友麻は誤魔化すように笑う。
結衣と黒川の仲が進展しそうでしない。
そんな二人を見て、お節介を焼きたくなるのだ。
(本当にお似合いなのに・・・。)
そんな事を思いながらショッピングモールを歩くのだった。
「さて、お姉さまたちにお土産買って帰らないと!」
***
(それにしても、先日はえらい目に遭いましたわ・・・)
数日後、結衣は私室でこの前の展示会の事を回想する。
彼女が座るソファの横には、
ダイオウクゾクムシの巨大ぬいぐるみが置かれている。
これは結衣があの展示会で唯一『可愛い』と言ってしまった虫で、
それを聞いていた友麻がお土産と称して買ってきてしまったものだ。
「うぅ・・・可愛いですけど、やっぱり虫は苦手ですわ・・・」
結衣がぬいぐるみに頬ずりしながら呟く。
(でも、このダイオウクゾクムシのぬいぐるみだけは
なぜか許せますわね・・・)
彼女はそう思いながら少し微笑んで、ある事に気付く。
(そうですわ、こうやって可愛いもので緩和されれば、
苦手ではなくなるかもしれません!)
・・・結衣はいつぞやのハイヒールの事を思い出し、
その事を真剣に考えた。
つづく
「お、おぅ・・・」
「あ、あはは・・・ま、まぁまぁですのね」
巨大虫コーナーから出て、一人楽しそうなすみれと、
流石に憔悴し始めてるユキヤと友麻がいたが、
これは仕方ないかもしれない。
あの後、体調40㎝の巨大ムカデや、人の掌より大きい蜘蛛など、
かなり虫に耐性のない人間でないと、辛いものが
かなり多く続いたため、流石に2人ともかなり参っていた。
そして・・・。
「あの結衣さん・・・顔色がミドリ色になってます・・・」
黒川が更に心配そうに結衣に言う。
結衣はグロッキー寸前だった・・・。
(あんな巨大な虫が・・・あんなにたくさんの足を
まるで相談するかのように蠢かせて・・・!)
結衣は先ほど見たものを思い出し、身震いした。
ユキヤ達でもドン引きするような巨大な虫を
次々と目の当たりにしてしまい、
強い吐き気とめまいをおぼえる結衣だったが、
フラフラになりながらも、何とか耐えている状態だ。
(つ、次で最後ですわね・・・。)
彼女の精神はもう限界をとっくに超えていたが、
最後の気力を振り絞り、頑張っていた。
(こ、これ以上は・・・もう・・・!)
結衣のその祈りが届いたのか、最後のコーナーが目に入る。
『古代世界の虫たち』看板にはそう書かれていた。
「どういうコーナーなんだ?」
「ええとね、『人類が生まれるより、はるか昔に存在した虫たちを、
最新の研究をもとに忠実な模型で再現しています』だって。」
すみれがパンフレットの説明文を読み上げる。
(も、模型なのですね。それなら本物でないので大丈夫ですわ)
結衣は内心ホッとした。
(もう、虫を見ないですむのなら何でもいいですわ・・・)
「へぇー!面白そうじゃん!」
ユキヤも楽しそうに言う。
「えぇ、古代生物の実物大模型なんて興味ありますね」
黒川もパンフレットを見て頷く。
(よかったですわ・・・。これで何とか乗り切れそうですわ・・・)
そう思い安心して、最後のコーナーに
足を踏み入れる結衣だったが・・・。
そんな彼女を出迎えたのは、
1m近くある巨大なトンボの模型だった。
「・・・・・・・!?」
「うおっでけぇ!」
ユキヤがその模型を見て驚く。
「あら、良く出来ていますのね」
友麻も興味津々といった様子で眺めている。
「『メガネウラ:石炭紀に生息してた巨大トンボ』だって。」
すみれも興味深く模型をみている。
「こんなのが実際に今飛んでたら、小さい子供だったら泣くぞ・・・」
ユキヤも引き気味で感想を言う。
「・・・・・・・・・」
そんな3人の横で結衣は完全に硬直していた。
(あ、あぁ・・・もうダメですわ・・・。)
もう限界だった。虫なんて見るだけで吐き気がするというのに、
それが目の前に現れたのだ。しかもこんなに巨大なものが・・・。
一刻も早くこの場を去りたい!
結衣はそう思い振り向いた。
そこには・・・
2mほどの巨大ヤスデの模型が鎮座していた・・・。
「『アースロプレウラ:石炭紀及びベルム紀に生息した
史上最大級の節足動物』だって」
すみれがまたも説明を読み上げるが、
結衣にとってそんな事はどうでもよかった・・・
「・・・」
結衣はその場で失神した。
******
(うぅ・・・ここは?)
結衣が目を覚ますと、そこはモール内の休憩所だった。
「あ、目が覚めましたか?」
黒川が心配そうに覗き込んでくる。
今ここにいるのは結衣と彼だけだった。
「大丈夫ですか、いきなり倒れられたので、
イベントスタッフの方にお願いして、
暫くここで休ませていただくことになりました。」
黒川は気が付いたばかりの彼女に今の状況を説明する。
(あぁ・・・私ったらこんなところで・・・。)
「すみません、ご迷惑をおかけして・・・。」
そう言って立ち上がろうとしたが、
まだ頭がくらくらしていた。
そんな結衣を黒川が支える。
「・・・無理しないでください」
彼はそう言うと優しく頭を撫でてくれた。
「・・・」
(うう、無様を晒してしまいましたわ・・・)
結衣は恥ずかしさで顔が真っ赤になった。
「あの、もう大丈夫ですわ・・・」
そう言って黒川から離れようとするが、
彼は手を離そうとしない。
(・・・?)
不思議に思って彼の顔を見る。
すると彼は少し悲しげな表情をしていた。
「・・・すみません、友麻さんに
結衣さんが落ち着くまで・・・傍にいてあげて欲しいと」
「え・・・?」
一瞬固まる結衣に黒川は照れたように顔を赤らめる。
(・・・もう、友麻ったら)
結衣は心の中でため息をつく。
「それで、他の皆様はどうされたのです?」
「友麻さんたちなら茶木先輩たちと一緒に
ショッピングモールを回って来るとの事です」
結衣が倒れた後、黒川だけは残って、
彼女を見守ってくれていたのだ。
「あなたにも迷惑をかけてしまいましたわね・・・」
「いえ、気にしないでください」
黒川はそう言って微笑む。
(それにしても・・・)
結衣はそんな黒川を見て、あらためて自分が彼の前で
失態を晒してしまったと思い知る。
(いくら虫が苦手だからって、倒れるなんて。)
結衣は自分が少し情けなくなっていた。
「結衣さん、大丈夫ですか?まだお顔の色がすぐれませんが。」
黒川が再び心配そうに尋ねる。
「えぇ、もう大丈夫ですわ」
結衣は彼に心配をかけまいと気丈に振る舞う。
しかし彼はそんな結衣の心を見透かしたかのように言った。
「・・・お願いですから、無理しないでくださいね?」
結衣が黒川見ると彼はとても心配そうな顔していた。
「・・・し、心配には及びませんわよ」
結衣はなおも強がって見せる。
「でも、お二人に何かあったら・・・俺」
黒川は俯いて黙ってしまった。
そんな黒川を見て、結衣はため息を吐き
「・・・貴方にそんな顔をさせてしまうなんて、
私もまだまだ主人失格ですわ。」
苦笑まじりにそう呟いた。
「い、いえ!そんなつもりは!」
黒川が慌てて否定する。
「わかりましたわ。」
「・・・え?」
「今日のところは貴女のお願いを聞いてあげます。」
結衣は黒川に優しく微笑みかける。
「無理をせず、もうしばらくこのまま休んでいましょう。」
「あ、ありがとうございます!」
黒川が嬉しそうに笑う。
(まったく・・・)
そんな彼の笑顔を見て、結衣も思わず笑みをこぼすのだった。
***
同じ頃、友麻とすみれ、ユキヤの3人は
ショッピングモールを回っていた。
「・・・何ジロジロ見てるんだよ?」
二人を見つめる友麻にユキヤが恥ずかしそうに言う。
「あら失礼、お二人ともとても仲が良さげなので。」
友麻は上機嫌で答える。
(ふふ、仲の良い恋人同士見るのは、やはり楽しいですのよ)
「それとも、私どこかに行っていましょうか?」
友麻はますますニヤニヤする。
「・・・雑な気の使い方すんな!」
ユキヤは顔を赤くしながら叫んだ。
「でもいいの友麻ちゃん?結衣ちゃん達をあのままにして?」
すみれが結衣たちの事を友麻に聞く。
「ふふふ、あの二人はああでもしないと・・・」
「え?」
「いえ、何でもありませんわ」
友麻は誤魔化すように笑う。
結衣と黒川の仲が進展しそうでしない。
そんな二人を見て、お節介を焼きたくなるのだ。
(本当にお似合いなのに・・・。)
そんな事を思いながらショッピングモールを歩くのだった。
「さて、お姉さまたちにお土産買って帰らないと!」
***
(それにしても、先日はえらい目に遭いましたわ・・・)
数日後、結衣は私室でこの前の展示会の事を回想する。
彼女が座るソファの横には、
ダイオウクゾクムシの巨大ぬいぐるみが置かれている。
これは結衣があの展示会で唯一『可愛い』と言ってしまった虫で、
それを聞いていた友麻がお土産と称して買ってきてしまったものだ。
「うぅ・・・可愛いですけど、やっぱり虫は苦手ですわ・・・」
結衣がぬいぐるみに頬ずりしながら呟く。
(でも、このダイオウクゾクムシのぬいぐるみだけは
なぜか許せますわね・・・)
彼女はそう思いながら少し微笑んで、ある事に気付く。
(そうですわ、こうやって可愛いもので緩和されれば、
苦手ではなくなるかもしれません!)
・・・結衣はいつぞやのハイヒールの事を思い出し、
その事を真剣に考えた。
つづく
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