双子の令嬢姉妹の専属ペットになった俺は今日も二人の足の下にいる。

桃ノ木ネネコ

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第19話:結衣様はハイヒールが苦手!?(その2)

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「結衣ちゃんたちの靴の事?」
「はい、そうです。白石さんなら何か聞いてるかなって・・・」

数日後、
黒川は大学構内のカフェで姉妹の友人であるすみれと話していた。
先程ああは思ったものの、やはり気になっていた。

「そういえば、結衣ちゃんたちって
普段大体はローファーかブーツだよね」
すみれが思い出したように言った。

「うーん・・・悪いけどそのあたりの話は聞いてないや」
「そうですか・・・」
黒川は残念そうな顔をする。
(やっぱり白石さんも知らないか・・・)

「ごめんね、役に立てなくて・・・」
すみれが申し訳なさそうに言う。
「いえ、気にしないでください」
と黒川が頭を下げたその時・・・

不意に背後から彼の頭を掴む人間がいた。
「?!」
「お前はまた性懲りもなくすみれをナンパしてるのか!」
すみれの彼氏で先輩のユキヤであった。

「ちょ・・・違いますってば!」
黒川はユキヤに頭を掴まれたまま、必死に弁明する。
「ホントか~?」「・・・だから、ひっぱらないで!」
黒川は頭を押さえ、必死で抵抗する。
ここでウィッグを取られては堪らない。

「こら、!いい加減にする!!」
「・・・・!!」
すみれがそう言った途端、ユキヤが手を放す。

危うくウィッグを取られたけた黒川は、
ウィッグの位置を確認しながら
「ふぅ・・・もう、やって良い事と悪いことが・・・」
とユキヤの方を振り返ると、
彼はすみれを見つめたまま、固まっていた。

「ユキちゃん?」
すみれが再度声をかけると、彼はハッとした顔になる。
「ほら、黒川くんにちゃんと謝る。」
「あ、ああ・・・すまんな」
ユキヤは黒川に頭を下げる。

(なんだ・・・このやり取り?)
黒川は困惑しつつも、すみれに声をかける。
「あ、いえ・・・気にしないでください」
「ゴメンね黒川くん」
「あはは、大丈夫ですよ」
黒川は苦笑いしつつ答えた。

「お前なぁ・・・外で俺をそう呼ぶなって言ってるだろ!」
「へへ、ゴメンね・・・」
ユキヤがすみれに小声で注意する。
「え、なんですか?」
黒川が2人に尋ねる。するとすみれは笑顔で言った。
「あ、気にしないで!ちょっとしたおふざけだから!」」
(いや、気になるんですが・・・)
と黒川は思ったが口にはしなかった。

***

「なるほど、あの双子のねぇ・・・」
席に着いたユキヤは黒川から事情を聴いた。
「ええ、その・・・なんでヒールが苦手なのか気になって・・・」
「でも、理由は聞いてるんだよね?」
すみれが聞く。
「はい。でもまだほかに理由があるっぽくて・・・」

「・・・もしかしたらよっぽど言いたくない事情なのかもな。」
ユキヤが少し深刻そうな顔で言った。
「そうかもしれませんね・・・」
「例えば・・・昔の恋人がヒール好きだったとか」
「え?」
黒川は突然の言葉に驚く。
(まさか、そんな理由で・・・)
「もしくは、幼少時に酷いトラウマがあるとか・・・」
ユキヤはますます真剣な顔で言う。「なるほど・・・」
黒川はユキヤの考えについ聞き入ってしまう

「あるいは生き別れの兄妹が・・・痛っ」
ユキヤが更に何か言いかけたところですみれが彼の頬をつねる。
「・・・話を無理矢理深刻にしないの!」
「わ、分かったから放せって!」
「もう・・・すぐ調子に乗るんだから」
そう言いつつ、すみれはユキヤの更に頬を引っ張る。
「痛たた・・・だから分かったって」
ようやく解放されたユキヤが黒川の方に向き直る。

「でもさ、それってどうしても知りたいことなのか?」
「いえ、そういうわけではないんですが・・・」
ユキヤの問いかけに黒川は口ごもる。
(まぁ・・・そんなに知りたいわけじゃないけど)

「ただ、ちょっと気になったというか・・・」
「じゃあそれでいいだろ」
ユキヤはそういうと、おもむろに黒川の前髪を軽く引っ張る。
「・・・!な、何するんですか!!?」
いきなりの事に黒川はユキヤの手を慌てて振り払う。

「・・・そういう事だよ」
黒川の反応を見て、ユキヤがニヤリとする。
「誰にだって知られたくない秘密があるって事だ」
黒川の髪がウィッグであることを知っているのは、
この場では、目の前にいる二人だけだ。
これは絶対に他人には知られたくない。

「そう・・・ですね」
(言われてみれば、俺が勝手に詮索していいような話じゃないか)
黒川は納得した。そもそも他人の事情に
首を突っ込むのはあまり良くないだろう。

(それにしても・・・茶木先輩、さっきから執拗に
俺のウィッグ取ろうとしてないか・・・?)
ユキヤがさっきから何度も自分の髪を引っ張ろうとするので、
彼の動きには少し注意しておこう・・・と黒川は思った。

「でも結衣ちゃん達って結構気まぐれなところもあるから、
そのうち話してくれるかもしれないよ。」
すみれがフォローするように言う。
(確かに、あの2人ならいつか話してくれるかもしれない)
黒川はそう感じた。

「はい、俺も無理に聞こうとは思ってませんから・・・」
黒川は笑顔で答える。
(そうだ、別に無理に知ろうとは思わない)

「でも秘密って何だろうね、?」
「・・・!」
すみれにそう呼ばれた途端、ユキヤがまたも固まる。
「・・・だから!その呼び方ここでするなよ!!」
「ゴメン、面白くてつい・・・」「俺は面白くない!」
ユキヤはなぜかすみれの言葉に敏感だった。

(な、何かの号令なのかな・・・?)
黒川は2人のやり取りを不思議そうに見ていた。

***

すみれ達と別れた後の帰り道、黒川はずっと考えていた。
(結局、結衣さま達の事は何も分からなかったな・・・)
黒川は帰り道に立ち止まり、溜息をつく。「はぁ・・・」
(茶木先輩達の言う通り、
向こうが話してくれるまで待つしかないのかな)
黒川はそう考え、再び歩き始める。

(そういえば、俺はお二人の事を何も知らない・・・)
黒川は、結衣と友麻の事をよく知らない事に気づいた。

(人間扱いすらされてないペットの分際で
こんな事考えるのはおこがましのかもしれないが・・・
俺はお二人の事をもっと知りたい)

黒川はそう思いつつ、家路に着いた。

それから暫くの間、
結衣たちの靴の件についてはまだ少し気になっていたが、
黒川は敢えて聞こうとは思わなかった。

しかしあの時、口を滑らせかけた結衣を友麻が止めて、
フォローまでしたのが引っかかる。
(あれって友麻様も結衣様に気を使っているって事だよな)
恐らくだが、結衣にとってはあまり良いことではないのだろう。
だからこそ、友麻が止めたのだ。
だとしたら、余計にこちらからは聞けない。

(気にはなるけど、やっぱり話してくれるのを待つしかないか)
黒川は、ため息を吐いた。

***
「黒川さん、ちょっとよろしいですか?」
ある日の昼休み、黒川は友麻に声をかけられた。
(え?俺なんかしたっけ!?)
黒川は一瞬動揺するが、すぐに平静を装う。
「・・・はい、何でしょうか」
「知りたいのでしょう?お姉様の事」
「・・・・!」
友麻の口から思わぬセリフが出た。

「どうしてそれを・・・?」
黒川は動揺する。まさか友麻の方から切り出してくるとは。
(でも、なんで急に?)
「あの下僕男が口を滑らせましたのよ」
友麻はにこりとしてそう言った。
「・・・・・!」
(茶木先輩・・・俺にはこの前あんな事偉そうに言ってたのに!)
黒川はユキヤの口の軽さに呆れると同時に大いに脱力した。

うなだれる黒川に友麻が更に話しかける。
「・・・実はこれ、お姉様はあまり知られたくない話かと思います。」
友麻は少し俯きながら言う。「え・・・?」
黒川は驚く。
「なのでこれを話すことは私自身、
お姉さまを裏切ることになるかもしれません・・・」
友麻は黒川の方を向く。そしてちょっと真面目な顔をする。

「聞いたことで私は勿論、貴方にも
それなりのペナルティがあるかもしれませんが、
それでも・・・聞きたいですか?」
友麻は黒川の目をじっと見る。
(ペナルティ・・・か)
友麻の言葉に、黒川は一瞬たじろぐ。
(それでも俺は・・・聞きたい!)

「お願いします。聞かせてください・・・」
黒川は覚悟をめて言う。
友麻はその返事を確認すると、口を開いた。
「・・・あれは2年ほど前のことです」、と友麻が切り出した。

つづく
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