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第15話:姉妹の仕事編5「決断」

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「皐月ちゃん、女の子を抱いてみたいですか?」
皐月の『勉強』期間の最終3日前、友麻がこんな事を聞いてきた。
「え・・・?えっと、その・・・」
突然の質問に皐月は相当面食らって言い淀む。

「お嬢様、それはいくらなんでも直球過ぎやしませんか?」
黒川がさすがに横から口を挟む。
「私は皐月ちゃんに聞いてるのです」「う・・・」
友麻がピシャリと言う。
そして結衣も続ける。

「私たちが貴方のお父様から受けたオーダーは
貴方に性知識と女性というものを教え込む事でした。
そして最後には本当に女性と関係をもってその身体を知る・・・
というのが最終目標でした。」
「そ、そうだったんですか・・・」皐月は唖然とする。
(最終目標って・・・)黒川も絶句している。

更に結衣が続ける。
「・・・とは申しましても、
これに関してはあなた自身の問題ですから、
どうしても嫌だというのなら無理にとは言いません」
「もしご希望というのであれば、お相手を用意いたしますのよ」
結衣と友麻が交互に言う。
「えっと・・・その・・・」皐月は困惑して言い淀む。

「『用意』ってそんな簡単に出来るんですか?」
黒川が結衣の耳元で聞く。
「・・・そこはその手のプロのお方に、
他言無用でお願いする予定ですわ」
結衣は小声で答える。「そうですか・・・」黒川は納得して頷く。

「・・・もし、皐月ちゃんが望むのであれば、
私たちは出来る限り協力いたしますわ」
友麻が優しい声で言う。
(・・・!)
その言葉に皐月の心臓が跳ね上がる。そして・・・。
「えっと・・・その・・・一晩考えさせてくれませんか?」
皐月はそう答えるのが精一杯だった。
「ええ、分かりましたわ。じっくり考えてくださいね」
結衣も優しく言う。

(僕は・・・どうすれば)

***
その夜、
皐月はベッドで寝付けずにいた。
先程の結衣たちからの申し出についてずっと考えていた。

(女性と関係を持てる・・・僕にはまたとないチャンスだろう)
皐月はそう思う。
話によると、プロの女性を相手に行われるというから、
失敗することなく上手くやってくれるだろう。
しかし、皐月はどうしても踏ん切りがつかなかった。

(大人の『男』になるためには、
そういった経験は必要なのは分かっている。
でも、これは何か違うような気がする・・・)
皐月はそう思う。そして、色々な考えが浮かんでは消える。
これまで皐月は、自分に関する事で、
こんな重大な決断を迫られたことはなかった。
何故ならば、そんな事はすべて母親が決めていたからだ。
彼の意志は関係なかった。

それを今、自分で決断しなければいけない事態に陥っている。
しかも今後の人生を左右しかねない選択だ。下手な答えは出せない。
皐月は考えた。生まれて初めて自分について考え続けた。

そうしてどれぐらい時間が経ったか分からない頃・・・
(僕は・・・やっぱり)と結論を出すのだった。

***

翌日、
皐月は姉妹の待つ地下室にやってくる。

「皐月ちゃん、決めましたか?」結衣が聞く。
「はい」と皐月は答えた。
「さぁ、どういたしますの?」友麻も続いて聞いてきた。

「今回は・・・お断りいたします」
皐月は答えた。

「あら、意外なお答え」結衣がちょっと驚いた顔をする。
「ひょっとして、怖くなっちゃいましたの?」
友麻が尋ねる。
「いえ、怖いわけではないんです」皐月は答える。

「僕、まだ好きな人がいないんです・・・」
皐月がうつむきながら続ける。

「皆さん、おっしゃっていましたよね?
誰かを好きになると人は強くなるって・・・」
「確かに言いましたけど・・・
貴方はそれで大丈夫なのですか?」

「はい、ここに来て、どうすれば身体が気持ち良くなるのかや、
男女の営みの事について、色々教わって・・・
僕の中にそういった感覚が芽生えて、
そう言った体験をしたいという欲望も生まれています。」
ここで皐月は少し顔を赤らめる。

「でも今ここでそういった事を経験してしまうと・・・
きっと僕みたいな人間は、
弱いまま大人になってしまうと思うんです。」

皐月は俯きながら、しかしハッキリとした口調で続ける。

「もしその後に本当に好きな人が現れも、
僕自身が本当の強さを持つことが出来ないでしょう。」
皐月は自分の気持ちを吐露した。

「・・・だからまず、
誰かを好きになるところから始めたいんです・・・」
と皐月は続ける。
「僕のために色々と考えていてくれたのでしょうけど・・・
本当にごめんなさい。」
皐月は姉妹に向かって頭を下げた。

目の前の3人は彼の言葉に呆然としていた・・・。

「ど、どうかされましたか・・・?」
皐月が困ったように口を開く。
「い、いえ・・・あまりに意外な言葉が返ってきたもので」
結衣が驚く。
「皐月ちゃん、大人になりましたね・・・」
友麻も驚いているようだ。
(この純朴さは・・・ある意味凶器だな・・・)
黒川も無言になる。

「皐月ちゃん、そこまでお考えだったのですね」
結衣が微笑みながら言う。
「はい、生まれて初めてこんなに考えました。」
皐月も緊張が少し緩んだ顔で言った。
(こいつは将来・・・大物になるかもな)黒川も心の中で呟いた。

「立派ですが、でも・・・とても甘い考えだと思いますわ」
「そう簡単に好きな人間が出来るとは限りませんのよ」

友麻と結衣が続けて言う。
「そ、それは・・・分かっています」皐月はうつむく。
「とはいっても・・・こんなに敏感になった身体を
持て余しませんこと?」
そう言って結衣がおもむろに皐月の股間を弄る。
「・・・・!!?」
「一人で寂しい夜を耐えることが出来ますの?」
友麻が続けて首筋を撫でる。
「あ・・・あぁ・・・やめ・・・」
2人からの不意打ちに皐月がわずかに悶えてしまう
(お二人とも・・・さすがに容赦ない)
黒川は内心苦笑する。

「あぁ・・・それでも、ぼくは・・・」
皐月は2人の愛撫に悶えながらも、必死に言葉を絞り出す。
「ふふ、確かにまだまだ甘いですが、
その純朴さはある意味羨ましいですわね・・・」
「とりあえず、目先の欲に振り回されなかったのは、
評価いたしますのよ」
結衣と友麻は皐月の返答に少し満足したようで、彼を解放する。

「でも大丈夫ですか?この先きっと苦しいかと思いますわよ?」
「それは・・・覚悟の上です。」皐月は息を整えながら答えた。

「後悔・・・しませんか?」
「はい!」
結衣の問いに皐月は元気よく答える。
「わかりましたわ・・・そこまで強く決意したのであれば、
私たちは応援いたしますわよ」
結衣が優しく微笑んだ。

つづく
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