双子の令嬢姉妹の専属ペットになった俺は今日も二人の足の下にいる。

桃ノ木ネネコ

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第13話:姉妹の仕事編3「変化」

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「・・・文月、なかなかやりますわね。」
「そうですわね、最近皐月ちゃん、Hな事への恐怖心が
少しですが薄らいだように思えますの。」

ここは姉妹の私室。
皐月が来てから、姉妹は毎日寝る前に、
皐月の『勉強』の作戦会議を開いていた。
「あの本の置き方、成功でしたものね」

今回、皐月の部屋にHな本を置くことは作戦に入れていたが、
『普通の本数冊の中に1冊だけ
そういった本を混ぜておく方が抵抗が少ない』
と進言したのは他ならぬ黒川であった。
「やっぱり男の子の心理は男の子にしか
分からないのかもしれませんわね」

普通であれば、親に隠れてこっそり
そういったものを見る・・・という
思春期男子特有の行動を、それに近い形で
軽く疑似体験させたわけである。

「少しじれったい気もしますが、あの子にはあっていたようですわ」
「皐月ちゃんも、最近反応が可愛くなってきましたものね」
「・・・やはり文月に来てもらって正解でしたわ。
私たちではちょっと思いつかなかったところです。」
「あら、お姉さまでも思いつかなかった事があるのですね?」
友麻が意外そうに言う。

「まぁ、そこは男と女の違いでしょうね」と結衣が答える。
「ふむ、そういうものなのですね・・・。」と友麻も納得する。
「さて、この調子で行けば・・・問題はなさそうですわね」
結衣が呟く。「はい、お姉さま」と友麻も頷く。
「でも、あまりやり過ぎても良くないので、
ほどほどにしないといけませんけど。」
と結衣が釘をさす。
「ええ、分かってますわ」友麻は頷いた。

***

「・・・どうしてあんなもの、部屋に置いていったんですか?!」
夜、宿舎への移動中、皐月は黒川に問い詰める。
「嫌ならもうやめますが?」
黒川は淡々と答える。
「い、嫌って訳じゃ・・・」
皐月は口ごもる。

あの日以降、皐月の部屋にはいろいろな本が置かれていった。
その中の数冊に1冊の割合で、成人向けのものが混じってる。
そして今日は、タブレットが置かれていた。

これは皐月がこれまで閲覧制限付きのスマホでしか
ネットに触れてこなかったという事を
聞き出した黒川が用意させたものだ。

「・・・知識の幅が広がればと思いました。」
黒川が淡々と言う。
「・・・」皐月は納得できない表情だったが、
それ以上追及するのは止めた。
確かにタブレットが来たおかげで、見た事もない情報や映像が
簡単に手に入るのはありがたかった。
(この人、なんなんだろう・・・)
皐月は黒川を見ながら考える。

スキンヘッドでスーツに仮面という
異様な風貌なのに口調は淡々としている。
しかも仮面のせいで表情が読めず、
何を考えているのかわからない。
しかし仮面に隠れていない口元や輪郭を見れば、
その下の顔はかなり端正だという事は想像出来た。

そして彼のやる事なす事、ことごとく
こちらの考えを読まれているような気がする。

(文月さんて、一体何者なんだろう・・・)
ここに来てそろそろ1週間が経とうとしているが、
皐月は彼の事を掴めずにいた。

「あなたはなぜここであの子たちに仕えているんですか?」
「・・・」黒川は答えない。
相変わらず、会話のキャッチボールが成立しない。
(うーん・・・)皐月は考えて、質問を変えてみることにした。

「・・・あの、誰かを好きになった事ってありますか?」
「・・・」黒川は答えない。
(やっぱりダメか・・・)皐月が諦めかけた時、

「・・・無いと言えば、噓になりますが」
と、ようやく返事が返ってきた。
「えっ?!あるんですか?!」皐月は思わず聞き返す。
「・・・あります」黒川は答える。

(この人でも、好きな人いるんだ・・・)
皐月はそのことが意外だった。
「しかし、なぜそんなことを?」
今度は黒川が逆に聞き返してきた。
「僕・・・誰かを『好き』になることが
いまいち実感できなくて・・・」

皐月は続けた。
「これまで漫画や映画などで、恋愛を扱ったものは見てきました。
でもそれは、あくまで空想の中の出来事だと・・・
今まではそう思っていました。」
皐月は黒川に語る。

「でも、この屋敷に来て色々教えられて、
それが現実にあるという事を知りました。」
黒川は黙って聞いている。

「でも、わからないんです。特定の誰かを
その・・・『好き』になるというの感情が。
この人のためなら、すべてを差し出しても構わない・・・
それぐらい好きになれる、そんな人が果たして
僕に現れるのだろうかと・・・」
皐月はそこまで言うと、黙ってしまった。

「それは・・・あなた次第ですよ」
黒川が答える。
「えっ?」皐月は驚く。
「・・・あなたが誰かを『好き』になれるか、
それは私には分かりません」
(・・・・)
「でも『現れる』のを待っているだけでは、難しいでしょう」
黒川は続ける。
皐月は黙って聞いている。

「誰かから好かれたいのであれば、
まず自分で『好きな人』を見つける事です」
「自分で・・・?」皐月は聞き返す。
「・・・はい、そして好きな人をどれだけ
愛することが出来るか・・・」
と、ここまで言いかけて黒川は口を閉じる。

「すいません、喋り過ぎました・・・」
黒川はそれだけ言うと、後は黙ってしまった。
皐月は黙って話を聞いていたが、 
なんとなく自分が何をすべきか分かったような気がした。

(自分で見つける・・・か。)
皐月は心の中で呟くと、黒川の方を見る。
「あの、ありがとうございました!」皐月が礼を言う。

黒川は相変わらず無言だったが、少し会釈をしたように見えた。
(文月さん、冷たい人だと思ってたけど実は結構情に熱い人?)
そう思うとなぜか親近感が湧いた・・・。

***

「・・・というわけで、
確実に彼の心境に変化が起こってますね。」
夜、黒川が姉妹の私室で報告する。
今日は彼も作戦会議に参加していた。

「ええ、順調ですわ。」結衣が満足げに頷く。
「あの臆病だった皐月ちゃんが、自分からそんなことを
聞いてくるなんて大した進歩ですのよ」
と、友麻も満足げだ。
黒川は無言で頷く。

「お前もご苦労様ですわ。毎日大変でしょう?」
と、結衣が労う。
「い、いえ、私は貴女方のお役に立てれば・・・」
彼女からの予想しない言葉に、黒川は少し頬を赤らめた。
「あら、照れてるのですか?可愛いですわね」
結衣は悪戯っぽく言う。
「・・・からかわないでください!」黒川は顔を背ける。

「さ、こっちにいらっしゃい」
結衣が黒川を手招きする。
「?」
黒川は言われるままに、結衣に近づくと・・・
彼女はそっと彼を抱き寄せた。
(?!)突然のことに驚く黒川だったが、彼は抵抗しなかった。
「ゆ、結衣様・・・?!」
彼女の体温を感じる・・・。そして、とても心地よかった・・・。
「最近かまってやれなくて、ごめんなさいね」
結衣が黒川の耳元で囁く。

「い、いえ・・・お気になさらずに・・・」
黒川はしどろもどろに答える。
(本当はかまって欲しかったけど・・・)
「ここまで来れたのは、半分はお前のおかげですのよ」
友麻がそう言って黒川の頭を撫でる。「そ、そんなことは・・・」
黒川は反論するが、内心嬉しかった。

「ふふっ、いつもの愛らしいペットなお前も可愛いですが、
こうやって冷静に与えられた仕事をこなすお前の姿も
なかなか新鮮ですわよ」
友麻は黒川のマスクをずらすと、頬に軽くキスをした。
「な、なにを・・・!」突然の事に黒川は驚く。

いつもは姉妹に翻弄され、弄ばれているている黒川だが、
私生活ではかなり冷静に物事を考えるタイプであった。
今回は、その性格がいい方向に働いていた。

「もう、友麻ったら・・・」結衣はそう言うと、
黒川の頭を優しく撫でる。
「あら、お姉さま。私だって、たまにはいいでしょう?」
友麻はそう言うと、もう一度黒川の頬にキスをした。
「ちょ、ちょっと・・・!」
再び慌てる黒川だったが、今度は結衣も止めなかった。
姉妹からの抱擁と接吻・・・。次第に恥ずかしさよりも
心地よさが勝ってきた。
(気持ちいい・・・)と、心の中で思う黒川だった。

「お前は今回、それだけの働きをしています。
自信をお持ちなさい」
結衣はそう言うと、今度は黒川の側頭部に軽くキスをした。
「・・・・っ!」
黒川は顔が赤くなるのを感じた。
そして、胸がドキドキする・・・。

(お、落ち着け・・・!)
黒川は必死に心を落ち着かせようとするが、うまくいかない。
「あらあら、恥ずかしがって・・・」
結衣は黒川の頭を撫でながら言う。

一時期より落ち着いてはいるが、
やはり剃り上げられた頭皮への愛撫は胸が高鳴る。
「ふふ、可愛いですわね」友麻も黒川の頭を撫でながら言う。
(な、なんか今日は二人とも優しい・・・)と、黒川は思う。
 
「もっと頑張れば・・・もっと沢山可愛がってあげましてよ」
と、結衣。
「ふ、ふぁい・・・」黒川は返事をする。

つづく
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