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(結局体中のあらゆる部位を開発されてしまった気がする・・・)
ユキヤはベッドの上で仰向けになっていた。
このまま肉欲に溺れてしまうのか・・・と思ったら実際そうでもない。
夜以外の普段の生活に変わりはなく、普通に暮らしている。
行為の回数は増えているが。
(そのあたり、どうもすみれがコントロールしてるっぽいんだよな・・・)
「私はね、ユキちゃんを壊してまで楽しみたいとは思ってないんだよ。
私は今のユキちゃんが大好きで、壊しちゃったらもう
それはユキちゃんじゃなくなっちゃうもの」
以前すみれた言っていたことだ。
確かにユキヤ自身もすみれに身体を開発されつくしても、
それだけで二人の関係が変わってしまうものではないと思っていた。
だが最近、ユキヤ自身、身体だけでなく心の奥底から
すみれとの関係を強く求めてしまっている。。
すみれに調教された身体は、もはやすみれとのセックスなしでは
満足できないのだ。
しかし、すみれは、身体だけでなく、ユキヤの人格をも
尊重してくれている。
「すみれに何もかもを委ねたら、本格的にダメになってしまうかも」
そう思ったユキヤは、なんとか自分の意思で
すみれとの関係を受け入れるようになった。。
ユキヤの身体は調教されきっているが、自分はまだ自分でいる。
「最近ちょっと我が儘になっちゃった?」
すみれにそう言われてしまうが、
それが、ユキヤとすみれの愛の形だ。
今日はすみれはバイトで帰りが遅いらしい。
一人でいる時間が長いと、どうしても考え事をしてしまう。
涼香との一件があって以来、ユキヤは以前より
自分の事を考えるようになっていた。
自分が今何をしたいと思っているか、
何を望んでいるかを改めて考えるようになったのだ。
「俺は一体どうなりたいんだろ」ユキヤは一人事を呟く。
「ユキヤの好きにしたらいいと思うよ」不意に背後から声が聞こえた。
ユキヤは驚きつつも振り向いた。そこにはすみれがいた。
「すみれ、いつの間に帰ってきたの?」ユキヤが尋ねる。
「ついさっきだけど、それよりユキヤはこんなところで何やってるの?」
すみれが尋ね返す。
「えっと、その・・・ちょっとボーっとしてただけ」
ユキヤはしどろもどろに答える。
「ふーん、何か悩み事があるみたいね」すみれはニヤリと笑う。
「べ、別にそんなことないし」ユキヤは慌てて否定した。
「そっか、ユキヤは私には話せないようなことを悩んでるのかな~」
すみれは意地悪そうな笑みを浮かべる。
「いや、その・・・この部屋もうすぐ引っ越すんだなって思ってさ」
ユキヤは慌てて胡麻化した。
「そうだね・・・いろんなことがあったよね。この部屋も。」
今年に入ってから二人は、一緒に住むために色々と動いていた。
二人とも4月で部屋の契約が切れるため、それに合わせたという感じだ。
「今はその部屋、ユキヤのバイト先の先輩の人が住んでるんだっけ?」
「ああ、その人が春から地元で就職するんで、部屋が空くから入る?って
聞かれたときは、こんな事ってあるんだ・・・と思ったけどな」
ユキヤは苦笑いしつつ答えた。
「だからこそ、即動いたんでしょ?」「まぁな」
新しい部屋は同じ町内にある築30年ほどの小さなマンションの1LDKだった。
少々古い気もするが、各部屋はリフォームがされており、
二人で住むには十分な広さで、トイレも風呂も別にある。
駅からは若干離れているが、スーパーもコンビニも近い。
先住者である先輩からも「運がよかった」
と言わしめるほどの好条件のものだった。
「だからケンカしたときは正直どうしようかと思ったよ・・・」
「あはは、あの時はお互いどうしようもなくなってたもんね。」
二人はは、この前の大ゲンカを思い出していた。
「ま、今こうしてお互い引っ越すの待ってるんだからいいじゃない?」
「それはそうなんだけどさ・・・。なんか恥ずかしいな。
すみれとこういう風にしんみりと話すなんて初めてかもしれない」
「うわぁ!ユキヤは私の事をなんだと思ってたの!?」
すみれがショックを受けたように言った。
「なんだろうな・・・いつも余裕があるっていうのかな。
すみれのペースに乗せられっぱなしというかさ。」
ユキヤは素直に自分の気持ちを吐露し始めた。
「うん。それで良いんだよ。私はどんなときでもユキヤを見守る。」
「俺が困ったときは助けてくれる?」
「もちろんだよ!」
「じゃあさ、もし、すみれと喧嘩したらどうすれば仲直りできる?」
「簡単じゃん。ユキヤから謝れば許してあげる。」
「俺が悪い事前提かよ!」
ユキヤが突っ込むと、すみれはクスッと笑う。
「だって、ユキヤが先に折れたら私がきっと負けちゃうし。」
すみれはそう言って微笑む。
(そもそも、すみれが怒ったら怖すぎて、絶対勝てない気がする)
ユキヤは思わずそう言いそうになったが、そこは飲み込んだ。
****
2人の新しい住居が決まり、引っ越し作業も大方終わった
4月下旬のある日のこと。
すみれは沙由美と電話をしていた。
「という事でやっと落ち着きましたよ~」
『お疲れ様。引っ越しって結構体力も精神力も使うもんね』
「えぇ、まったくです。大学入った時以来ですけど、やっぱ大変ですよね。」
すみれは大きなため息をついた。
『ふふふ、一緒に住むんだから、これからは色んなプレイやり放題ね』
「もう!からかわないでください!」
すみれの顔が赤くなる。
「・・・ところで、そのことで聞きたいんですが・・・
私って本当にSなんでしょうか?」
すみれが不安そうな声で尋ねる。
『あら、どうしてそんなことを思ったの?何かあったの?』
(何を今更・・・?)と沙由美は心の中で思いながら聞く。
「私別に相手を屈服させて喜んだり、痛めつけるの好きじゃないし・・・
夜の方は私の方が精力的に動いて、いろいろ用意したり、
何かしてあげてる感じで、全然『女王』って感じじゃないし・・・」
すみれの声のトーンはどんどん落ちていく。
『あはは、すみれちゃんの『S』は『サービス』の 『S』かもね』
(でも相手のプライドへし折る才能はピカイチだと思うけど)
沙由美は笑って言った。「うぅ、やっぱりそうですかねぇ」
すみれは肩を落とす。
「私は、ただ、相手が気持ちよくなってくれると嬉しいし、
喜んでもらえるともっと嬉しくなっちゃいますし、
その、相手を支配してるとか、
征服してるっていう感覚はあまりなくて、
ただ気持ちよくなって可愛い声と顔で鳴いてくれれば・・・」
すみれは照れながら語る。
(最後の一言がすべてのような気がするけど・・・)
沙由美は噴き出しそうになるのをぐっと堪える。
「・・・あの、沙由美さん、今笑ったでしょ?」
『いえ、笑ってませんよ』
「むー、絶対笑いましたよね。」
『・・・はは、そう言ったプレイの類っていわば
『お互いをどれだけ信頼してるか』
を測るツールみたいなもんだし、決まった形はないと思うわよ。
世間一般で言うSMだってお互いを信頼してないと成り立たないしね』
「・・・そうかもしれませんが」
『それにね、ユキヤ君はすみれちゃんの事を心の底から愛しているわ。
それは間違いないし、それは自信を持っていい事だと思うわよ。』
「はい、それは私も分かってます。」
『だから、大丈夫。すみれちゃんはユキヤ君にとって
最高のパートナーになれるわ』
「うーん、でもやっぱりやってる事が『女王』っていうよりも
なんか『保護主』みたいで・・・」
『保護・・・ねぇ』真面目に言ってるすみれの姿に、
噴き出しそうになるのを沙由美はさらに堪えている。
「あ、沙由美さん、やっぱり笑ってるでしょう!」
『そ、そんなことないってば~。』
沙由美は必死でごまかそうと違う話題を探す。
『じゃあもういっそ、『保護責任者』でいいんじゃない?』
「保護責任者?」
『絶対服従させてるわけでもないし、
完全管理して飼育してるわけでもないし、
ちょっと手を出しては相手の様子を見て、反応を楽しんで、
その姿を見守ってる・・・これはもう『保護者』の立場よね。』
「う~ん・・・その辺の境界線って難しいですねぇ。」
『ふふ、良かったら私が手取り足とり教えてあげるわよ』
沙由美の艶やかな声が響く。
「あ、遠慮します」
すみれは即答した。
沙由美はクスッと笑うと、
『まぁ、また困ったことがあったらいつでも連絡しなさい』と言い
すみれは「はーい!」
と返事をして電話を切った。
それと同時に風呂から上がったユキヤが寝室に入ってくる。
「何?電話してたの?」
ユキヤはバスローブ姿でベッドに腰掛ける。
「うん、ちょっとね」「ふ~ん、誰と話していたの?」
「秘密」
「そっか、じゃあいいや」
「それより、ユキちゃん」
すみれは妖しげな笑みを浮かべると
ユキヤに近寄り後ろから抱きしめる。
「な、なに!?」
ユキヤの身体に緊張が走る。すみれの柔らかい身体と甘い匂いに
ユキヤの心臓が高鳴り始める。
「今日も頑張ったユキちゃんにご褒美をあげようと思って」
「えっ・・・・」
その言葉だけでいろいろ想像してしまい、ユキヤが顔を赤らめる。
「まずは、お疲れ様」
すみれはユキヤの頭を優しく撫でる。
「はは、なんか子供扱いされてるみたいだね」
ユキヤは苦笑いする。
「あ、嫌だった?こんな風にされるのは嫌い?それとももっとしてほしいのかな?」
すみれはユキヤを自分の方に向かせると、頬に手を添える。
「ううん・・・嫌いじゃない。」
ユキヤは顔を赤くすると目をそらす。
「そう、ならよかった」
すみれは微笑むとユキヤを裸にして後ろ手に拘束する。
「さぁ、始めようか」
すみれはユキヤを仰向けに寝かせると、その横に座る。
「・・・」
ユキヤは恥ずかしそうに俯く。
「どうしたのユキちゃん、いつものように
可愛い声を聞かせてくれないかしら?」
「・・・うぅ、わかったよ」
ユキヤは観念したように言う。
「ふふ、ユキちゃんは本当に可愛いな」
すみれはユキヤにキスをする。
「私ね、やっぱりキスするときが一番ドキドキするんだ」
「俺もだよ」
「本当?」
「うん、だってすみれの顔、すごく綺麗だし」
「ありがとう」
すみれはユキヤに覆いかぶさりながら、もう一度唇を重ねる。
今度は舌を入れて濃厚なものにする。
(あ、やっぱりこれ気持ちいい・・・)
こうして二人の夜は更けていった。
おしまい
******
物語としてはこれにて一応の完結となります。
ユキヤ完堕ちと同居展開は当初の予定通りなので、
無事終わってくれて一安心です。
これ以降の話は番外編もしくは後日談という扱いになります。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
そんなわけで、次回は番外編です。
ユキヤはベッドの上で仰向けになっていた。
このまま肉欲に溺れてしまうのか・・・と思ったら実際そうでもない。
夜以外の普段の生活に変わりはなく、普通に暮らしている。
行為の回数は増えているが。
(そのあたり、どうもすみれがコントロールしてるっぽいんだよな・・・)
「私はね、ユキちゃんを壊してまで楽しみたいとは思ってないんだよ。
私は今のユキちゃんが大好きで、壊しちゃったらもう
それはユキちゃんじゃなくなっちゃうもの」
以前すみれた言っていたことだ。
確かにユキヤ自身もすみれに身体を開発されつくしても、
それだけで二人の関係が変わってしまうものではないと思っていた。
だが最近、ユキヤ自身、身体だけでなく心の奥底から
すみれとの関係を強く求めてしまっている。。
すみれに調教された身体は、もはやすみれとのセックスなしでは
満足できないのだ。
しかし、すみれは、身体だけでなく、ユキヤの人格をも
尊重してくれている。
「すみれに何もかもを委ねたら、本格的にダメになってしまうかも」
そう思ったユキヤは、なんとか自分の意思で
すみれとの関係を受け入れるようになった。。
ユキヤの身体は調教されきっているが、自分はまだ自分でいる。
「最近ちょっと我が儘になっちゃった?」
すみれにそう言われてしまうが、
それが、ユキヤとすみれの愛の形だ。
今日はすみれはバイトで帰りが遅いらしい。
一人でいる時間が長いと、どうしても考え事をしてしまう。
涼香との一件があって以来、ユキヤは以前より
自分の事を考えるようになっていた。
自分が今何をしたいと思っているか、
何を望んでいるかを改めて考えるようになったのだ。
「俺は一体どうなりたいんだろ」ユキヤは一人事を呟く。
「ユキヤの好きにしたらいいと思うよ」不意に背後から声が聞こえた。
ユキヤは驚きつつも振り向いた。そこにはすみれがいた。
「すみれ、いつの間に帰ってきたの?」ユキヤが尋ねる。
「ついさっきだけど、それよりユキヤはこんなところで何やってるの?」
すみれが尋ね返す。
「えっと、その・・・ちょっとボーっとしてただけ」
ユキヤはしどろもどろに答える。
「ふーん、何か悩み事があるみたいね」すみれはニヤリと笑う。
「べ、別にそんなことないし」ユキヤは慌てて否定した。
「そっか、ユキヤは私には話せないようなことを悩んでるのかな~」
すみれは意地悪そうな笑みを浮かべる。
「いや、その・・・この部屋もうすぐ引っ越すんだなって思ってさ」
ユキヤは慌てて胡麻化した。
「そうだね・・・いろんなことがあったよね。この部屋も。」
今年に入ってから二人は、一緒に住むために色々と動いていた。
二人とも4月で部屋の契約が切れるため、それに合わせたという感じだ。
「今はその部屋、ユキヤのバイト先の先輩の人が住んでるんだっけ?」
「ああ、その人が春から地元で就職するんで、部屋が空くから入る?って
聞かれたときは、こんな事ってあるんだ・・・と思ったけどな」
ユキヤは苦笑いしつつ答えた。
「だからこそ、即動いたんでしょ?」「まぁな」
新しい部屋は同じ町内にある築30年ほどの小さなマンションの1LDKだった。
少々古い気もするが、各部屋はリフォームがされており、
二人で住むには十分な広さで、トイレも風呂も別にある。
駅からは若干離れているが、スーパーもコンビニも近い。
先住者である先輩からも「運がよかった」
と言わしめるほどの好条件のものだった。
「だからケンカしたときは正直どうしようかと思ったよ・・・」
「あはは、あの時はお互いどうしようもなくなってたもんね。」
二人はは、この前の大ゲンカを思い出していた。
「ま、今こうしてお互い引っ越すの待ってるんだからいいじゃない?」
「それはそうなんだけどさ・・・。なんか恥ずかしいな。
すみれとこういう風にしんみりと話すなんて初めてかもしれない」
「うわぁ!ユキヤは私の事をなんだと思ってたの!?」
すみれがショックを受けたように言った。
「なんだろうな・・・いつも余裕があるっていうのかな。
すみれのペースに乗せられっぱなしというかさ。」
ユキヤは素直に自分の気持ちを吐露し始めた。
「うん。それで良いんだよ。私はどんなときでもユキヤを見守る。」
「俺が困ったときは助けてくれる?」
「もちろんだよ!」
「じゃあさ、もし、すみれと喧嘩したらどうすれば仲直りできる?」
「簡単じゃん。ユキヤから謝れば許してあげる。」
「俺が悪い事前提かよ!」
ユキヤが突っ込むと、すみれはクスッと笑う。
「だって、ユキヤが先に折れたら私がきっと負けちゃうし。」
すみれはそう言って微笑む。
(そもそも、すみれが怒ったら怖すぎて、絶対勝てない気がする)
ユキヤは思わずそう言いそうになったが、そこは飲み込んだ。
****
2人の新しい住居が決まり、引っ越し作業も大方終わった
4月下旬のある日のこと。
すみれは沙由美と電話をしていた。
「という事でやっと落ち着きましたよ~」
『お疲れ様。引っ越しって結構体力も精神力も使うもんね』
「えぇ、まったくです。大学入った時以来ですけど、やっぱ大変ですよね。」
すみれは大きなため息をついた。
『ふふふ、一緒に住むんだから、これからは色んなプレイやり放題ね』
「もう!からかわないでください!」
すみれの顔が赤くなる。
「・・・ところで、そのことで聞きたいんですが・・・
私って本当にSなんでしょうか?」
すみれが不安そうな声で尋ねる。
『あら、どうしてそんなことを思ったの?何かあったの?』
(何を今更・・・?)と沙由美は心の中で思いながら聞く。
「私別に相手を屈服させて喜んだり、痛めつけるの好きじゃないし・・・
夜の方は私の方が精力的に動いて、いろいろ用意したり、
何かしてあげてる感じで、全然『女王』って感じじゃないし・・・」
すみれの声のトーンはどんどん落ちていく。
『あはは、すみれちゃんの『S』は『サービス』の 『S』かもね』
(でも相手のプライドへし折る才能はピカイチだと思うけど)
沙由美は笑って言った。「うぅ、やっぱりそうですかねぇ」
すみれは肩を落とす。
「私は、ただ、相手が気持ちよくなってくれると嬉しいし、
喜んでもらえるともっと嬉しくなっちゃいますし、
その、相手を支配してるとか、
征服してるっていう感覚はあまりなくて、
ただ気持ちよくなって可愛い声と顔で鳴いてくれれば・・・」
すみれは照れながら語る。
(最後の一言がすべてのような気がするけど・・・)
沙由美は噴き出しそうになるのをぐっと堪える。
「・・・あの、沙由美さん、今笑ったでしょ?」
『いえ、笑ってませんよ』
「むー、絶対笑いましたよね。」
『・・・はは、そう言ったプレイの類っていわば
『お互いをどれだけ信頼してるか』
を測るツールみたいなもんだし、決まった形はないと思うわよ。
世間一般で言うSMだってお互いを信頼してないと成り立たないしね』
「・・・そうかもしれませんが」
『それにね、ユキヤ君はすみれちゃんの事を心の底から愛しているわ。
それは間違いないし、それは自信を持っていい事だと思うわよ。』
「はい、それは私も分かってます。」
『だから、大丈夫。すみれちゃんはユキヤ君にとって
最高のパートナーになれるわ』
「うーん、でもやっぱりやってる事が『女王』っていうよりも
なんか『保護主』みたいで・・・」
『保護・・・ねぇ』真面目に言ってるすみれの姿に、
噴き出しそうになるのを沙由美はさらに堪えている。
「あ、沙由美さん、やっぱり笑ってるでしょう!」
『そ、そんなことないってば~。』
沙由美は必死でごまかそうと違う話題を探す。
『じゃあもういっそ、『保護責任者』でいいんじゃない?』
「保護責任者?」
『絶対服従させてるわけでもないし、
完全管理して飼育してるわけでもないし、
ちょっと手を出しては相手の様子を見て、反応を楽しんで、
その姿を見守ってる・・・これはもう『保護者』の立場よね。』
「う~ん・・・その辺の境界線って難しいですねぇ。」
『ふふ、良かったら私が手取り足とり教えてあげるわよ』
沙由美の艶やかな声が響く。
「あ、遠慮します」
すみれは即答した。
沙由美はクスッと笑うと、
『まぁ、また困ったことがあったらいつでも連絡しなさい』と言い
すみれは「はーい!」
と返事をして電話を切った。
それと同時に風呂から上がったユキヤが寝室に入ってくる。
「何?電話してたの?」
ユキヤはバスローブ姿でベッドに腰掛ける。
「うん、ちょっとね」「ふ~ん、誰と話していたの?」
「秘密」
「そっか、じゃあいいや」
「それより、ユキちゃん」
すみれは妖しげな笑みを浮かべると
ユキヤに近寄り後ろから抱きしめる。
「な、なに!?」
ユキヤの身体に緊張が走る。すみれの柔らかい身体と甘い匂いに
ユキヤの心臓が高鳴り始める。
「今日も頑張ったユキちゃんにご褒美をあげようと思って」
「えっ・・・・」
その言葉だけでいろいろ想像してしまい、ユキヤが顔を赤らめる。
「まずは、お疲れ様」
すみれはユキヤの頭を優しく撫でる。
「はは、なんか子供扱いされてるみたいだね」
ユキヤは苦笑いする。
「あ、嫌だった?こんな風にされるのは嫌い?それとももっとしてほしいのかな?」
すみれはユキヤを自分の方に向かせると、頬に手を添える。
「ううん・・・嫌いじゃない。」
ユキヤは顔を赤くすると目をそらす。
「そう、ならよかった」
すみれは微笑むとユキヤを裸にして後ろ手に拘束する。
「さぁ、始めようか」
すみれはユキヤを仰向けに寝かせると、その横に座る。
「・・・」
ユキヤは恥ずかしそうに俯く。
「どうしたのユキちゃん、いつものように
可愛い声を聞かせてくれないかしら?」
「・・・うぅ、わかったよ」
ユキヤは観念したように言う。
「ふふ、ユキちゃんは本当に可愛いな」
すみれはユキヤにキスをする。
「私ね、やっぱりキスするときが一番ドキドキするんだ」
「俺もだよ」
「本当?」
「うん、だってすみれの顔、すごく綺麗だし」
「ありがとう」
すみれはユキヤに覆いかぶさりながら、もう一度唇を重ねる。
今度は舌を入れて濃厚なものにする。
(あ、やっぱりこれ気持ちいい・・・)
こうして二人の夜は更けていった。
おしまい
******
物語としてはこれにて一応の完結となります。
ユキヤ完堕ちと同居展開は当初の予定通りなので、
無事終わってくれて一安心です。
これ以降の話は番外編もしくは後日談という扱いになります。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
そんなわけで、次回は番外編です。
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