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第62話:そして僕らの向かうところは?(その2)
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翌日夕刻。
イベントスタッフのバイトの最終日だったが何とか無事に終わり、
すみれたちは撤収作業に追われていた。
とはいっても、大道具の搬出などの力仕事はもっぱら男性スタッフの仕事なので、
すみれたち女子スタッフは忘れ物の点検や会場の清掃作業などである。
「白石さん、ちょっと手伝ってくれないかな」
「あ、はい」
すみれが呼ばれた方に向かうと、そこには段ボール箱があった。
「これをさ、台車使って裏口の方まで運んでくれないかな?」
「わかりました」
(う、段ボール結構多い?)
すみれが台車に荷物を載せようとするが、なかなかうまくいかない。
「ん・・ぬぬぬ」奮闘するすみれを無言で手伝う人間がいた。
「ちょっと!藤田さんいいですよ!これぐらい・・・」
「君一人よりは私の方がずっと早く済みます」
「でも・・・」
「それに、こういう時の為に私はいるのですから」
藤田は無表情のまま淡々と答える。
「藤田さんのそういうところ、嫌いじゃないです」
「ありがとうございます」
藤田は礼を言う。
「はい、これで全部ですね。行きましょう。
貴女は段ボールが落ちないように横にいてください」
藤田はてきぱきと指示を出していく。「え?あ・・・はい!」
すみれも慌てて従う。
「では、出発します」
二人はゆっくりと歩き出す。
「あの、すみません。なんか気を使わせちゃって・・・」
「いえ」藤田が首を振る。「・・・誰にでもというわけではありません」「へ?」
「なんでもありません」
「は、はぁ・・・」
「それより、先ほどよりも足元に注意してください」
「わ、わかっていますよ」
藤田の注意にすみれはムッとした顔を見せる。
「・・・それと、この後スタッフの打ち上げがありますがあなたは参加しますか?」
「あ、はい。一応その予定になっています」
「そうですか。私もその席に同席させていただきますのでよろしく」
「え?なんで・・・」
「・・・幹事ですから」
「あ、はい・・・」すみれは苦笑いした。
「まぁ、せっかくの打ち上げだし、楽しみますよ」
「・・・そうしてもらえれば助かります」
「あれ?藤田さんも参加するんですね」
「・・・まぁ」藤田は少し顔を曇らせる。
「どうしました?」
「・・・何でもないです」
「は、はぁ・・・」
誰にでも素っ気ない藤田にしては珍しい態度だった。
その後の打ち上げでは皆楽しそうに歓談する。
たった数日間ではあったが皆で一つの事をやり遂げた達成感が皆をまとめていた。
「そういえば主催であるはずの社長さん、顔を見せなかったね」
「ホント。藤田さんが全部取り仕切っちゃった感じだったね」
「ま、別にいいじゃん。細かいこと気にしないでさ」
「そうそう!今日はパーっと盛り上がろうよ!ね?」
「うん!そうしよそうしよ!じゃ、カンパイしよっか!ほらみんなグラス持って~!かんぱーい!!」
(う~ん一人でお酒飲むなって言われてるんだけどな・・・)
すみれが躊躇してると、友人が声をかける。
「何緊張してるの?こんなサワー1杯ぐらいでつぶれる人いないって!」
「そ、そうだよね・・・」「そうそう!さ、すみれも遠慮しないで」
「乾杯!!!」
「かんぱい!!!」
「おつかれさまでしたぁぁぁぁぁぁ」
「皆盛り上がってるよねぇ!」
「あたしたちも負けずに盛り上がろう!」
「この前ちゃんと20歳になったもんね!」
「よーしビール3つ!」
・・・・これがいけなかった。
「藤田さん大変です!」
「白石さんが眠っちゃいました」
「は・・・?」
「この子、思ったよりずっとお酒に弱くて・・・」
「困りましたね」
「あのー座敷席が一つ空いてるんで、そこで休ませてはどうでしょう?」
見かねた店員が声をかける。
「・・・仕方がありません。私が運びましょう」
「すみません、お願いします」
「あ、お姫様抱っこだ!きゃー!いいぞもっとやれ!」
「藤田さぁん!がんばってぇ!」
「うるさいですよ」藤田は眉間にシワを寄せながら答える。
「あ、ごめんなさい」
「まったく・・・」
藤田はため息をつくと、そのまますやすやと眠るすみれを座敷席へと寝かせた。
「ふぅ・・・」
「藤田さん・・・ありがとうございましゅ~・・・」
すみれはそう言い残すと再び眠りについた。
「困りましたね・・・」
放置するわけにも言わず藤田が付き添った。
****
「で?!」
「・・・ごめんなさい」
「どうしてお前がその藤田って人と飯食いに行くことになったの?」
珍しくしおらしくなったすみれをこれまた珍しくユキヤが問い詰めていた。
「え、ええっと・・・それはそのぉ・・・」
すみれの顔には冷や汗が流れる。
(ど、どうしよう・・・)
「酔っ払って介抱してもらってるうちに・・・なんとなくそんな約束を・・・」
実を言うとすみれ自身もかなり酔っていたので細かいいきさつを覚えていない。
「なんでそうなるんだよ?!・・・てか俺がいないときは酒飲むなってあれほど言ったよな!」
「なぜか・・・そうなってしまいました・・・」
すみれがうなだれる。
「はぁ・・・」ユキヤはため息をついた。
「それで、いつ会うの?俺も一緒に行くよ」
「え?来なくていいよ」
「は?何でだよ」
「私の方から約束しちゃったし・・・」
「だからと言って男一人で女一人に行かせるのはおかしいだろう」
「大丈夫よ。藤田さん真面目な人だし」
「そういう問題じゃねぇよ。それに、そもそもそっちの奴は信用できるのか?」
「どういう意味?」
「そのままの意味だけど?」
ユキヤが怪しげな目で見る。
「大体いつも俺には浮気するなとか散々言っているくせに、自分はどうなんだよ?!
ちょっと優しくされたぐらいで、簡単にその気になりやがって・・・」
「その気って・・・!」すみれの声のトーンが少し変わる。
「少し世話になっただけの人間を簡単に誘うなんて
その気じゃなきゃなんなのさ?!」
「・・・・何その言い方?!」
「大体その男も何なんだよ!?
いい年して若い女の子の誘いにホイホイ乗ってくるとか・・・」
「ちょっと、それ本気で言ってる?」
すみれの表情が変わる。普段より低い声だ。
「本気に決まってんだろ」
ユキヤも負けじと言い返す。
「わかった・・・!」すみれは俯いたまま低い声で言う。
「え?」
「その日は私が自分の足で出向いて
『これは純粋のお礼で、あなたとお付き合いする気はありません!その気にさせてごめんなさい!』
ってハッキリと藤田さんに言えばいいのよね!?」
すみれが半ばヤケクソ気味に叫ぶ。
「あ・・・まだ相手にその気があると決まったわけでは・・・」
売り言葉に買い言葉なのだが、すみれの迫力に押されている。
「だってそうしないと君は納得しないんだよね!?」
すみれの迫力に一瞬ひるむユキヤだったが
「ああそうだよ!勝手にしろ!!」
そう言い残し部屋を出て行った。
「ふんっ!」
すみれも立ち上がり、ユキヤの部屋を後にした。
お互いにヒートアップしているので取り付く島もない。
****
「・・・姉さん、まだケンカしてるの?」
数日後、すみれは圭太の家に家庭教師のバイトをしていた。
「大体完全に売り言葉に買い言葉じゃないか・・・」
圭太が呆れたように言った。
実際あの日以降、二人は口をきいていない。「うん、わかっているんだけどね・・・」
すみれも自覚はあったようだ。
「うう、どうしてああなっちゃうのよう・・・」すみれもうなだれていた。
「ユキヤさんもちょっと短気だと思うけど、姉さんだって色々問題あると思うよ。」
「うう、本当に反省しています・・・」
「・・・俺に謝ってどうするの?」
「でも、わたしだけが謝るのはなんか納得いかないっていうか・・・」
すみれが口をとがらせる。
「どういうとこでしょ!姉さん!」
「・・・」すみれが黙る。
(うう、今日の圭太君、めっちゃ辛辣・・・)
「大体さ、さっきから姉さんらしくないよ」
「らしく・・・ない?」すみれが顔を上げた。
「そうだよ!いつもなら、いつまでもくすぶってないで、
この状況をどうにかしようと、何かしら行動してるじゃん」
「・・・」
「いつもの姉さんの根性見せてみなって!」
圭太が笑顔ですみれを見つめた。
「・・・」
「ほら、頑張れ!」
圭太がすみれの背中をポンっと叩いた。
「んー・・・」すみれは考え込む。
そして今起きている問題をどうするか順を追って考える。
(うーん・・・まずは解決しないといけないのは藤田さんへの約束関連かな?
・・・でもすっぽかしたりドタキャンするのは向こうの迷惑になるし・・・)
すみれは色々と思案を巡らす。「よし、決めた!」すみれが顔を上げる。
「おお、何を決めたの?」圭太が興味深げに聞く。
「私、やっぱり藤田さんに会ってくる!」
すみれが拳を握りしめながら宣言した。
「え?!」
「・・・だって行っても行かなくてもユキヤが怒るの目に見えてるし」
「あぁ・・・」
こういう時のすみれは問答無用で鋭い。
恐らくどっちを選んでも何かしら文句をつけて怒るのは確かだろう。
「だったら、もう藤田さんと会って、これはあくまでお礼で、
それ以外の気持ちがないってことを証明する!」
すみれがきっぱりと言い切った。
「ま、確かにそれしかないよね」圭太も同意した。
「そ、なにもしないよりもずっといいもん!」
すみれは啖呵を切って続ける。
「それに・・・こんなことで終わったら嫌だもの」
「姉さん・・・」
「だから、ちゃんと話してくる」
「・・・姉さんらしいね」圭太は笑う。
「それでね、圭太君にちょっとお願いがあるんだけど・・・」
とすみれは圭太に耳打ちした。
***
「・・・と言うわけで姉さんは姉さんなりに動くようですよ。」
翌日、圭太はユキヤのバイト先に来ていた。
「それ、俺に教えてどうするんだよ・・・?」
ユキヤは目を逸らした。
「いいんですか?何もしなくて」
「うるせぇな!てかあいつも結局会いに行くんじゃねえか!
何でもないって言ってたくせに・・・・!」
ユキヤは声を荒げて毒づいた。
(うわ、姉さんが言ってたセリフそのまんまだ・・・)
圭太は目を丸くする。
「すみれ姉さんは、何とかして状況を良くしようとしてるんです!」
「知るかよ!そんな事!」ますますユキヤは意固地になる。
「あなたがそうやって拗ねるから、姉さんはわざわざ行動を起こすんですよ」
「は?」
その時、店に誰かが入ってくる音がした。
「その子の言う通りですよ、茶木くん」
現れたのは、蘇芳だった。「蘇芳教授」
「ああ、こんにちは」蘇芳は軽く挨拶をする。
「いや、俺は別に・・・」
ユキヤはバツが悪そうな顔をしている。
「すいません、ボクが呼びました」と遅れて根岸が入ってくる。
「浅葱くんと根岸くんたちから大体の事情は聞いています。」「なるほどな」
「お2人の仲を取り持つように頼まれましたので、私が来させていただきました。
今日は、あなたの相談に乗らせて頂きますよ」
「あ、はい・・・」
圭太は困惑気味に返事をした。
(・・・真面目な人っぽいのに何で胡散臭い感じがするんだろう?)
「た、頼んでねーし・・・」
ユキヤはまだふてくされている。
「拗らせてますねぇ・・・」
蘇芳は苦笑しながら言った。
「ところで・・・」と前置きして蘇芳は言い放つ。
「貴方には失望しましたよ!」
「!?」ユキヤが固まる。
「掛け替えのない筈に恋人が離れてしまうかもしれない瀬戸際に、貴方は何をやっているんです!」
冷静だが、どこか迫力のある声だった。
「なっ、なんだよそれ!そんなの勝手に決めんなよ!」ユキヤも反論するが、蘇芳も引かない。
「では、何故彼女の話を聞いてあげないのですか?彼女自身行動を起こしているのに、
あなた自身はこのまま何もしないつもりですか!」
「お、俺には関係ないし・・・」
「関係ありますよ。私はあなたの悩みを聞くためにここに来たのですから」
「・・・」
「彼女は今、貴方のために一生懸命なんですよ?」
「うぐぅ」
ユキヤは黙り込んでしまった。
「貴方はずっと怯えていたはずです。『ある日突然彼女がいなくなること』に。」
「そ、それは・・・」
過去の傷から来ているトラウマを指摘されて、動揺を見せる
「あなたが彼女を見る目が時々怯えたものだったのは、彼女におびえていたわけではなく、
彼女がいなくなることを恐れていたという事です。」
「ち、違っ・・・」
否定しようとするも、言葉にならない様子だ。
「そうでしょう?そして、だからこそ、彼女を不安にさせてしまった事に罪悪感を覚え、
自分の気持ちを伝えられずにいた。違いますか?茶木くん」
「っ・・・」図星を突かれたようで、ユキヤは黙ってしまう。
「まったく彼女には恐れ入りますよ・・・あなたの身体に痣どころから跡一つ残さずに、
あなたの心に自分の存在をこれでもかと刻み付けてしまっているんですから。」
「ど、どういう意味だよ」
「そのままの意味ですよ。まぁいいじゃないですか。今はそれよりも大事なことがあるでしょう」
蘇芳はユキヤの肩に手を置くと、真剣な表情でユキヤの目を見つめる。
「あなたのやるべきことは決まっているのではないですか?あなたにも分かっているはずです。」
「俺は・・・」
「・・・私もいささか興奮してしまったようです。柄にもなく色々の喋ってしましましたが、
これもひとえにあなた方の幸せを願ってのことだと思ってください。」
(・・・私もかなりのお節介ですがね。)
蘇芳は内心で呟いた。
「さて、長居しすぎましたね。今日はこの辺にしておきましょう。」
蘇芳は時計を見て言うと、席を立った。
「じゃあ、また何かあったら連絡しますよ。」
「あ、はい」圭太もつられて立ち上がる。
「おい、圭太お前はちょっと待て。」「え?」ユキヤが圭太を呼び止める。
「お前にはちょっと話がある。」
「・・・」圭太は気まずそうな顔をする。
「バイトが終わったらちょっと話そう。」
圭太は無言のまま小さく肯く。
***
というわけでバイト終了後。
「お前さ、すみれから何を頼まれてきた?」
「な、何を・・・?」
「とぼけるな。あんな報告をするためだけに
わざわざこんなところにまで出向かないだろ?」
「それは・・・」
「俺だって馬鹿じゃないんだぜ?あのすみれが何の考えもなしに動くとは思っちゃいない。」
「あーやっぱりバレてましたか・・・」
圭太は観念したように息を吐きながら言った。
「まぁ簡単に言えば、この報告をユキヤさんにした時点で
何かしでかす可能性が高いので、当日まで見張ってろと」
「なんだよそりゃあ・・・」
「それだけすみれ姉さんの勘が冴えてるってことです」
圭太の言葉を聞いて、ユキヤはため息をついた。
「ったく、あいつは本当に何考えてるかわかんねぇ女だな」
「・・・掌の上ってやつですかね」「かもな」
ユキヤは再びため息をつく。そしてニヤリと笑い
「じゃ、その御期待に応えてやろうとするかな」と言った。
「え?それってどういう・・・」
「教授に発破かけられたことだし、俺も何か行動するって言ってるの」
「そ、そんな!すみれ姉さんになんて言われるか!」
「心配しなくても大丈夫だよ。お前は名目上『見張ってる』事になるから」
ユキヤはそこで一旦言葉を切ると、真剣な顔つきになって続けた。
「俺ももう迷わないし、遠慮もしない」
圭太はその目を見て一瞬気圧される。
「で、何をしでかすつもりですか?」圭太は恐る恐る聞いた。
「決まってんじゃん」
ユキヤは不敵に笑うと、こう答えた。
「当日、俺らも出向くぞ」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!?」
「何が問題あるんだよ」
「いや、だって邪魔する気ですよね?姉さんと藤田さんが会うの」
「だから、邪魔をするわけじゃなくてフォローしに行くだけって」
圭太にはそれが妨害行動にしか思えなかった。
「二人でいてちょっとヤバげな展開になったら邪魔しに行く・・・」
「ヤバげな展開にならなかったら?」
「何もしないで見守る。」ユキヤはニヤニヤしながら続ける。
「でもすみれの事だし、多分そうなった場合の展開は想定してると思うけどな」
「まぁ・・・確かに」
「という訳で当日はお前は俺を見張るって体でくればいいぜ」
「は、はい・・・」
(この人たち揃いも揃ってポジティブ過ぎやしないか?)
そう思いつつも、圭太はこの二人が行動を共にすること自体に反対はしなかった。
つづく
イベントスタッフのバイトの最終日だったが何とか無事に終わり、
すみれたちは撤収作業に追われていた。
とはいっても、大道具の搬出などの力仕事はもっぱら男性スタッフの仕事なので、
すみれたち女子スタッフは忘れ物の点検や会場の清掃作業などである。
「白石さん、ちょっと手伝ってくれないかな」
「あ、はい」
すみれが呼ばれた方に向かうと、そこには段ボール箱があった。
「これをさ、台車使って裏口の方まで運んでくれないかな?」
「わかりました」
(う、段ボール結構多い?)
すみれが台車に荷物を載せようとするが、なかなかうまくいかない。
「ん・・ぬぬぬ」奮闘するすみれを無言で手伝う人間がいた。
「ちょっと!藤田さんいいですよ!これぐらい・・・」
「君一人よりは私の方がずっと早く済みます」
「でも・・・」
「それに、こういう時の為に私はいるのですから」
藤田は無表情のまま淡々と答える。
「藤田さんのそういうところ、嫌いじゃないです」
「ありがとうございます」
藤田は礼を言う。
「はい、これで全部ですね。行きましょう。
貴女は段ボールが落ちないように横にいてください」
藤田はてきぱきと指示を出していく。「え?あ・・・はい!」
すみれも慌てて従う。
「では、出発します」
二人はゆっくりと歩き出す。
「あの、すみません。なんか気を使わせちゃって・・・」
「いえ」藤田が首を振る。「・・・誰にでもというわけではありません」「へ?」
「なんでもありません」
「は、はぁ・・・」
「それより、先ほどよりも足元に注意してください」
「わ、わかっていますよ」
藤田の注意にすみれはムッとした顔を見せる。
「・・・それと、この後スタッフの打ち上げがありますがあなたは参加しますか?」
「あ、はい。一応その予定になっています」
「そうですか。私もその席に同席させていただきますのでよろしく」
「え?なんで・・・」
「・・・幹事ですから」
「あ、はい・・・」すみれは苦笑いした。
「まぁ、せっかくの打ち上げだし、楽しみますよ」
「・・・そうしてもらえれば助かります」
「あれ?藤田さんも参加するんですね」
「・・・まぁ」藤田は少し顔を曇らせる。
「どうしました?」
「・・・何でもないです」
「は、はぁ・・・」
誰にでも素っ気ない藤田にしては珍しい態度だった。
その後の打ち上げでは皆楽しそうに歓談する。
たった数日間ではあったが皆で一つの事をやり遂げた達成感が皆をまとめていた。
「そういえば主催であるはずの社長さん、顔を見せなかったね」
「ホント。藤田さんが全部取り仕切っちゃった感じだったね」
「ま、別にいいじゃん。細かいこと気にしないでさ」
「そうそう!今日はパーっと盛り上がろうよ!ね?」
「うん!そうしよそうしよ!じゃ、カンパイしよっか!ほらみんなグラス持って~!かんぱーい!!」
(う~ん一人でお酒飲むなって言われてるんだけどな・・・)
すみれが躊躇してると、友人が声をかける。
「何緊張してるの?こんなサワー1杯ぐらいでつぶれる人いないって!」
「そ、そうだよね・・・」「そうそう!さ、すみれも遠慮しないで」
「乾杯!!!」
「かんぱい!!!」
「おつかれさまでしたぁぁぁぁぁぁ」
「皆盛り上がってるよねぇ!」
「あたしたちも負けずに盛り上がろう!」
「この前ちゃんと20歳になったもんね!」
「よーしビール3つ!」
・・・・これがいけなかった。
「藤田さん大変です!」
「白石さんが眠っちゃいました」
「は・・・?」
「この子、思ったよりずっとお酒に弱くて・・・」
「困りましたね」
「あのー座敷席が一つ空いてるんで、そこで休ませてはどうでしょう?」
見かねた店員が声をかける。
「・・・仕方がありません。私が運びましょう」
「すみません、お願いします」
「あ、お姫様抱っこだ!きゃー!いいぞもっとやれ!」
「藤田さぁん!がんばってぇ!」
「うるさいですよ」藤田は眉間にシワを寄せながら答える。
「あ、ごめんなさい」
「まったく・・・」
藤田はため息をつくと、そのまますやすやと眠るすみれを座敷席へと寝かせた。
「ふぅ・・・」
「藤田さん・・・ありがとうございましゅ~・・・」
すみれはそう言い残すと再び眠りについた。
「困りましたね・・・」
放置するわけにも言わず藤田が付き添った。
****
「で?!」
「・・・ごめんなさい」
「どうしてお前がその藤田って人と飯食いに行くことになったの?」
珍しくしおらしくなったすみれをこれまた珍しくユキヤが問い詰めていた。
「え、ええっと・・・それはそのぉ・・・」
すみれの顔には冷や汗が流れる。
(ど、どうしよう・・・)
「酔っ払って介抱してもらってるうちに・・・なんとなくそんな約束を・・・」
実を言うとすみれ自身もかなり酔っていたので細かいいきさつを覚えていない。
「なんでそうなるんだよ?!・・・てか俺がいないときは酒飲むなってあれほど言ったよな!」
「なぜか・・・そうなってしまいました・・・」
すみれがうなだれる。
「はぁ・・・」ユキヤはため息をついた。
「それで、いつ会うの?俺も一緒に行くよ」
「え?来なくていいよ」
「は?何でだよ」
「私の方から約束しちゃったし・・・」
「だからと言って男一人で女一人に行かせるのはおかしいだろう」
「大丈夫よ。藤田さん真面目な人だし」
「そういう問題じゃねぇよ。それに、そもそもそっちの奴は信用できるのか?」
「どういう意味?」
「そのままの意味だけど?」
ユキヤが怪しげな目で見る。
「大体いつも俺には浮気するなとか散々言っているくせに、自分はどうなんだよ?!
ちょっと優しくされたぐらいで、簡単にその気になりやがって・・・」
「その気って・・・!」すみれの声のトーンが少し変わる。
「少し世話になっただけの人間を簡単に誘うなんて
その気じゃなきゃなんなのさ?!」
「・・・・何その言い方?!」
「大体その男も何なんだよ!?
いい年して若い女の子の誘いにホイホイ乗ってくるとか・・・」
「ちょっと、それ本気で言ってる?」
すみれの表情が変わる。普段より低い声だ。
「本気に決まってんだろ」
ユキヤも負けじと言い返す。
「わかった・・・!」すみれは俯いたまま低い声で言う。
「え?」
「その日は私が自分の足で出向いて
『これは純粋のお礼で、あなたとお付き合いする気はありません!その気にさせてごめんなさい!』
ってハッキリと藤田さんに言えばいいのよね!?」
すみれが半ばヤケクソ気味に叫ぶ。
「あ・・・まだ相手にその気があると決まったわけでは・・・」
売り言葉に買い言葉なのだが、すみれの迫力に押されている。
「だってそうしないと君は納得しないんだよね!?」
すみれの迫力に一瞬ひるむユキヤだったが
「ああそうだよ!勝手にしろ!!」
そう言い残し部屋を出て行った。
「ふんっ!」
すみれも立ち上がり、ユキヤの部屋を後にした。
お互いにヒートアップしているので取り付く島もない。
****
「・・・姉さん、まだケンカしてるの?」
数日後、すみれは圭太の家に家庭教師のバイトをしていた。
「大体完全に売り言葉に買い言葉じゃないか・・・」
圭太が呆れたように言った。
実際あの日以降、二人は口をきいていない。「うん、わかっているんだけどね・・・」
すみれも自覚はあったようだ。
「うう、どうしてああなっちゃうのよう・・・」すみれもうなだれていた。
「ユキヤさんもちょっと短気だと思うけど、姉さんだって色々問題あると思うよ。」
「うう、本当に反省しています・・・」
「・・・俺に謝ってどうするの?」
「でも、わたしだけが謝るのはなんか納得いかないっていうか・・・」
すみれが口をとがらせる。
「どういうとこでしょ!姉さん!」
「・・・」すみれが黙る。
(うう、今日の圭太君、めっちゃ辛辣・・・)
「大体さ、さっきから姉さんらしくないよ」
「らしく・・・ない?」すみれが顔を上げた。
「そうだよ!いつもなら、いつまでもくすぶってないで、
この状況をどうにかしようと、何かしら行動してるじゃん」
「・・・」
「いつもの姉さんの根性見せてみなって!」
圭太が笑顔ですみれを見つめた。
「・・・」
「ほら、頑張れ!」
圭太がすみれの背中をポンっと叩いた。
「んー・・・」すみれは考え込む。
そして今起きている問題をどうするか順を追って考える。
(うーん・・・まずは解決しないといけないのは藤田さんへの約束関連かな?
・・・でもすっぽかしたりドタキャンするのは向こうの迷惑になるし・・・)
すみれは色々と思案を巡らす。「よし、決めた!」すみれが顔を上げる。
「おお、何を決めたの?」圭太が興味深げに聞く。
「私、やっぱり藤田さんに会ってくる!」
すみれが拳を握りしめながら宣言した。
「え?!」
「・・・だって行っても行かなくてもユキヤが怒るの目に見えてるし」
「あぁ・・・」
こういう時のすみれは問答無用で鋭い。
恐らくどっちを選んでも何かしら文句をつけて怒るのは確かだろう。
「だったら、もう藤田さんと会って、これはあくまでお礼で、
それ以外の気持ちがないってことを証明する!」
すみれがきっぱりと言い切った。
「ま、確かにそれしかないよね」圭太も同意した。
「そ、なにもしないよりもずっといいもん!」
すみれは啖呵を切って続ける。
「それに・・・こんなことで終わったら嫌だもの」
「姉さん・・・」
「だから、ちゃんと話してくる」
「・・・姉さんらしいね」圭太は笑う。
「それでね、圭太君にちょっとお願いがあるんだけど・・・」
とすみれは圭太に耳打ちした。
***
「・・・と言うわけで姉さんは姉さんなりに動くようですよ。」
翌日、圭太はユキヤのバイト先に来ていた。
「それ、俺に教えてどうするんだよ・・・?」
ユキヤは目を逸らした。
「いいんですか?何もしなくて」
「うるせぇな!てかあいつも結局会いに行くんじゃねえか!
何でもないって言ってたくせに・・・・!」
ユキヤは声を荒げて毒づいた。
(うわ、姉さんが言ってたセリフそのまんまだ・・・)
圭太は目を丸くする。
「すみれ姉さんは、何とかして状況を良くしようとしてるんです!」
「知るかよ!そんな事!」ますますユキヤは意固地になる。
「あなたがそうやって拗ねるから、姉さんはわざわざ行動を起こすんですよ」
「は?」
その時、店に誰かが入ってくる音がした。
「その子の言う通りですよ、茶木くん」
現れたのは、蘇芳だった。「蘇芳教授」
「ああ、こんにちは」蘇芳は軽く挨拶をする。
「いや、俺は別に・・・」
ユキヤはバツが悪そうな顔をしている。
「すいません、ボクが呼びました」と遅れて根岸が入ってくる。
「浅葱くんと根岸くんたちから大体の事情は聞いています。」「なるほどな」
「お2人の仲を取り持つように頼まれましたので、私が来させていただきました。
今日は、あなたの相談に乗らせて頂きますよ」
「あ、はい・・・」
圭太は困惑気味に返事をした。
(・・・真面目な人っぽいのに何で胡散臭い感じがするんだろう?)
「た、頼んでねーし・・・」
ユキヤはまだふてくされている。
「拗らせてますねぇ・・・」
蘇芳は苦笑しながら言った。
「ところで・・・」と前置きして蘇芳は言い放つ。
「貴方には失望しましたよ!」
「!?」ユキヤが固まる。
「掛け替えのない筈に恋人が離れてしまうかもしれない瀬戸際に、貴方は何をやっているんです!」
冷静だが、どこか迫力のある声だった。
「なっ、なんだよそれ!そんなの勝手に決めんなよ!」ユキヤも反論するが、蘇芳も引かない。
「では、何故彼女の話を聞いてあげないのですか?彼女自身行動を起こしているのに、
あなた自身はこのまま何もしないつもりですか!」
「お、俺には関係ないし・・・」
「関係ありますよ。私はあなたの悩みを聞くためにここに来たのですから」
「・・・」
「彼女は今、貴方のために一生懸命なんですよ?」
「うぐぅ」
ユキヤは黙り込んでしまった。
「貴方はずっと怯えていたはずです。『ある日突然彼女がいなくなること』に。」
「そ、それは・・・」
過去の傷から来ているトラウマを指摘されて、動揺を見せる
「あなたが彼女を見る目が時々怯えたものだったのは、彼女におびえていたわけではなく、
彼女がいなくなることを恐れていたという事です。」
「ち、違っ・・・」
否定しようとするも、言葉にならない様子だ。
「そうでしょう?そして、だからこそ、彼女を不安にさせてしまった事に罪悪感を覚え、
自分の気持ちを伝えられずにいた。違いますか?茶木くん」
「っ・・・」図星を突かれたようで、ユキヤは黙ってしまう。
「まったく彼女には恐れ入りますよ・・・あなたの身体に痣どころから跡一つ残さずに、
あなたの心に自分の存在をこれでもかと刻み付けてしまっているんですから。」
「ど、どういう意味だよ」
「そのままの意味ですよ。まぁいいじゃないですか。今はそれよりも大事なことがあるでしょう」
蘇芳はユキヤの肩に手を置くと、真剣な表情でユキヤの目を見つめる。
「あなたのやるべきことは決まっているのではないですか?あなたにも分かっているはずです。」
「俺は・・・」
「・・・私もいささか興奮してしまったようです。柄にもなく色々の喋ってしましましたが、
これもひとえにあなた方の幸せを願ってのことだと思ってください。」
(・・・私もかなりのお節介ですがね。)
蘇芳は内心で呟いた。
「さて、長居しすぎましたね。今日はこの辺にしておきましょう。」
蘇芳は時計を見て言うと、席を立った。
「じゃあ、また何かあったら連絡しますよ。」
「あ、はい」圭太もつられて立ち上がる。
「おい、圭太お前はちょっと待て。」「え?」ユキヤが圭太を呼び止める。
「お前にはちょっと話がある。」
「・・・」圭太は気まずそうな顔をする。
「バイトが終わったらちょっと話そう。」
圭太は無言のまま小さく肯く。
***
というわけでバイト終了後。
「お前さ、すみれから何を頼まれてきた?」
「な、何を・・・?」
「とぼけるな。あんな報告をするためだけに
わざわざこんなところにまで出向かないだろ?」
「それは・・・」
「俺だって馬鹿じゃないんだぜ?あのすみれが何の考えもなしに動くとは思っちゃいない。」
「あーやっぱりバレてましたか・・・」
圭太は観念したように息を吐きながら言った。
「まぁ簡単に言えば、この報告をユキヤさんにした時点で
何かしでかす可能性が高いので、当日まで見張ってろと」
「なんだよそりゃあ・・・」
「それだけすみれ姉さんの勘が冴えてるってことです」
圭太の言葉を聞いて、ユキヤはため息をついた。
「ったく、あいつは本当に何考えてるかわかんねぇ女だな」
「・・・掌の上ってやつですかね」「かもな」
ユキヤは再びため息をつく。そしてニヤリと笑い
「じゃ、その御期待に応えてやろうとするかな」と言った。
「え?それってどういう・・・」
「教授に発破かけられたことだし、俺も何か行動するって言ってるの」
「そ、そんな!すみれ姉さんになんて言われるか!」
「心配しなくても大丈夫だよ。お前は名目上『見張ってる』事になるから」
ユキヤはそこで一旦言葉を切ると、真剣な顔つきになって続けた。
「俺ももう迷わないし、遠慮もしない」
圭太はその目を見て一瞬気圧される。
「で、何をしでかすつもりですか?」圭太は恐る恐る聞いた。
「決まってんじゃん」
ユキヤは不敵に笑うと、こう答えた。
「当日、俺らも出向くぞ」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!?」
「何が問題あるんだよ」
「いや、だって邪魔する気ですよね?姉さんと藤田さんが会うの」
「だから、邪魔をするわけじゃなくてフォローしに行くだけって」
圭太にはそれが妨害行動にしか思えなかった。
「二人でいてちょっとヤバげな展開になったら邪魔しに行く・・・」
「ヤバげな展開にならなかったら?」
「何もしないで見守る。」ユキヤはニヤニヤしながら続ける。
「でもすみれの事だし、多分そうなった場合の展開は想定してると思うけどな」
「まぁ・・・確かに」
「という訳で当日はお前は俺を見張るって体でくればいいぜ」
「は、はい・・・」
(この人たち揃いも揃ってポジティブ過ぎやしないか?)
そう思いつつも、圭太はこの二人が行動を共にすること自体に反対はしなかった。
つづく
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