服飾文化研究部にようこそ!~僕が女装させられて、先輩たちのオモチャにされるにされる日々~

桃ノ木ネネコ

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第49話:身代わりデート(その2)

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「それじゃ待ち合わせ場所ここだから」と駅前に着くと圭太を置いて離れていった。
スマホの通話アプリはオンにしてポケットに入れてるので、会話は筒抜けになる・・・らしい。
(こんなのすぐにばれるに決まってるじゃないか・・・)
圭太は不安を抱えながら下を向く。
(そういや沙由美先生も見に来るとか言ってたけど・・・この人だかりの中にいるのかしら)
周りを見渡すがそれらしき姿はない。
その時、誰かが肩を叩いてきた。
「よう、今日は珍しく早いじゃないか。」
声の主はユキヤだった。
「こ、こんにちは・・・」圭太は挨拶をする。
緊張してるのかその顔は半ばひきつってる。
「おう」ユキヤは短く返事をした。
今日のユキヤはいつもと違ってカジュアルな服装をしていた。
デニムに白シャツ、その上に紺色のジャケットという組み合わせだった。
普段とは違った雰囲気を醸し出している。
(うわ・・・写真で見るよりイケメンだなぁ)圭太は感心する。「ん?何見てんだよ」
「あっ、いえ・・・」
圭太は慌てて目を逸らす。
「ふーん」
そう言うと、少し離れたところにあるベンチに腰掛けた。
「隣、座れよ」
「え、あ、はい・・・」促されて圭太は慌てて座る。「なんかお前、変じゃないか?」
「そ、そんなこと無いよ。別に普通・・・だよ」
圭太はぎこちなくだが必死に否定する。
「嘘つけ。今だって俺の顔まともに見ようとしないじゃんか。」
ユキヤはジト目で圭太を見る。
(てか何を話したらいいんだよぅ・・・)
考えてみればユキヤに関する情報を何一つ教えらえていない圭太だった。
そんな時、ポケットのスマホが震えるのを感じた。
圭太がそっと画面を見るとすみれからのメッセージが入ってた。
「『で、この前の子とのデート楽しかった?』って言ってやって!」
(僕を修羅場に巻き込むな!)
圭太は心の中で叫ぶ。
「どうしたんだ?」
「あ、いや、何でもない・・・。」
圭太は誤魔化すように言う。
「なら良いけどよ。」
圭太はしばらく沈黙していたが、「あのさ・・・」と口をひらく
「き・・・今日はどうして、デートしようって・・・思ったの?」
「・・・ああ、まあ、あれだ。なんとなくだよ」
ユキヤは視線を逸らしながら答える。
「へぇ、そうなんだ・・・」
またしばらく沈黙が流れる。
すると今度はすみれからメッセージが送られてくる。
「ほら、もっと話を広げろ」
「えっ!?無理だってば・・・」
圭太は小さく呟く。
「どうかしたのか?」
「あ、いや、なんでもない・・・。」圭太は首を横に振る。
そしてまた沈黙が流れた。
「あの・・・僕・・じゃなかった私たち、ケンカしてるのよ・・ね」
女性の口調を真似るのは難しい。「うん・・・そうだな」
「じゃあさ・・・仲直りしたいって思ってるのかな・・・」
「んー、どうだろうな」
「じゃあ・・・どうして・・」そこまで言った時、すみれからメッセージが届く。
「はい、次の質問は?」
「え、えと・・・」
圭太は言い淀む。
「早く言ってくれよ。」
ユキヤは急かす。
「えと・・・じゃあ、ユキヤさんは・・・どうしてこんな風にデートしているのかな・・・」
「それは・・・」
その時、スマホが振動する。
見るとすみれからだ。
「ええ、『それは』の後は何?」
「そ、それは・・・」
圭太は口ごもる。
「それは・・・」
圭太はゴクリと唾を飲み込む。

「それは・・・お前の事が好きだからだよ」
ユキヤは圭太を見つめながらそう言う。
「え、それってどういう・・・」
「言葉通りの意味だよ」
ユキヤはそう言うと立ち上がり、圭太に近づいてくる。
「ちょ・・・」
「俺はお前のことが好きなんだよ」
ユキヤは圭太の隣に座ると肩に手を置く。
そして耳元でこう囁いた。

「・・・お前、すみれじゃないだろ?」

「・・・・・・・・・・・・!!!」
圭太は息を呑む。
「図星か?」
「・・・・・・・・・・・・」
圭太は何も言わずにうつ向く。
「やっぱりな・・・何企んでるんだ?」
「別に何も・・・」
「嘘つけ。すみれは俺の事『ユキヤさん』なんて呼ばねえし、俺の前ではあんな表情見せねぇよ」
「そんな事無いと思うけど・・・」
圭太は否定するが、ユキヤは確信を持って話す。
「・・・とにかくあいつから離れるぞ、話はそれからだ」
そういうとユキヤは圭太の腕をつかんで走り出した。「ちょっと待って、痛いってば!」
「うるせぇ!黙ってついてこい!」
二人は人混みの中を走り抜ける。

一方のすみれは・・・
「あぁ!ちょっと勝手に走り出さないでよ!」
逃げる二人を慌てて追いかけようとするが、こちらも腕を掴まれる。
「あら、圭ちゃん。こんなのところで何してるの?」・・・見知らぬ女性だった。
「え?いや、その」すみれは狼惑する。
「今日はデートじゃなかったの?」
(え?もしかしてこの人圭太君の知り合い?まさか私と圭太君を間違えてる?!)
圭太がすみれにそっくりという事はその逆も然りという事だった。「いえ、私は圭太くんじゃなくて・・・」
「何言ってるのよ圭ちゃん!」
女性はそう言うとすみれの頭を撫で始める。
「ほら、こんな可愛い顔してるじゃないの~」「いや、あの・・・」
すみれは困惑しながらもなんとか事情を説明しようと試みるがうまくいかない。

そろそろ感のいい方のならお気づきだと思うが、この女性の正体は沙由美だった・・・。
いつものように背中から抱き着いて、胸に手をまわす・・・が、何か違う。
あれ、こんなに胸大きかったっけ?それになんだか柔らかいような・・・。
「きゃああああ!」
悲鳴と共に突き飛ばされる沙由美。
尻餅をつく沙由美を、目を丸くしながら見下ろすすみれ。
「ち、ちちち痴漢!」すみれは顔を真っ赤にして叫ぶ。
「圭ちゃん・・・まさか本当に女の子に?!」
沙由美は立ち上がると、目を大きく開いてすみれを見る。
「あなた、誰ですか!?」
すみれは警戒した様子で沙由美を睨む。
「・・・・・!」
沙由美はこの複雑かつ珍妙な状況の中、冷静に状況を整理してみた。
「まさか・・・あなたすみれって子?」
「え?なんで私の事を?」
すみれは驚くと同時に戸惑う。
「ふぅん・・・なるほどね・・・」
沙由美はニヤリと笑う。
「あなたのこと、気に入ったわ」
「・・・へ?」
沙由美はすみれの手を取る。
「さ、こっち来て」
「ちょ、ちょっとどこ行くんですか?」
沙由美は強引にすみれを引っ張る。
「まあまあ、任せておきなさいって」
沙由美はすみれを連れて歩き出す。
「まずは圭ちゃんを探さないと」
「圭太君を探すってどういうことです?そもそも圭太君はどこにいるんですか?」
沙由美は「フッ」っと鼻で笑いながら振り返った。
「決まってるでしょ?」
そして、また前を向いてズンズン進む。
「女装した圭ちゃんを、私が見逃すと思う?」
沙由美の口角が上がる。

***
一方、圭太とユキヤは・・・
「あーもう!だから引っ張らないでよ!」
圭太はユキヤに腕を引かれている。
「うるせぇ!黙ってついてこい!」
二人は人混みをかき分けながら走る。
「ふう・・・ここまでくればいいかな?」
気が付けば大通りに出ていた。
「はぁはぁ・・・この格好で走るの結構大変なんだから・・・」
圭太は息を切らしている。
「俺の足について来れるあたり、いよいよもってお前すみれじゃないな」
「・・・だからすぐにばれるって言ったのに・・・」
圭太はため息をついた。
そんな圭太をユキヤはまじまじと見つめて
「・・・とはいっても似てるよなぁ、君、妹さんか何か?」と聞いてきた。
「・・・イトコですが。」
圭太はややぶっきらぼうに答える。
女装した状態でいとこだと名乗るのは少し恥ずかしかった。
しかし、この姿で男だと名乗れば余計にややこしくなるだろうと思い、そう答えたのだ。
「ケンカの真っ最中にデートなんかに誘うからこんなことになるんですよ。」
圭太は呆れ気味に言う。まぁ実際呆れていたわけだが。
「・・・俺としては仲直りする作戦だったんだがなぁ」
ユキヤはバツが悪そうにしている。
「それならそれで、もっと別の方法があったでしょうに」圭太はさらにため息を吐いた。

「しかし君、見れば見るほどあいつにそっくりだな・・・」
そんな圭太の姿を見て感心したようにつぶやく。
圭太は思わずドキリとした。
「そ、それはどうもありがとうございます・・・」
圭太は適当に礼を言っておいた。
「で、これからどうするんですか?」
「とりあえず、このままじゃあお互い気まずいだろ? 一度どこかで落ち着こうぜ」
「まぁ、確かにそうですね」
「そうだ、俺のバイト先の喫茶店でいいか?」
「え、バイトしてるんですか?」
「おう。大学近くの喫茶でウェイターやってるんだよ。」
「へぇ~」
「もっとも、このまま君とデートしてもいいけどな」
ユキヤやちょっニヤリとする。
「ああ、残念ながらそれは無理です。」
圭太は即答した。
「なんでだよ!?」
それを聞いた圭太は無表情でユキヤの手を自分の胸に当てた。
「・・・まぁ、こういう事情なんで。」
圭太は淡々と告げる。
「・・・お、おおぅ・・・なるほ・・・ど・・・?」
ユキヤは顔を赤くしながら圭太の胸に手を当てたまま固まっている。
「まだ信じられないならトイレで確かめますか?」「け、結構です!」
ユキヤは慌てて圭太から距離を取った。
「わかってくれたら何よりですよ。」
圭太は笑顔で言う。

****
「・・・という事ですみれ姉さんとしては、あなたをドッキリに引っかけたかったようでして。」
「なんてこった・・・!」
結局、あの後圭太たちはユキヤのバイト先に喫茶店に足を運んだ。
圭太はそこでユキヤに事の顛末を話していた。
「・・・まさかすみれがそんな事を企んでいたとは・・・」
「驚きました?」
「驚いたわ!!」
「・・・すみれ姉さんが聞いたら喜びますよ。」
「喜ぶのかよ! てか、デートの身代わりに自分そっくりの男よこすなんてありかよ!?」
「ありみたいですよ。」「ありなのかよ・・・」
ユキヤは頭を抱えた。
「でも、結果的にはすみれ姉さんの思惑通りになったんじゃありませんかね。」
「・・・うーん、そうなのかなぁ・・・」
「浮気の仕返しだったようですよ」
「・・・マジか」
「はい。」
「まて・・・君は俺らの事をどこまで知ってるんだ?」
「・・・髪の合わせて下の毛まで金髪にしてるとか」
「そこまで聞いてねぇし!! あと下の毛って言うの止めてくれません!?」
(この人、意外と純情なんだな)
ここまでくるともはや何もかもがどうでもよくなった圭太がお茶をすする。
「冗談ですよ、半分くらいはね」
「ほとんど本当じゃないか!」
「まぁ、すみれ姉さんがユキヤ先輩の事が好きだっていうのも事実でしょう。」
「そ、そうか。」
「そうなんじゃないですか?浮気するような最低男でも」
「ぐぬっ」圭太の容赦のない言葉の刃がユキヤを襲う。
「さっきのすみれ姉さんの様子を見てればわかりますよね。」
「・・・まぁな。」
「だから、すみれ姉さんはユキヤ先輩の気を引きたくてあんなことをしたんでしょう。」
「・・・」
ユキヤは黙り込んでしまった。
「・・・俺にはよくわからないけど、
すみれ姉さんはユキヤ先輩の事が好きだと思うんですよ。」
「・・・俺だってそうだよ!」
「じゃあ、どうしてすみれ姉さんを泣かせるような真似をするんですか?」
「それは、その、だなぁ・・・ほかの事は遊びであいつにだけは本気というか・・・」
「・・・つまり、すみれ姉さんだけには真剣だと。」
「ああ、俺はアイツだけを本気で愛している。それを分かってくれればいいのに・・・」
「・・・僕までナンパしようとしてたのに?」
呆れを通り越して圭太が冷めた目で見る。
「・・・えっとぉ、あれはその、ノリというやつで・・・」
(・・・これは早めに正体明かしてよかったかも)
「いい加減にしなさいよ!あんたが他の女に手を出すから悪いんでしょ!」
圭太は突然聞こえてきた声の方を見た。
そこには見知った顔があった。
「すみれ姉さん。・・・と先生?!」
すみれのすぐ後ろには沙由美がいた。
「・・・げぇ、すみれ。」
ユキヤは呆然としている。その間に圭太は沙由美に耳打ちする。
「すみれ姉さんは僕がこっそりスマホで呼んだけどなんで先生までいるんです?」
「・・・まぁなりゆきで・・・」
「どんな成り行きですか?!。」
「おい、お前ら何コソコソ話してんだよ。」
「「別に。」」圭太と沙由美は同時にこたえる
「ハモってんじゃねぇ!」
「それより、ユキヤ。あなた、自分がしたことわかってるの?」
「うるせーな、説教なら聞かねぇぞ。お前こそ従弟に女装させるとか何考えてるんだ?!」
「うっさいわね、そんなのアンタには関係ないでしょ!」
「関係あるから言ってるんだろうが!」
流石に喧嘩中だけあって、顔を合わせれば嫌でも二人はヒートアップしてしまう。
「あの~、お二人とも落ち着いてください。」
圭太が割って入る。
「圭太君ごめんね、こんな奴のために・・・」
(謝るぐらいなら最初からさせなきゃいいのに)圭太はそう思いながら続ける。
「さっきからユキヤさんから話を聞いてると・・・」
「どうせ反省なんかしてないんでしょ・・・」
「いや、だから・・・」
言い合いを続ける2人を横目に沙由美は圭太に話しかける。
「圭ちゃんはどう思う?」
「・・・僕が思うに、これまでの話を総合すると、ユキヤさんがこの場で
金輪際浮気をしないと誓えば円満解決なんじゃないかなと」
「・・・なるほど。」
沙由美は納得したようにうなずく。
「はぁ!?おまえ正気か?」ユキヤは納得いってない様子だった。
「僕はいたって正常ですよ。それに、そもそもの発端はユキヤさんが浮気をやめないからだし。」
「ぐぐっ・・・」
「ほら、本人も自覚はあるみたいだし。」
「・・・わかった。俺も男だ、約束する。もう二度と浮気なんてしない。」
「本当に誓うのかしら・・・。」沙由美は疑いの目を向ける。
「ああっ!くそッ!!俺は男に二言はない!!」
その言葉を聞いた瞬間に沙由美の表情が変わった。
「ふぅん、言うじゃない。じゃあ、証明してもらおうかしら?」
「ああ、なんでもやってやるよ!」
「言ったわね?今の言葉忘れちゃだめよ?」
沙由美はニヤリと笑った。そしてすみれに何やら耳打ちする。
圭太は沙由美の口元を見てゾクっとした。沙由美は圭太に近づき、耳元でささやく。
「圭ちゃん、ちょっと協力してくれないかな?」
圭太は思わずドキッとした。
「協力って・・・何をすれば・・・」
沙由美は圭太にも耳打ちする。
「・・・え?まぁそういう事なら・・・」
圭太も了承する。
「・・・何を内緒話してるんだ?」さすがにユキヤも気に掛けるが、
「ふふふ、内緒。」とすみれにお茶を濁された。
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