服飾文化研究部にようこそ!~僕が女装させられて、先輩たちのオモチャにされるにされる日々~

桃ノ木ネネコ

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第38話:即売会に行ってみた(その3)

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即売会と一口に言っても規模はピンキリで、大勢の人が集まるものから、
同じ趣味を持つ人同士が細々とやるものまである。
今回はどちらかというと「中規模」といった感じで、
客足はそこまで多くなく、ゆったりとした雰囲気だった。
「はい!ありがとうございました!また来てくださいね!」
圭太は元気よく接客する。初めてだったが、意外にも楽しくできた。
真由里のサークルはメンバー全員がレイヤーのため、人の出入りが激しく、
しょっちゅう交代で撮影ブースや買い物に行っていた。
(だから僕みたいに常駐してる人間が必要だったのか・・・)
圭太はここでの自分の役目を理解する。
コスプレ売り子として待機しつつ、客が来たら笑顔を振りまく。
それだけでもかなり疲れた。
しばらくすると、休憩をもらった。
「はいこれ差し入れ」
そう言って真由里に差し出されたのは、ペットボトルに入ったお茶と紙コップだ。
「あ、どうも。いただきます」喉が渇いていたためありがたくいた。
午後に入ると客足もだいぶ落ち着いてきて、暇になり始めたところに、
「あの~撮影ブースでプリシラコスで集合写真撮るんで来ていただいてもいいですか?」
とお誘いを受ける。餡丸達も「今人少ないですから、
綺羅丸殿と一緒に行ってきたらどうですか?」
と言ってくれたので、真由里と一緒に行ってみることにした。
撮影ブースに行くと、そこには梅千代がいた。
「おぉ、綺羅丸殿、圭太殿お待ちしておりましたわよ!」
「プリシラだけで集まるって聞いたんですけど」
圭太が尋ねる。
「はい、プリシラは人気キャラだからコス人数が多いので、
せっかくだし皆で撮りたいと思いまして」
「なるほど」圭太は納得した。
「じゃあさっそく始めようかのう」梅千代が促す。
「はい。よろしくお願いします」圭太は返事をする。
集合場所に行くと同じ衣装の子が数人いた。「こんにちは~」
挨拶をしてくる。圭太もそれに返す。
「はい皆さん集まりましたね。それではさっそく始めていこうと思います」
梅千代が仕切る。
「まずはポーズ決めからですね。何か希望あります?」
「私はこの子の手を繋いでる感じの構図が良いかなぁ」
「私もそれ良いと思う。」
「おっけー。圭太君は?なんかある?」
「えっと・・・僕は特にないです。」
「了解。じゃあそれでいきましょう」
そんなこんなで撮影が始まった。
「はいチーズ」パシャリとシャッター音が響く。
「うん、いい感じに撮れましたわよ」
「ありがとうございます」
「次は2人コウガとプリシラでくっついてもらっても良いかしらん?」
「は、はい」真由里は顔を赤らめながら圭太に近づく。
圭太も少し恥ずかしかったが、ここは仕事なので割り切って我慢することにした。
「ほらもっとこっち来て」「う、うん・・・」
ぎゅっと抱き合うような姿勢になる。
「はい、もう一枚行きますよ」
再びフラッシュが光る。
「はいオッケー。とても良かったですよ」
「ありがとうございました」圭太達は頭を下げる。
(真由里さんとツーショットかぁ・・・)
圭太は内心ドキドキしていた。
その後も何枚か撮影し、撮影会は終わった。
「さて、そろそろスペースに戻りましょうか」
「はい」
圭太は真由里と一緒に戻る。
しかしスペースでは何やらもめごとが起きているようだった。
餡丸達と客が何やら言い争っている。

つづく


「あなた!さっきから隠し撮りしてましたよね!」
「はぁ!?証拠あんのかよ」
「さっきからそっぽ向きながらスマホだけこっちに向けてましたよね?」
真由里たちが慌ててスペース内に入り
「何事です?」と聞くとくぢら丸が「・・・盗撮です」と言った。
真由里は餡丸達に「警備スタッフを・・・」
と耳打ちして二人を出ていかせると、
件の客と向き合った。
「お客様申し訳ありません。うちのサークルの者が失礼をいたしました。」
「はん、お前がサークル主かよ。」
「はい。私がサークルの代表をしております。」
「そうかい。あいつら、俺を盗撮犯呼ばわりしたんだよ!」
「それは申し訳ございません・・・」下手に出て時間稼ぎをする。
「大体こんなブスばっかのサークル、
頼まれたって写真なんか撮らねーっての!」
男は悪態をつく。
「おい」
圭太は男に話しかける。
「ああ?」
「いいかげんにしなよ!あんた」
地声でも出さないような低い声で言う。
姿と声のギャップにしばし戸惑うも「・・・なんだお前男か?」
「そうだよ。だからどうした」
「いや別に。ただ男なのに女みたいな格好するんだなって思ってよ」
「う、うるさい。僕の勝手だろ」
勇ましく啖呵を切りたいところだが、赤くなってしまう。
「へっ馬鹿にしやがって」と男が帰ろうとすると、
筋骨逞しい二人の女戦士が待ち構えていた。
「参加者の方からあなたに多数の苦情が寄せられています!」
「ちょっとご同行願えませんでしょうか?!」
二人は警備スタッフの筋骨仮装団の人たちだった・・・
格好に反してものすごい迫力がある。「ちょ・・放せぇ・・・」
2人は男を連れてスタッフルームへと消えた。
「ふぅ・・・一件落着ですね」真由里は額の汗をぬぐう。
「あの人大丈夫かなぁ・・・」
圭太も心配になる。
「間に合ったようですわね。」梅千代が声をかける。
「梅千代さん、どうもありが・・・」と言いかけて真由里がへたり込む。
「真由里さん!?」
「あ、安心したら腰抜けちゃったみたい・・・」
笑って見せるが明らかに顔色が悪い。
「あらあら、いいですわスペースはわたくしが暫く留守番してますから、
あなた方は救護室で休んでいなさい」
と梅千代が言ってくれた。
「僕もですか?」圭太がちょっと申し訳なさそうにする。
「・・・いいからあなたは彼女についててあげなさい。
これは時のプリシラを造り出した、魔女サンドラとしての命令よ!」
梅千代はそう言ってウインクして見せた。
「は、はい・・・」
圭太は真由里をお姫様抱っこすると、
真由里のサークルスペースから出ていった。
「お、重くないですか?」
真由里が恥ずかしそうにもじもじしながら聞く。
「全然軽いですよ」圭太は笑顔で答える。
「そ、そうじゃなくて・・・その・・・」
真由里の顔は真っ赤になっていた。
「僕だって男なのでこれくらいできますよ」
そういいながら圭太は真由里を救護室まで運んだ。

救護室・・・とは言っても、常にだれかが常駐しているわけではなく、
参加者が体調不良になった際にスタッフが付いていてくれる場所である。
今、圭太と真由里は二人きりで簡易ベッドに座っていた。
・・・とはいっても圭太が真由里を膝枕してる状態だが。
「す、すみません。こんなことさせて・・・」
「いえ、気にしないでください。僕は好きでやってるんですから」
圭太が優しく真由里の頭を撫でると、真由里の表情が少し和らいだ気がした。
「それより真由里さんこそ大丈夫ですか?」
「はい。もう大分落ち着きました」
「よかった・・・」
真由里の頬に手を当てると、真由里はその手に自分の手を重ねた。
「ありがとうございます。圭太様」
真由里が勝手に呼んでるだけの「圭太様」だが何度呼ばれてもくすぐったい。
「真由里さんの力になれたなら嬉しいです」
「圭太様に見つめられるだけで私・・・」
「ま、真由里さ・・・んっ!」
気が付くと真由里の唇が自分のそれに重なっていた。
それは短いようで長い長い口付けだった。

つづく
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