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第37話:即売会に行ってみた(その2)
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当日。
「おはようごさいます。」
圭太たちは朝早く会場前に集合した。「おはよぉ~」「おはざまっす!!」
サークルメンバーたちが挨拶する。
「ほぉ~あなたが綺羅丸殿の・・・」
サークルメンバーの一人が興味深げに圭太を見つめる。
ちなみに「綺羅丸」は真由里の活動上のペンネームである。
「は、はじめまして・・・」
圭太は緊張気味に頭を下げる。
「これはまた随分可愛らしい・・・」
サークルメンバーはまじまじと見つめる。
「あ、あまり見ないでください・・・恥ずかしいので・・・」
圭太は顔を赤らめながら俯いた。
「うひょおお!!可愛いぃ!!!」
サークルメンバーが興奮して叫ぶ。
「ほら!餡丸殿もくぢら丸殿も落ち着いて。」
真由里がメンバーをなだめる。
「あ、すみませんつい・・・」
「い、いえ・・・」
圭太は引き攣った笑みを浮かべた。
(流石は真由里さんのお仲間・・・)
「それでは皆さん、準備を始めましょう。」
そんなこんなで会場内の自分たちののスペースへと向かう。
会場内は学校の体育館の2倍ほどの広さで、売り場となるスペースは、
長机を半分ずつ使うようだ。「さぁ、今日は頑張りますよー!」
気合を入れる真由里を先頭に、皆ぞろぞろと進んでいく。
圭太たちもそれに続いた。
売り物を並べてスペースの設営が終わると、
「じゃあ、開始前に着替えてきちゃいましょう。」
と言われて更衣室へと案内される。
「わ、わかりました。」
圭太は真由里に連れられ、男子更衣室の扉に来る。
「じゃあ着替え終わったらスペースまで戻って、餡丸殿たちとスペース番を交代してください。
メイクとかはスペースないでやりますので。」
真由里はてきぱきと指示を出す。
「は、はい・・・」
圭太は不安げに返事をした。
「大丈夫ですよ。圭太様ならきっとうまくいきますよ!」
「そうそう!俺らもフォローしますんで!」
餡丸は励ましの言葉をかけてくれる。
「ありがとうございます・・・」
真由里にお礼を言うと、圭太は男子更衣室に入る。中には既に参加者が何人かいる。
皆様々なキャラの衣装を着こんでいるが、その中には女装姿も見られた。
圭太は周りからの目線を感じながらも、手早く着替えていく。
「よし・・・これでいいかな?」
圭太は鏡の前で自分の姿をチェックする。
そこには青髪の美少女がいた。
基本的にミニスカにジャケットというスタイルだが、オリジナルデザインのためかなり個性が強い。
本日の会場内のルールとして露出度の激しいものはNGなので、ミニスカの下にはスパッツを履いている。
(しかしこの髪の色は、現実で見ると結構キッツイな・・・)
その上目は左右色の違うオッドアイだ。カラコンだがかなり目立つ。
(生きた人形って設定だけど、いざ見ると異質感すごいなー・・・)
と圭太は衣装に対する感想を出す。
・・・ここでチェックに気を取られ、圭太は気づいていないが
背後では少しどよめきが起こっていた。
「おいあれ・・・」
「まさかあの子もコスプレか・・・?クオリティ高すぎんだろ・・・」
「すげぇ・・・あれ男・・・なのか」
「あんな可愛い男がいるのか・・・」
「やべぇ・・・超タイプなんだけど・・・」
「でも・・男なんだぞ」
そんな周囲の意見に気付くことなく、圭太は真由里たちのもとに急ぐ。
「真由里さん、終わりました。」
圭太は真由里に声をかける。
「あ、圭太様。お疲れ様です。」
「あ、綺羅丸殿!よく似合っていますね! その衣装は『コウガ』ですね!」
スペースで留守番していた餡丸と呼ばれた女子が真由里を見て声をあげる。
真由里は学ラン姿のイケメンになっていた。
「ハハ、みんな僕について来ててくれるかな?」
と真由里も男装モードでノリノリである。
真由里は餡丸たちと交代する形で椅子に座り、
「あ、圭太様。こちらの席に座ってください。」
「あ、はい。」
圭太は指定された椅子に座った。
「では、メイクしていきますから目を瞑ってください」
そう言って真由里は圭太の顔にメイクを施していく。「んっ・・・くすぐったい・・・」
「我慢してください。」「は、はい・・・」
圭太は真由里のなすがままにメイクを施されていった。
いつもと場所が違うせいか、なんだかドキドキしてくる。圭太は緊張で固まっていた。
「さ、終わりましたよ」
「あ、ありがとうございました・・・」
メイクが終わると同時にスペースの餡丸たちが戻ってきた。
「あ、綺羅丸殿!スペース番交代しま・・・」
入ってきた餡丸という女子は圭太を見ると固まる。
「え、嘘、なんですかこれ・・・プリシラが・・・!?」
コスプレの完成度の高さに餡丸は驚きの声をあげた。
「す、すごい!あ、後ででいいんで写真お願いします!」
くぢら丸と呼ばれた子も興奮気味だ。
「うん。いいけど・・・ちょっと恥ずかしいなぁ・・・」
圭太は照れながら言う。
「いえいえご謙遜なさらずに!」「そうですよ!」二人は圭太を褒めちぎる。
そこまで言われて圭太がなんだが照れ臭くなっていると、
スペース前に3人の人物がやってきた。
筋骨隆々な男性2人と、スレンダーな女性の組み合わせだ。
「おはようございます!綺羅丸殿のところは相変わらず美丈夫がそろってますわね!」
「う、梅千代さん!おはようございます」
真由里はその人物を見るなり挨拶をする。
「あら?そちらの可愛い方はどなたですの?」
梅千代は真由里の隣にいる圭太を指差して言った。
真由里は「この方は本日急遽売り子を引き受けてくれた人で・・・」と紹介する。
「初めまして。圭太と言います」
圭太は自己紹介をした。すると
「まぁなんて可愛らしい方でしょう!私の名前は梅千代といいますの。よろしくね。」
と言って握手を求めてきた。
圭太は戸惑いながらも手を差し出す。
「本日のわたくしは闇の魔女サンドラ。プリシラを・・・つまりあなたを作り出した人物よ」
そう言って握られた手がものすごく力強い。「あ、あの・・・痛いです・・・」
「あ、ごめんなさいね。つい力が入っちゃって」
そう言いつつも、梅千代は手を離さない。
「あの・・・そろそろ放していただけると嬉しいのですが・・」「あら失礼」
と慌てて手を放してくれた。
そして何より目を引くのは、梅千代の後ろにいる2人だ。筋骨隆々な身体に
女装姿がなんともインパクトが強い。
「おぉ、綺羅丸殿おはようございます!今日の俺は筋肉の女戦士ミス・ミランダ。」
「同じく私は筋肉の巫女マミー。」
二人揃ってポーズを決める。
「・・・・は、はぁ」その迫力に圭太はちょっと圧倒される。
「本日我々は警備スタッフも担っておりますので、何かあれば遠慮なく声をおかけください!」
そう言うと3人は去っていった。
「真由里さん・・・今の人たちは?」
「あの方々は筋骨隆々な男性が募るコスプレサークル『筋骨仮装団』の方々です。」
「へぇ~そうなんですか」圭太は若干引き気味に答える
「あの迫力ある見た目に、皆さんとても気のいい人たちなので、人気なんですよ」
真由里が楽しそうに答える。
「え・・・男性が募るってことは、あの梅千代さんも?」
「はい。男性ですね。あの人がリーダーです。」
「えっ!?男なんですか!?全然見えなかった!!」
「ふふ。びっくりしましたよね」
圭太の反応を見て真由里は微笑む。圭太は改めて梅千代の後ろ姿を見た。
確かに肩幅は広く、背も高い。
だが、顔立ちや仕草はとても女性的だった。
(ホント色んな人がいるなぁ・・・)
「『SKY ARROW WARS』は人気ジャンルですからね!個性的な人がとても多いです!」
「そうみたいですね・・・」
そんなことを話しているうちに開場時間になった。
「では早速設営に入りましょう!今日は忙しいですよー!」
「はい!頑張ります!」
こうして即売会が始まった。
つづく
「おはようごさいます。」
圭太たちは朝早く会場前に集合した。「おはよぉ~」「おはざまっす!!」
サークルメンバーたちが挨拶する。
「ほぉ~あなたが綺羅丸殿の・・・」
サークルメンバーの一人が興味深げに圭太を見つめる。
ちなみに「綺羅丸」は真由里の活動上のペンネームである。
「は、はじめまして・・・」
圭太は緊張気味に頭を下げる。
「これはまた随分可愛らしい・・・」
サークルメンバーはまじまじと見つめる。
「あ、あまり見ないでください・・・恥ずかしいので・・・」
圭太は顔を赤らめながら俯いた。
「うひょおお!!可愛いぃ!!!」
サークルメンバーが興奮して叫ぶ。
「ほら!餡丸殿もくぢら丸殿も落ち着いて。」
真由里がメンバーをなだめる。
「あ、すみませんつい・・・」
「い、いえ・・・」
圭太は引き攣った笑みを浮かべた。
(流石は真由里さんのお仲間・・・)
「それでは皆さん、準備を始めましょう。」
そんなこんなで会場内の自分たちののスペースへと向かう。
会場内は学校の体育館の2倍ほどの広さで、売り場となるスペースは、
長机を半分ずつ使うようだ。「さぁ、今日は頑張りますよー!」
気合を入れる真由里を先頭に、皆ぞろぞろと進んでいく。
圭太たちもそれに続いた。
売り物を並べてスペースの設営が終わると、
「じゃあ、開始前に着替えてきちゃいましょう。」
と言われて更衣室へと案内される。
「わ、わかりました。」
圭太は真由里に連れられ、男子更衣室の扉に来る。
「じゃあ着替え終わったらスペースまで戻って、餡丸殿たちとスペース番を交代してください。
メイクとかはスペースないでやりますので。」
真由里はてきぱきと指示を出す。
「は、はい・・・」
圭太は不安げに返事をした。
「大丈夫ですよ。圭太様ならきっとうまくいきますよ!」
「そうそう!俺らもフォローしますんで!」
餡丸は励ましの言葉をかけてくれる。
「ありがとうございます・・・」
真由里にお礼を言うと、圭太は男子更衣室に入る。中には既に参加者が何人かいる。
皆様々なキャラの衣装を着こんでいるが、その中には女装姿も見られた。
圭太は周りからの目線を感じながらも、手早く着替えていく。
「よし・・・これでいいかな?」
圭太は鏡の前で自分の姿をチェックする。
そこには青髪の美少女がいた。
基本的にミニスカにジャケットというスタイルだが、オリジナルデザインのためかなり個性が強い。
本日の会場内のルールとして露出度の激しいものはNGなので、ミニスカの下にはスパッツを履いている。
(しかしこの髪の色は、現実で見ると結構キッツイな・・・)
その上目は左右色の違うオッドアイだ。カラコンだがかなり目立つ。
(生きた人形って設定だけど、いざ見ると異質感すごいなー・・・)
と圭太は衣装に対する感想を出す。
・・・ここでチェックに気を取られ、圭太は気づいていないが
背後では少しどよめきが起こっていた。
「おいあれ・・・」
「まさかあの子もコスプレか・・・?クオリティ高すぎんだろ・・・」
「すげぇ・・・あれ男・・・なのか」
「あんな可愛い男がいるのか・・・」
「やべぇ・・・超タイプなんだけど・・・」
「でも・・男なんだぞ」
そんな周囲の意見に気付くことなく、圭太は真由里たちのもとに急ぐ。
「真由里さん、終わりました。」
圭太は真由里に声をかける。
「あ、圭太様。お疲れ様です。」
「あ、綺羅丸殿!よく似合っていますね! その衣装は『コウガ』ですね!」
スペースで留守番していた餡丸と呼ばれた女子が真由里を見て声をあげる。
真由里は学ラン姿のイケメンになっていた。
「ハハ、みんな僕について来ててくれるかな?」
と真由里も男装モードでノリノリである。
真由里は餡丸たちと交代する形で椅子に座り、
「あ、圭太様。こちらの席に座ってください。」
「あ、はい。」
圭太は指定された椅子に座った。
「では、メイクしていきますから目を瞑ってください」
そう言って真由里は圭太の顔にメイクを施していく。「んっ・・・くすぐったい・・・」
「我慢してください。」「は、はい・・・」
圭太は真由里のなすがままにメイクを施されていった。
いつもと場所が違うせいか、なんだかドキドキしてくる。圭太は緊張で固まっていた。
「さ、終わりましたよ」
「あ、ありがとうございました・・・」
メイクが終わると同時にスペースの餡丸たちが戻ってきた。
「あ、綺羅丸殿!スペース番交代しま・・・」
入ってきた餡丸という女子は圭太を見ると固まる。
「え、嘘、なんですかこれ・・・プリシラが・・・!?」
コスプレの完成度の高さに餡丸は驚きの声をあげた。
「す、すごい!あ、後ででいいんで写真お願いします!」
くぢら丸と呼ばれた子も興奮気味だ。
「うん。いいけど・・・ちょっと恥ずかしいなぁ・・・」
圭太は照れながら言う。
「いえいえご謙遜なさらずに!」「そうですよ!」二人は圭太を褒めちぎる。
そこまで言われて圭太がなんだが照れ臭くなっていると、
スペース前に3人の人物がやってきた。
筋骨隆々な男性2人と、スレンダーな女性の組み合わせだ。
「おはようございます!綺羅丸殿のところは相変わらず美丈夫がそろってますわね!」
「う、梅千代さん!おはようございます」
真由里はその人物を見るなり挨拶をする。
「あら?そちらの可愛い方はどなたですの?」
梅千代は真由里の隣にいる圭太を指差して言った。
真由里は「この方は本日急遽売り子を引き受けてくれた人で・・・」と紹介する。
「初めまして。圭太と言います」
圭太は自己紹介をした。すると
「まぁなんて可愛らしい方でしょう!私の名前は梅千代といいますの。よろしくね。」
と言って握手を求めてきた。
圭太は戸惑いながらも手を差し出す。
「本日のわたくしは闇の魔女サンドラ。プリシラを・・・つまりあなたを作り出した人物よ」
そう言って握られた手がものすごく力強い。「あ、あの・・・痛いです・・・」
「あ、ごめんなさいね。つい力が入っちゃって」
そう言いつつも、梅千代は手を離さない。
「あの・・・そろそろ放していただけると嬉しいのですが・・」「あら失礼」
と慌てて手を放してくれた。
そして何より目を引くのは、梅千代の後ろにいる2人だ。筋骨隆々な身体に
女装姿がなんともインパクトが強い。
「おぉ、綺羅丸殿おはようございます!今日の俺は筋肉の女戦士ミス・ミランダ。」
「同じく私は筋肉の巫女マミー。」
二人揃ってポーズを決める。
「・・・・は、はぁ」その迫力に圭太はちょっと圧倒される。
「本日我々は警備スタッフも担っておりますので、何かあれば遠慮なく声をおかけください!」
そう言うと3人は去っていった。
「真由里さん・・・今の人たちは?」
「あの方々は筋骨隆々な男性が募るコスプレサークル『筋骨仮装団』の方々です。」
「へぇ~そうなんですか」圭太は若干引き気味に答える
「あの迫力ある見た目に、皆さんとても気のいい人たちなので、人気なんですよ」
真由里が楽しそうに答える。
「え・・・男性が募るってことは、あの梅千代さんも?」
「はい。男性ですね。あの人がリーダーです。」
「えっ!?男なんですか!?全然見えなかった!!」
「ふふ。びっくりしましたよね」
圭太の反応を見て真由里は微笑む。圭太は改めて梅千代の後ろ姿を見た。
確かに肩幅は広く、背も高い。
だが、顔立ちや仕草はとても女性的だった。
(ホント色んな人がいるなぁ・・・)
「『SKY ARROW WARS』は人気ジャンルですからね!個性的な人がとても多いです!」
「そうみたいですね・・・」
そんなことを話しているうちに開場時間になった。
「では早速設営に入りましょう!今日は忙しいですよー!」
「はい!頑張ります!」
こうして即売会が始まった。
つづく
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