服飾文化研究部にようこそ!~僕が女装させられて、先輩たちのオモチャにされるにされる日々~

桃ノ木ネネコ

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第21話:お見合いなんて認めない(その1)

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<前回までのあらすじ>
主人公白石圭太は美人保険医が顧問の『服飾文化研究会』に強引に入れられる。
しかしそこは服飾研究とは名ばかりのコスプレHを楽しむ場所であった。
そこで祥太は言われるがままに女装して、顧問の沙由美と先輩部員たちに
オモチャにされる日々を送っている中、謎の女装男子youtuber・グレンと知り合う。
(あらすじここまで)

「お見合い・・・ですって?!」
圭太は部室に着くなり衝撃的なことを聞かされる。
「そうなのよ・・・」と沙由美も憔悴しきったように言う。
「そうですか・・・少し寂しいですが、沙由美先生もそんなお年ですし、
結婚というのは人生で大事なことですもんね。」
「・・・え?」
「これを機に僕も『可愛い』を卒業して『カッコよくて素敵な大人』を目指そうかなと・・・」
「ちょっと?!」
「沙由美先生、どうかお幸せに・・・」
「何を勘違いしてるの?!」
「へっ?違うんですか?」
「違うわよ!というより勝手に話を終わらせないで!!」
沙由美は必死の形相で圭太に迫る。
「お見合いをすることになったのは・・・葵ちゃんよ。」
「はぁ?!」
圭太は思わず素の声を出してしまう。

その横では葵がすました顔で勉強している。
「あ、葵さん!それはどういうことですか?!」
「・・・親が勝手に決めたの。私の留学を許可する条件ですって。」
葵は眉一つ動かさずに答える。
「こないだの事で兄が家を継がないって言いだしたもんだから、
私にお鉢が回ってきた感じね。つくづく勝手な話だと思うわ・・・。」
葵はため息をつく。
先日、葵の兄が親の決めた許嫁以外の女性と結婚すると言い出し、
家の相続の放棄まで言い出したと、圭太たちは葵から聞いていた。
「そんなの・・・勝手すぎるじゃないですか!?葵さんの人生の問題ですよ!」
「仕方ないわよ。親がそういいだしたら聞かないもの」
「でも・・・それでも僕は納得できません!!だってまだ高校生なのに!!」
「私だってそこまで馬鹿じゃないわ。会うだけ会ってすぐに断るつもり。」
「だけど・・・」
圭太は口ごもる。
「それだけでも大いに問題なのに、その見合い相手もさらに問題なのよ・・・」
と沙由美が言う。
「相手が・・・?」
「27歳の大会社の御曹司。」
「27歳・・・て!絶対やめた方がいい奴です!!やめましょう!今すぐ断りましょう!!」
圭太は即答する。

「無理よ。向こうのお父様とお母様にもすでに話は通してあるみたいだし、
それにもう日取りも決まってるらしいの。」
「そんな・・・それじゃあ・・・葵さんの留学の話はどうなるんですか・・・」
圭太は絶望な顔をする。

そして沙由美が切羽詰まったようにこう言う。
「こうなったらね圭ちゃん!あなたその格好で
葵ちゃんのお見合い相手を誘惑しなさい!」
「それが教員が生徒に対して言う言葉かぁ!」
「だってもし間違いがあっても君だったら実害ないでしょ!」
「ありまくりですよ!大体誘惑だったら沙由美先生の方がお得意でしょ!」
「あんたもどさくさにまぎれてなんてこと言うの!
大体高校生と本気で見合いしようとか考える27歳なんて変態に決まってるでしょ!
私になびくとは思えないもの!」
と沙由美が逆ギレ気味に叫ぶ。
「だからって人身御供は嫌ですよ!」

二人のやり取りをしばらく冷ややかなまなざしで見ていた葵だったが、
やがて参考書をカバンにしまい始める。
「・・・とにかく、これは私の問題です。会うだけ会ったら私は断るつもりです!
事態がややこしくなるのでくれぐれも変なことはしないでくださいね。」
そう言うと葵は外へ出て行ってしまった。バタンと扉の閉まる音が部室に響き渡る。
沙由美と圭太は黙って葵が出て行った方を眺めていた。
圭太と沙由美は葵が出ていった部室のドアを見つめている。
葵がいなくなって数分後、沙由美が沈黙を破る。

「圭ちゃん、葵ちゃんの事どう思う?」
「葵さんの事ですから、そんな簡単に流されやしないと思いますけど・・・」
「断ってあっさり引き下がってくれる相手ならいいけど・・・」
「余計なことはするなとは言われましたが、ちょっとぶっ潰したいかも。」
二人がそんなことを言い合っている背後からいきなり

「そうです!ぶっ潰すべきなんです!」

という声が響いた。
二人が振り返るとそこには見知らぬ女性が立っていた。
「すす、すいません!部外者は立ち入り禁止なんで・・・」と慌てて取り繕う沙由美と、
女装姿を見られまいと慌てて物陰に隠れる圭太。

しかし女性は二人をスルーして葵の座っていた席に座った。
「大丈夫ですよ。お二人の事は葵から聞いておりますので。」
そう言うと一礼して顔を上げる。
「初めまして。わたくし、藤乃の申します。葵の・・・身内です。」
藤乃と名乗ったその女性、見た目は20代後半から30代前半といった感じの美人だった。
その顔はなんとなくだが葵に似た感じである。
二人は葵の身内の登場に少し動揺したが、とりあえず自己紹介をする。
その後、沙由美が口を開く。
「お身内ですか・・・?」
年齢からして姉妹か従姉妹ぐらいかと思われるが、ちょっとつかめない感じだ。
「あ、わたくしの事は『ふーちゃん』でOKですよ。」
「ふ、ふーちゃん?」
沙由美は戸惑いながらも返事をした。
「その、ふーちゃん・・・さんがいったい何の御用で?」
すると彼女は鞄の中から1枚の紙を取り出した。
それは見合い写真だった。
それを見て、 ああやっぱり見合いの話か。
と思いつつ、なぜこんなところに?という疑問が湧いてくる。
その疑問を察したかのように彼女が話し始めた。
彼女の説明によると、今回の見合いは葵の父親が
かなり強引に押し進めようとしているらしく、
かなりの無茶をしているとの事。
たとえ断っても葵が留学から帰った時点で
結婚話を進めるという手筈を整えているということだった。
「まったく、あのクソ親父は・・・あら失礼。」

「あははは・・・葵ちゃん大変ですね。」
沙由美は苦笑いをしながら答えた。
「それでね、今日ここに来た理由は見合い話をぶち壊すためなんですよ。」
「見合いを断るのではなく、見合い自体をなくすということですか?」
聞けばこの見合い相手の鈍川という男性、かなり評判の悪い人物らしく、
とにかくいいうわさを聞かないということだった。
彼女自身が興信所に素行調査を頼もうかと思ったのだが、
正攻法で行っても葵の父が握りつぶす可能性が高いらしい。
「そこで・・・あなた方が以前ある人物の過去を調べ上げたということを聞きまして、
あの男に関することの何かを…発見できないかと」
「え!?私たちのこと知ってるんですか?」
「はい、葵からいろいろ伺っております。」
「葵さんってどんなふうに私たちのことを言ってたんでしょうね・・・」
「それはまぁ・・・色々と。」
藤乃はふふふと笑った。
どうやら葵はかなり沙由美と圭太の事を気に入っているようだ。
藤乃は続けて話す。
今回、見合い相手を失脚させるにはそれなりの証拠がいる。
そのためには何かしらの物的証拠が欲しいと。
「その証拠を私が隠し持っておけば、握りつぶされることはないでしょう。」

「なるほど・・・」
藤乃は話を続ける。
見合い相手に何らかの弱みがあるということはわかっているが、
それをどうやって握るかが問題だと。
そこで沙由美たちに相談を持ちかけたのだそうだ。
「お話は分かりました。ですが私たちは専門家ではありません。
調べるにしても多少時間がかかったり、最悪の場合
何も見つからない可能性もあるかと思いますがよろしいですか?」
と沙由美が聞いた。
「もちろんですとも。お願いできますでしょうか。」
そう言うと藤乃は深々と頭を下げた。
「はい、わかりました。」
沙由美と圭太が引き受けると、 藤乃の顔に安堵の色が見えてきた。

つづく
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