服飾文化研究部にようこそ!~僕が女装させられて、先輩たちのオモチャにされるにされる日々~

桃ノ木ネネコ

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第17話:それでも僕は・・・(その3)

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どれぐらいの時間がたっただろうか。

橙知はゆっくりと目を覚ます。部屋の中は真っ暗だ。
(あれ・・・ここは?・・・どこに寝かせられてる?ベッドか?!)
何とか起き上がろうとするが、思うように動けない。
(クソ・・・どうした俺?!)
「いい夢は見れたかい?子猫ちゃん。」

橙知が横を見ると、そこにはピンライトに照らされた
少女漫画から抜け出たような
白い学ランの美少年が立っている。

「だ、誰が子猫ちゃんだ!?」と怒鳴りつける。
「仕方ないだろ、ボクにっては世の中の女の子
すべてが可愛い子猫ちゃんなんだから」
幻想的な雰囲気で歯の浮くようなキザったらしいセリフが
まったく嫌味に聞こえない。
「君だってその一人さ。今の君の姿見てごらん。」と、
ここで部屋の照明が入る。
橙知が改めて自分の身体を見ると・・・
その身体にはメイド服が着せられていた。
しかも両腕は頭上で手錠で、両足は
簡易ベッドの両端にロープで固定されている。
「!!!?」
「キミはすぐに暴れるからね。
少々手荒な真似をさせていただいたよ。」
というと美少年は後ろへと下がる。
そしてそこにいたには・・・圭太たちだった。
(ひゃー、真由里さん、真に迫ってるなぁ・・・)
この美少年は真由里の男装コスプレであった。
ちなみに大人気乙女ゲーム「セブンズプリンス」の
トウヤというキャラらしい。
「あ・・・あんたらは・・・?」
「どうだい?初めてメイド服を着てみた気分は?」
と、美少年こと真由里が答える。

「さて、それじゃ早速始めましょうか。
しかし180cm近くあるとメイド服姿も壮絶ね。」
と沙由美が橙知のメイド姿に不躾な評価を下す。
「うちで扱っている・・・メンズ用メイド服・・・特大サイズです」
「そんな注文あったの?!」「過去に・・・一度だけ」
「・・・やっぱりすね毛がいろいろと台無しにしてるわねぇ」

動けない橙知に向かって勝手なことを言う女性陣。
確かに橙知ぐらい体格のいい男性のメイド服は不格好で滑稽に見える。
ちなみにすね毛は圭太からの武士の情けにより未処理である。

「やめろ!!お前らいい加減にしやがれ!」と橙知がわめく。
「大体ケイ!お前もなんだ!こんな連中に加担しやがって!!」
「橙ちゃん・・・」
「俺はお前のために頑張っていたのにそれをお前は・・・」
「だからね・・・」
「そこまでして男に戻りたくないのか!」

「ちょっとは僕の話も聞いてよ!」わめく橙知に圭太が声を荒げる。

普段の気弱な彼からは想像できない迫力だ。
あまりの剣幕に橙知の言葉が止まる。
そしてその視線をじっと見つめる。
「そこまで・・・です。大空・・・みかん・・・さん」

圭太の後ろで翠が相変わらずの途切れ口調で話す。
「!!!!?」その名を聞いた瞬間橙知の顔色が変わる。
「なぜ・・・その名を・・・・!?」
「あなたのこと・・・ずっと調べました・・・」
翠が橙知の方に一歩近づく。

「最初は・・・『村崎』・・・という苗字に・・・聞き覚えがありました」
「人気子供服ブランドの『purplerose』。あなたのお母様、
村崎桜子が主宰するブランドよね。」
翠に変わって葵がいい放つ。
「5年前、そこに3年だけ所属していた謎の美少女モデルがいたわね。」
と沙由美も追い打ちをかける。
「やめろ・・・やめてくれ・・・!」
橙知が力なくわめく。
その姿はまるで何かを振り払うかのように見えた。
そして翠がさらに言葉を続ける。
「人気絶頂で・・・突然・・・姿を消した・・・伝説の・・・美少女モデル・・・
大空みかんさんは・・・あなたですね。」
「もうやめて・・・くれぇっ!!」
橙知が頭を振りながら叫ぶ。

「最初翠ちゃんに言われたときは半信半疑だったけど、
ネットに残ってる当時の写真とかを見ると、なんとなく納得できたわ。
目の下の泣きボクロといい、よく見れば確かに面影ある部分も多いわ。」

沙由美が持つスマホにはブランド服を身にまとった少女の写真が表示されている。
クールな流し目のロングヘアの美少女・・・男性であることを前提としてみれば、
橙知と面影の重なる部分が多かった。
「あぁ・・・そうだよ・・・俺が・・・大空みかんだよ!」
観念したように橙知がうなだれて言う。

「俺が・・・女装してたのは・・・母親に強制されたからだ・・・!
最初は母親が冗談のつもりで、俺の写真を少女モデルとして応募したんだ。
・・・そうしたら会社で評判になって・・・それからだ。
髪を伸ばすことも強要されたさ」
「じゃああの時急に転校したのは・・・」
圭太がいう。
「ああ、人気が出た俺の素性がマスコミにばれないようにするためさ。」
橙知が自嘲気味に笑う。
そういえば確かに橙知が転校した時期とモデルの活動の時期が重なっていた。
あの時は忙しい時期に急な転勤としか思わなかったが・・・。
どうやら裏にはそんな事情があったらしい。
「そしてそれから3年たって俺の背が伸びすぎて
子供服モデルとしては無理が出てきたんで引退・・・これでいいか?」
橙知が自嘲気味に笑う。だがその笑顔はどこか寂し気であった。
「橙ちゃん、ごめん・・・思い出したくなかったことを・・・」
「・・・ここまで暴かれちゃ俺の完敗だ。」

「だから僕に女装をやめさせようと必死だったんだね。」と圭太が言う。
「でも橙ちゃん、僕のために無理はしなくていいよ。これは僕自身の問題なんだ。」
「お前・・・」驚く橙知。
「しかしこれ、JK制服ととメイド服着た男の子同士の会話でなければ、
すごくいい場面なのよね・・・」沙由美が小声で言うのを葵が「しっ」と静止する。

圭太は続ける。
「確かに女装するのはいまだに抵抗あるし、普通のことではないと思っている。
事実恥ずかしい思いも散々したし、信じられないぐらい酷い目にも合った・・・
でもこの数ヶ月で色々な人に出会うことができたのは僕はよかったと思っているよ。」
「ケイ・・・」橙知が呆然とつぶやく。
「それに今の「僕」はずっと普段の自分の心を守るために、
そういった感情を引き受ける存在だと思ってたんだけど・・・
本当は『女装している自分』を受け入れるために生まれた存在だったんだと思う」
圭太が微笑む。
今までとは違う、とても穏やかな表情をしていた。
それはまるで、何かから解放されたかのような晴れやかな顔だった。
それをみた橙知が少し照れたような顔をして目をそらす。
「ね、こっちの圭ちゃんって普段よりも全然かわいいでしょ?」
と沙由美が橙知に囁く。
「・・・うるせえ」
橙知が口を尖らせて言う。
「ふふ・・・」それを見た沙由美が嬉しそうに笑った。
そして「おかえり!圭ちゃん!」と圭太を強く抱きしめた。
それはいつもの圭太へのスキンシップだったが、なぜかその時だけは違ったように感じられた。
圭太もまた、いつものように慌てることもなくただ黙って受け入れていた。

「あのな、ケイ」そこへ橙知が声をかける。
「え?何?」「・・・盛り上がってるとこ済まんが、そろそろこれ解け」
「・・・あ、ごめん。」

つづく
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