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第16話:それでも僕は・・・(その2)
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翌日から、圭太の難儀な日々が始まった。
朝、いつものように学校に行くと橙知が門で待ち構えていた。
「おはよう、橙ちゃん・・・何もそこまでしなくても」
圭太は恐る恐る聞いてみる。
橙知は始終無表情で、圭太を見ると踵を返して歩き出した。
どうやら本気でやる気らしい。
そのまま二人で教室に向かう。
道中はお互い無言だった。
(実際やりにくい・・・)
教室に入ると、普通にそれぞれの席に着く。
「よう、シロ」友人の雄一が圭太に声をかける。
「ああおはよう」と返す。
「・・・シロ、お前ちょっと気を付けた方がいいぜ。」と
雄一が小声で言う。「え?どうして?」
「あの転校生・・・さっきからずっとお前をにらんでるぞ」
橙知の方を見るとただでさえ鋭い眼光を
更に光らせてこちらを見ている。
「お前なんか恨みでも買ってるの?」
「うーん、身に覚えはないんだけどなぁ・・・」
圭太はと知らないふりをする。
「とにかく、あいつには注意したほうがいい。」
と真剣な面持ちで語る。
「わかった、ありがとう」と返すと雄一は自分の席に戻っていった。
(橙ちゃん・・・気持ちはわかるが色々と下手糞すぎる・・・)
これから先が思いやられると、圭太は深いため息を吐いた。
その日の授業中、圭太は橙知の視線を感じ続けていた。
流石に圭太も「授業中まで監視しても意味がない」
と注意するが
「お前を監視しているわけじゃない。これは俺自身の問題だ」
と言って聞かない。
圭太は仕方なく放置することにした。
とはいえとガードの仕方はガッチリで、
どこに行っても視線を感じており、
意地でも部室には向かわせないようにらみを利かせているようだ。
(これだとかえって目立つような気がするけどな・・・)
そんなことを思いながら、放課後を迎える。
1日目、結局橙知は圭太をガードしきったのだった。
(明日もこんなだと思うとちょっとうんざりしてくる・・・)
一方、沙由美たちは部室に集まり話し合っていた。
「今日1日様子を見て分かったのですが、
思った以上にガードが堅いですねぇ」
と真由里が言う。
「まぁ正攻法で行く相手ではありませんから
一計を案じた方がいいでしょう」と葵。
「タダの熱血バカかと思ってたけど、案外やるわね」
「とりあえず、今日のところは解散にしましょう。また作戦を考えます」
葵の一言でその日はお開きになった。
「あ、あと」と真由里が続ける。
「これ、今日は欠席している翠殿からの報告なのですが・・・」
と沙由美に耳打ちする。
「それ、なかなか興味深い情報ね。
真由里ちゃんも調査に協力してほしいわ」
「わかりました、沙由美先生。私にできることであれば」
真由里がそう言って、この日は解散した。
二日目。
相変わらず橙知のガードは固い。
(どこに行くにもこうピッタリ付いて来られるとなぁ・・・)
気持ちはありがたいが、流石の圭太もうんざりしてきていた。
そんな折、スマホにメッセージが入る。
送信者を見ると「@greengreen」とある。翠のアカウントだ。
(翠さんからだ。なんだろ?)
とそこに書かれていたことを見て圭太はしばし固まった。
「なん・・・だって・・・?!」その後、
圭太はすぐスマホである人物の名前を画像検索し
結果を見て「マジだ・・・」とだけ言うと、
すぐに沙由美にメッセージを飛ばした。
「どうした?」と不意に後ろから橙知に声を掛けられ、
圭太は慌ててメッセージ画面を終了させる。
「いや、なんでもないよ」と返すと、
圭太は橙知の顔をまじまじと見つめた。
「俺の顔がどうかしたか?」と聞かれ気まずそうに
「・・・ううん」とだけ答えた。
「何かあるなら言ってくれ。俺は君の味方だぞ。何でも相談に乗る」
橙知の言葉に、一瞬心が揺れる圭太だったが、
「いや、大丈夫だよ。ありがとう」と返した。
結局二日目も無事(?)に終了し、
残りはいよいよあと1日となった・・・。
その三日目も6限目が終了し、
これでもう圭太が学校の外に出れば
勝利確定というところまで来てしまった。
(あの保険医、結局何もしてこなかったが・・・何故だ?)
と疑問に思う橙知だったが、
ここでもう負けることはないだろうと思っていた。
しかし玄関前で、圭太がトイレに行くといい出し、
付近のトイレへと言ってしまう。
トイレに関しては以前にも「そこまでピッタリしてもらわなくていい」
と圭太に言われていたため、
橙知はトイレから4,5メートルほど離れた
廊下の角で待つことにした。
しかしこの廊下、下校時間ともあって人通りが非常に多い。
うっかりすると見失いそうなので、
トイレ入り口付近は特に注意深く見ていた。
・・・がしかし、圭太はいつまでたっても出てこなかった。
15分ほど経過したあたりで、「まさか?!」と思い見に行くと・・・
トイレはもぬけの殻であった・・・。
「くそ!油断した・・・!」と
橙知は自分の不甲斐なさを呪った。
しかしいつまでも落ち込んではいられない。
とにかく早く探さなければ。
いや、部室にさえ入らなければいいのだから、
今から行けば直前で止められるかもしれない・・・!
橙知は全速力で部室を目指した。
部室の前には誰もいなかったが、
橙知がドアににたどり着いた途端ドアが開いた。
その瞬間「チェックメイト!」
という沙由美の声が部屋の奥から聞こえた・・・。
橙知は観念して中に入った。
部室内には、沙由美と3人の女生徒の姿があった。
そのうちの1人が振り返ると
それは圭太であった・・・「橙ちゃん、ごめん・・・!」
「なっ?!お前がなぜここにいるんだ!?」と橙知は驚いた顔を見せる。
「ふぅん、なるほどねぇ」と沙由美はほくそ笑む。
「えぇ、この子があなたを出し抜いたのよ。そしてまんまとここまで来たわけ。」
と、葵がいう。
「しかし翠殿と服のサイズが一緒と聞いていたけど本当だったんですねぇ」
と真由里。
タネを明かせばこうだ。
まず、圭太が1F のトイレに入る。
そのトイレの窓付近で待機していた翠が
自分の替えの制服と変装道具入った袋を圭太に渡す。
着替え終わったら圭太の制服とカバンを翠に渡す。
トイレ付近では葵と真由里が待機し
橙知の視覚を遮り壁となる。
そしてそのまま反対側に行くことで橙知から逃げる・・・
ということだっった。
「くそ、俺の完敗だ・・・。」
橙知は潔く負けを認めた・・・が、まだ諦めてはいないようでもあった。
「でも俺は・・・絶対にあきらめないぞ!
最後の最後まで抗ってやる・・・!!」
「もうあきらめなさい、あなたには罰ゲームだって待ってるんだから」
バチッ!
沙由美がそういった途端に橙知の全身に衝撃が走った。
そしてそのまま橙知は昏倒する・・・。
「ゲーム・・・セット」
その後ろにはスタンガンを手にした翠がいた。
つづく
朝、いつものように学校に行くと橙知が門で待ち構えていた。
「おはよう、橙ちゃん・・・何もそこまでしなくても」
圭太は恐る恐る聞いてみる。
橙知は始終無表情で、圭太を見ると踵を返して歩き出した。
どうやら本気でやる気らしい。
そのまま二人で教室に向かう。
道中はお互い無言だった。
(実際やりにくい・・・)
教室に入ると、普通にそれぞれの席に着く。
「よう、シロ」友人の雄一が圭太に声をかける。
「ああおはよう」と返す。
「・・・シロ、お前ちょっと気を付けた方がいいぜ。」と
雄一が小声で言う。「え?どうして?」
「あの転校生・・・さっきからずっとお前をにらんでるぞ」
橙知の方を見るとただでさえ鋭い眼光を
更に光らせてこちらを見ている。
「お前なんか恨みでも買ってるの?」
「うーん、身に覚えはないんだけどなぁ・・・」
圭太はと知らないふりをする。
「とにかく、あいつには注意したほうがいい。」
と真剣な面持ちで語る。
「わかった、ありがとう」と返すと雄一は自分の席に戻っていった。
(橙ちゃん・・・気持ちはわかるが色々と下手糞すぎる・・・)
これから先が思いやられると、圭太は深いため息を吐いた。
その日の授業中、圭太は橙知の視線を感じ続けていた。
流石に圭太も「授業中まで監視しても意味がない」
と注意するが
「お前を監視しているわけじゃない。これは俺自身の問題だ」
と言って聞かない。
圭太は仕方なく放置することにした。
とはいえとガードの仕方はガッチリで、
どこに行っても視線を感じており、
意地でも部室には向かわせないようにらみを利かせているようだ。
(これだとかえって目立つような気がするけどな・・・)
そんなことを思いながら、放課後を迎える。
1日目、結局橙知は圭太をガードしきったのだった。
(明日もこんなだと思うとちょっとうんざりしてくる・・・)
一方、沙由美たちは部室に集まり話し合っていた。
「今日1日様子を見て分かったのですが、
思った以上にガードが堅いですねぇ」
と真由里が言う。
「まぁ正攻法で行く相手ではありませんから
一計を案じた方がいいでしょう」と葵。
「タダの熱血バカかと思ってたけど、案外やるわね」
「とりあえず、今日のところは解散にしましょう。また作戦を考えます」
葵の一言でその日はお開きになった。
「あ、あと」と真由里が続ける。
「これ、今日は欠席している翠殿からの報告なのですが・・・」
と沙由美に耳打ちする。
「それ、なかなか興味深い情報ね。
真由里ちゃんも調査に協力してほしいわ」
「わかりました、沙由美先生。私にできることであれば」
真由里がそう言って、この日は解散した。
二日目。
相変わらず橙知のガードは固い。
(どこに行くにもこうピッタリ付いて来られるとなぁ・・・)
気持ちはありがたいが、流石の圭太もうんざりしてきていた。
そんな折、スマホにメッセージが入る。
送信者を見ると「@greengreen」とある。翠のアカウントだ。
(翠さんからだ。なんだろ?)
とそこに書かれていたことを見て圭太はしばし固まった。
「なん・・・だって・・・?!」その後、
圭太はすぐスマホである人物の名前を画像検索し
結果を見て「マジだ・・・」とだけ言うと、
すぐに沙由美にメッセージを飛ばした。
「どうした?」と不意に後ろから橙知に声を掛けられ、
圭太は慌ててメッセージ画面を終了させる。
「いや、なんでもないよ」と返すと、
圭太は橙知の顔をまじまじと見つめた。
「俺の顔がどうかしたか?」と聞かれ気まずそうに
「・・・ううん」とだけ答えた。
「何かあるなら言ってくれ。俺は君の味方だぞ。何でも相談に乗る」
橙知の言葉に、一瞬心が揺れる圭太だったが、
「いや、大丈夫だよ。ありがとう」と返した。
結局二日目も無事(?)に終了し、
残りはいよいよあと1日となった・・・。
その三日目も6限目が終了し、
これでもう圭太が学校の外に出れば
勝利確定というところまで来てしまった。
(あの保険医、結局何もしてこなかったが・・・何故だ?)
と疑問に思う橙知だったが、
ここでもう負けることはないだろうと思っていた。
しかし玄関前で、圭太がトイレに行くといい出し、
付近のトイレへと言ってしまう。
トイレに関しては以前にも「そこまでピッタリしてもらわなくていい」
と圭太に言われていたため、
橙知はトイレから4,5メートルほど離れた
廊下の角で待つことにした。
しかしこの廊下、下校時間ともあって人通りが非常に多い。
うっかりすると見失いそうなので、
トイレ入り口付近は特に注意深く見ていた。
・・・がしかし、圭太はいつまでたっても出てこなかった。
15分ほど経過したあたりで、「まさか?!」と思い見に行くと・・・
トイレはもぬけの殻であった・・・。
「くそ!油断した・・・!」と
橙知は自分の不甲斐なさを呪った。
しかしいつまでも落ち込んではいられない。
とにかく早く探さなければ。
いや、部室にさえ入らなければいいのだから、
今から行けば直前で止められるかもしれない・・・!
橙知は全速力で部室を目指した。
部室の前には誰もいなかったが、
橙知がドアににたどり着いた途端ドアが開いた。
その瞬間「チェックメイト!」
という沙由美の声が部屋の奥から聞こえた・・・。
橙知は観念して中に入った。
部室内には、沙由美と3人の女生徒の姿があった。
そのうちの1人が振り返ると
それは圭太であった・・・「橙ちゃん、ごめん・・・!」
「なっ?!お前がなぜここにいるんだ!?」と橙知は驚いた顔を見せる。
「ふぅん、なるほどねぇ」と沙由美はほくそ笑む。
「えぇ、この子があなたを出し抜いたのよ。そしてまんまとここまで来たわけ。」
と、葵がいう。
「しかし翠殿と服のサイズが一緒と聞いていたけど本当だったんですねぇ」
と真由里。
タネを明かせばこうだ。
まず、圭太が1F のトイレに入る。
そのトイレの窓付近で待機していた翠が
自分の替えの制服と変装道具入った袋を圭太に渡す。
着替え終わったら圭太の制服とカバンを翠に渡す。
トイレ付近では葵と真由里が待機し
橙知の視覚を遮り壁となる。
そしてそのまま反対側に行くことで橙知から逃げる・・・
ということだっった。
「くそ、俺の完敗だ・・・。」
橙知は潔く負けを認めた・・・が、まだ諦めてはいないようでもあった。
「でも俺は・・・絶対にあきらめないぞ!
最後の最後まで抗ってやる・・・!!」
「もうあきらめなさい、あなたには罰ゲームだって待ってるんだから」
バチッ!
沙由美がそういった途端に橙知の全身に衝撃が走った。
そしてそのまま橙知は昏倒する・・・。
「ゲーム・・・セット」
その後ろにはスタンガンを手にした翠がいた。
つづく
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