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第7話:夏合宿2日目
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<前回までのあらすじ>
主人公白石圭太は美人保険医が顧問の『服飾文化研究会』に強引に入れられる。
しかしそこは服飾研究とは名ばかりのコスプレを楽しむ場所であった。
そこで圭太は言われるがままに女装して、顧問の沙由美と先輩部員の葵に
オモチャにされる日々を送っていた。
そして今回は沙由美先生と二人きりの夏合宿。
初日から痴態の限りを尽くす二人だった(あらすじここまで。)
合宿2日目の朝ー
圭太は旅館の部屋でぐったりとしていた。(※とりあえず教師と生徒なので部屋は別)
というか昨晩の一連の出来事を思い出して自己嫌悪に陥ってるといった方が正解かもしれない。
(一夏どころかこの数ヶ月で普通の高校生が経験できないことを山ほど経験してしまった・・・)
コンコン! ガチャッ! ドアを開ける音と共に入ってきたのは沙由美だった。
白衣を着ていないだけでかなり印象が違うなぁと思いつつ、ついまじまじと見てしまう。
すると突然抱きつかれてキスされた。
「うふふ、起きた」
「とっくに起きてます。また僕を襲う気ですか?」げんなりしたようにつぶやく。
「そうしたいのはやまやまなんだけど、今日はちょっと自由時間を設けるわ。」
「自由時間?」
「そう、夕方の5時まではお互い自由に動きましょ」
沙由美の話によると、午前中は1人で買い物に行くらしい。
「だからあなたも街を散策したり海水浴に行くのも自由よ」
とのことだ。
ちなみに海までは車で10分ほどの距離である。
その後沙由美は朝食の準備があるということで台所へ消えていった。
さてどうしたものか……正直迷っていた。
確かにここ最近部活ばかりで遊びに出かける暇もなかったし、
たまには一人になってみたいという気持ちもある。
どうしようか悩んでいるうちに時間は過ぎていき、結局僕は海に出かけることにした。
荷物をまとめ終えるとちょうどいいタイミングで沙由美が呼びかける。
「楽しんできてね。水着はあるの」
「ちゃんとありますから大丈夫です!それに女ものの水着ならお断りです!」
それを聞いた沙由美はからかうように「あら、自然にそんな考えに行っちゃう~」と笑いかける。
「・・・・・・・!」最近ちょっと毒され気味な圭太であった。
そんなわけで沙由美と分かれて旅館のロビーに向かうと、
この旅館の子であるユキさんがロビーの掃除をしていた。
ユキさんはこの旅館の女将の娘であり、この旅館の手伝いをよくしている。
圭太と同じ高校生で、背丈は160cmくらい。髪の色は黒で、後ろでポニテにまとめてある。
顔立ちはとても整っていて、将来美人になること間違いなしだろう。
ただ性格はやや引っ込み思案で大人しい。
「おはようございます圭太さん」
「おはよう、でも年も近いんだし敬語でなくてもいいのに」
「とはいってもお客様ですからね。あ、海水浴ですか?いってらっしゃい」
久々に聞く普通の女の子の対応にちょっとドキッとするも、圭太は海水浴場に向かった。
海水浴場につくと、圭太は一人水着に着替え、泳ぎまくっていた。
(こんな高校生らしい夏休みの楽しみ方もあるよな)と思いつつも
産毛すら存在しない己の体がちょっと気にしてしまう。
これは沙由美により首から下の毛はすべて処理することを厳命されているからだ。
特に股間に関しては水着の裏の布地と股間の地肌が直接触れ合ってるのはどうしても引っかかる。
(これは普通の高校生の悩みじゃないよな・・・)
でもとにかく今日は楽しもう!と泳ぎまくり海を満喫したら、あっという間に夕方になっていた。
旅館に戻るとすでに先に帰っていた沙由美が待っていた。
沙由美は「はいこれ」と紙袋を圭太に手渡す。そして去り際に
「後でそれ着て来てね」と言い残していった・・・。
(ああ、やっぱりか)とおおよその流れを察した圭太は覚悟を決めて部屋に戻り袋を確かめる。
中に入っていたのは白いサマーワンピースとセミロングのウィッグ、そしてメイク道具一式だった。
(普通の高校生の時間はおしまいってことか・・・)
圭太は促されるように着替え始めた。下着から何から身に着けるのだ。
ブラのホックをつけるのもメイクの手順もすっかり慣れてしまっている自分がちょっと情けない。
そして最後にワンピースを羽織ったところでドアがノックされた。
ガチャッ そこには私服姿の沙由美がいた。
普段見ない私服姿が新鮮だ。しかも今日の彼女はミニスカートを穿いている。
思わずじっと見つめてしまった圭太だったが、すぐに我に返り目をそらす。
女装姿を見て沙由美は「ふふふやっぱりかわいい」とほほ笑む。
「昼間はこれを買いに行ってたんですね・・・」
「ちょっとしたお詫びのつもりだったんだけどね」
「お詫び?」
「うん、昨日泣かせちゃったことに」
「・・・・・・・・・・・・!」
その言葉を聞いた途端、昨晩のことが思い出され、
圭太の顔は真っ赤になった。
「じゃあこれお願いね」そういうと、沙由美は圭太に麦わら帽子とメモ帳とお金を渡した。
「これは?」「せっかくだからこれからちょっとお使いに行ってきてもらおうかなと」
「え・・・!?」
「この先の商店街にあるお店だからすぐにわかるわよ」
「い、いやそうじゃなくて、この格好で?!」
「そうよ、頑張ってね。じゃあ昨日の公園で待ってるから」
そういうと沙由美はさっさと行ってしまった。
一人取り残された圭太は・・・「まだ夕方でしょ・・・」と力なくつぶやいた。
こうして圭太はその姿のままで外出することになった。
旅館を出ると目の前には長い一本道があり、
両脇にはたくさんの商店が立ち並んでいる。
しばらく歩くと海が見えてきた。
どうやらここは海岸ではなく、少し離れた漁港のようだ。
漁船がたくさん停泊しているのが見える。
それと水平線に沈もうとしてる夕日とのコントラストがとても美しい。
しかし圭太はそれどころではなかった。
(遠くの街だからだと思って…無茶ぶりにもほどがある!)
さっさと買い物を済ませてしまおう!と麦わら帽子を深くかぶり大股で早足で歩きだした。
その光景ははたで見ていると、大股で大通りを闊歩する華奢な女の子という
いささかシュールな光景だった。
商店街はそれなりに活気がある。
魚屋、八百屋、肉屋……様々な店が軒を連ねている。
そんな中、圭太は一軒のお店の前に立ち止まっていた。
(うーん、ここかぁ・・・)
そこは地元の小さなスーパーという感じのお店で、奥でおじいさんが店番をしている。
圭太は意を決して店に入り目的である
飲み物のペットボトルを2本選び出し、レジへと持っていく。
(どうか・・・どうか・・・男だとバレませんように・・・)圭太は心の中で祈っていた。
店番のおじいさんは圭太のことなどさして気にするわけでもなく会計を済ませていく。
圭太はさっさと商品を受け取ると、早足で店を出ようとするが・・・
「ちょっとあんた!」
「!!」店主にいきなり呼び止められ、心臓が止まりそうになる。
「おつり忘れちゃだめだよお嬢ちゃん」と店主のおじいさんが笑いながら言う。
どうやら圭太を女の子と認識しているようだ。
圭太は作り笑顔でそれを受け取り店を出た。
「うう、寿命が縮む・・・」冷や汗だらけになる圭太だった。
買い物も終わったし、あとは一刻も早く沙由美先生の待つ公園に行こう!
股間と同じく日々手入れをかかしてない脇に汗がにじむ。と
にかくこのワンピース姿で、人の多い道を歩かなければいいんだ。
そう思い、再び歩みを進めようとした時だった。
ドンッ!!
(あ・・・)
人とぶつかってしまった。
しまった、こんな時に人にぶつかってしまうなんて。
恐る恐る顔を見ると…それはユキさんだった。
(なんでこの人がここに!?)
あまりに突然のことに固まっていると、ユキさんが後ろに向かって叫ぶ
「ちょっと!やめてください」
「だから~ちょっと飲みに付き合ってくれってお願いしてるだろぁ~」
よく見るとかなり酔った感じの中年男性が、ユキさんの肩をつかんでいる。
どうやら酔っ払いに絡まれているようだ。
周りにいる通行人も遠巻きに見ていて誰も助けようとしない。
圭太はとっさに持っていた麦わら帽子を脱ぎ捨てると、
男性の方に走り寄った。
そしてそのまま男性の腕をつかみ、自分の方へ引き寄せる。
当然男性はバランスを崩すので、すかさず股間に一撃を食らわす。
中年男はそのままうずくまって失神した。
「これでも男子高校生なんだ・・・なめんな!」
と小さくつぶやくと、ユキさんの方を向いた。
「大丈夫?ケガとかしてない」
「いえ、大したことはありません。」
「どうしてこんなところにいるの?」
「ちょっと買い出しに出てたら、さっきの人に絡まれて
・・・ありがとうございます。」
「気を付けないとだめだよ。ユキさんは可愛いから」
「あの・・・ところであなたは?」
・・・・・・・・!!!
ここで圭太は今の自分の姿に気が付いた。
「じゃ、じゃあ気を付けてお嬢さん!」ととってつけたように言うと、
慌てて麦わら帽子を拾って全速力でその場を去った。
(見られた?!・・・見られた?!よりによってユキさんに?!この姿を?!)
走りながら頭の中がグルグルする。
(だ、大丈夫だ!さっきのおじいさんだって気が付かなかったじゃないか!)
圭太は祈るように自分に言い聞かせると、沙由美の待つ公園へ向かった。
息を切らせて走ると、すぐに目的地が見えてきた。
日も暮れてきて、あたりは薄暗くなってきている。
そこには昨日のベンチに座る沙由美の姿があった。
圭太はその姿を見て安心すると、ゆっくりと近づいていく。
「はいごくろうさま。ちゃんとお使いできていいこいいこ」と圭太の頭をなでた。
「もう、死ぬかと思いましたよ!」「ふふ、でもスリルあったでしょ?」
「・・・心臓に悪すぎです!」圭太が汗だくで答える。
そうして圭太から飲み物が入った袋を受け取ると、1本を圭太に渡す。
「え・・・」「だから言ったでしょ、お詫びって。」
沙由美からの思わぬセリフに圭太は拍子抜けした顔をした。
「だから、昨日裸にひんむいて、おもらしまでさせて泣かせちゃったことを・・・」
「お願いですから全部口に出さないでください!」
圭太があわてて言う。
どうやら本当に反省しているらしい。
圭太としては、いつものようにからかわれると思っていただけに意外だった。
「ほら、ここの夜景本当にきれいなんだから」沙由美が無邪気にほほ笑む。
「確かにきれいですね、誰かさんのせいで
昨日はまともに見られなくて気が付かなかったけど。」
「もう意地悪なんだから」
「今日は襲ったりは・・・」「しません!」
沙由美がちょっと怒ったような顔を見せる。
「なら、どうして今日は僕にこの格好を?」
「私が可愛いと思ったからよ」
「・・・・」
この人のこういうところが憎めなくて、
自分があの部をやめられない理由なんだなと思う圭太だった。
つづく
主人公白石圭太は美人保険医が顧問の『服飾文化研究会』に強引に入れられる。
しかしそこは服飾研究とは名ばかりのコスプレを楽しむ場所であった。
そこで圭太は言われるがままに女装して、顧問の沙由美と先輩部員の葵に
オモチャにされる日々を送っていた。
そして今回は沙由美先生と二人きりの夏合宿。
初日から痴態の限りを尽くす二人だった(あらすじここまで。)
合宿2日目の朝ー
圭太は旅館の部屋でぐったりとしていた。(※とりあえず教師と生徒なので部屋は別)
というか昨晩の一連の出来事を思い出して自己嫌悪に陥ってるといった方が正解かもしれない。
(一夏どころかこの数ヶ月で普通の高校生が経験できないことを山ほど経験してしまった・・・)
コンコン! ガチャッ! ドアを開ける音と共に入ってきたのは沙由美だった。
白衣を着ていないだけでかなり印象が違うなぁと思いつつ、ついまじまじと見てしまう。
すると突然抱きつかれてキスされた。
「うふふ、起きた」
「とっくに起きてます。また僕を襲う気ですか?」げんなりしたようにつぶやく。
「そうしたいのはやまやまなんだけど、今日はちょっと自由時間を設けるわ。」
「自由時間?」
「そう、夕方の5時まではお互い自由に動きましょ」
沙由美の話によると、午前中は1人で買い物に行くらしい。
「だからあなたも街を散策したり海水浴に行くのも自由よ」
とのことだ。
ちなみに海までは車で10分ほどの距離である。
その後沙由美は朝食の準備があるということで台所へ消えていった。
さてどうしたものか……正直迷っていた。
確かにここ最近部活ばかりで遊びに出かける暇もなかったし、
たまには一人になってみたいという気持ちもある。
どうしようか悩んでいるうちに時間は過ぎていき、結局僕は海に出かけることにした。
荷物をまとめ終えるとちょうどいいタイミングで沙由美が呼びかける。
「楽しんできてね。水着はあるの」
「ちゃんとありますから大丈夫です!それに女ものの水着ならお断りです!」
それを聞いた沙由美はからかうように「あら、自然にそんな考えに行っちゃう~」と笑いかける。
「・・・・・・・!」最近ちょっと毒され気味な圭太であった。
そんなわけで沙由美と分かれて旅館のロビーに向かうと、
この旅館の子であるユキさんがロビーの掃除をしていた。
ユキさんはこの旅館の女将の娘であり、この旅館の手伝いをよくしている。
圭太と同じ高校生で、背丈は160cmくらい。髪の色は黒で、後ろでポニテにまとめてある。
顔立ちはとても整っていて、将来美人になること間違いなしだろう。
ただ性格はやや引っ込み思案で大人しい。
「おはようございます圭太さん」
「おはよう、でも年も近いんだし敬語でなくてもいいのに」
「とはいってもお客様ですからね。あ、海水浴ですか?いってらっしゃい」
久々に聞く普通の女の子の対応にちょっとドキッとするも、圭太は海水浴場に向かった。
海水浴場につくと、圭太は一人水着に着替え、泳ぎまくっていた。
(こんな高校生らしい夏休みの楽しみ方もあるよな)と思いつつも
産毛すら存在しない己の体がちょっと気にしてしまう。
これは沙由美により首から下の毛はすべて処理することを厳命されているからだ。
特に股間に関しては水着の裏の布地と股間の地肌が直接触れ合ってるのはどうしても引っかかる。
(これは普通の高校生の悩みじゃないよな・・・)
でもとにかく今日は楽しもう!と泳ぎまくり海を満喫したら、あっという間に夕方になっていた。
旅館に戻るとすでに先に帰っていた沙由美が待っていた。
沙由美は「はいこれ」と紙袋を圭太に手渡す。そして去り際に
「後でそれ着て来てね」と言い残していった・・・。
(ああ、やっぱりか)とおおよその流れを察した圭太は覚悟を決めて部屋に戻り袋を確かめる。
中に入っていたのは白いサマーワンピースとセミロングのウィッグ、そしてメイク道具一式だった。
(普通の高校生の時間はおしまいってことか・・・)
圭太は促されるように着替え始めた。下着から何から身に着けるのだ。
ブラのホックをつけるのもメイクの手順もすっかり慣れてしまっている自分がちょっと情けない。
そして最後にワンピースを羽織ったところでドアがノックされた。
ガチャッ そこには私服姿の沙由美がいた。
普段見ない私服姿が新鮮だ。しかも今日の彼女はミニスカートを穿いている。
思わずじっと見つめてしまった圭太だったが、すぐに我に返り目をそらす。
女装姿を見て沙由美は「ふふふやっぱりかわいい」とほほ笑む。
「昼間はこれを買いに行ってたんですね・・・」
「ちょっとしたお詫びのつもりだったんだけどね」
「お詫び?」
「うん、昨日泣かせちゃったことに」
「・・・・・・・・・・・・!」
その言葉を聞いた途端、昨晩のことが思い出され、
圭太の顔は真っ赤になった。
「じゃあこれお願いね」そういうと、沙由美は圭太に麦わら帽子とメモ帳とお金を渡した。
「これは?」「せっかくだからこれからちょっとお使いに行ってきてもらおうかなと」
「え・・・!?」
「この先の商店街にあるお店だからすぐにわかるわよ」
「い、いやそうじゃなくて、この格好で?!」
「そうよ、頑張ってね。じゃあ昨日の公園で待ってるから」
そういうと沙由美はさっさと行ってしまった。
一人取り残された圭太は・・・「まだ夕方でしょ・・・」と力なくつぶやいた。
こうして圭太はその姿のままで外出することになった。
旅館を出ると目の前には長い一本道があり、
両脇にはたくさんの商店が立ち並んでいる。
しばらく歩くと海が見えてきた。
どうやらここは海岸ではなく、少し離れた漁港のようだ。
漁船がたくさん停泊しているのが見える。
それと水平線に沈もうとしてる夕日とのコントラストがとても美しい。
しかし圭太はそれどころではなかった。
(遠くの街だからだと思って…無茶ぶりにもほどがある!)
さっさと買い物を済ませてしまおう!と麦わら帽子を深くかぶり大股で早足で歩きだした。
その光景ははたで見ていると、大股で大通りを闊歩する華奢な女の子という
いささかシュールな光景だった。
商店街はそれなりに活気がある。
魚屋、八百屋、肉屋……様々な店が軒を連ねている。
そんな中、圭太は一軒のお店の前に立ち止まっていた。
(うーん、ここかぁ・・・)
そこは地元の小さなスーパーという感じのお店で、奥でおじいさんが店番をしている。
圭太は意を決して店に入り目的である
飲み物のペットボトルを2本選び出し、レジへと持っていく。
(どうか・・・どうか・・・男だとバレませんように・・・)圭太は心の中で祈っていた。
店番のおじいさんは圭太のことなどさして気にするわけでもなく会計を済ませていく。
圭太はさっさと商品を受け取ると、早足で店を出ようとするが・・・
「ちょっとあんた!」
「!!」店主にいきなり呼び止められ、心臓が止まりそうになる。
「おつり忘れちゃだめだよお嬢ちゃん」と店主のおじいさんが笑いながら言う。
どうやら圭太を女の子と認識しているようだ。
圭太は作り笑顔でそれを受け取り店を出た。
「うう、寿命が縮む・・・」冷や汗だらけになる圭太だった。
買い物も終わったし、あとは一刻も早く沙由美先生の待つ公園に行こう!
股間と同じく日々手入れをかかしてない脇に汗がにじむ。と
にかくこのワンピース姿で、人の多い道を歩かなければいいんだ。
そう思い、再び歩みを進めようとした時だった。
ドンッ!!
(あ・・・)
人とぶつかってしまった。
しまった、こんな時に人にぶつかってしまうなんて。
恐る恐る顔を見ると…それはユキさんだった。
(なんでこの人がここに!?)
あまりに突然のことに固まっていると、ユキさんが後ろに向かって叫ぶ
「ちょっと!やめてください」
「だから~ちょっと飲みに付き合ってくれってお願いしてるだろぁ~」
よく見るとかなり酔った感じの中年男性が、ユキさんの肩をつかんでいる。
どうやら酔っ払いに絡まれているようだ。
周りにいる通行人も遠巻きに見ていて誰も助けようとしない。
圭太はとっさに持っていた麦わら帽子を脱ぎ捨てると、
男性の方に走り寄った。
そしてそのまま男性の腕をつかみ、自分の方へ引き寄せる。
当然男性はバランスを崩すので、すかさず股間に一撃を食らわす。
中年男はそのままうずくまって失神した。
「これでも男子高校生なんだ・・・なめんな!」
と小さくつぶやくと、ユキさんの方を向いた。
「大丈夫?ケガとかしてない」
「いえ、大したことはありません。」
「どうしてこんなところにいるの?」
「ちょっと買い出しに出てたら、さっきの人に絡まれて
・・・ありがとうございます。」
「気を付けないとだめだよ。ユキさんは可愛いから」
「あの・・・ところであなたは?」
・・・・・・・・!!!
ここで圭太は今の自分の姿に気が付いた。
「じゃ、じゃあ気を付けてお嬢さん!」ととってつけたように言うと、
慌てて麦わら帽子を拾って全速力でその場を去った。
(見られた?!・・・見られた?!よりによってユキさんに?!この姿を?!)
走りながら頭の中がグルグルする。
(だ、大丈夫だ!さっきのおじいさんだって気が付かなかったじゃないか!)
圭太は祈るように自分に言い聞かせると、沙由美の待つ公園へ向かった。
息を切らせて走ると、すぐに目的地が見えてきた。
日も暮れてきて、あたりは薄暗くなってきている。
そこには昨日のベンチに座る沙由美の姿があった。
圭太はその姿を見て安心すると、ゆっくりと近づいていく。
「はいごくろうさま。ちゃんとお使いできていいこいいこ」と圭太の頭をなでた。
「もう、死ぬかと思いましたよ!」「ふふ、でもスリルあったでしょ?」
「・・・心臓に悪すぎです!」圭太が汗だくで答える。
そうして圭太から飲み物が入った袋を受け取ると、1本を圭太に渡す。
「え・・・」「だから言ったでしょ、お詫びって。」
沙由美からの思わぬセリフに圭太は拍子抜けした顔をした。
「だから、昨日裸にひんむいて、おもらしまでさせて泣かせちゃったことを・・・」
「お願いですから全部口に出さないでください!」
圭太があわてて言う。
どうやら本当に反省しているらしい。
圭太としては、いつものようにからかわれると思っていただけに意外だった。
「ほら、ここの夜景本当にきれいなんだから」沙由美が無邪気にほほ笑む。
「確かにきれいですね、誰かさんのせいで
昨日はまともに見られなくて気が付かなかったけど。」
「もう意地悪なんだから」
「今日は襲ったりは・・・」「しません!」
沙由美がちょっと怒ったような顔を見せる。
「なら、どうして今日は僕にこの格好を?」
「私が可愛いと思ったからよ」
「・・・・」
この人のこういうところが憎めなくて、
自分があの部をやめられない理由なんだなと思う圭太だった。
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