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第12話 化け物と友達になろう!

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 ――その日の深夜。

「眠れない……」

 夕食時の会話が原因で、僕の目は完全に冴えていた。

 今まで遭遇した謎の化け物たちが実在していると思うと、どうしても気になってしまうのだ。

「もしかして……今日も公園に何かいるのかな……」

 僕は天井を見つめながらそう呟いた。

 もし僕以外の――超能力を使えない人が、この前みたいな鬼と遭遇した場合、どうなってしまうのだろうか? 

 やはり、なす術なく食べられてしまうのかもしれない。

 もし、そんな危険な存在に湊や渚が出会ってしまったら……?

「放ってはおけない……!」

 僕はきっと後悔するだろう。自分だけが倒せる危険な存在が家の近くの公園をうろついていたことを知っておきながら、何も対策をしなかったことに。

「悪霊退散しないと……!」

 僕はベッドから這い出し、パジャマの上から長袖の黒いパーカーを着た。今日から、自宅付近の平和を守る警備員――名付けて自宅警備員になるのだ!

 ……他の呼び名を考えておこう。

 そそくさと自分の部屋を後にして、家族を起こさないように階段を降り、玄関から家の外へ出る。

 そして、すぐ近くにある昭間公園へと一直線に向かった。

 ――それからしばらく散歩道を歩いてみたけど、特に何かの気配は感じない。

「まあ、そんな簡単に化け物と遭遇するはずないよね……よかった……」

 ほっとしたその時。

「おい、そこのお前」

 突然、何者かに呼び止められた。場所は前と同じく、並木道の真ん中あたりである。

 振り返るとそこに立っていたのは、黒い着物を着た長身の男の人だった。

 前とは少し色が違うけど、ものすごいデジャブを感じる。

「我が名は悪路王あくろおう。この世界の人間ども全てを滅ぼし、地上を我々鬼の楽園とする為、再び顕現した!」

 僕が戸惑っていると、男の人は自己紹介してくる。珍しい名前すぎてよく聞き取れなかった。

 ――でも間違いない。前の人と同じようなこと言ってるし、この人も鬼だ!

 念力で爆散させようとした次の瞬間、男の人が言った。

「……一つ聞きたいのだが、お前は私より先にこちらへ顕現した我が弟、大嶽丸の家畜となった人間か?」
「ぇ、あ、あっ……」

 なんか……前の人の知り合いっぽい! あの人の後を追いかけてここに来たんだ! まさかの繋がりに、僕はちょっとした感動を覚える。

「アイツは心優しいからな。下等で虫けらの如き人間どもでも、有効に利用してやろうと考えていた。こちらで会うのが楽しみだなァ」
「あっ…………!」

 しかし、感動はすぐに悲しみに変わった。

 どうしよう……僕その人のこと悪霊退散しちゃった……! 気まずい……。でも悪い鬼だったからああするしかなかったし……。

「ご、ごめんなさい、あの、その人は…………」

 とりあえず謝っておこう。

 自分の弟の仇とか、絶対許せないけど……。

「あァ?」
「僕がおととい、爆散させました……」

 そう伝えると、男の人は大声で笑った。

「お前のように下等でひ弱な虫けらの雑魚が、我が弟を祓えるはずがないだろう。巫山戯《ふざけ》たことをぬかすなよれ者」
「ぁ……っはい」
「極めて不愉快だ! お前には死すら凌駕するほどの恐怖と苦痛を与えてやるッ! 身の程を知れ虫けらァ!」

 案の定、男の人は赤い鬼に変身し始めたので、僕はすかさず念力を発動させて爆発四散させた。

「おおたけまるーーーーッ!」

 悲しい断末魔と共に消滅する何とか王さん。これじゃあ、まるで僕が悪者みたいだ……。

 人を襲うほうがいけないはずなのに、何故か罪悪感が込み上げてくる……。

「他にもいないか探そ……」

 ――でも仕方のない犠牲だ。

 僕は気持ちを切り替え、探索を再開した。悪霊は退散させないといけない。

 それから三分ほど歩きまわっていると、今度は視界の端で怪しい影を捉える。

 道端の林の中に、一つ目で毛むくじゃらの化け物が座っていたのだ。

「ま、また見つけた……!」

 あまりにもすぐ化け物と遭遇するので、僕は困惑する。

 この公園……化け物の巣窟じゃん! 昼間はみんな普通に散歩してるのに!

「――オマエ、オレのことが視えているな?」

 僕があたふたしていると、向こうが先に話しかけてきた。声が高くてちょっと可愛いかも。ゆるキャラみたいだ。

 何も言わずに爆散させようとしてたけど、思いとどまる。

 もしかしたら人間に友好的な化け物なのかもしれない。話も聞かず一方的に爆散させていたら、本当に僕が悪者になってしまう。

 幸い、こんな感じの人の形をしていない化け物が相手なら僕のコミュ障もあまり発動しないし、まずはお話ししてみよう。

 言葉が通じるんだから、話せば分かり合える可能性だってあるよね! よく見ると熊みたいで可愛いし、声も可愛かったし、ひょっとしたら友達になれるかも?

 ――人と化け物、相容れぬ二人の間に芽生えたのは確かな友情だった。この夏、最大の感動がスクリーンへやってくる! 全米が泣いた! 涙の超大作!

 …………みたいな。

「……ば、ばっちり視えてるよ! 君は――」
「シネェ!」

 その瞬間、一つ目の化け物は全身の毛を針みたいに飛ばしてきた。

 僕は身体の周囲に念力で展開したバリアによってそれを防ぐ。

「なにィ?!」

 そして化け物に向かって念力を飛ばし、いつものように爆散させた。

「ぐわああああああああああああああッ!?」

 どうか安らかに。

「短い夢だった……!」

 所詮は化け物。やはり人とは分かり合えない。

 言葉の通じる人間同士ですら分かり合えないのだから当然だ。

 僕は自分にそう言い聞かせた。

「……………………」

 よく考えたら熊も危ないし、可愛いからって油断したらいけないな。

「……次、行こ」

 本日二匹目の化け物を無事に退治し終え、悲しみに包まれていたその時。

「――そこのキミ」

 突然、後ろから声をかけられた。
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