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第38話 二年後
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メリア先生とダリア先生に極限までしごかれた後、サリア先生に極限まで癒されるという、痴女と聖女に挟まれる日々が始まってから、およそ二年の歳月が経過した。
――つまり、俺は十二歳になったということだ。
ちなみに、精霊祭の「力比べの儀」には俺が強すぎたせいで出場できなくなっている。殿堂入りというやつだな。
一年前の大会で優勝したのは、俺が教えてまともな魔力操作を覚えたドロシア、準優勝が同じく俺の教えで魔力の扱いを覚えたレスター、そして三位が何かに目覚めてしまったギルバートだった。ギルバートはレスターが相手になるとものすごく弱体化するのだ。
ホロウズ家が揃って優勝と準優勝をかっさらってしまったので、教団に目を付けられた可能性が高い。二人の身辺には警戒しておいた方が良さそうだ。
しかし、今のレスターとドロシアは原作よりもかなり強くなっていると思うがな。場合によっては教団から送り込まれた刺客の方が危ないかもしれない。
とはいえ楽観視は良くないが。
……とまあ、そんな感じで俺は平和な日々を過ごしていた。
「お兄さまっ! 今日も勝負して!」
俺がいつものように庭で訓練をしていると、プリシラが駆け寄ってきて言う。
最近は先生達が休ませてくれることが多くなった。これ以上は無理に鍛えるよりも適度に休んだ方が良いとのことらしいが……まあ、あの二人の言うことなら素直に従っておこう。
おかげで、プリシラと一緒に過ごす時間も増えたことだしな。
「勝負って……またするの?」
「お兄さまが認めてくれるまでやるっ!」
だが最近は、すっかり元気になったプリシラが大会に出たがるので非常に困っている。まさか魔力回復がここまで効くとは思わなかった。俺の才能と魔石の力が恐ろしい。
「プリシラは強いよ。僕の妹なんだから。……これで良いでしょ?」
「そうゆうことじゃないのっ!」
実は一年ほど前から少しだけ俺が魔術や剣術を教えているから、出場すれば良い所まで勝ち進むとは思うが……俺は妹がボロボロに傷つくところなんか見たくないぞ!
「うーん…………」
……とはいえ、本人の想いはしっかりと聞いておくべきだよな。
「どうしてそこまでして大会に出たいの?」
俺はプリシラに問いかける。
「私、お兄さまを護れるくらい強くなるって決めたのっ!」
俺を護る必要はそれほどないと思うが。
「だから、まずは大会に出て優勝しないとっ!」
向上心がすごいな。
「それで、もしお兄さまに勝てたら……」
言いかけて、顔を赤らめるプリシラ。
「僕に勝てたら……?」
「そ、それはひみつ!」
「…………」
一体何を要求されるんだ。少し怖いぞ……!
「……お兄さまだって……ドロシアちゃんみたいに強いコが好きなんでしょ……?」
俺が内心怯えていると、プリシラは独り言を呟くように言った。
「いや、普通に可愛い子が好きだけど……」
「そうやって誤魔化さないでっ! 可愛くて強いコが好きなくせに~っ!」
目を潤ませるプリシラ。
やれやれ、俺は本当の言っているんだがな。他人にはそこまで強さを求めていないぞ。
「別に弱いからって嫌ったりはしないよ。……だいたい、今はそういう話をしてるんじゃないでしょ?」
「そういう話だもんっ! だからお兄さまと戦うの~っ!」
「…………?」
悲しいことに、俺ではプリシラの気持ちを理解してやることが出来ない。
前は病弱で華奢で繊細だったのに、どうして強さを追い求める戦闘民族に成長してしまったんだ……!
……と思ったけど、よく考えたら前から全力で突進してくるような妹だったな。
元気になればこんな感じか。何も変わっていないようなので安心した。
「……分かった。じゃあ、今日も僕から一本取れたらプリシラの勝ちでいいよ」
観念した俺は、いつものように相手をしてやることにする。
「うん!」
「好きなタイミングで来て」
俺は言いながら片手で木剣を構えた。
いくら試合とはいえ、可愛い妹に攻撃することなど不可能である。従って、全力で防御する俺から一本を奪えたらプリシラの勝ちということにしてある。
「うおーーーーーーっ!」
木剣を構えてしばらくこちらを見つめた後、叫びながら飛びかかってくるプリシラ。
「えいっ! えいっ! えいっ! おりゃーーーーっ!」
「くっ……!」
正直、最近は本気で相手をしないと負けてしまいそうだ。どうやら打撃に魔力を乗せているらしく、一撃一撃がすごく重い。
メリア先生とダリア先生もプリシラの異常な才能に気付き始めている。……特にダリア先生の視線が熱い。
だが……痴女に妹を渡してなるものか……! プリシラの服の露出が増えたらどう責任を取ってくれるんだ!
「なかなか……やるねっ!」
「おりゃーーーーーーーっ!」
「わぁっ?!」
プリシラが一際大きく振りかぶって木剣を振り下ろすと、俺の持っていた木剣が粉々に弾け飛んだ。
「……あーっ! 壊しちゃったから反則負けだぁ……」
消し飛んだ俺の木剣を見て落ち込むプリシラ。
「い、いやぁ……これは……プリシラの勝ちでいいよ……」
「ほんと?! やったー!」
あれ? 俺の妹……強くなりすぎじゃないか?
――つまり、俺は十二歳になったということだ。
ちなみに、精霊祭の「力比べの儀」には俺が強すぎたせいで出場できなくなっている。殿堂入りというやつだな。
一年前の大会で優勝したのは、俺が教えてまともな魔力操作を覚えたドロシア、準優勝が同じく俺の教えで魔力の扱いを覚えたレスター、そして三位が何かに目覚めてしまったギルバートだった。ギルバートはレスターが相手になるとものすごく弱体化するのだ。
ホロウズ家が揃って優勝と準優勝をかっさらってしまったので、教団に目を付けられた可能性が高い。二人の身辺には警戒しておいた方が良さそうだ。
しかし、今のレスターとドロシアは原作よりもかなり強くなっていると思うがな。場合によっては教団から送り込まれた刺客の方が危ないかもしれない。
とはいえ楽観視は良くないが。
……とまあ、そんな感じで俺は平和な日々を過ごしていた。
「お兄さまっ! 今日も勝負して!」
俺がいつものように庭で訓練をしていると、プリシラが駆け寄ってきて言う。
最近は先生達が休ませてくれることが多くなった。これ以上は無理に鍛えるよりも適度に休んだ方が良いとのことらしいが……まあ、あの二人の言うことなら素直に従っておこう。
おかげで、プリシラと一緒に過ごす時間も増えたことだしな。
「勝負って……またするの?」
「お兄さまが認めてくれるまでやるっ!」
だが最近は、すっかり元気になったプリシラが大会に出たがるので非常に困っている。まさか魔力回復がここまで効くとは思わなかった。俺の才能と魔石の力が恐ろしい。
「プリシラは強いよ。僕の妹なんだから。……これで良いでしょ?」
「そうゆうことじゃないのっ!」
実は一年ほど前から少しだけ俺が魔術や剣術を教えているから、出場すれば良い所まで勝ち進むとは思うが……俺は妹がボロボロに傷つくところなんか見たくないぞ!
「うーん…………」
……とはいえ、本人の想いはしっかりと聞いておくべきだよな。
「どうしてそこまでして大会に出たいの?」
俺はプリシラに問いかける。
「私、お兄さまを護れるくらい強くなるって決めたのっ!」
俺を護る必要はそれほどないと思うが。
「だから、まずは大会に出て優勝しないとっ!」
向上心がすごいな。
「それで、もしお兄さまに勝てたら……」
言いかけて、顔を赤らめるプリシラ。
「僕に勝てたら……?」
「そ、それはひみつ!」
「…………」
一体何を要求されるんだ。少し怖いぞ……!
「……お兄さまだって……ドロシアちゃんみたいに強いコが好きなんでしょ……?」
俺が内心怯えていると、プリシラは独り言を呟くように言った。
「いや、普通に可愛い子が好きだけど……」
「そうやって誤魔化さないでっ! 可愛くて強いコが好きなくせに~っ!」
目を潤ませるプリシラ。
やれやれ、俺は本当の言っているんだがな。他人にはそこまで強さを求めていないぞ。
「別に弱いからって嫌ったりはしないよ。……だいたい、今はそういう話をしてるんじゃないでしょ?」
「そういう話だもんっ! だからお兄さまと戦うの~っ!」
「…………?」
悲しいことに、俺ではプリシラの気持ちを理解してやることが出来ない。
前は病弱で華奢で繊細だったのに、どうして強さを追い求める戦闘民族に成長してしまったんだ……!
……と思ったけど、よく考えたら前から全力で突進してくるような妹だったな。
元気になればこんな感じか。何も変わっていないようなので安心した。
「……分かった。じゃあ、今日も僕から一本取れたらプリシラの勝ちでいいよ」
観念した俺は、いつものように相手をしてやることにする。
「うん!」
「好きなタイミングで来て」
俺は言いながら片手で木剣を構えた。
いくら試合とはいえ、可愛い妹に攻撃することなど不可能である。従って、全力で防御する俺から一本を奪えたらプリシラの勝ちということにしてある。
「うおーーーーーーっ!」
木剣を構えてしばらくこちらを見つめた後、叫びながら飛びかかってくるプリシラ。
「えいっ! えいっ! えいっ! おりゃーーーーっ!」
「くっ……!」
正直、最近は本気で相手をしないと負けてしまいそうだ。どうやら打撃に魔力を乗せているらしく、一撃一撃がすごく重い。
メリア先生とダリア先生もプリシラの異常な才能に気付き始めている。……特にダリア先生の視線が熱い。
だが……痴女に妹を渡してなるものか……! プリシラの服の露出が増えたらどう責任を取ってくれるんだ!
「なかなか……やるねっ!」
「おりゃーーーーーーーっ!」
「わぁっ?!」
プリシラが一際大きく振りかぶって木剣を振り下ろすと、俺の持っていた木剣が粉々に弾け飛んだ。
「……あーっ! 壊しちゃったから反則負けだぁ……」
消し飛んだ俺の木剣を見て落ち込むプリシラ。
「い、いやぁ……これは……プリシラの勝ちでいいよ……」
「ほんと?! やったー!」
あれ? 俺の妹……強くなりすぎじゃないか?
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