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第21話 狂わされた者たち
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レスターとギルバートの試合は引き分けに終わった。
まさかトーナメント戦で引き分けなどという判定が下るとは思っていなかったが、二人とも決勝戦をする余力は残っていなさそうだったので仕方のないことなのだろう。
――というわけで、今回の大会の優勝者は俺ということになるな。
「力比べの儀を最後まで戦い抜いたアラン・ディンロードを、ここに表彰する!」
急に出てきた元老院の偉そうな爺さんが、俺に向かって言った。
「ありがとうございます……」
闘技場の中心で、爺さんから子供が好きそうな感じの帯がカラフルな金ぴかメダルを首にかけられた俺は、引きつった笑顔でお礼を言う。
「おにーちゃんおめでとーっ!」
プリシラは祝福してくれているが、いまいち煮え切らない感じだ。
この大会でやったこと、女の子をいたぶって失禁させただけじゃん。ド変態かよ。すでにシスコン気味なんだからその称号はもう間に合ってるぞ。
「…………はぁ」
「おい、見ろ! あいつ……優勝したのにまだ足りないって顔してやがる……!」
「同年代のガキじゃ相手にならないってか? どこまで化け物なんだ……ッ!」
おまけに変な誤解までされてるし。
せめて表彰されてる間は、もうちょっと頑張って笑わないと。
「あ、あはは……」
ちなみに、気を失って治療所へ搬送されたギルバートとレスターや、乙女の尊厳を傷つけられて治療所で寝込んでいるドロシアは表彰式に参加していない。
そのせいで余計に俺一人に注目が集まることになっているのだ。
全員二位という扱いになるので、後でメダルは貰えるらしいが……思っていたよりゆるい感じの大会だったのかもしれない。
実に煮え切らん。
「お集まりいただいた皆様、どうぞアラン・ディンロードに盛大な拍手を!」
司会の言葉で、会場全体が拍手に包まれる。
「おにーちゃんすごーいっ!」
「ニナは……感動の涙で前が見えませんっ!」
「当然の結果だ。アランくんが優勝しないわけがないからな!」
「初戦で魔力解放を使った時はびっくりしたけれど……アランちゃんが誰も殺さずに優勝できて良かったわ!」
――そんなこんなで大会は無事に閉幕するのだった。
*
表彰式を終えて一度控室へ戻ると、見覚えのある二つの影が居残っていた。
「うぅっ……もうお嫁に行けなぁい……っ!」
ドロシア・ホロウズと、
「あれが……おとこ……? なぜいい匂いがした……?」
ギルバート・レーヴァンである。
二人とも椅子に腰かけたまま何やら思い悩んでいる様子だ。
周りが見えていないのか、おそらくお互いの存在を認識していない。
そっとしておこう。
「………………」
俺はなるべく音を立てないようにしながら控室を後にした。
「あ、アランくん!」
――すると、今度は通路でたまたま通りかかったレスターに声をかけられる。
「最後は引き分けだったけど……ボク、負けませんでした! アランくんが魔力制御とか戦い方とか、いろいろ教えてくれたおかげですっ!」
「いいや、あれがレスターくんの実力だよ。僕は大したことなんかしていないさ」
俺はさり気なく控え室の入り口から離れつつ、そう返事をする。
「でも……ギルバートさん、ちょっと変な感じでした」
「ん? 変ってどういうこと?」
「何だか……最初から呼吸が荒くて、苦しそうで……体もちょっと熱っぽかったんです。具合が悪いのに無理をして大会に出場していたのでしょうか……?」
「………………」
ノーコメント。
「あ、そうだ! それより、レスターくんに話しておきたいことがあるんだ!」
俺は全力で話題を逸らすことに決めた。
「ボクに……話しておきたいこと?」
「えっと、大切なことだからよく聞いてね。……ドロシアにも話していいから」
――そう前置きして俺が話したのは、二人が教団に狙われているという原作ストーリーの知識だ。
信じてもらえるかはともかくとして、隠しておく理由がないからな。
「……特に、十二歳の誕生日の時は気をつけて。それから、身の回りで不審なことがあったら僕にも教えて欲しいんだ。……出来る限りの協力はする」
「…………!」
突然陰謀めいた話を聞かされ、何も言わずに沈黙するレスター。まあ、そうなるよな。
「もちろん、こんなこと言われてもすぐには信じられな――」
「信じます!」
「えっ」
予想外の返答だったので思わずレスターの顔を見ると、ものすごく目が輝かせていた。何かキラキラしてる……。
……おいおい、予想してた反応と違うぞ? 信じてくれないか、もしくは怖がると思ってたのに。
されて嬉しい話じゃないし。
「でもっ! どうしてそんなことが分かっちゃうんですか!?」
ぐいぐいと詰め寄ってくるレスター。
やばい。こんなに食いつくと思ってなかったから、なんて説明するか考えてないぞ。
脳内では「もちろん、すぐには信じられないよね」→「はい……」→「僕も事情があって詳しく説明できないんだけど――」的な感じではぐらかす流れを想定していたのに!
「え、えっと、その……予知夢……的な~?」
「予知夢!? ア、アランくんはそんなものまで見れるんですか!?」
「ちょ、ちょっとだけ~……?」
昨晩それっぽいの見たし、嘘ではないよな!
「す、すごい! すごいですアランくんっ! すごすぎますっ!」
「おちついて」
「つまりっ! アランくんはその特殊な力を使って、帝国を脅かす闇の組織と秘密裏に戦っていたんですね……! 今まで誰にも伝えず、ずっと一人で……っ!」
「いや違うけど……」
急にどうしたレスター? 俺の話ちゃんと伝わってるのか……? レスター、お前の身に危機が迫ってるんだぞ……?
「――そうか! アランくんは選ばれし勇者なんですねっ!」
「いやぁ……」
どちらかといえば魔王だし、最後は勇者に倒される方なんだが。
「それでっ! 魔術師であるボクを組織と戦う仲間に選んでくれたんですよねっ! 嬉しいですっ!」
……というか、よく考えたら今のレスターはそういうのに憧れるお年頃だったんだな。もっと慎重に話をするべきだったかもしれない。
「必殺技の練習をしておかないと……!」
「レスターくーん……? 戻ってきてー……?」
どうやら、レスターは†選ばれし戦士†になってしまったようだ。これを解決できるのは時間の流れのみである。
「じゃあっ! この国……じゃなくて、ボクたちが危ないってドロシアにも伝えてきますっ!」
「えっと、ドロシアちゃんは今ちょっと人と話せる状態じゃないかな……」
俺は言いながら、レスターにそっと控え室の中を覗かせる。
「うぅぅっ……私より強いっ……私だけの王子様と幸せに暮らすはずだったのにいぃぃ……っ! もう誰も貰ってくれないわよぉっ……うわああああんっ!」
「あっ」
その後、俺とレスターは速やかに闘技場を立ち去るのだった。
まさかトーナメント戦で引き分けなどという判定が下るとは思っていなかったが、二人とも決勝戦をする余力は残っていなさそうだったので仕方のないことなのだろう。
――というわけで、今回の大会の優勝者は俺ということになるな。
「力比べの儀を最後まで戦い抜いたアラン・ディンロードを、ここに表彰する!」
急に出てきた元老院の偉そうな爺さんが、俺に向かって言った。
「ありがとうございます……」
闘技場の中心で、爺さんから子供が好きそうな感じの帯がカラフルな金ぴかメダルを首にかけられた俺は、引きつった笑顔でお礼を言う。
「おにーちゃんおめでとーっ!」
プリシラは祝福してくれているが、いまいち煮え切らない感じだ。
この大会でやったこと、女の子をいたぶって失禁させただけじゃん。ド変態かよ。すでにシスコン気味なんだからその称号はもう間に合ってるぞ。
「…………はぁ」
「おい、見ろ! あいつ……優勝したのにまだ足りないって顔してやがる……!」
「同年代のガキじゃ相手にならないってか? どこまで化け物なんだ……ッ!」
おまけに変な誤解までされてるし。
せめて表彰されてる間は、もうちょっと頑張って笑わないと。
「あ、あはは……」
ちなみに、気を失って治療所へ搬送されたギルバートとレスターや、乙女の尊厳を傷つけられて治療所で寝込んでいるドロシアは表彰式に参加していない。
そのせいで余計に俺一人に注目が集まることになっているのだ。
全員二位という扱いになるので、後でメダルは貰えるらしいが……思っていたよりゆるい感じの大会だったのかもしれない。
実に煮え切らん。
「お集まりいただいた皆様、どうぞアラン・ディンロードに盛大な拍手を!」
司会の言葉で、会場全体が拍手に包まれる。
「おにーちゃんすごーいっ!」
「ニナは……感動の涙で前が見えませんっ!」
「当然の結果だ。アランくんが優勝しないわけがないからな!」
「初戦で魔力解放を使った時はびっくりしたけれど……アランちゃんが誰も殺さずに優勝できて良かったわ!」
――そんなこんなで大会は無事に閉幕するのだった。
*
表彰式を終えて一度控室へ戻ると、見覚えのある二つの影が居残っていた。
「うぅっ……もうお嫁に行けなぁい……っ!」
ドロシア・ホロウズと、
「あれが……おとこ……? なぜいい匂いがした……?」
ギルバート・レーヴァンである。
二人とも椅子に腰かけたまま何やら思い悩んでいる様子だ。
周りが見えていないのか、おそらくお互いの存在を認識していない。
そっとしておこう。
「………………」
俺はなるべく音を立てないようにしながら控室を後にした。
「あ、アランくん!」
――すると、今度は通路でたまたま通りかかったレスターに声をかけられる。
「最後は引き分けだったけど……ボク、負けませんでした! アランくんが魔力制御とか戦い方とか、いろいろ教えてくれたおかげですっ!」
「いいや、あれがレスターくんの実力だよ。僕は大したことなんかしていないさ」
俺はさり気なく控え室の入り口から離れつつ、そう返事をする。
「でも……ギルバートさん、ちょっと変な感じでした」
「ん? 変ってどういうこと?」
「何だか……最初から呼吸が荒くて、苦しそうで……体もちょっと熱っぽかったんです。具合が悪いのに無理をして大会に出場していたのでしょうか……?」
「………………」
ノーコメント。
「あ、そうだ! それより、レスターくんに話しておきたいことがあるんだ!」
俺は全力で話題を逸らすことに決めた。
「ボクに……話しておきたいこと?」
「えっと、大切なことだからよく聞いてね。……ドロシアにも話していいから」
――そう前置きして俺が話したのは、二人が教団に狙われているという原作ストーリーの知識だ。
信じてもらえるかはともかくとして、隠しておく理由がないからな。
「……特に、十二歳の誕生日の時は気をつけて。それから、身の回りで不審なことがあったら僕にも教えて欲しいんだ。……出来る限りの協力はする」
「…………!」
突然陰謀めいた話を聞かされ、何も言わずに沈黙するレスター。まあ、そうなるよな。
「もちろん、こんなこと言われてもすぐには信じられな――」
「信じます!」
「えっ」
予想外の返答だったので思わずレスターの顔を見ると、ものすごく目が輝かせていた。何かキラキラしてる……。
……おいおい、予想してた反応と違うぞ? 信じてくれないか、もしくは怖がると思ってたのに。
されて嬉しい話じゃないし。
「でもっ! どうしてそんなことが分かっちゃうんですか!?」
ぐいぐいと詰め寄ってくるレスター。
やばい。こんなに食いつくと思ってなかったから、なんて説明するか考えてないぞ。
脳内では「もちろん、すぐには信じられないよね」→「はい……」→「僕も事情があって詳しく説明できないんだけど――」的な感じではぐらかす流れを想定していたのに!
「え、えっと、その……予知夢……的な~?」
「予知夢!? ア、アランくんはそんなものまで見れるんですか!?」
「ちょ、ちょっとだけ~……?」
昨晩それっぽいの見たし、嘘ではないよな!
「す、すごい! すごいですアランくんっ! すごすぎますっ!」
「おちついて」
「つまりっ! アランくんはその特殊な力を使って、帝国を脅かす闇の組織と秘密裏に戦っていたんですね……! 今まで誰にも伝えず、ずっと一人で……っ!」
「いや違うけど……」
急にどうしたレスター? 俺の話ちゃんと伝わってるのか……? レスター、お前の身に危機が迫ってるんだぞ……?
「――そうか! アランくんは選ばれし勇者なんですねっ!」
「いやぁ……」
どちらかといえば魔王だし、最後は勇者に倒される方なんだが。
「それでっ! 魔術師であるボクを組織と戦う仲間に選んでくれたんですよねっ! 嬉しいですっ!」
……というか、よく考えたら今のレスターはそういうのに憧れるお年頃だったんだな。もっと慎重に話をするべきだったかもしれない。
「必殺技の練習をしておかないと……!」
「レスターくーん……? 戻ってきてー……?」
どうやら、レスターは†選ばれし戦士†になってしまったようだ。これを解決できるのは時間の流れのみである。
「じゃあっ! この国……じゃなくて、ボクたちが危ないってドロシアにも伝えてきますっ!」
「えっと、ドロシアちゃんは今ちょっと人と話せる状態じゃないかな……」
俺は言いながら、レスターにそっと控え室の中を覗かせる。
「うぅぅっ……私より強いっ……私だけの王子様と幸せに暮らすはずだったのにいぃぃ……っ! もう誰も貰ってくれないわよぉっ……うわああああんっ!」
「あっ」
その後、俺とレスターは速やかに闘技場を立ち去るのだった。
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