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第6話 家庭教師はちゃんと選ぼう!
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【メリアside】
どうやら、アタシはとんでもない才能と巡り合ってしまったみたいだ。
アランは魔術を極めるために生まれてきたような子である。
教えたことに対する理解力、身体に眠っている魔力の量、それを制御する技術力、どれをとっても今まで見てきた子たちより圧倒的に秀でている。
あと、照れている時は思わず抱きしめてしまいたくなるくらい可愛い。
かつてはアタシも神童と呼ばれていたけれど、その時にアランと出会っていたら結婚を申し込んで末永く幸せに――じゃなくて、心を折られて魔術師になることを諦めていただろう。
そして、その後で結婚を申し込んで末永く幸せに暮らす。これが正しい順番ね。
……とにかく、この子の才能はそれくらい恐ろしいものなのだ。
あと、お昼寝している時の顔は食べちゃいたくなるくらい可愛い。
そして何より異常なのが元素に対する適性だ。
アランは、魔術の根源である「風」の元素に始まり、そこから派生する「火」「氷」「雷」「木」「水」「土」の六元素全てを等しく扱うことができるのである。
本来なら、才能に関係なく適性は一つだけ。
魔術に対する理解を深めることで、適性ではない元素もある程度扱うことができるようになるけれど、その場合はどうしても威力が弱まる。
例えば私の場合、適性は「水」であり、そこから魔術の探究を重ねることで「風」と「氷」の元素を多少は扱えるようになった。
といっても「風」と「氷」の力は「水」の十分の一も引き出せていないのだから、実戦には使えない。ある程度習熟した魔術師でもこれが普通だ。
けれどアランは、七つの元素全ての力を完璧に引き出すことができてしまう。はっきり言って理解不能だ。本当に人間なのかと疑いたくなってしまう。
おまけに、「メリア先生」って呼ぶ声が悶えてしまうくらい可愛い。人の可愛さの限界を超えている!
ひょっとすると、アランはこの世界の魔術を進歩させる為に神様が使わした天使なのかもしれない。こんなにも可愛らしいのがその証拠だ。
本当なら、一日中付きっきりで魔術のことを教えてあげたい。アランと一緒に魔術を探究していると、私にも色々な発見があって楽しい。
あと「頑張りすぎですよ、メリア先生。……仕方ありません、僕の膝を枕にして休んでください」って言って欲しい!
……余計な願望が混ざってしまったけれど、とにかくこんなにワクワクするのは久しぶりだ。
絶対に私がアランを世界一の魔術師にする。この世界の魔術はアラン・ディンロードという天才によって大きく進歩するのだ。
ああ、剣術の授業を受けている時間がもったいない!
――ダリア、あなたには先生を辞めてもらうわ。久しぶりに『決闘』をしましょう!
*
【ダリアside】
どうやら、私はとんでもない才能と巡り合ってしまったみたいだ。
アランは剣術を極めるために生まれてきたような子である。
咄嗟《とっさ》の判断力、剣捌きの鋭さ、間合いに対する感覚、剣を構えた私を前に物怖じしない強い心、しなやかな手足、美しい眼差し、肌のつや、髪の毛のさらさら具合、お日様の匂い、ほっぺたの柔らかさ……どれをとっても今まで見てきた子たちより圧倒的に秀でている。
模擬戦で剣を交えていて、こんなにも心が躍るのは久しぶりだ。
アランは日に日に強くなっていく。
初めは頼りなく見えたのだが、私の目が節穴だったらしい。
……できることなら家庭教師としてではなく、神童と呼ばれていたあの頃に、対等な剣士として君に出逢いたかった。
互いに切磋琢磨し、高め合い、そして…………いずれ私は追いつけなくなってしまうのだろう。
間違いなく、君はあの頃の私を置いて先へ行く。私が持っていた剣術に対する絶対の自信と驕りを完全に打ち砕いてくれる。
屈服させられた私は、それを機に剣術の道を諦め、家を飛び出して騎士や冒険者にもなることなく、君の婚約者として隣で…………ではなくて、何を考えているんだ私は!
どうやら、アランに入れ込みすぎて少し冷静さを欠いてしまっていたようだ。柄にもない不気味な妄想をしてしまった。
近ごろは食事中も入浴中も就寝中もアランを強くする事ばかり考えているので、少し自重した方がいいかもしれない。
アランのことは愛おしくて仕方がないが、私はあくまで家庭教師。適切な距離を保つことも大切だ。
しっかりしろ、ダリア・フォルテル!
……とにかく、彼の才能は圧倒的だ。見た目は華奢で可愛らしいのに、もはや怪物じみている。
剣を握ったばかりの子供とは思えない身のこなしには、私でも何度かヒヤリとさせられることがあった。
『剣技』を使用しない純粋な打ち合いであれば、今年中には本気の私ともやり合うことができるようになるだろう。
そう思うと、胸の高鳴りが止まらなくなる。
……だがもちろん、私だって負けているつもりはない。アランに剣術を教えるようになってから、自分自身の動きも洗練されていることが分かるのだ。アランと同じく、私もまだまだ強くなれる。
それに、彼の師として気持ちで負けているわけにはいかない。
さあ、早く私を越えてみせろアラン。
お前がモタモタしていたら、この私が世界一の剣士になってしまうぞ?
早く強くなるんだ。私は楽しみで待ちきれない。
午後になるとメリアに奪われてしまうのが悔しい。
――そう、魔術の授業を受けさせている時間などないのだ!
良いことを思いついたぞメリア、お前には先生を辞めてもらう! アランは絶対に渡さないぞ! 私と『決闘』しろ!
どうやら、アタシはとんでもない才能と巡り合ってしまったみたいだ。
アランは魔術を極めるために生まれてきたような子である。
教えたことに対する理解力、身体に眠っている魔力の量、それを制御する技術力、どれをとっても今まで見てきた子たちより圧倒的に秀でている。
あと、照れている時は思わず抱きしめてしまいたくなるくらい可愛い。
かつてはアタシも神童と呼ばれていたけれど、その時にアランと出会っていたら結婚を申し込んで末永く幸せに――じゃなくて、心を折られて魔術師になることを諦めていただろう。
そして、その後で結婚を申し込んで末永く幸せに暮らす。これが正しい順番ね。
……とにかく、この子の才能はそれくらい恐ろしいものなのだ。
あと、お昼寝している時の顔は食べちゃいたくなるくらい可愛い。
そして何より異常なのが元素に対する適性だ。
アランは、魔術の根源である「風」の元素に始まり、そこから派生する「火」「氷」「雷」「木」「水」「土」の六元素全てを等しく扱うことができるのである。
本来なら、才能に関係なく適性は一つだけ。
魔術に対する理解を深めることで、適性ではない元素もある程度扱うことができるようになるけれど、その場合はどうしても威力が弱まる。
例えば私の場合、適性は「水」であり、そこから魔術の探究を重ねることで「風」と「氷」の元素を多少は扱えるようになった。
といっても「風」と「氷」の力は「水」の十分の一も引き出せていないのだから、実戦には使えない。ある程度習熟した魔術師でもこれが普通だ。
けれどアランは、七つの元素全ての力を完璧に引き出すことができてしまう。はっきり言って理解不能だ。本当に人間なのかと疑いたくなってしまう。
おまけに、「メリア先生」って呼ぶ声が悶えてしまうくらい可愛い。人の可愛さの限界を超えている!
ひょっとすると、アランはこの世界の魔術を進歩させる為に神様が使わした天使なのかもしれない。こんなにも可愛らしいのがその証拠だ。
本当なら、一日中付きっきりで魔術のことを教えてあげたい。アランと一緒に魔術を探究していると、私にも色々な発見があって楽しい。
あと「頑張りすぎですよ、メリア先生。……仕方ありません、僕の膝を枕にして休んでください」って言って欲しい!
……余計な願望が混ざってしまったけれど、とにかくこんなにワクワクするのは久しぶりだ。
絶対に私がアランを世界一の魔術師にする。この世界の魔術はアラン・ディンロードという天才によって大きく進歩するのだ。
ああ、剣術の授業を受けている時間がもったいない!
――ダリア、あなたには先生を辞めてもらうわ。久しぶりに『決闘』をしましょう!
*
【ダリアside】
どうやら、私はとんでもない才能と巡り合ってしまったみたいだ。
アランは剣術を極めるために生まれてきたような子である。
咄嗟《とっさ》の判断力、剣捌きの鋭さ、間合いに対する感覚、剣を構えた私を前に物怖じしない強い心、しなやかな手足、美しい眼差し、肌のつや、髪の毛のさらさら具合、お日様の匂い、ほっぺたの柔らかさ……どれをとっても今まで見てきた子たちより圧倒的に秀でている。
模擬戦で剣を交えていて、こんなにも心が躍るのは久しぶりだ。
アランは日に日に強くなっていく。
初めは頼りなく見えたのだが、私の目が節穴だったらしい。
……できることなら家庭教師としてではなく、神童と呼ばれていたあの頃に、対等な剣士として君に出逢いたかった。
互いに切磋琢磨し、高め合い、そして…………いずれ私は追いつけなくなってしまうのだろう。
間違いなく、君はあの頃の私を置いて先へ行く。私が持っていた剣術に対する絶対の自信と驕りを完全に打ち砕いてくれる。
屈服させられた私は、それを機に剣術の道を諦め、家を飛び出して騎士や冒険者にもなることなく、君の婚約者として隣で…………ではなくて、何を考えているんだ私は!
どうやら、アランに入れ込みすぎて少し冷静さを欠いてしまっていたようだ。柄にもない不気味な妄想をしてしまった。
近ごろは食事中も入浴中も就寝中もアランを強くする事ばかり考えているので、少し自重した方がいいかもしれない。
アランのことは愛おしくて仕方がないが、私はあくまで家庭教師。適切な距離を保つことも大切だ。
しっかりしろ、ダリア・フォルテル!
……とにかく、彼の才能は圧倒的だ。見た目は華奢で可愛らしいのに、もはや怪物じみている。
剣を握ったばかりの子供とは思えない身のこなしには、私でも何度かヒヤリとさせられることがあった。
『剣技』を使用しない純粋な打ち合いであれば、今年中には本気の私ともやり合うことができるようになるだろう。
そう思うと、胸の高鳴りが止まらなくなる。
……だがもちろん、私だって負けているつもりはない。アランに剣術を教えるようになってから、自分自身の動きも洗練されていることが分かるのだ。アランと同じく、私もまだまだ強くなれる。
それに、彼の師として気持ちで負けているわけにはいかない。
さあ、早く私を越えてみせろアラン。
お前がモタモタしていたら、この私が世界一の剣士になってしまうぞ?
早く強くなるんだ。私は楽しみで待ちきれない。
午後になるとメリアに奪われてしまうのが悔しい。
――そう、魔術の授業を受けさせている時間などないのだ!
良いことを思いついたぞメリア、お前には先生を辞めてもらう! アランは絶対に渡さないぞ! 私と『決闘』しろ!
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