転生おばさんは有能な侍女

吉田ルネ

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番外編

元カレ元カノ1

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 あらためて設定です。

 このお話の舞台は、19世紀末から20世紀初頭の産業革命真っ最中のロンドンっぽい街です。

 移動のメインは馬か馬車ですが、自動車もときどき見かけるようになりました。

 蒸気機関車と大型客船もあります。タイタニック号みたいなやつですね。一般人も海を渡ってほかの大陸へ行けるようになりました。

 目抜き通りにはガス灯がともり、夜でも明るくたくさんのお店がならんでいます。

 百貨店があったり、動物園や博物館があったり、貴族も気軽におでかけするし、カフェでお茶やケーキを楽しんだりします。



 服装は「ダウントンアビー」のシーズン1のかんじです。



 人物の設定。

アメリア18才 伯爵令嬢

シャーロット16才 侯爵令嬢

ルイーズ18才 公爵令嬢

カミラ18才 公爵令嬢

ローズ16才 侯爵令嬢



ウィリアム王太子20才

ルーク第二王子 18才

ジェームズ第三王子 16才



ヘンリー20才 侯爵次男

ジョージ・クラーク19才 伯爵家の何番目か 決めていなかった






ーーーーーーーーーーーーーーー


 デートです。

 うふ。

 博覧会の跡地に巨大な植物園ができて、南国のめずらしい木やお花が見られるそう。



 ヤシの木とかハイビスカスとか?

 知っていますけどね。元の世界で沖縄旅行に行ったとき見たしね。

 でもほら、ヘンリーが「行ってみよう」って誘ってくれたら「はい、よろこんでー」って答えちゃうよね。



 そのあとに百貨店に行って、家具やカーテンを探そうって。

 うふ。

 し。ん。きょ。

 新居です。

 家を買いました。

 きゃ。



 あの事件から三か月。トントン拍子に話は進んで、めでたく婚約となりました。

 きゃーーー。



 ヘンリーがわたしの前にひざまずきましたよ。

「どうか、わたしと結婚してください」

 とっくに陥落していたチョロいわたしは、もちろん「はい」と答えました。食い気味にならなかったことは、褒めてあげたい。

 そして、アメリア、ヘンリーと呼び合う仲に……。



 まあね。みんなそれぞれいろいろ複雑な思いがあって、手放しで喜べるわけじゃないんだけれど。

 あの事件はみんなの心に、暗い影を落としている。とくに王太子、ルーク両殿下は。



 ジェームズとカミラ。

 なんとかならなかったものか。どうにか助けられなかったか。

 一歩間違っていたら自分があの立場だったかもしれない。

 そんなふうに思う。



 それでもやっぱり生きている者たちは、死んでしまった者たちの分までしっかり生きなくちゃ。うれしいことも、楽しいことも、悲しいことも、苦しいことも、全部呑みこんで。



 三か月後には、王太子殿下とルイーズさまの婚礼が華々しく行われます。これはもともとの予定通り。延期はしないそうです。

 国全体を覆ってしまった淀んだ空気を、ぱあっと払うにはいいかもね。



 それからさらに三か月後がわたしたちの結婚式です。

 ひょえーーー。

 こんなに早く決まると思わなかったんですよ。

 だけど、ヘンリーが早くしたいって言うから……。てへ。

 なんか、両家の親がやたらと乗り気で。どちらも一回ダメになっているから、さっさと決めてしまおう。みたいなノリもあったかもしれないけれど。



 それに、ヘンリーはジョージ・クラークとともに男爵位を賜りまして。ええ。例のごほうびです。副賞ってやつかな。

 ヘンリーは侯爵家の次男。このまま文官として王宮勤めをする予定だったのが、男爵として独立することになりました。

 ご令嬢たちが「おおっ」と身を乗りだしましたよ。

 カッコいいしね、ヘンリー。ジョージ・クラークも人気があるらしいです。ヘラヘラしているのにね。



 すでに婚約の打診が数件来ているし、これからさらに増えるのは想像に難くない。

 ならばさっさと決めて発表してしまおう。本人たちも乗り気であるし、なにより国王陛下、王太子殿下の肝いりでもあるし。

 なんですか、肝いりって。はじめて聞きましたが。



 みなさまから生暖かい目で見られているのはわかっていたけれどね。そこまで後押しされると後には引けません。引きませんけど。



「おうちを買わなくちゃね」

 ハンドクリームを買わなくちゃね、くらいのノリでお義母さまが言いました。

「うん、そうだね。小さくてもいいからふたりでくつろげる家がいいな」

 ヘンリーもスリッパでも買うように言いました。



 翌日には三つばかりの物件が用意されました。

「どれがいいかしら?」

「そうだなあ。王宮に近い方がいいな」

 ヘンリー親子の会話が進む。どれも10LDKくらいある。「小さい家」って言ったよな。

 掃除たいへんじゃん。



 使用人もつくそうです。

 ああ、そうですね。そうでしょうね。いまでもときどき、庶民感覚が出てくるわたし。

 ヨーロッパの古い都市風のこの街。家は石造り。建て替えなんてしない。そっくりそのまま中古物件として売りに出される。

 やっぱり内見はあった。だよね。ご近所も気になるもんね。町内会の草取りはないだろうけど。



 楽しいよね、新居さがし。

 ふたりとも王宮勤めになるので、王宮に近くて使い勝手がよさそうな物件にふたりの意見が一致しました。

 なんでしょうね。それだけで楽しいです。



「子ども部屋が足りなくなったら買い替えればいいわよね」

 お義母さまが、さらっと言いました。貴族の感覚こわい。





 お嬢さまの侍女、続けられることになりました。

 お嬢さまに「続けたいの」と訴えたら、お嬢さまはルーク殿下に「アメリアに続けてほしいの」と訴え、ルーク殿下は国王陛下に「アメリアに続けてほしいってシャーロットが言うんだ」と訴え、「じゃあ、王宮に入っても続けてもらおうか」と陛下のおゆるしが出たわけです。



 もちろんヘンリーも了承済み。

「いっしょに通えるね」

 なーんてね。

 仕事終わりには、王太子殿下の執務室に突撃してやろうかな。



 ちなみにわたしの副賞は金一封でした。金額的には十封くらいあったけど。慰謝料と合わせてわたしいま結構な金持ちです。
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