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ドラゴンと独立宣言の章

口裏合わせ

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馬力の向上や履帯や獣の革を利用したタイヤもどきの開発など扶桑国では改良がかなりのペースで進んでいるが今回サマルに供与されるトラックはその試作品達。もしくは旧型なので制約が多い。

「そしてなによりその乗り物・・・訓練が必要そうだね」

フランツ王子が留めの一言を添える。元来馬車などでも馬を制御する技術など制御に要するものは色々とある。そして生物ならではの良さなども逆に無いので全てが御者次第という事になる。

「良い馬は通路を勝手になぞって動いてくれたり声に反応する馬もいるけど・・・それが無いんじゃ全てその御者さん次第でしょう?」
「うーむ、そうなると御者の負担も大きそうだね」
「平地だと速度もそれなりに出ますし横転などに気をつける必要もありますので長時間気を張る必要がありますね」

そうなると仮に貴族達が手に入れたとしても使いこなせるか怪しいものだ。そして核心部分には魔導金属が使われているとなると彼らにも量産はおろか、製造すら難しいだろう。そもそも仕組みもわからないのだから。
確かにこれがあれば馬の所有が少ない領地でも大規模な物資、人員の流通が見込める。フランツは恐らくと推測の域は出ていないものの前回のパレードにはこの乗り物が絡んでいるのではと考えていた。

「あはっ、これじゃあいくら欲しくたって彼らには運用は無理だね。御者の育成と、生産方法と、道の舗装と・・・運用にどれだけ事前投資が必要かわかったもんじゃない」

指折り数え、フランツはこの乗り物の運用に必要であろうモノや人間の数に笑みをこぼした。肉体労働は好きではないがこのような新しい事に想像を働かせるのが大好きなフランツは新しい玩具をもらった子供の様に軽い足取りで部屋の周りを歩き回る。

「使い方だけじゃない、壊れたら誰が治すんだろうね?動かなくなったら?鍛冶屋さんじゃ無理だよね、知ってる人を呼ばなきゃ!」

ああなると彼の頭が整理できるまで放っておくしかない。咎めても不機嫌になるだけだし、楽しげではあるが真面目に考えているのだ。それにある程度現実的な視野も持ち合わせている。

「さて、そうなるとますます実物を見る必要があるのう」

エディアルトは髭を触りながら唸った。フランツは頭の回転と整理が早いがそれでも今はあんな様子である。エディアルト自身もその乗り物が革新的なものであるとは思いつつもいまいちそれがどのようなモノかを把握できていなかった。

「実はちいさなモノですが似た仕組みの物を預かっております」
「なんと、それは本当か」

そう言うとダークエルフの彼女は大きな木箱を取り出し、観音開きの扉を開ける。するとパーツ毎にばらされた小型の車ーーー自転車のような大きさーーーを取り出し、組み立てていく。

「それが件の?」
「かなり小型で、スピードもパワーもありませんが・・・」

四輪の自転車といった大きさだがそれでも初めてみる自動車は三人にとって衝撃だった。そしてフランツは動力付き乗り物が小型で、人が持ち運べ、それでいて非力とは言わないまでも女性が一人で組み立てられる事を見てさらに独り言を加速させていた。

「それで、これでどうやって動かすのだ?」
「えっと、では実践してみせますね」

ダークエルフの彼女が四輪の車に乗り込むとハンドルを握り、そしてゆっくりと座席についたレバーを操作する。
すると車が徐々に進んでいき、やがてゆっくりとしたスピードのまま部屋の周りをくるくると回り始める。

「おお、これはすごい!これが馬のいらぬ馬車か!」

興奮した様子のエディアルトに皇太子であるフリードリッヒは同じく興奮した様子で動く車に目を輝かせている。

「はい、ですがこれはパワーが弱く、急な坂道はもちろん二人以上が乗ると動かないので注意が必要です。鎧を着た騎士や体格のいい人ですとお一人でも厳しいかもしれません」
「なるほど・・・」

二人はもちろんそれを隣でみていたフランツも興味深そうにそれを見ていたが・・・。

「良ければ我々にも乗せてもらってもいいかね?」
「構いませんが・・・お二人も?」

エディアルトの一言を受けて停車させた彼女は後ろで同じように興味津々な二人に視線を向けると二人も彼の返事をまたずこくこくと頷いた。

「わかりました、では運転は難しいと思いますのでまずは後ろの荷台に乗って見てください」
「わかった、ここかのう?」
「そうです、では・・・この支柱につかまってください」

荷台には幌を立てるように支柱をたてるパーツがあり、それによって雨の日でも濡れずに移動できるようにと意匠がこらされていた。それが二人のりの際には後ろの人が狭くて座れないので立ち乗りになるのだが、その際の安全面から掴まって立てるようになっている。
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