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ドラゴンと独立宣言の章
ある夢のお話
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あっという間に中心に招待されて俺を囲むように子供たちが。
「仕方ないな・・・っと・・・」
座り込むや否や子供たちがまるで猫か何かのように俺の傍に来る。嫌ってわけじゃないが・・・。
ごろりと横になると子供たちがそこから場所を再配置して俺を中心に横になっていく。
「おじさんの手・・・おっきいね」
「ん・・・そうか?」
怖い子が多いのだろう、灯されたランプの火が揺れる中で一人の子が俺の手に頬を寄せて言った。
「なんだかね、この手・・・知ってるような気がするの・・・それでね、安心するの」
「そうか」
深く聞かない方がいいのだろうか。それとも・・・。俺には分からない事だ。ただ、この子達の傍にいてやることしかできない。
「でもね、ふだんはね・・・くらいのがこわいから・・・院長先生にたのんでるの」
「いつだって朝は来る、今は暗いのが怖くても・・・じきに怖くなくなる」
「ほんとう?」
「ああ、俺も昔は怖かったからな」
夜風にビビってチビッた事だってあるさ、恥ずかしいからわざわざ言わないがな。
「うそだぁ・・・おじさんでも?」
「もちろん、俺だって小さいころがあった」
「そうなんだ・・・」
「ああ、そんなときはおじさんや院長先生みたいな人がいてくれた。だから俺も君たちにこうしている」
「へー・・・」
薄明りに照らされた瞳が揺れる。彼女は俺になにをみるのだろうか。居ない両親の事か?それとも歳の離れた兄弟かなにか?それとも・・・ただの優しいおじさんか。
「早く寝ちまえ、明日の飯の当番は誰だった?もしお前なんだったら寝坊すると大変だぞ」
「そうだった、明日は私・・・と、それから・・・」
話題を逸らしてやると彼女はやがて眼をこすり始め、ついには寝息を立て始めた。周りの子供たちを見ると皆同じようだ。
「せめて祈ろう、お前たちが怖い夢を見ないように」
手を合わせようかとも思ったがふと気づいた。そうか、俺がその神様だったな。
「ならばこうするのが一番かな」
俺は部屋を優しく照らすようにふーっと『命の火』を吐いた。淡い光が部屋を優しく包み、火の粉が散って彼女達に降り注ぐ。物を燃やす火じゃないから屋内でも出せるのが利点だな。
「これで怖い夢は燃え尽きるだろうさ・・・楽しい夢を見てくれよな」
子供たちにいい夢を、偶にしか来られない俺ができるせめてもの贈り物だ。
その日、大部屋の子供たちは夢を見た。何時もの怖い夢だ。暗がりの中で独りぼっち、そんな恐ろしい暗がりからゆっくりと進み出る影の群れ。安息の地である孤児院は遠く、助けは来そうにない。そんな中で焦らされる恐怖ほど恐ろしいものはそうそうない。とくにそれが未知なもの、危害を加えるであろうものとなれば格別だ。
泣きながら夜明けを待つそんな彼女達の前に現れたのは・・・。
『グオォォ!』
どこか懐かしい雰囲気を持った大きなドラゴンだった。ドラゴンは大きく息を吸い込むと彼女達を包む闇ごと得体のしれない影を吹き飛ばし、自慢げに鼻を鳴らした。そして笑みを浮かべるとのっしのっしと孤児院へと向けて歩き始める。後をついていくとドラゴンは振り返って彼女達を背に乗せ、影を蹴散らしながら孤児院へと向かう。
『グオオ!』
「すごいすごい!まるでおとぎ話みたい!」
襲い来る影はたくさん、それも何度も。しかしそんな影をものともせずドラゴンは火を吐いたり、足を踏み鳴らしたりと様々な方法で影を蹴散らしていく。それはさながら物語の一ページのようで。魔法が使える子はドラゴンの肩から魔法を使ったりしてドラゴンを助けたそうだ。まるで自分が物語の主人公になったようだとも言っていたか。
『グォ・・・ファァァ』
「眠いの?」
『グゥゥ・・・』
やがて孤児院の広い庭園に来るとドラゴンは彼女達を孤児院へと送り届け、彼女達の問いかけに頷いたのちにおおきく欠伸をすると自身はその入り口で横になった。まるで彼女達を守るかのように。彼女達はその姿にホッとした様子でそれぞれがドラゴンに軽く触れたりお礼を言ったりしてから、孤児院のドアへと手を掛けた。目が覚めたのはドアを開けるのとが同時だったという。
「院長先生!おはようございます!」
「はい、おはよう」
元気よく、孤児院に子供の声が響く。騒がしくもあるがこれが此処の日常だという。いい事だ。
「アンタ、なんかやったでしょ」
「いんや、べっつにー?」
朝、俺は普段より元気な彼女達と朝食の準備を手伝いつつ、怪訝そうなヒューイの問いかけにそう答えた。
後で『命の火』の燃えカスを彼女達が小瓶に集めていたのを知りしこたま怒られることになる。
「仕方ないな・・・っと・・・」
座り込むや否や子供たちがまるで猫か何かのように俺の傍に来る。嫌ってわけじゃないが・・・。
ごろりと横になると子供たちがそこから場所を再配置して俺を中心に横になっていく。
「おじさんの手・・・おっきいね」
「ん・・・そうか?」
怖い子が多いのだろう、灯されたランプの火が揺れる中で一人の子が俺の手に頬を寄せて言った。
「なんだかね、この手・・・知ってるような気がするの・・・それでね、安心するの」
「そうか」
深く聞かない方がいいのだろうか。それとも・・・。俺には分からない事だ。ただ、この子達の傍にいてやることしかできない。
「でもね、ふだんはね・・・くらいのがこわいから・・・院長先生にたのんでるの」
「いつだって朝は来る、今は暗いのが怖くても・・・じきに怖くなくなる」
「ほんとう?」
「ああ、俺も昔は怖かったからな」
夜風にビビってチビッた事だってあるさ、恥ずかしいからわざわざ言わないがな。
「うそだぁ・・・おじさんでも?」
「もちろん、俺だって小さいころがあった」
「そうなんだ・・・」
「ああ、そんなときはおじさんや院長先生みたいな人がいてくれた。だから俺も君たちにこうしている」
「へー・・・」
薄明りに照らされた瞳が揺れる。彼女は俺になにをみるのだろうか。居ない両親の事か?それとも歳の離れた兄弟かなにか?それとも・・・ただの優しいおじさんか。
「早く寝ちまえ、明日の飯の当番は誰だった?もしお前なんだったら寝坊すると大変だぞ」
「そうだった、明日は私・・・と、それから・・・」
話題を逸らしてやると彼女はやがて眼をこすり始め、ついには寝息を立て始めた。周りの子供たちを見ると皆同じようだ。
「せめて祈ろう、お前たちが怖い夢を見ないように」
手を合わせようかとも思ったがふと気づいた。そうか、俺がその神様だったな。
「ならばこうするのが一番かな」
俺は部屋を優しく照らすようにふーっと『命の火』を吐いた。淡い光が部屋を優しく包み、火の粉が散って彼女達に降り注ぐ。物を燃やす火じゃないから屋内でも出せるのが利点だな。
「これで怖い夢は燃え尽きるだろうさ・・・楽しい夢を見てくれよな」
子供たちにいい夢を、偶にしか来られない俺ができるせめてもの贈り物だ。
その日、大部屋の子供たちは夢を見た。何時もの怖い夢だ。暗がりの中で独りぼっち、そんな恐ろしい暗がりからゆっくりと進み出る影の群れ。安息の地である孤児院は遠く、助けは来そうにない。そんな中で焦らされる恐怖ほど恐ろしいものはそうそうない。とくにそれが未知なもの、危害を加えるであろうものとなれば格別だ。
泣きながら夜明けを待つそんな彼女達の前に現れたのは・・・。
『グオォォ!』
どこか懐かしい雰囲気を持った大きなドラゴンだった。ドラゴンは大きく息を吸い込むと彼女達を包む闇ごと得体のしれない影を吹き飛ばし、自慢げに鼻を鳴らした。そして笑みを浮かべるとのっしのっしと孤児院へと向けて歩き始める。後をついていくとドラゴンは振り返って彼女達を背に乗せ、影を蹴散らしながら孤児院へと向かう。
『グオオ!』
「すごいすごい!まるでおとぎ話みたい!」
襲い来る影はたくさん、それも何度も。しかしそんな影をものともせずドラゴンは火を吐いたり、足を踏み鳴らしたりと様々な方法で影を蹴散らしていく。それはさながら物語の一ページのようで。魔法が使える子はドラゴンの肩から魔法を使ったりしてドラゴンを助けたそうだ。まるで自分が物語の主人公になったようだとも言っていたか。
『グォ・・・ファァァ』
「眠いの?」
『グゥゥ・・・』
やがて孤児院の広い庭園に来るとドラゴンは彼女達を孤児院へと送り届け、彼女達の問いかけに頷いたのちにおおきく欠伸をすると自身はその入り口で横になった。まるで彼女達を守るかのように。彼女達はその姿にホッとした様子でそれぞれがドラゴンに軽く触れたりお礼を言ったりしてから、孤児院のドアへと手を掛けた。目が覚めたのはドアを開けるのとが同時だったという。
「院長先生!おはようございます!」
「はい、おはよう」
元気よく、孤児院に子供の声が響く。騒がしくもあるがこれが此処の日常だという。いい事だ。
「アンタ、なんかやったでしょ」
「いんや、べっつにー?」
朝、俺は普段より元気な彼女達と朝食の準備を手伝いつつ、怪訝そうなヒューイの問いかけにそう答えた。
後で『命の火』の燃えカスを彼女達が小瓶に集めていたのを知りしこたま怒られることになる。
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