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ドラゴンと独立宣言の章
温泉! その2
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「しかし我等も傭兵から冒険者で鳴らした戦士、五倍十倍の兵に屈することはありませんでした」
さらっととんでもない事を言う。しかし実際此処の気候は湿度が高く年中気温が高い。まあ温泉や間欠泉が噴出すこともあるというから当然だろう。そんな中でなら彼女達ワーダイン族は疲れ知らずだ。逆に人間や普通の獣人からすれば熱中症待ったなしの状態になる。鎧を着て戦うなどもってのほかだ。
「最初はザンナルの兵と戦い、次にリットリオの兵と戦い・・・ひっきり無しにやってくる兵士達に最後には我々も観念して鉱山夫として働こうかと打診した所何故か今度は両国で争い始めまして・・・」
おそらくどちらが利益を多く貰うかで交渉が難航したのだろう。それからはワーダイン族は人族と交流を断って生活せざるを得ないのだという。
「冒険者ギルドも二カ国の紛争に関しては完全にお手上げ状態でして・・・」
冒険者はたくさんいても彼らのほとんどはそれぞれの国の市民でしかない。彼らとしても湯治場である温泉宿が利用できないのは辛いだろうが紛争に首を突っ込むとどうなるかわからないので仕方なかったのだろう。そういった理由から知らずにやってきた人が巻き込まれないように仕方なく人族を遠ざけていたのだという。
『ザンナルが敗戦した今リットリオは再び動くだろう、そうなると此処はまた戦場になるかもしれないな』
「そうなると困りますね・・・どうしましょうか?」
『リットリオにも顔は利くが政治的な意図を曲げられるほどではないしな・・・』
「いっそのこと此処を旦那様の縄張りにしてしまってはどうですか?」
困り果てているとシロナがそういった。ドラゴンの縄張りかー。
「鉄は重要ですがドラゴンを退けるだけの兵力を送り込んでまで此処を占拠する意味は薄いかと」
『問題がややこしくならないか?』
「我等直系の眷属とは違いますがワーダイン族も旦那様の遠く遠ーーーーーーーーくではありますが眷属ではありますのでドラゴンの庇護を受ける権利はあるかと」
かつてワーダイン族はエルフとダークエルフに続いてドラゴンに仕える人族であったとも蜥蜴などの一族であったとも言われている。ドラペディアによると両方居た可能性が高い。そして人族と蜥蜴の一族はあるとき互いの欠点を補い、よりドラゴンに仕える為に手を取り合い種族を混合した。そして生まれたのが寒さと乾燥以外のあらゆる環境に強いワーダイン族だといわれている。
女性には蜥蜴の一族の影響が色濃く残ったため体が強靭に、男性には人族の影響が色濃く残ったため知性に優れる一方で体は小さい。そして直系眷属の誇りがあるのかは知らんが遠いってとこだけえらく強調したな。そんなトコで見栄を張らなくていいんだぞアウロラよ。
「そうなると此処を扶桑国に併合してしまったほうが早いのでは?」
『そうなると結局はザンナルが起こしてた国境紛争の交渉を俺が肩代わりする事になるのか・・・』
どうせやるなら小難しい事は抜きにしてまずは温泉!ということで俺達はほぼ貸切状態の温泉宿を満喫する事に。
『とはいっても俺が入れる場所はあるのか・・・』
「変身を解いたらいいんじゃ?」
『そうするか・・・よっと」
変身を解いて人間の姿に戻ると最寄の温泉宿へと入る。ワーダイン族の人によるとどこも開店休業状態なのでどこでも好きに使ってくれとのこと。料金もなんとタダなのだ。ただし素泊まりに限る。
和風建築の素晴らしい風情が俺の心を癒してくれる。浴衣とかあるんだろうか。故郷と似通った雰囲気だからかシロナもどことなく嬉しそう。
「この床畳なんですね」
「和の心が息づいている感じがなんともたまらん」
室内もちょっとばかし荒いが旅の宿としては非常に良いものだ。木造の建物は使うと味わいが出てよろしい。畳も作られているなんて意外だが俺としては嬉しい誤算だ。
「荷物置いたらさっそく一番大きな温泉に向かおうか」
「えーもうちょっとゆっくりしましょうよ」
「文句言わないの、シロナ」
荷物を置いて宿からでると俺達はこの温泉宿で一番大きな露天風呂へと向かう。源泉から直接流れ込んでくるので効能が一番良く、熱いのだそうだ。
「おお、すげえな・・・こりゃ風呂というより・・・プール?」
泉が丸々温泉に変わったような源泉かけ流し状態の素晴らしいお風呂。これなら変身した状態でも入れるかもしれない。ただここのお風呂は浄化装置がついているとはいえ他の温泉宿にも供給されるので汚せないのだ。それゆえ体を洗ってから使ってくださいとの但し書きがある。
「ここは男女の別があるようですね」
「ま、体を洗う時だけだし問題ないだろ。とりあえず湯船で合流しよう」
小屋が二つ建っていて女性の所の方がデカイ。ワーダイン族の御用達だから仕方ないのだろうか。大きさは別に構わなかったのだが・・・。
「ただタワシと石鹸って・・・人間はズル剥けになるだろ」
多少こなれてはいるがタワシの硬さが凄い、金ダワシ?男女で別れたのでこれ幸いと一人で風呂を楽しもうかと考えていたがこれでは無理だ。人間の状態でタワシで体を擦る事はしたくない。
さらっととんでもない事を言う。しかし実際此処の気候は湿度が高く年中気温が高い。まあ温泉や間欠泉が噴出すこともあるというから当然だろう。そんな中でなら彼女達ワーダイン族は疲れ知らずだ。逆に人間や普通の獣人からすれば熱中症待ったなしの状態になる。鎧を着て戦うなどもってのほかだ。
「最初はザンナルの兵と戦い、次にリットリオの兵と戦い・・・ひっきり無しにやってくる兵士達に最後には我々も観念して鉱山夫として働こうかと打診した所何故か今度は両国で争い始めまして・・・」
おそらくどちらが利益を多く貰うかで交渉が難航したのだろう。それからはワーダイン族は人族と交流を断って生活せざるを得ないのだという。
「冒険者ギルドも二カ国の紛争に関しては完全にお手上げ状態でして・・・」
冒険者はたくさんいても彼らのほとんどはそれぞれの国の市民でしかない。彼らとしても湯治場である温泉宿が利用できないのは辛いだろうが紛争に首を突っ込むとどうなるかわからないので仕方なかったのだろう。そういった理由から知らずにやってきた人が巻き込まれないように仕方なく人族を遠ざけていたのだという。
『ザンナルが敗戦した今リットリオは再び動くだろう、そうなると此処はまた戦場になるかもしれないな』
「そうなると困りますね・・・どうしましょうか?」
『リットリオにも顔は利くが政治的な意図を曲げられるほどではないしな・・・』
「いっそのこと此処を旦那様の縄張りにしてしまってはどうですか?」
困り果てているとシロナがそういった。ドラゴンの縄張りかー。
「鉄は重要ですがドラゴンを退けるだけの兵力を送り込んでまで此処を占拠する意味は薄いかと」
『問題がややこしくならないか?』
「我等直系の眷属とは違いますがワーダイン族も旦那様の遠く遠ーーーーーーーーくではありますが眷属ではありますのでドラゴンの庇護を受ける権利はあるかと」
かつてワーダイン族はエルフとダークエルフに続いてドラゴンに仕える人族であったとも蜥蜴などの一族であったとも言われている。ドラペディアによると両方居た可能性が高い。そして人族と蜥蜴の一族はあるとき互いの欠点を補い、よりドラゴンに仕える為に手を取り合い種族を混合した。そして生まれたのが寒さと乾燥以外のあらゆる環境に強いワーダイン族だといわれている。
女性には蜥蜴の一族の影響が色濃く残ったため体が強靭に、男性には人族の影響が色濃く残ったため知性に優れる一方で体は小さい。そして直系眷属の誇りがあるのかは知らんが遠いってとこだけえらく強調したな。そんなトコで見栄を張らなくていいんだぞアウロラよ。
「そうなると此処を扶桑国に併合してしまったほうが早いのでは?」
『そうなると結局はザンナルが起こしてた国境紛争の交渉を俺が肩代わりする事になるのか・・・』
どうせやるなら小難しい事は抜きにしてまずは温泉!ということで俺達はほぼ貸切状態の温泉宿を満喫する事に。
『とはいっても俺が入れる場所はあるのか・・・』
「変身を解いたらいいんじゃ?」
『そうするか・・・よっと」
変身を解いて人間の姿に戻ると最寄の温泉宿へと入る。ワーダイン族の人によるとどこも開店休業状態なのでどこでも好きに使ってくれとのこと。料金もなんとタダなのだ。ただし素泊まりに限る。
和風建築の素晴らしい風情が俺の心を癒してくれる。浴衣とかあるんだろうか。故郷と似通った雰囲気だからかシロナもどことなく嬉しそう。
「この床畳なんですね」
「和の心が息づいている感じがなんともたまらん」
室内もちょっとばかし荒いが旅の宿としては非常に良いものだ。木造の建物は使うと味わいが出てよろしい。畳も作られているなんて意外だが俺としては嬉しい誤算だ。
「荷物置いたらさっそく一番大きな温泉に向かおうか」
「えーもうちょっとゆっくりしましょうよ」
「文句言わないの、シロナ」
荷物を置いて宿からでると俺達はこの温泉宿で一番大きな露天風呂へと向かう。源泉から直接流れ込んでくるので効能が一番良く、熱いのだそうだ。
「おお、すげえな・・・こりゃ風呂というより・・・プール?」
泉が丸々温泉に変わったような源泉かけ流し状態の素晴らしいお風呂。これなら変身した状態でも入れるかもしれない。ただここのお風呂は浄化装置がついているとはいえ他の温泉宿にも供給されるので汚せないのだ。それゆえ体を洗ってから使ってくださいとの但し書きがある。
「ここは男女の別があるようですね」
「ま、体を洗う時だけだし問題ないだろ。とりあえず湯船で合流しよう」
小屋が二つ建っていて女性の所の方がデカイ。ワーダイン族の御用達だから仕方ないのだろうか。大きさは別に構わなかったのだが・・・。
「ただタワシと石鹸って・・・人間はズル剥けになるだろ」
多少こなれてはいるがタワシの硬さが凄い、金ダワシ?男女で別れたのでこれ幸いと一人で風呂を楽しもうかと考えていたがこれでは無理だ。人間の状態でタワシで体を擦る事はしたくない。
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