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ドラゴンと独立宣言の章
パーティまでのあれこれ その3
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「どうどう、飲めない事くらいバカにしないさ。ただちょっと可愛かっただけさ」
「どういう意味ですか?」
「アレクシアが背伸びをしている事が可愛いのさ、あと甘い飲み物を飲んで笑顔を浮かべている所なんか特にな」
まるで娘か孫を見ているような可愛さだがな。
「旦那様、私も・・・」
「張り合わんで宜しい、お前はもう既に可愛いから」
「ちぇ・・・」
年下の女性に対抗意識燃やすんじゃないよもう。頭を撫でてやると大人しくなり嬉しそうにしているので良しとしておく。
「も、もう!ヴォルはいつもそうやって私を子供扱いします・・・」
「実際十は離れてるんだがな・・・それとも」
俺はそう言うとアレクシアの傍に立つと彼女の顎を持ち上げてまっすぐに見つめる。
「こういうのがお好みかな?」
「ひゃっ」
こうしてやると彼女はたちどころに真っ赤になった。初心さ加減はテルミットくらいか・・・大丈夫かこの子。テルミットみたいな裏方ならともかく表看板の彼女がこんなんでは要教育だな。
「ひゃー、見ろよ大将のテクニックを!ご令嬢をノックアウトだぜ」
「すげえよなぁ」
そんな声がして見ると回りの警察隊の面々がニヤニヤしている。そうだった、こいつ等もいたんだったな。
「は、恥かしい・・・」
「そう言うな、言うと余計恥かしいから。それにこういうのを黙らせるのは得意だ」
「お、大将どんな魔法をつかうんですかー?」
「期待してますよ」
ちっ、こいつ等俺が普段やらないことやってるからって調子に乗ってやがるな。キツイお灸を据えてやるぜ。
「次に笑った奴は帰ってから軍学校のメニューでシゴいてやる」
「き、汚い、其れ持ち出して笑える奴っているんですか・・・」
「それ冗談にならないっす・・・」
「もう吐くほど訓練は勘弁・・・」
「職権濫用じゃないんですか・・・」
何とでも言え、笑われ続けるよりも遥かにマシだ。顔が真っ青になった警察隊メンバーを他所に俺はアレクシアと同席し、アレクシアの特製コフェルが気に入ったアウロラとで雑談を楽しむ事にした。
「甘いコフェルというのは良いものですね」
「甘すぎてなんともいえん」
コフェルの愛飲者からは怒られそうな味だったがアウロラ達が気に入っているなら最早なにも言うまい。
カレーの量が少なくともカレーライスはカレーライスなのだ。それがたとえ福神漬けくらいの量しかのこっていなかったとしても・・・カフェオレは同量の牛乳だったが比率が変わったら別の言い方があるんだろうか。すくなくとも俺は甘すぎてコフェルの味がしない。
「さて、そろそろ出るか・・・お色直しも必要だろう」
今回の同行はアウロラだけなので準備も最低限で済んだがそれでも準備にはもろもろ必要だ。アレクシアはこれから近衛騎士と合流して出発の準備を始めなければならないのでパーティに参加するには急ぐ必要があるはずなのだが・・・。
「準備はもう済んでいますのでパーティに参加してから出発するようにと御爺様から仰せつかってます」
「なるほど、まぁ延期続きだったがそこらへんは滞りなくといったところか」
「ヴォルが沢山の兵士を連れてきてくださったので護衛を最小限に出来るというのもでかいのでしょう」
装備は皆サーベルだがこれでも並の兵士よりも強い。制服も彼らの持ち前の頑強さに魔獣の毛皮を利用しているので下手な鎧よりも頑丈だ。我が軍最強・・・というわけでは無いが練度の高さは保障できる。
「本当に大丈夫ですかねぇ」
カンに触るような声が聞こえてきた。声の方を向くと気障そうな若者とその隣に退屈そうな表情の若者がそれぞれ店に入ってきたところだった。
「誰だ?」
「タウゼント伯爵とリンザンブル子爵です」
「気障な奴がリンザンブルの?」
尋ねると意外にも退屈そうな若者の方がリンザンブル家の跡取り息子らしい。会った覚えも蹴った覚えもないな。逆にタウンゼント公爵家の奴はあのウザい感じが覚えがある・・・おお、蹴った記憶も合致するぞ。
「大丈夫かとはどういう意味か聞いてもいいかな」
一応大人としての対応をするべきか。バカなのか何なのかは解らんが本人達を目の前にそう言ってのける度胸だけは褒めてやりたい。
「獣の群れに女性を任せるなんてどうかしてるとは思いませんか?」
「別に?」
「別に・・・構いませんけど?殿方は誰しも獣だと母上が言ってましたし」
「強けりゃいいじゃないか・・・別に」
一斉に入ったダメ出しにリンザンブル子爵も小声で退屈そうに同調している。どういうわけかリンザンブル子爵は割合まともっぽいぞ。
「ドルト!お前は私の味方ではなかったのか!」
「俺はお前の尻拭き紙だよ。お前が俺の親父の名前を利用するだけの存在だろうが・・・」
「ぬぐぐ・・・」
「何だこいつ等・・・」
端から聞いているとなんとも複雑な事情を匂わせる関係のようだが・・・。
「旦那様、どうやら複雑な関係がありそうですが・・・」
「そのようだな」
キーキーと騒ぐタウゼント伯爵と其れを鬱陶しそうに聞き流す二人はとても友人の類には見えなかったが彼らにはどういった事情があるのか個人的に気になるところだ。
「どういう意味ですか?」
「アレクシアが背伸びをしている事が可愛いのさ、あと甘い飲み物を飲んで笑顔を浮かべている所なんか特にな」
まるで娘か孫を見ているような可愛さだがな。
「旦那様、私も・・・」
「張り合わんで宜しい、お前はもう既に可愛いから」
「ちぇ・・・」
年下の女性に対抗意識燃やすんじゃないよもう。頭を撫でてやると大人しくなり嬉しそうにしているので良しとしておく。
「も、もう!ヴォルはいつもそうやって私を子供扱いします・・・」
「実際十は離れてるんだがな・・・それとも」
俺はそう言うとアレクシアの傍に立つと彼女の顎を持ち上げてまっすぐに見つめる。
「こういうのがお好みかな?」
「ひゃっ」
こうしてやると彼女はたちどころに真っ赤になった。初心さ加減はテルミットくらいか・・・大丈夫かこの子。テルミットみたいな裏方ならともかく表看板の彼女がこんなんでは要教育だな。
「ひゃー、見ろよ大将のテクニックを!ご令嬢をノックアウトだぜ」
「すげえよなぁ」
そんな声がして見ると回りの警察隊の面々がニヤニヤしている。そうだった、こいつ等もいたんだったな。
「は、恥かしい・・・」
「そう言うな、言うと余計恥かしいから。それにこういうのを黙らせるのは得意だ」
「お、大将どんな魔法をつかうんですかー?」
「期待してますよ」
ちっ、こいつ等俺が普段やらないことやってるからって調子に乗ってやがるな。キツイお灸を据えてやるぜ。
「次に笑った奴は帰ってから軍学校のメニューでシゴいてやる」
「き、汚い、其れ持ち出して笑える奴っているんですか・・・」
「それ冗談にならないっす・・・」
「もう吐くほど訓練は勘弁・・・」
「職権濫用じゃないんですか・・・」
何とでも言え、笑われ続けるよりも遥かにマシだ。顔が真っ青になった警察隊メンバーを他所に俺はアレクシアと同席し、アレクシアの特製コフェルが気に入ったアウロラとで雑談を楽しむ事にした。
「甘いコフェルというのは良いものですね」
「甘すぎてなんともいえん」
コフェルの愛飲者からは怒られそうな味だったがアウロラ達が気に入っているなら最早なにも言うまい。
カレーの量が少なくともカレーライスはカレーライスなのだ。それがたとえ福神漬けくらいの量しかのこっていなかったとしても・・・カフェオレは同量の牛乳だったが比率が変わったら別の言い方があるんだろうか。すくなくとも俺は甘すぎてコフェルの味がしない。
「さて、そろそろ出るか・・・お色直しも必要だろう」
今回の同行はアウロラだけなので準備も最低限で済んだがそれでも準備にはもろもろ必要だ。アレクシアはこれから近衛騎士と合流して出発の準備を始めなければならないのでパーティに参加するには急ぐ必要があるはずなのだが・・・。
「準備はもう済んでいますのでパーティに参加してから出発するようにと御爺様から仰せつかってます」
「なるほど、まぁ延期続きだったがそこらへんは滞りなくといったところか」
「ヴォルが沢山の兵士を連れてきてくださったので護衛を最小限に出来るというのもでかいのでしょう」
装備は皆サーベルだがこれでも並の兵士よりも強い。制服も彼らの持ち前の頑強さに魔獣の毛皮を利用しているので下手な鎧よりも頑丈だ。我が軍最強・・・というわけでは無いが練度の高さは保障できる。
「本当に大丈夫ですかねぇ」
カンに触るような声が聞こえてきた。声の方を向くと気障そうな若者とその隣に退屈そうな表情の若者がそれぞれ店に入ってきたところだった。
「誰だ?」
「タウゼント伯爵とリンザンブル子爵です」
「気障な奴がリンザンブルの?」
尋ねると意外にも退屈そうな若者の方がリンザンブル家の跡取り息子らしい。会った覚えも蹴った覚えもないな。逆にタウンゼント公爵家の奴はあのウザい感じが覚えがある・・・おお、蹴った記憶も合致するぞ。
「大丈夫かとはどういう意味か聞いてもいいかな」
一応大人としての対応をするべきか。バカなのか何なのかは解らんが本人達を目の前にそう言ってのける度胸だけは褒めてやりたい。
「獣の群れに女性を任せるなんてどうかしてるとは思いませんか?」
「別に?」
「別に・・・構いませんけど?殿方は誰しも獣だと母上が言ってましたし」
「強けりゃいいじゃないか・・・別に」
一斉に入ったダメ出しにリンザンブル子爵も小声で退屈そうに同調している。どういうわけかリンザンブル子爵は割合まともっぽいぞ。
「ドルト!お前は私の味方ではなかったのか!」
「俺はお前の尻拭き紙だよ。お前が俺の親父の名前を利用するだけの存在だろうが・・・」
「ぬぐぐ・・・」
「何だこいつ等・・・」
端から聞いているとなんとも複雑な事情を匂わせる関係のようだが・・・。
「旦那様、どうやら複雑な関係がありそうですが・・・」
「そのようだな」
キーキーと騒ぐタウゼント伯爵と其れを鬱陶しそうに聞き流す二人はとても友人の類には見えなかったが彼らにはどういった事情があるのか個人的に気になるところだ。
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