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ドラゴンと独立宣言の章
休日
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一抹の不安を重ねつつも俺は故郷での一時を楽しんだ。やはり何時帰ってきても落ち着く場所だ。
「さて、居るだけじゃ退屈になってきたな・・・」
そう思いつつ屋敷を徘徊していると物置に長い筒が何本もあるのを見つけた。
「なんだこれ?」
長さが1・5メートルくらいの竹らしき者の筒である。吹き矢の筒かなにかだろうか。こういうのを見ていると昔を思い出すモノだ。
「どうせ退屈だったしこれで遊ぶか」
弾が無いようだったのでそこから自作することにする。尖らせると危ないから丸に空気受けの羽をつけて・・・よし、できた。俺はさっそく此れを試すべく三人がゴロゴロしているであろう部屋へと向かう事にした。
「さて、記念すべき犠牲者第一号は・・・おっ、ちょうどいいところに」
ヴァルターがのこのこ歩いているのが見える。マルレーンも一緒だ。俺はいちゃいちゃしている二人にしっかりと狙いを定め、第一射をヴァルターのケツに向けて発射した。
「プッ!」
「イッ・・・!!!!」
尻を押さえて飛び上がった。噴出したくなるのを堪えながら次にキョトンとしているマルレーンの尻に狙いを定める。
「くくく・・・プッ!」
「キャヒッ!!!・・・わ、若旦那様!」
腹を抱えて笑っていると犯人が誰かはわかったのか二人が此方に走ってくる。
「酷いよ兄さん!」
「はっはっは!ボサッとしてるからだ、仲良しも程ほどにな」
「勘弁しませんよっ!」
「わはは、そう簡単に捕まる俺では無いわ!」
「きゃっ!」
「うわわ・・・いってぇ!」
マルレーンの両腕を掴むと振り回してからヴァルターに投げつける。ヴァルターが勢いに負けてひっくり返ったところでダメ押しにヴァルターの頭にオマケの射撃を加えてやった。
「なんてこった、想像以上に楽しい」
怒る二人を尻目に笑いながら走り去ると童心に帰ったような気持ちになる。つまらない事に全力を注げる事に無上の喜びを感じていた日々を思い出す。
「さて、次だ次・・・」
次のターゲットを探して屋敷をうろついていると今度は親父に出くわした。
「何しとるんだ?」
「問答無用、ぷっ!」
「いたっ・・・、けどなにそれ面白そう」
「物置にあった」
短くそう言うと親父は当たった弾を拾うと笑顔で走り去っていった。さて、本番は此処からだぜ。
「さっきの様には行かんぞ!くらえっ!」
「ぐおっ!なんのこれしき!」
ものの数分としないうちに親父が吹き矢を片手に戻ってきた。そして突然の射撃である。西部劇のガンマンさながらの射撃の応酬がはじまる。
「ぷっ!」
「ぷっぷっぷ!」
「うわっ!汚いぞ!」
「勝負に汚いもクソもあるか!」
親父が俺の猛攻に耐えかねて部屋を飛び出す。俺はそれを追いかけながら吹き矢の弾を発射し続ける。
「わはは!降伏するのだー!」
「なにをー、騎士に敗北の二文字はないのだー!」
時折足を止めて打ち合いつつ互いに屋敷の中を駆け回る。いい年のオッサンだがこれでも楽しいのだから仕方ないのだ。楽しいのが悪い。
「ぷっ!」
「おっと・・・あ」
しかし、楽しい時間はそう長くは続きはしない。流れ弾がお袋の額に直撃した瞬間俺達の楽しい遊びの時間は終わりを告げた。
「降伏はなくても・・・常識は持ってくださいね?」
「えっと、あのその・・・なんといいますかこれは重要なことで」
「そうそう・・・俺達にもその悪気があったわけでなくて。そうだ、これ狩猟にも使えるからその練習にね・・・?」
親父と二人であれこれと言い訳を重ねる。通じないと解っていてもしてしまうのは何故だろうか。
「へぇ、狩猟用・・・」
「う、うんだからね・・・その、許してくれたらうれしいかなーって」
「許す?何をです?」
「えっ!?いやそのぉー・・・怒ってないの?」
解っていても聞かずには居られないのはなんでだろう。親父の足が生まれ立ての小鹿のようになっているのは気のせいでは無いし、恐らく俺の顔は真っ青になっているのだろう。この家で一番怒らせては行けない人の筆頭だからだ。
「ええ、怒ってませんよ」
「そ、そう?なんか青筋立ってるけど・・・あ、小皺」
「うひぃっ!」
うっすらとしか見えなかった青筋がくっきりと・・・!お、親父ぃ!不必要に刺激するなーっ!どうなってもしらんぞーっ!
「そ、そうだ、今日は狩りに行くんじゃなかったのかな?親父、なんなら手伝おうか?」
親父が火に油を注ぎ始めたので俺は離脱を考えて言葉を捻りだす。
「そそうだな、狩りは重要じゃからして・・・」
「そうそう、だから今から準備・・・」
二人で勝手に話を進めて逃げだそうとした瞬間俺達二人の肩をがっしりとお袋が掴んだ。
「なにを言っているのかしら?その手に持ってるのは狩猟の為の道具なんでしょ?ならさっさと行きなさい」
「「えっ」」
「武器はそれがあれば大丈夫でしょう?さぁ、さっさと行きなさい。仕留めて来れなかったら家に入れてあげないから」
「「そ、そんなぁ・・・」」
「なんか文句あるの?」
「あれ、御領主様と若旦那様じゃありませんか。なんですかそれ・・・」
「気にするな・・・」
「そうですか・・・?」
俺達は弓や剣を携える猟師に混じって吹き矢片手に野山へと繰り出すことになった。そもそも吹き矢に塗る毒も矢もなかったので結果もでるわけもなく・・・。
「開けてくれー・・・」
「お腹減ったよー・・・」
寒空の下親父と共に屋敷の外で野宿する羽目になった。
「「もう吹き矢はいいや・・・」」
星空の下俺と親父の呟きが闇に消えていった・・・。
「さて、居るだけじゃ退屈になってきたな・・・」
そう思いつつ屋敷を徘徊していると物置に長い筒が何本もあるのを見つけた。
「なんだこれ?」
長さが1・5メートルくらいの竹らしき者の筒である。吹き矢の筒かなにかだろうか。こういうのを見ていると昔を思い出すモノだ。
「どうせ退屈だったしこれで遊ぶか」
弾が無いようだったのでそこから自作することにする。尖らせると危ないから丸に空気受けの羽をつけて・・・よし、できた。俺はさっそく此れを試すべく三人がゴロゴロしているであろう部屋へと向かう事にした。
「さて、記念すべき犠牲者第一号は・・・おっ、ちょうどいいところに」
ヴァルターがのこのこ歩いているのが見える。マルレーンも一緒だ。俺はいちゃいちゃしている二人にしっかりと狙いを定め、第一射をヴァルターのケツに向けて発射した。
「プッ!」
「イッ・・・!!!!」
尻を押さえて飛び上がった。噴出したくなるのを堪えながら次にキョトンとしているマルレーンの尻に狙いを定める。
「くくく・・・プッ!」
「キャヒッ!!!・・・わ、若旦那様!」
腹を抱えて笑っていると犯人が誰かはわかったのか二人が此方に走ってくる。
「酷いよ兄さん!」
「はっはっは!ボサッとしてるからだ、仲良しも程ほどにな」
「勘弁しませんよっ!」
「わはは、そう簡単に捕まる俺では無いわ!」
「きゃっ!」
「うわわ・・・いってぇ!」
マルレーンの両腕を掴むと振り回してからヴァルターに投げつける。ヴァルターが勢いに負けてひっくり返ったところでダメ押しにヴァルターの頭にオマケの射撃を加えてやった。
「なんてこった、想像以上に楽しい」
怒る二人を尻目に笑いながら走り去ると童心に帰ったような気持ちになる。つまらない事に全力を注げる事に無上の喜びを感じていた日々を思い出す。
「さて、次だ次・・・」
次のターゲットを探して屋敷をうろついていると今度は親父に出くわした。
「何しとるんだ?」
「問答無用、ぷっ!」
「いたっ・・・、けどなにそれ面白そう」
「物置にあった」
短くそう言うと親父は当たった弾を拾うと笑顔で走り去っていった。さて、本番は此処からだぜ。
「さっきの様には行かんぞ!くらえっ!」
「ぐおっ!なんのこれしき!」
ものの数分としないうちに親父が吹き矢を片手に戻ってきた。そして突然の射撃である。西部劇のガンマンさながらの射撃の応酬がはじまる。
「ぷっ!」
「ぷっぷっぷ!」
「うわっ!汚いぞ!」
「勝負に汚いもクソもあるか!」
親父が俺の猛攻に耐えかねて部屋を飛び出す。俺はそれを追いかけながら吹き矢の弾を発射し続ける。
「わはは!降伏するのだー!」
「なにをー、騎士に敗北の二文字はないのだー!」
時折足を止めて打ち合いつつ互いに屋敷の中を駆け回る。いい年のオッサンだがこれでも楽しいのだから仕方ないのだ。楽しいのが悪い。
「ぷっ!」
「おっと・・・あ」
しかし、楽しい時間はそう長くは続きはしない。流れ弾がお袋の額に直撃した瞬間俺達の楽しい遊びの時間は終わりを告げた。
「降伏はなくても・・・常識は持ってくださいね?」
「えっと、あのその・・・なんといいますかこれは重要なことで」
「そうそう・・・俺達にもその悪気があったわけでなくて。そうだ、これ狩猟にも使えるからその練習にね・・・?」
親父と二人であれこれと言い訳を重ねる。通じないと解っていてもしてしまうのは何故だろうか。
「へぇ、狩猟用・・・」
「う、うんだからね・・・その、許してくれたらうれしいかなーって」
「許す?何をです?」
「えっ!?いやそのぉー・・・怒ってないの?」
解っていても聞かずには居られないのはなんでだろう。親父の足が生まれ立ての小鹿のようになっているのは気のせいでは無いし、恐らく俺の顔は真っ青になっているのだろう。この家で一番怒らせては行けない人の筆頭だからだ。
「ええ、怒ってませんよ」
「そ、そう?なんか青筋立ってるけど・・・あ、小皺」
「うひぃっ!」
うっすらとしか見えなかった青筋がくっきりと・・・!お、親父ぃ!不必要に刺激するなーっ!どうなってもしらんぞーっ!
「そ、そうだ、今日は狩りに行くんじゃなかったのかな?親父、なんなら手伝おうか?」
親父が火に油を注ぎ始めたので俺は離脱を考えて言葉を捻りだす。
「そそうだな、狩りは重要じゃからして・・・」
「そうそう、だから今から準備・・・」
二人で勝手に話を進めて逃げだそうとした瞬間俺達二人の肩をがっしりとお袋が掴んだ。
「なにを言っているのかしら?その手に持ってるのは狩猟の為の道具なんでしょ?ならさっさと行きなさい」
「「えっ」」
「武器はそれがあれば大丈夫でしょう?さぁ、さっさと行きなさい。仕留めて来れなかったら家に入れてあげないから」
「「そ、そんなぁ・・・」」
「なんか文句あるの?」
「あれ、御領主様と若旦那様じゃありませんか。なんですかそれ・・・」
「気にするな・・・」
「そうですか・・・?」
俺達は弓や剣を携える猟師に混じって吹き矢片手に野山へと繰り出すことになった。そもそも吹き矢に塗る毒も矢もなかったので結果もでるわけもなく・・・。
「開けてくれー・・・」
「お腹減ったよー・・・」
寒空の下親父と共に屋敷の外で野宿する羽目になった。
「「もう吹き矢はいいや・・・」」
星空の下俺と親父の呟きが闇に消えていった・・・。
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