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ドラゴンと動力機関の章
オットー達の事情
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事情は大体分かった。だが子供というのは宝石や動物のようにほいほい譲ったり買ったりできるわけではない。ましてやこのまま独立したところで首都で暮らす分には全然困らないだろうし、最悪俺の集落で面倒見るという事もできるので別段彼らに頭を下げる理由もない。
強いて義理を探すとするなら叔父が死んだ理由の一端に俺のマフィア掃除が上げられるだろうか。
「領地運営に適当な者がいないのは大変だが・・・子供一人でどうにかなるものなのか?仮に本人が望んだとして厳しい所に送り出すのは気が引けるんだが?」
「そうですな・・・確かに簡単な仕事とはいえません、ですが10年単位で先の事を考えるとどうしてももう一人子供が欲しい。そしてできればしがらみのない、一般人の子。貴族に不信感が募る今貴族の血統に一般人を混ぜて参加させる事で目線を逸らす意図も少なからずありますが・・・一番は妻の一目ぼれでして」
そういうと彼は妻と彼がこの孤児院の子供と出会った経緯について話し始める。
それはほんの一週間前のこと。仕事を一段落させたオットーは妻を伴って静養に出かけた。
どんなに忙しくても彼は妻の健康を気遣い、最近は治安の良くなったと聞いて首都に出かけたのだという。
「アリーナ、首都に来るのは久しぶりだな、人が多いが体調は悪くなっていないか?」
「ええ、大丈夫よ。今日は温かくていい日ね」
「そうだな、近頃は辛い事ばかりだったから良い事があるといいが・・・」
両親が一時的に領内の視察を代わってくれたのでそれに甘えて息子を残し二人で首都に来たがその盛況ぶりは二人の目にも明らかで皆がとても活き活きしており、通りを散策するだけで元気をもらえそうなほど活気に満ち溢れていた。
「そういえば最近大きな孤児院ができたそうだ」
「そうなの?奇特な方もいるものね・・・私達の領地でも孤児院はほとんど国からの補助頼みだったからどこも困窮しているのよね・・・」
しまったと思ったのも仕方ない。今でこそ首都から騎士団が来て目を光らせているもののほんの少し前まではマフィアの息の掛かった連中が子供をまるで獣かなにかのように追い立てていたのだ。
彼らの領地では少なくとも彼ら自身が兵を率いて治安維持に努めていたものの後に判明する叔父配下の郎党や叔父の友人が内通者であったためイタチゴッコであった。
それが劇的に変化したのはつい最近のこと。汚職に勤しんでいた騎士団支部や彼らの前についに正義の鉄槌が振り下ろされたのだ。各地のマフィアは瞬く間に王命の監査命令と本部から収集したという彼らの関わりを決定付ける動かぬ証拠を前に剣にかかるか縛に着くかの二択を迫られ、汚職官吏ならびに騎士団を始めマフィア達も根こそぎ検挙されていった。
これにより多少の混乱―――当事者には大きいが―――があったものの収入や治安が健全化していったため結果として国庫には潤沢な税が戻るようになり当初は警察機構の騎士団だけだった治安維持活動も今は国王の全面の許可の下国を蝕んでいた匪賊達の駆逐が進んでいる。
『咎あらば我が身とて処罰せよ』
こう言った王の苛烈な意思表示に貴族達も追い立てられる形で派遣された騎士団と共に領地の健全化を進め、税を定額通りに納め管理するように再通告されている。
農民達は汚職官吏ならびにマフィア、そして国と二重課税どころか三重課税から解放され納める税が半分以下になったと喜び、さらに闘技場関係者などからの寄付金を受けて地方の農村などは一部が税をそこからさらに半年間半額以下になるため離散していた農家の人々も続々と故郷に戻っているという。
貴族達も今はまだ苦しいが税収そのものは今までより徐々に増える計算になるので離散した農民を迎え入れる準備に奔走している。不当な税の徴収に苦しんでいたオットー達にとっては救いの手だったがそこに跡継ぎ問題が噴出する。
「義叔父様が自害なさっていなかったらきっとお喜びになったでしょうに・・・」
「そう言うな、叔父とて苦しんだのだ・・・」
叔父はオットー等と共に領地の治安維持に奮闘していたが後に信頼を置いていた郎党と部下であった友人に利用されていた事を知り、再三咎めていたが遂に改められる事はなく、その上税の着服のみならず人身売買に加担していた事を知り表向きは友人達を諭せなかった事としその実オットー等に累が及ばないようにという司法取引の一環であった。
騎士団とて鬼ではない。高潔な人物であったオットーの叔父の散り様を見て今回の処分を決定したのだ。
「そうね・・・、でも言わずにはいられないわ・・・せめて姉さんがいてくれたら」
「姉・・・?聞いた事が無かったが誰だね?」
「実は妾腹なんだけど姉が居たの、とってもやさしい人だったんだけど貴族の父上がいる場所では居場所が無かったのね。何年も前に出て行ったきりで、何回か連絡を取ったっきり・・・結婚したって聞いてこっそりお祝いしたのよ。何処にいるかわかれば相談くらいには乗ってもらえたかと思って」
そう言って微笑むアリーナの表情はどこか懐かしいものを見ているような穏やかな表情で、彼女との仲の良さを示しているようだった。
強いて義理を探すとするなら叔父が死んだ理由の一端に俺のマフィア掃除が上げられるだろうか。
「領地運営に適当な者がいないのは大変だが・・・子供一人でどうにかなるものなのか?仮に本人が望んだとして厳しい所に送り出すのは気が引けるんだが?」
「そうですな・・・確かに簡単な仕事とはいえません、ですが10年単位で先の事を考えるとどうしてももう一人子供が欲しい。そしてできればしがらみのない、一般人の子。貴族に不信感が募る今貴族の血統に一般人を混ぜて参加させる事で目線を逸らす意図も少なからずありますが・・・一番は妻の一目ぼれでして」
そういうと彼は妻と彼がこの孤児院の子供と出会った経緯について話し始める。
それはほんの一週間前のこと。仕事を一段落させたオットーは妻を伴って静養に出かけた。
どんなに忙しくても彼は妻の健康を気遣い、最近は治安の良くなったと聞いて首都に出かけたのだという。
「アリーナ、首都に来るのは久しぶりだな、人が多いが体調は悪くなっていないか?」
「ええ、大丈夫よ。今日は温かくていい日ね」
「そうだな、近頃は辛い事ばかりだったから良い事があるといいが・・・」
両親が一時的に領内の視察を代わってくれたのでそれに甘えて息子を残し二人で首都に来たがその盛況ぶりは二人の目にも明らかで皆がとても活き活きしており、通りを散策するだけで元気をもらえそうなほど活気に満ち溢れていた。
「そういえば最近大きな孤児院ができたそうだ」
「そうなの?奇特な方もいるものね・・・私達の領地でも孤児院はほとんど国からの補助頼みだったからどこも困窮しているのよね・・・」
しまったと思ったのも仕方ない。今でこそ首都から騎士団が来て目を光らせているもののほんの少し前まではマフィアの息の掛かった連中が子供をまるで獣かなにかのように追い立てていたのだ。
彼らの領地では少なくとも彼ら自身が兵を率いて治安維持に努めていたものの後に判明する叔父配下の郎党や叔父の友人が内通者であったためイタチゴッコであった。
それが劇的に変化したのはつい最近のこと。汚職に勤しんでいた騎士団支部や彼らの前についに正義の鉄槌が振り下ろされたのだ。各地のマフィアは瞬く間に王命の監査命令と本部から収集したという彼らの関わりを決定付ける動かぬ証拠を前に剣にかかるか縛に着くかの二択を迫られ、汚職官吏ならびに騎士団を始めマフィア達も根こそぎ検挙されていった。
これにより多少の混乱―――当事者には大きいが―――があったものの収入や治安が健全化していったため結果として国庫には潤沢な税が戻るようになり当初は警察機構の騎士団だけだった治安維持活動も今は国王の全面の許可の下国を蝕んでいた匪賊達の駆逐が進んでいる。
『咎あらば我が身とて処罰せよ』
こう言った王の苛烈な意思表示に貴族達も追い立てられる形で派遣された騎士団と共に領地の健全化を進め、税を定額通りに納め管理するように再通告されている。
農民達は汚職官吏ならびにマフィア、そして国と二重課税どころか三重課税から解放され納める税が半分以下になったと喜び、さらに闘技場関係者などからの寄付金を受けて地方の農村などは一部が税をそこからさらに半年間半額以下になるため離散していた農家の人々も続々と故郷に戻っているという。
貴族達も今はまだ苦しいが税収そのものは今までより徐々に増える計算になるので離散した農民を迎え入れる準備に奔走している。不当な税の徴収に苦しんでいたオットー達にとっては救いの手だったがそこに跡継ぎ問題が噴出する。
「義叔父様が自害なさっていなかったらきっとお喜びになったでしょうに・・・」
「そう言うな、叔父とて苦しんだのだ・・・」
叔父はオットー等と共に領地の治安維持に奮闘していたが後に信頼を置いていた郎党と部下であった友人に利用されていた事を知り、再三咎めていたが遂に改められる事はなく、その上税の着服のみならず人身売買に加担していた事を知り表向きは友人達を諭せなかった事としその実オットー等に累が及ばないようにという司法取引の一環であった。
騎士団とて鬼ではない。高潔な人物であったオットーの叔父の散り様を見て今回の処分を決定したのだ。
「そうね・・・、でも言わずにはいられないわ・・・せめて姉さんがいてくれたら」
「姉・・・?聞いた事が無かったが誰だね?」
「実は妾腹なんだけど姉が居たの、とってもやさしい人だったんだけど貴族の父上がいる場所では居場所が無かったのね。何年も前に出て行ったきりで、何回か連絡を取ったっきり・・・結婚したって聞いてこっそりお祝いしたのよ。何処にいるかわかれば相談くらいには乗ってもらえたかと思って」
そう言って微笑むアリーナの表情はどこか懐かしいものを見ているような穏やかな表情で、彼女との仲の良さを示しているようだった。
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