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ドラゴンと動力機関の章
掃きだめの原石達 その5
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チビッ子達を連れて俺達は男湯へ。女の子はもちろん女性陣に預けての入浴。暖簾の存在などを鑑みるとどうやらここにも日本の息吹を感じる。先代ブンロクの影響だろうか。
「貴重品を放置はできないのがちょっと難点か」
さすがに鍵つきロッカーなどは無いので全て番頭さんに預け、代わりに番号札を受け取り名前を書いてある。顔は流石に覚えていないかもしれないが名前と番号札を照らし合わせて一応持ち主を識別するようだ。チビッ子たちに体を洗ってから湯に浸かるようにように言い、上手く洗えない子供の面倒をリックスと見ながら一人ずつ綺麗にしていく。
「風呂なんて何ヶ月ぶりかな・・・」
集落に移ってから俺は大抵体を拭いたり川に入ったりして済ませていた。そもそもこの体になってからは汗も全然出ないので砂や泥を被らない限りそうそう体を洗わなかった。しかしながらやはり風呂というのはいいものだ。子供達もやはり気分がいいのか穏やかな表情で湯船に浸かっている。
「兄貴、ここいいかい?」
「リックスか、構わないが・・・その兄貴ってのはなんだよ?」
「だって俺達にとっちゃ面倒見てくれるヤツは皆兄貴だからさ」
そう言うと湯に浸かって血色の良くなったリックスがそう言う。貧民街の孤児達が互いに生き延びる為に作ったルールなのだろうか。
「そうか、それよりお前、綺麗にしたらなかなか可愛らしい顔つきになったじゃねえか」
やはり身なりというのは大事な物で、垢を落とし、栄養が足りていなかったのか悪い肌色が湯のお陰で血色が良くなり見違えるように見える。ただ、少年というよりなんだか少女っぽいのがなんとも言えないが。
「か、可愛いってなんだよ」
「照れるな照れるな、汚い格好よりは良く見えるってことさ」
「そういう兄貴は・・・凄い体してるよな」
そう言うとリックスは俺の体をジロジロ見る。親父譲りの頑健な体に鍛錬が加わった結果がこうなった訳だが・・・とんでもないようなものを見る目で見るんじゃない。
「食って鍛えりゃコレくらいにはなるさ」
「そうなのか?俺もなれるかな・・・」
「そうさな・・・とりあえず飯食うとこからだな」
栄養が足りておらず幼いとは言え肋が浮くような状態では鍛える以前の問題だしなぁ。まずは食わせるところから始めないとな。
「食わないとダメなのか?」
「ガリガリの癖にそんな事もわかんねえのか?太るより難しいんだぞ」
「そうなのか・・・成れるかな・・・俺も」
「ったくガキの癖に一人前の口聞きやがって・・・、まずは元気に大きくなる事を考えろ」
頭をくしゃくしゃとなでてやるとリックスは照れくさそうにするが決して嫌がるような素振りを見せないで受け入れる。
「けど、不思議だな」
「何がだ?」
「兄貴の事だよ、不思議なんだけど兄貴なら何とかしてくれそうな気がするんだ」
「何をだ?俺だってできる事とできない事があるぞ」
「それくらい解るよ、でも・・・うーん、なんかこうあったかい感じがしてさ。兄貴なら俺達を見捨てないでいてくれる気がするんだ」
「そうか、まあ・・・そうだな」
領地で好き勝手やってきた時から色んなヤツの話を聞いてきた気がする。そして一緒に汗を流し、時に血を流して・・・そうしてきた。だが俺だって小さい頃は色んな人に助けられてきた。
親父とお袋に愛され、マリエルから教育を受け身の回りの世話をしてもらっていた。ヴァルターが産まれた時は初めての弟に体の年齢のまま喜んだりした。そしてヴァルターは素直で芯の強い奴に育った。アイツのお陰で助かった事も多かったか。
「助けてもらってなんだけど・・・兄貴はどうして俺達を助けてくれるんだ?」
「ガキの頃は俺も誰かに助けてもらってきたから、かな。子供は育てられて初めて大人になれるからな」
「そうなんだ・・・でもそれだけで?」
「それだけで十分だよ、全ては皆受け継いでいくものだからな。俺を助けてくれた人は恩返しの代わりにそれを他の人にもしてやれと言ってくれた。それが俺にはできて、それでいて続けるのも恥ずかしくない遣り甲斐のある事だった・・・それで十分だろ」
そろそろ湯から上がるか。少し話しすぎた。チビッ子達もちょいと辛くなってきただろうしな。
「そろそろ上がるぞ、のぼせない内にな」
「うん」
リックスと共に湯船ではしゃいでいるチビッ子達を回収して上がる。脱衣所に戻って服がどうなっているか確認すると浴衣のような服を貸し出してくれた。
「兄貴着るの上手いな」
「あん?なんだお前、不器用な奴だな」
「難しいんだよこれ・・・ベルトじゃだめなのかな?」
「しょうがねえな、一列に並べ、着せていってやるから」
帯を結ぶのに苦労しているリックス達に手早く着せてやるとピシッと着れている事に番頭さんたちも驚いている様子だった。ま、浴衣なんぞは何度も着てたし着付けも何とかできるくらいには心得があるが彼らからしてみれば俺も単なる旅行者だからな。着れるかわからなかっただろう。
預けた服は明日の朝には乾くそうだが汲んだ水が真っ黒になったと文句を言われた。ごめんよ。
「貴重品を放置はできないのがちょっと難点か」
さすがに鍵つきロッカーなどは無いので全て番頭さんに預け、代わりに番号札を受け取り名前を書いてある。顔は流石に覚えていないかもしれないが名前と番号札を照らし合わせて一応持ち主を識別するようだ。チビッ子たちに体を洗ってから湯に浸かるようにように言い、上手く洗えない子供の面倒をリックスと見ながら一人ずつ綺麗にしていく。
「風呂なんて何ヶ月ぶりかな・・・」
集落に移ってから俺は大抵体を拭いたり川に入ったりして済ませていた。そもそもこの体になってからは汗も全然出ないので砂や泥を被らない限りそうそう体を洗わなかった。しかしながらやはり風呂というのはいいものだ。子供達もやはり気分がいいのか穏やかな表情で湯船に浸かっている。
「兄貴、ここいいかい?」
「リックスか、構わないが・・・その兄貴ってのはなんだよ?」
「だって俺達にとっちゃ面倒見てくれるヤツは皆兄貴だからさ」
そう言うと湯に浸かって血色の良くなったリックスがそう言う。貧民街の孤児達が互いに生き延びる為に作ったルールなのだろうか。
「そうか、それよりお前、綺麗にしたらなかなか可愛らしい顔つきになったじゃねえか」
やはり身なりというのは大事な物で、垢を落とし、栄養が足りていなかったのか悪い肌色が湯のお陰で血色が良くなり見違えるように見える。ただ、少年というよりなんだか少女っぽいのがなんとも言えないが。
「か、可愛いってなんだよ」
「照れるな照れるな、汚い格好よりは良く見えるってことさ」
「そういう兄貴は・・・凄い体してるよな」
そう言うとリックスは俺の体をジロジロ見る。親父譲りの頑健な体に鍛錬が加わった結果がこうなった訳だが・・・とんでもないようなものを見る目で見るんじゃない。
「食って鍛えりゃコレくらいにはなるさ」
「そうなのか?俺もなれるかな・・・」
「そうさな・・・とりあえず飯食うとこからだな」
栄養が足りておらず幼いとは言え肋が浮くような状態では鍛える以前の問題だしなぁ。まずは食わせるところから始めないとな。
「食わないとダメなのか?」
「ガリガリの癖にそんな事もわかんねえのか?太るより難しいんだぞ」
「そうなのか・・・成れるかな・・・俺も」
「ったくガキの癖に一人前の口聞きやがって・・・、まずは元気に大きくなる事を考えろ」
頭をくしゃくしゃとなでてやるとリックスは照れくさそうにするが決して嫌がるような素振りを見せないで受け入れる。
「けど、不思議だな」
「何がだ?」
「兄貴の事だよ、不思議なんだけど兄貴なら何とかしてくれそうな気がするんだ」
「何をだ?俺だってできる事とできない事があるぞ」
「それくらい解るよ、でも・・・うーん、なんかこうあったかい感じがしてさ。兄貴なら俺達を見捨てないでいてくれる気がするんだ」
「そうか、まあ・・・そうだな」
領地で好き勝手やってきた時から色んなヤツの話を聞いてきた気がする。そして一緒に汗を流し、時に血を流して・・・そうしてきた。だが俺だって小さい頃は色んな人に助けられてきた。
親父とお袋に愛され、マリエルから教育を受け身の回りの世話をしてもらっていた。ヴァルターが産まれた時は初めての弟に体の年齢のまま喜んだりした。そしてヴァルターは素直で芯の強い奴に育った。アイツのお陰で助かった事も多かったか。
「助けてもらってなんだけど・・・兄貴はどうして俺達を助けてくれるんだ?」
「ガキの頃は俺も誰かに助けてもらってきたから、かな。子供は育てられて初めて大人になれるからな」
「そうなんだ・・・でもそれだけで?」
「それだけで十分だよ、全ては皆受け継いでいくものだからな。俺を助けてくれた人は恩返しの代わりにそれを他の人にもしてやれと言ってくれた。それが俺にはできて、それでいて続けるのも恥ずかしくない遣り甲斐のある事だった・・・それで十分だろ」
そろそろ湯から上がるか。少し話しすぎた。チビッ子達もちょいと辛くなってきただろうしな。
「そろそろ上がるぞ、のぼせない内にな」
「うん」
リックスと共に湯船ではしゃいでいるチビッ子達を回収して上がる。脱衣所に戻って服がどうなっているか確認すると浴衣のような服を貸し出してくれた。
「兄貴着るの上手いな」
「あん?なんだお前、不器用な奴だな」
「難しいんだよこれ・・・ベルトじゃだめなのかな?」
「しょうがねえな、一列に並べ、着せていってやるから」
帯を結ぶのに苦労しているリックス達に手早く着せてやるとピシッと着れている事に番頭さんたちも驚いている様子だった。ま、浴衣なんぞは何度も着てたし着付けも何とかできるくらいには心得があるが彼らからしてみれば俺も単なる旅行者だからな。着れるかわからなかっただろう。
預けた服は明日の朝には乾くそうだが汲んだ水が真っ黒になったと文句を言われた。ごめんよ。
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