91 / 282
獣人と建国の章
二つの種族についてのあれこれ
しおりを挟む
翌朝、気がついたら朝になっていた。目を覚ますと仰向けに寝る俺の両脇に二人が寄り添うようにくっ付いて眠っている。
「ふぅ・・・さてこれからどうするかな」
嫁さんを一人増やして予定としては嫁さんが三人となった代わりに狐人族と狼人族の諍いについて知らぬ存ぜぬとは行かなくなった。なにせ一部が身内になってしまったのだ。ほっとくわけにも行くまい。
あれこれ考えつつ空いた両手で彼女達をさわさわしていると徐々に反応が艶っぽくなってきたのでやめておく。朝からは流石に・・・昨日もはしゃいだばかりだしたなー。
「とりあえず今更だがどうして二つの種族はあそこまで争っているんだ?」
朝食の後、着替えを済ませた俺達はシロナと共に狐人族と狼人族の諍いについての情報を調べていた。
「ええ、それに関しましては私も直接伺ったわけではありませんが・・・どうにも長の嫡子様を狼人族がかどわかしたと」
「嫡子を浚ったのか?!」
「ええ、そのように聞いております・・・」
そうなると確かに大問題だ。狐人族の跡継ぎを誘拐してしまったのならば狐人族としては大義名分として彼らと戦う口実も義務もある。反戦派の両筆頭が居なくなったそれからは停戦に傾きつつあった情勢があっと言う間に再び開戦へと転がっていったらしい。
「ただ・・・」
「なんだ?」
そういうとシロナは困ったように続けた。
「事情を知る方が狼人族からも抗議があり、狐人族の里に向かった筈の長老家の長子が行方知れずと相談を受けたとか・・・」
「どういうことだ?」
「さあ・・・それから双方から長子、嫡子を返せと言い争いが続き・・・」
「今回の泥沼の戦いに至ると・・・」
そうなるとどうも解せない、どうして双方の嫡子が消えた?どちらも重要人物のはずだ。しかも時期が似通っているというのは不可思議だ。推理小説などの類は苦手だがどう考えても無関係とは考えにくい。
「どうにも腑に落ちないな、こりゃ・・・そうなると苦手な分野だが頭を使うしかあるまい」
「と、いいますと?」
「俺は狼人族のニーミツから情報を探ってみる。その間狼人族がはやまった真似をしないように釘を刺しておくつもりだ、お前はアウロラを連れて狐人族の国に戻り一時的な講和の交渉に入れ。アウロラを俺の妻だと紹介するのも忘れるなよ?それとややこしくなるからお前が俺の妻になったことはゴタゴタが片付くまで伏せておいてくれ」
「了解しました」
仕事を振ると二人は真剣な面持ちでうなずく。
「アウロラ、集落から密偵・斥侯能力に長けた奴をお供に連れて行け。二つの国を争わせて得をしてる奴がいるはずだ」
「はい、ですがどのようにして情報を聞き出しましょうか?」
「クロと判断できた場合は好きなように対処しろ、怪しい場合は産業で出ている利益をチラつかせて出方を伺え。可能なら色香を・・・やっぱナシ、色仕掛けはナシで」
「密偵としてはそういった方法もアリかと思いますが?」
「できたとしてもアウロラはナシ!」
「は?・・・あ!了解しました」
ムキになって否定すると俺の言いたい事がわかったのかにんまりと笑顔を浮かべるとアウロラは俺の頬にキスしてからシロナを伴い狐人族の国へと向かっていった。
「さて、俺も仕事だ・・・」
黒刀を片手に俺も出かけることにした。ただ普通に探しても見つからないと思う・・・っていうか場所聞いてなかった・・・。クソ、間抜けだが仕方ない。サイズを大きくしないよう注意しながらドラゴンの姿に変身して大空へと舞い上がって空から探すことにした。
『彼らの国ってどんなところにあるんだ・・・?』
飛び上がって探してみる。しかし何度見ても驚かされるのはフィゼラー大森林の大きさだ。
数千の軍勢を一息で吹き飛ばし、焦土に変える俺のブレスを放ってもこの一帯を更地にしようと思えば何ヶ月かかるだろうか・・・。しかも森林帯でありながらここら一帯は農地に容易く転用できるほど肥沃でこの一帯に生える木々はすべて木材として非常に優秀と来たから驚きだ。
獣や魔物が多くて一般人では住むのに適さないが狩りを主に行う亜人や獣人にはここほど過ごし易い場所もないのだろう。ドラペディアによると今は海路があるとかでなくなったが昔はここをとおり抜けて他国と貿易していたこともあったらしい。
狼人族や狐人族が人間の組織運営等を知っているのは貿易に使われていた際に残された貿易商の遺品や本人からのレクチャーを受けてのことらしい。大抵の商人は感謝もすれば必要な事を教えたりもするが大抵は環境に馴染めなかったり、帰国後再起を図ることができず廃業してしまったりで再び国を訪れる者はすくなかったという。ただ森林ではコボルトと貿易できる可能性があるのでいまでも森林に踏み込む商人はいないわけではなさそうだ。
「お、あったあった・・・なるほど、なかなか立派な国構えじゃないか」
狼人族の国は木製の塀で覆われた大きな都市で構成されており、戦備えを考慮し防火対策なのか塀には漆喰らしきものが使われている。こうみるとこの国も狐人族の国も和風のテイストが強い気がするな。
俺はこそこそと地面に降り立つと人間に変身して辺りを見回す。
すると。
目と顎を外さんばかりに開いたニーミツが木の陰から覗いていた
「ふぅ・・・さてこれからどうするかな」
嫁さんを一人増やして予定としては嫁さんが三人となった代わりに狐人族と狼人族の諍いについて知らぬ存ぜぬとは行かなくなった。なにせ一部が身内になってしまったのだ。ほっとくわけにも行くまい。
あれこれ考えつつ空いた両手で彼女達をさわさわしていると徐々に反応が艶っぽくなってきたのでやめておく。朝からは流石に・・・昨日もはしゃいだばかりだしたなー。
「とりあえず今更だがどうして二つの種族はあそこまで争っているんだ?」
朝食の後、着替えを済ませた俺達はシロナと共に狐人族と狼人族の諍いについての情報を調べていた。
「ええ、それに関しましては私も直接伺ったわけではありませんが・・・どうにも長の嫡子様を狼人族がかどわかしたと」
「嫡子を浚ったのか?!」
「ええ、そのように聞いております・・・」
そうなると確かに大問題だ。狐人族の跡継ぎを誘拐してしまったのならば狐人族としては大義名分として彼らと戦う口実も義務もある。反戦派の両筆頭が居なくなったそれからは停戦に傾きつつあった情勢があっと言う間に再び開戦へと転がっていったらしい。
「ただ・・・」
「なんだ?」
そういうとシロナは困ったように続けた。
「事情を知る方が狼人族からも抗議があり、狐人族の里に向かった筈の長老家の長子が行方知れずと相談を受けたとか・・・」
「どういうことだ?」
「さあ・・・それから双方から長子、嫡子を返せと言い争いが続き・・・」
「今回の泥沼の戦いに至ると・・・」
そうなるとどうも解せない、どうして双方の嫡子が消えた?どちらも重要人物のはずだ。しかも時期が似通っているというのは不可思議だ。推理小説などの類は苦手だがどう考えても無関係とは考えにくい。
「どうにも腑に落ちないな、こりゃ・・・そうなると苦手な分野だが頭を使うしかあるまい」
「と、いいますと?」
「俺は狼人族のニーミツから情報を探ってみる。その間狼人族がはやまった真似をしないように釘を刺しておくつもりだ、お前はアウロラを連れて狐人族の国に戻り一時的な講和の交渉に入れ。アウロラを俺の妻だと紹介するのも忘れるなよ?それとややこしくなるからお前が俺の妻になったことはゴタゴタが片付くまで伏せておいてくれ」
「了解しました」
仕事を振ると二人は真剣な面持ちでうなずく。
「アウロラ、集落から密偵・斥侯能力に長けた奴をお供に連れて行け。二つの国を争わせて得をしてる奴がいるはずだ」
「はい、ですがどのようにして情報を聞き出しましょうか?」
「クロと判断できた場合は好きなように対処しろ、怪しい場合は産業で出ている利益をチラつかせて出方を伺え。可能なら色香を・・・やっぱナシ、色仕掛けはナシで」
「密偵としてはそういった方法もアリかと思いますが?」
「できたとしてもアウロラはナシ!」
「は?・・・あ!了解しました」
ムキになって否定すると俺の言いたい事がわかったのかにんまりと笑顔を浮かべるとアウロラは俺の頬にキスしてからシロナを伴い狐人族の国へと向かっていった。
「さて、俺も仕事だ・・・」
黒刀を片手に俺も出かけることにした。ただ普通に探しても見つからないと思う・・・っていうか場所聞いてなかった・・・。クソ、間抜けだが仕方ない。サイズを大きくしないよう注意しながらドラゴンの姿に変身して大空へと舞い上がって空から探すことにした。
『彼らの国ってどんなところにあるんだ・・・?』
飛び上がって探してみる。しかし何度見ても驚かされるのはフィゼラー大森林の大きさだ。
数千の軍勢を一息で吹き飛ばし、焦土に変える俺のブレスを放ってもこの一帯を更地にしようと思えば何ヶ月かかるだろうか・・・。しかも森林帯でありながらここら一帯は農地に容易く転用できるほど肥沃でこの一帯に生える木々はすべて木材として非常に優秀と来たから驚きだ。
獣や魔物が多くて一般人では住むのに適さないが狩りを主に行う亜人や獣人にはここほど過ごし易い場所もないのだろう。ドラペディアによると今は海路があるとかでなくなったが昔はここをとおり抜けて他国と貿易していたこともあったらしい。
狼人族や狐人族が人間の組織運営等を知っているのは貿易に使われていた際に残された貿易商の遺品や本人からのレクチャーを受けてのことらしい。大抵の商人は感謝もすれば必要な事を教えたりもするが大抵は環境に馴染めなかったり、帰国後再起を図ることができず廃業してしまったりで再び国を訪れる者はすくなかったという。ただ森林ではコボルトと貿易できる可能性があるのでいまでも森林に踏み込む商人はいないわけではなさそうだ。
「お、あったあった・・・なるほど、なかなか立派な国構えじゃないか」
狼人族の国は木製の塀で覆われた大きな都市で構成されており、戦備えを考慮し防火対策なのか塀には漆喰らしきものが使われている。こうみるとこの国も狐人族の国も和風のテイストが強い気がするな。
俺はこそこそと地面に降り立つと人間に変身して辺りを見回す。
すると。
目と顎を外さんばかりに開いたニーミツが木の陰から覗いていた
0
お気に入りに追加
2,384
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
裏切りの代償
志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。
家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。
連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。
しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。
他サイトでも掲載しています。
R15を保険で追加しました。
表紙は写真AC様よりダウンロードしました。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる