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アルネ村
夕食
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胃薬をのんで少しすると不調から来る胃のムカつきがすーっと消えた。すばらしきかな。
「さて、これでどうにかなりそうだ」
元気になったところで食事なんかをどうしようかな、なんて考えていると母屋から女中さんらしい女性が歩いてきた。
「お客様、お食事のご用意が整いましたのでどうぞこちらへ」
「おお、それは・・・ありがたいです」
女中さんに案内されて歩いていくと母屋の大部屋へとたどり着く。こちらも日本風の建物なのでなんとなく落ち着くな。心細い心境のなかでこれはたいへんありがたい。
「ようこそ、薬師殿」
大部屋にはなんと先程のおじいさんが上座に座って待っていた。その横でジェロニアが同じく一族らしき人達の末席に座ってこちらを見ていた。あれ?母屋に上がれないとか言ってたような気がしたが。
「薬師・・・とはちょっと違いますが、過分なおもてなしをいただきまして」
「いやいや、あれだけすばらしいものを作ったのですから」
そういうとご老人は頭を掻いて薬の包み紙を一枚取り出した。
「寝る前と約束して渡していただいたにも関わらず飲んでしまいまして・・・その効能に驚いております」
ご老人はそういうと苦笑いを興奮した様子で喋り始める。それだけ咳に悩まされていたのだろうか。こういうときに健康のありがたみがなんとなくわかるな。
「お役に立てたようで私も一安心です、ですがそれはあくまで咳のみのもの。完治には違う薬の服用が必要です」
「そうでしたか・・・、でしたらそれはどのようなものが?」
「病気の種類がわかれば対処も可能でしょう、ですが・・・」
「やはり、金額が嵩みますか?」
「ん?」
医者じゃないんでー、と断ろうとしたら違うリアクションが。え、できること前提で話さないで欲しいんだが。
「ご心配はわかります、領主などと聞こえは良いですが金銭の蓄えは乏しく、この咳の薬の代金もどれだけ支払えるか・・・」
「あ、いえ、金銭は・・・そもそも未熟な者ですし」
問題じゃないんで、と言いたかったんだけど。周囲はそうはとらなかったようで・・・。
ざわざわと一族の人達は騒ぎ始める。
「なんと!無償で?!」
「薬師殿、それはさすがに・・・」
「なんとご立派な・・・、薬師殿はそれほど高い志をお持ちだと」
あれ、あれあれ?どうして?なんで俺が無償で助けることになってんの?
見捨てたい訳じゃないし、無償なのもいいんだけどさ。そもそもまだやるとはいってないんだけどー!
「じぇ、ジェロニアさん?」
助けを乞う眼差しを送ってみるが、対するジェロニアは俺をなんかスゴい人を見る目で見ている。
「賢者様、お手伝いできることがあったらなんでも言ってください!私、なんでもお手伝いしますので!」
「あ、はい・・・お願いします」
ああ、外堀からどんどんと埋まっていくぞ。なんてこったい。こうなったらどうにかするしかない。頼むぞ賢者のスキル達ーっ!
「なんとも明るい話題だ、我らにも運が回ってきたかもしれませんな」
渋々了承した俺を見て皆が明るい表情だ。仕方ないのでとりあえず飯食ってから考えるか。
「そうと決まれば薬師どのには精をつけていただきましょう」
「そうですな・・・おい!」
呆気に取られていると山菜中心だった精進料理っぽい美味しそうな料理に川魚や俺が仕留めたあの獣の肉なんかが追加された。美味しそうだが、今の俺に完食できるだろうか?
「なんというか、過分なもてなしを・・・」
「いえいえ、領主様の病状を診察していただくのですから」
なんか治せなかったら何て言われるかわかったもんじゃないな。おそろしやおそろしや。
胃薬のお陰で今のプレッシャーにも料理にも負けずに済みそうなのが幸いだ。料理自体も見た目通りに美味しいのでとりあえずはこれを楽しもう。
「ふぅ、美味しかったです」
「満足されたようで我らも嬉しいですぞ」
料理をなんとか平らげ、一族の人達も少しずつ退席していく。最終的には領主様と呼ばれていたあの老人とジェロニアが残り、お手伝いさんらしき人達とで母屋の奥の部屋へと移動する。どうやらさっそくご老人の診察をせよとの事らしい。
「どうぞこちらへ、この部屋でお願いします」
「はい、わかりました」
ああ、こうなったら腹をくくるしかないぞぅ。俺は部屋で向かい合って老人と座る。
そしてジェロニアとお手伝いさんが老人と俺の間に座って俺の指示を待っている。
「それではまず・・・」
目の前の老人にたいして俺はスキルを意識して見つめて見る。えっと、なになに・・・。
候補:カンデラ咳
病状:慢性的な咳を伴う体調不良。睡眠障害などを併発しやすく、自然治癒しにくい。
コクリ草中毒
病状:薬草として使用されるコクリ草の飲み過ぎによる中毒症状。咳が出て、不眠を招く。
ほうほう、これが最有力候補か。そういいつつ今度は病ではなく老人そのものに注目してみると。
症状:咳、食道の炎症、不眠、摂食障害。なるほどなるほど。そういえば食事の手も遅かったな。咳が出て喉も痛いと食べるのも辛いわな。
「さて、これでどうにかなりそうだ」
元気になったところで食事なんかをどうしようかな、なんて考えていると母屋から女中さんらしい女性が歩いてきた。
「お客様、お食事のご用意が整いましたのでどうぞこちらへ」
「おお、それは・・・ありがたいです」
女中さんに案内されて歩いていくと母屋の大部屋へとたどり着く。こちらも日本風の建物なのでなんとなく落ち着くな。心細い心境のなかでこれはたいへんありがたい。
「ようこそ、薬師殿」
大部屋にはなんと先程のおじいさんが上座に座って待っていた。その横でジェロニアが同じく一族らしき人達の末席に座ってこちらを見ていた。あれ?母屋に上がれないとか言ってたような気がしたが。
「薬師・・・とはちょっと違いますが、過分なおもてなしをいただきまして」
「いやいや、あれだけすばらしいものを作ったのですから」
そういうとご老人は頭を掻いて薬の包み紙を一枚取り出した。
「寝る前と約束して渡していただいたにも関わらず飲んでしまいまして・・・その効能に驚いております」
ご老人はそういうと苦笑いを興奮した様子で喋り始める。それだけ咳に悩まされていたのだろうか。こういうときに健康のありがたみがなんとなくわかるな。
「お役に立てたようで私も一安心です、ですがそれはあくまで咳のみのもの。完治には違う薬の服用が必要です」
「そうでしたか・・・、でしたらそれはどのようなものが?」
「病気の種類がわかれば対処も可能でしょう、ですが・・・」
「やはり、金額が嵩みますか?」
「ん?」
医者じゃないんでー、と断ろうとしたら違うリアクションが。え、できること前提で話さないで欲しいんだが。
「ご心配はわかります、領主などと聞こえは良いですが金銭の蓄えは乏しく、この咳の薬の代金もどれだけ支払えるか・・・」
「あ、いえ、金銭は・・・そもそも未熟な者ですし」
問題じゃないんで、と言いたかったんだけど。周囲はそうはとらなかったようで・・・。
ざわざわと一族の人達は騒ぎ始める。
「なんと!無償で?!」
「薬師殿、それはさすがに・・・」
「なんとご立派な・・・、薬師殿はそれほど高い志をお持ちだと」
あれ、あれあれ?どうして?なんで俺が無償で助けることになってんの?
見捨てたい訳じゃないし、無償なのもいいんだけどさ。そもそもまだやるとはいってないんだけどー!
「じぇ、ジェロニアさん?」
助けを乞う眼差しを送ってみるが、対するジェロニアは俺をなんかスゴい人を見る目で見ている。
「賢者様、お手伝いできることがあったらなんでも言ってください!私、なんでもお手伝いしますので!」
「あ、はい・・・お願いします」
ああ、外堀からどんどんと埋まっていくぞ。なんてこったい。こうなったらどうにかするしかない。頼むぞ賢者のスキル達ーっ!
「なんとも明るい話題だ、我らにも運が回ってきたかもしれませんな」
渋々了承した俺を見て皆が明るい表情だ。仕方ないのでとりあえず飯食ってから考えるか。
「そうと決まれば薬師どのには精をつけていただきましょう」
「そうですな・・・おい!」
呆気に取られていると山菜中心だった精進料理っぽい美味しそうな料理に川魚や俺が仕留めたあの獣の肉なんかが追加された。美味しそうだが、今の俺に完食できるだろうか?
「なんというか、過分なもてなしを・・・」
「いえいえ、領主様の病状を診察していただくのですから」
なんか治せなかったら何て言われるかわかったもんじゃないな。おそろしやおそろしや。
胃薬のお陰で今のプレッシャーにも料理にも負けずに済みそうなのが幸いだ。料理自体も見た目通りに美味しいのでとりあえずはこれを楽しもう。
「ふぅ、美味しかったです」
「満足されたようで我らも嬉しいですぞ」
料理をなんとか平らげ、一族の人達も少しずつ退席していく。最終的には領主様と呼ばれていたあの老人とジェロニアが残り、お手伝いさんらしき人達とで母屋の奥の部屋へと移動する。どうやらさっそくご老人の診察をせよとの事らしい。
「どうぞこちらへ、この部屋でお願いします」
「はい、わかりました」
ああ、こうなったら腹をくくるしかないぞぅ。俺は部屋で向かい合って老人と座る。
そしてジェロニアとお手伝いさんが老人と俺の間に座って俺の指示を待っている。
「それではまず・・・」
目の前の老人にたいして俺はスキルを意識して見つめて見る。えっと、なになに・・・。
候補:カンデラ咳
病状:慢性的な咳を伴う体調不良。睡眠障害などを併発しやすく、自然治癒しにくい。
コクリ草中毒
病状:薬草として使用されるコクリ草の飲み過ぎによる中毒症状。咳が出て、不眠を招く。
ほうほう、これが最有力候補か。そういいつつ今度は病ではなく老人そのものに注目してみると。
症状:咳、食道の炎症、不眠、摂食障害。なるほどなるほど。そういえば食事の手も遅かったな。咳が出て喉も痛いと食べるのも辛いわな。
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