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アルネ村
聞き耳の最中に
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離れた一人が気になったので俺ももと来た道を引き返す事にする。あそこの人達にはもうしばらく待ちぼうけしてもらおう。
「さて・・・」
来た道を半分ほど過ぎたところだろうか。この世界の人間は健脚過ぎて追いかけるのが辛い。ここらへんでコイツを取っ捕まえて尋問しよう。
「もしもし」
「?・・・おっ、おま!うぐっ!」
「お静かに」
脇腹を杖で叩き、騒がれる前に制圧。そのまま脇道に引き摺り、腕を捻り上げて抵抗できないようにする。
「いででっ、ごほごほ!」
「こちらの質問に答えて頂きましょう」
「だ、だれが!いでででで!」
「腕を折られてから喋ります?」
「わかった!わかったよ!」
強めに腕を捻ると彼はあっさりと降参した。手早く彼を彼の上着で縛り上げると尋問に移る。
「さて、単刀直入に言いますが・・・あなたが御当主を殺そうとしましたね?」
「な、なんで俺なんだよ!違う!」
必死になって否定するな。まぁ当然だろう。
「しかし証拠の瓶はもうこちらにあります・・・私が貴方をアルトル殿に引き渡したら誰があなたを庇うのです?」
「それは・・・」
「さらに中身が既に知られているとしたら?」
立て続けに言うと男は驚いた様子で目を見開いた。
「なんで・・・!」
「あなたは当主の命を奪おうとした極悪非道な人間としてこの村の皆に記憶されるのでしょうね。そしてジェロニアさんのお父君を殺した悪党としても」
あぁ恐ろしい、とわざとらしく言いながら俺は足元の握りこぶしよりもやや大きい石を拾いあげた。
「そのような恐ろしい人を生かしておく必要もありませんかね」
「ひっ・・・じ、冗談だろ!」
「少なくともあなたは私を殺そうとしてたじゃありませんか?」
「ち、ちがう!俺は、命令されただけだ!違うんだよっ!」
「言い逃れですか、見苦しい」
石を握って頭に添えるように当てて振りかぶり、練習する仕草を重ねると男は汗を滝のように流しながら言った。
「ジェコスを背中から毒矢で刺したのも毒薬を渡したのも若・・・クリックさんの指示だよ!俺じゃない!」
「証拠は?」
「や、矢尻が・・・残ってるんだ、体に・・・時間が無くて取り出せなかったのが・・・」
「毒薬は狩りに使う矢に塗る為の毒でしたね?」
「そ、そうだ、あの薬は元々ジェコスの作ったヤツだった、今はクリックさんしか作り方を知らないんだ」
「そうですか、さぞ無念だったでしょうね。この村の為と思って教えた毒で殺されるとは」
狩りの成功率を上げる為の毒でジェコスさんは殺されてしまったようだ。よかれと思っての行動が裏目に出たとは悲しい話だ。
「さて、これで証言は手に入りました。毒薬はもうアルトルさんに預けてあるので言い逃れはできないでしょう」
「あんたまさか最初から毒だって知ってたのか?」
「ええ、もちろん」
当然です、と言わんばかりにあっさり答えると男はかっくりと項垂れた。完全に観念したところで俺は言葉を続ける。
「私は彼等が待ち惚けしてる間にアルトルさんにこの事を報告に行くつもりです」
スキルのおかげだが俺は最初からあの小瓶の中身が毒だと知っていた。そして彼等が口封じに動くだろうことも。後者は当て推量だが。
「そこで、あなたには二つ選択肢が残っています」
「選択肢・・・?」
「私に協力してアルトルさんの前で洗いざらい話すか、このままここで引導を渡されるかです」
ひたっ、と石をこめかみに当てて俺はそれを振りかぶった。
「ひっ、わかった、わかったよ!協力、するっ」
「よろしい、では参りましょう」
縛り上げた男を無理矢理立たせると俺は来た道をまた村へと進んでいく事に。
「薬師様・・・これは一体?」
「すみませんが旦那様にお声がけを」
縛った男を連れて戻ると村人たちにみつかりちょっとした騒ぎになった。当の本人たちがいないのが幸いである。
「おおよそは伺っておりますが・・・これは一体どういうことですかな」
「それはこの男に歌ってもらいましょうか、それ!」
「いてっ!・・・実は・・・」
屋敷に向かってアルトルさんの前に引き出す。クリックさんの悪事の一部始終を語らせたのちは村の重役たちは皆一様に険しい表情をしていた。
「クリックめ・・・もう勘弁ならんぞ」
「今は山の中腹で私とジェロニアさんを殺すために待ち構えているでしょう」
「悪事の口封じにお客人のみならずジェロニアまで・・・」
正義漢らしいラグドルさんはこめかみに青筋を浮かべているし、アルトルさんは悲し気な表情を浮かべている。
ジェロニアさんはおろおろするばかりで解決策などありようもない。
「こうなればあの御仁の始末は私がつけさせていただきましょう」
困り果てる皆に、俺は気づいたらそう提案していた。
「さて・・・」
来た道を半分ほど過ぎたところだろうか。この世界の人間は健脚過ぎて追いかけるのが辛い。ここらへんでコイツを取っ捕まえて尋問しよう。
「もしもし」
「?・・・おっ、おま!うぐっ!」
「お静かに」
脇腹を杖で叩き、騒がれる前に制圧。そのまま脇道に引き摺り、腕を捻り上げて抵抗できないようにする。
「いででっ、ごほごほ!」
「こちらの質問に答えて頂きましょう」
「だ、だれが!いでででで!」
「腕を折られてから喋ります?」
「わかった!わかったよ!」
強めに腕を捻ると彼はあっさりと降参した。手早く彼を彼の上着で縛り上げると尋問に移る。
「さて、単刀直入に言いますが・・・あなたが御当主を殺そうとしましたね?」
「な、なんで俺なんだよ!違う!」
必死になって否定するな。まぁ当然だろう。
「しかし証拠の瓶はもうこちらにあります・・・私が貴方をアルトル殿に引き渡したら誰があなたを庇うのです?」
「それは・・・」
「さらに中身が既に知られているとしたら?」
立て続けに言うと男は驚いた様子で目を見開いた。
「なんで・・・!」
「あなたは当主の命を奪おうとした極悪非道な人間としてこの村の皆に記憶されるのでしょうね。そしてジェロニアさんのお父君を殺した悪党としても」
あぁ恐ろしい、とわざとらしく言いながら俺は足元の握りこぶしよりもやや大きい石を拾いあげた。
「そのような恐ろしい人を生かしておく必要もありませんかね」
「ひっ・・・じ、冗談だろ!」
「少なくともあなたは私を殺そうとしてたじゃありませんか?」
「ち、ちがう!俺は、命令されただけだ!違うんだよっ!」
「言い逃れですか、見苦しい」
石を握って頭に添えるように当てて振りかぶり、練習する仕草を重ねると男は汗を滝のように流しながら言った。
「ジェコスを背中から毒矢で刺したのも毒薬を渡したのも若・・・クリックさんの指示だよ!俺じゃない!」
「証拠は?」
「や、矢尻が・・・残ってるんだ、体に・・・時間が無くて取り出せなかったのが・・・」
「毒薬は狩りに使う矢に塗る為の毒でしたね?」
「そ、そうだ、あの薬は元々ジェコスの作ったヤツだった、今はクリックさんしか作り方を知らないんだ」
「そうですか、さぞ無念だったでしょうね。この村の為と思って教えた毒で殺されるとは」
狩りの成功率を上げる為の毒でジェコスさんは殺されてしまったようだ。よかれと思っての行動が裏目に出たとは悲しい話だ。
「さて、これで証言は手に入りました。毒薬はもうアルトルさんに預けてあるので言い逃れはできないでしょう」
「あんたまさか最初から毒だって知ってたのか?」
「ええ、もちろん」
当然です、と言わんばかりにあっさり答えると男はかっくりと項垂れた。完全に観念したところで俺は言葉を続ける。
「私は彼等が待ち惚けしてる間にアルトルさんにこの事を報告に行くつもりです」
スキルのおかげだが俺は最初からあの小瓶の中身が毒だと知っていた。そして彼等が口封じに動くだろうことも。後者は当て推量だが。
「そこで、あなたには二つ選択肢が残っています」
「選択肢・・・?」
「私に協力してアルトルさんの前で洗いざらい話すか、このままここで引導を渡されるかです」
ひたっ、と石をこめかみに当てて俺はそれを振りかぶった。
「ひっ、わかった、わかったよ!協力、するっ」
「よろしい、では参りましょう」
縛り上げた男を無理矢理立たせると俺は来た道をまた村へと進んでいく事に。
「薬師様・・・これは一体?」
「すみませんが旦那様にお声がけを」
縛った男を連れて戻ると村人たちにみつかりちょっとした騒ぎになった。当の本人たちがいないのが幸いである。
「おおよそは伺っておりますが・・・これは一体どういうことですかな」
「それはこの男に歌ってもらいましょうか、それ!」
「いてっ!・・・実は・・・」
屋敷に向かってアルトルさんの前に引き出す。クリックさんの悪事の一部始終を語らせたのちは村の重役たちは皆一様に険しい表情をしていた。
「クリックめ・・・もう勘弁ならんぞ」
「今は山の中腹で私とジェロニアさんを殺すために待ち構えているでしょう」
「悪事の口封じにお客人のみならずジェロニアまで・・・」
正義漢らしいラグドルさんはこめかみに青筋を浮かべているし、アルトルさんは悲し気な表情を浮かべている。
ジェロニアさんはおろおろするばかりで解決策などありようもない。
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