初雪は聖夜に溶ける

成瀬瑛理

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ハンドメイド

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――その日からカヲルさんの指導のもと、休憩時間の合間や、仕事が無い休みの日に、慣れない手つきでセーターを編むことにした。最初は意味がわからなく編むのに苦戦した。どうせハンドメイドなら最初から出来てるセーターを買ったほうが早いじゃんと、俺はカヲルさんに文句言って話した。でも、そうじゃないらしい。ただ編むんじゃなく。その人を想って、心を込めて編むことに意味があるんだと彼からそう教えられた。

 始めは作る途中で投げやりだったセーターも、そう言われると、何だか特別な感じがしてきた。俺は司が好きな色の青色のセーターを一生懸命編んだ。彼がセーターを着て喜んでくれてる姿が目に浮かぶと、胸の奥がキュンとなった。何度か挫けそうになりながらも司の事を想って真心を込めて編み続けた。きっと、俺のこんな姿を見たら司はびっくりするだろうな。

 そんな事を不意に思いながらも、寝る暇を惜しんで毎日セーターを編み続けた。そして、クリスマスが間近に迫る頃にセーターもようやく完成に近づいた。

 何気無く両手でセーターを広げるとジッと眺めた。はじめて編んだ割にはちゃんとしたセーターになっていた。俺はカヲルさんの指導のお蔭だと感じた。クリスマスが終わったらカヲルさんに何か美味しいものをご馳走してあげようと考えた。一日かけて頑張って仕上げると、その日の夜にセーターがやっと完成した。無事に完成すると、一気に疲れてベッドの上にバタンと倒れこんだ。

「やっと完成だぁ~! なんとかクリスマス前に間に合ったぞ!!」

 仕事も忙しくて時間も限られている中、セーターを無事に完成させた自分に拍手を送りたい気分だった。完成したセーターを手に持つとそれを両手でぎゅっと抱きしめた。俺の目に浮かんだのは、司がセーターを嬉しそうに着てくれる場面だった。

「早くクリスマスにならないかなぁ。司に会いたい――」

 暫く彼に会ってなかったから、寂しさと恋しさが、前より段々と募った。会いたい気持ちが胸の中で膨らむと、その寂しさを紛らわすように編んだセーターそっと抱き寄せた。そして、その日は夜遅くに眠りについた。
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