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第3章―時は一刻を争う―
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しおりを挟むアザゼルの襲撃に困惑する中、ラケシスの本部では密かに作戦会議が行われていた――。
冴嶋はテーブルに両肘をついて沈黙すると、前だけを睨んだままジッと一人で考え混んでいた。状況が逼迫する中で彼は何かの作戦を思いつくとそこで考えることをやめた。そして、次の行動に移した。
彼はまず厄介な存在から叩く事に決めた。今だ空中から地上へと爆撃を行うフェニックスに狙いを定めると、各エリアでバラバラになって戦闘を行っている部隊に対してエリア13ブロックに一斉に集結するように指示を出した。
彼の自殺的行動に各エリアを任されている軍事指揮官達や、その場にいた幹部からは批判の声が次々に上がった。一気に不満の声が高まる中で、冴嶋は通信回線から大きい画面のモニター回線に切り替えるようにオペレーターに指示を出した。
通信オペレーターは彼に言われるがままに通信回線からモニター回線に切り替えた。そして、映し出された画面の前で堂々たる態度をとった。
批判や困惑する幹部達の前でも、冴嶋は一歩も譲らずに各エリアに対してエリアの破棄を一斉に伝えると13ブロックに集結するように再び促したのだった。それを聞いた上層部の一人がモニター画面を通して怒りを露にして怒鳴り散らした。
「バカな、貴様は正気か!? このままあいつらに各エリアへの進軍を好き放題にさせる気か!」
年配の髭を生やした男は、常軌を逸した彼の発言に対して感情的になると激を飛ばした。だが、彼は怯む事もなく、モニター画面の前で冷静な口調で上層部の男に言い返した。
「フン、今さら敵の手に落ちたブロックには興味などない!」
冴嶋は躊躇うこともなくそう言い切った。その言葉に上層部の男は不満を露にすると、皮肉混じりに言い返した。
「冴嶋三齊。噂通りの切れ者だとはな! まさかお前、ここをディオニュソスの二の舞にしようとは考えてはいまいな?」
その言葉に彼は反応はしなかった。眉を顰めない毅然とした態度に。上層部の幹部の男は、もはや呆れたように豪快に笑った。
「――いいだろう。貴様の司令官としての腕前をとくと拝見させてもらおうじゃないか? 貴様がこの逆境を一変に変えれると言うなら変えてみるがいいさ! 但し、貴様がこの戦いで行った発言や行動や判断はすべてゼノア最高合議審会に上告するからな!」
男は最後に吐き捨てるように彼に言うと、自らモニターの通信回線を切った。
「チ、元老院の犬め……!」
彼はそう言うと不機嫌そうな表情を浮かべた。上層部との話が終わるとラケシス基地内のエリアを任されている1人の軍事指揮官の男が割り込む形でモニター画面の通信回線を開いた。彼は画面越しで感情的になりながら言い放った。
「おい、貴様! 制圧されたエリアは破棄してもまだ制圧されていない所も破棄する気なのか!?それは自殺行為でお前の判断は間違っているぞ!」
感情的に声を荒らげるとそう言って疑問を投げ掛けた。冴嶋は後ろの椅子に凭れると、きっぱりとした口調で彼に言い返した。
「ああ、そうだ!」
男は驚愕となると思わず息を呑み込んだ。
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