上 下
20 / 193
第2章―戦いの砲火―

11

しおりを挟む
 
「――パイロットなら此処にいる!」

彼はそう言うと整備士の方を真っ直ぐ見て返事をした。結人は思わず袖を掴んだ。

「美岬ダメッ……!」

 そう言って咄嗟に、彼の背中で小声で話した。美岬は結人の方を見るなり黙って掴んだ手を振り払った。

「俺がパイロットです! 俺がアビスに乗ります――!」

 美岬は迷わずに堂々と整備士の方を見て自分の意思を伝えた。結人はその言葉に顔が青ざめた。そして、整備士はその言葉に喜んだ。

「よし、じゃあ俺と一緒についてきてくれ!」

 整備士は急ぐ様子で彼をアビスの格納庫に誘導しようとした。そこで見ていた隼人は美岬の勝手な独断発言に頭がカッとなり、命令違反に背く彼に対して激怒した。

『お前グラギウス艦長の命令に背く気か!?』

 隼人はそう言うと、拳を握って怒りに震えた。美岬は彼の方を見るとストレートに言い返した。

「何もしないで待つくらいなら、やっといた方が何倍もマシですよ!」

『死にたいのかお前っ!?』

 感情的になって咄嗟に腕を掴むと、美岬は言い返した。

「死ぬも何も俺達は最初からとっくに死ぬ運命の存在って決まっているんですよ。隼人隊長、俺は行きます…――!」

その言葉に唖然となり、掴んだ腕を離した。美岬はそう言うと2人の前から背中を向けて、黙って遠ざかった。そして、整備士と共にA―33アビス格納庫に急いで向かった。

呆然となって立ち尽くす隼人の傍で、結人は居ても立っても居られなくなると、何も言わずに部屋から飛び出した。そして、慌てながら美岬の後をすぐに追いかけに行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性転換タイムマシーン

廣瀬純一
SF
バグで性転換してしまうタイムマシーンの話

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】

一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。 しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。 ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。 以前投稿した短編 【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて の連載版です。 連載するにあたり、短編は削除しました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

完璧な頭脳

色部耀
SF
人類の頭脳の到達点。完璧な頭脳と呼ばれた遠野教授の秘密を私だけが知っている。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

処理中です...