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第7章―消えゆく命の残り火―

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「…――わかりました。貴方の言う通り、命令に従います」

『アレックスっ!?』

 レオンはその言葉に咄嗟に口を挟んだ。

「お前までやつの言いなりか!? あいつは信用出来ない、あいつはまた俺達を裏切るんだ!!」

『レオンっ!!』

「っ…――!」

 アレックスは反論する彼に対して強めの口調で叱りつけた。

「いいかレオン、黙って話を聞け。お前は面白くないかも知れないけど。これはもう、俺達がどうこう言ってる場合じゃないんだ。彼が言ったように誰かが『やらないと』いけない! 犠牲にしてきた仲間の死をここで、無駄にさせてはならないんだ!」

「けどよ……!」

 彼はアレックスの話しに複雑な感情を抱いた。ジェイドは隣で彼の話しに賛成すると、魂が抜けたように一言呟いた。

「もう、なんでもいい。こんな事、はやく終わらそう……」

 そう言って呟くとレオンは言い返せなくなり、ただ自分の口を噛み締めた。

「いいでしょう。貴方がそう言うなら、トコトンやりましょう! これで華々しく散るなら、私は本望です。我々リゲル部隊は第一空戦部隊としての誇りを胸に戦います。そして、敵に戦々恐々を思う存分に叩きつけてやりますよ。貴方は自分にしか出来ないことをして下さい…――!」

 アレックスは凛とした口調でそう言い放つと、覚悟を決めた。そこには迷いすら感じなかった。瞳の奥は強い決意に揺れていた。

 仲間達は、彼のただならぬ気迫に圧倒されると驚いた。ジョンはアレックスの決意に、ただ一言『すまない』と恩をきった。

「よし、最後の手伝いだ…――! お前達3人は俺達を援護しろ! 俺とお前、そうだカーター! お前は俺と共に行動してもらう。この際、嫌だとは言わせないぞ!?」

 ジョンも腹をくくった様子でそう話しかけると、カーターは嫌だと断った。

「嫌です、自分はもう……! それに、おしまいです! 自分にはこんなの荷が重すぎます……! もうこんな、もう無理だ…――!」

 カーターは嫌だと断ると操縦席の前で震えた。彼の精神は限界に達していた。いくらジョンが声をかけても、彼は返事をせずにガタガタと震えていた。

 度重なる激しい戦闘での疲労と、自分の所為でマードックが死んだと思うとやりきれなかった。それがさらに精神面に追いうちをかけた。

 もともと気弱な性格の彼にとって、これ以上は耐えれなかった。ジョンは嫌だと言い続ける彼に対して思いを伝えた。
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