上 下
122 / 193
第7章―消えゆく命の残り火―

6

しおりを挟む
「美岬君や隼人君は即戦力になるとけど、結人君はパイロットとしては、戦力外だから戦闘は無理だろうね。イさんはどうなんだろ? まあ、いざとなったら彼に出てもらうしか――」

雪矢は一人考え込むと不意に呟いた。するとジノは横から口を挟んだ。

「確かに3人が戻らない場合、イ殿に出てもらうしかないです。ですが少し問題が…――」

「何、問題って? 彼がどうかした?」

 そこで聞き返すと彼は言いにくそうに伝えた。

「その、イ殿は待機中にお酒を飲んでたらしく、今部屋で酔い潰れて寝てます」

 その言葉に雪矢は思わず声をあげて驚いた。

 「じょ、冗談だろ!? この状況で酔い潰れてるなんて!?」

「いいえ、先ほど他のクルーが彼にその事を伝えに部屋に向かった所、彼は完全に酔い潰れて寝てました」

 ジノがそのことを伝えると、雪矢は椅子の上で頭を抱えた。

「な、なんて悪夢だ! こんな時に彼は何でお酒なんか……!」

 雪矢はそう呟くと頭の中がガーンとなった。

「恐らく長い時間の拘束が原因かと。もともと彼は大のお酒好きですから、待機中にお酒を一滴も飲めないのは、彼にとっては苦痛かと思います。それにイ殿は待機中の間に暇だと、他のクルーに不満を漏らしてましたし――」

 ジノがそう言って答えると雪矢はキッと睨んで言い返した。

「やけに彼の肩を持つじゃないか! こんな時は何をやってるんだって非難するべきだろ!?」

「そっ、そう言われましても……。じっ、自分はあくまでも中立ですから何とも言えません。それに各パイロットの情報が知りたいのでしたらこのファイルをご覧下さい。副艦長の立場柄、知っていても損はないと思います」

 そう言って彼はパイロットの情報が入った電子ファイルノートを手渡した。

「えーっと、何々~イ・ヨルグ。生まれた場所E―750。好きな物はお酒……。って、ホントにお酒って書いてあるよ! うわぁ、段々と頭痛くなってきた! 3人以外に頼みの綱であるイさんが使えないなら、本当にいざって時にどうするんだよ!?」

 雪矢は再び頭を痛めると、困った顔で天井を見上げた。

「もしもの時、戦えないじゃないか! 君達この状況を真剣に理解しているか!?」

 彼の問いかけに司令室にいたオペレーターや、クルー達は全員、沈痛な顔をしながら沈黙した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性転換タイムマシーン

廣瀬純一
SF
バグで性転換してしまうタイムマシーンの話

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】

一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。 しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。 ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。 以前投稿した短編 【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて の連載版です。 連載するにあたり、短編は削除しました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

処理中です...