上 下
153 / 193
第7章―消えゆく命の残り火―

37

しおりを挟む
 彼らはシールドを敵から守ろうと、命を懸けて必死で戦った。そして、その時はついに訪れだ。シールドの起動状態が100%に到達すると、強い光を放ちながら動き始めた。

 カーターはジョンにその事を報告すると、早く梯子を昇るように急かした。周りで戦っていた彼らもシールドが光り輝くと一斉に退却した。

アレックスは意識を失ったレオンを担いで急いで退却した。そのあとをジェイドもついて行った。

『今だ、退却だっ!!』

ブレークは一瞬の隙をつくと他の仲間達にも声をかけて急いで彼らと共に退却して行った。ジョンは梯子を登り終わると自分の機体に入って行こうとした。

彼が自分の機体に戻ろうとしたその時、シールドは基地全体を覆うように張り巡らせたのだった。その瞬間、彼らはついに敵の侵入を防ぐ事に成功した。

多くの犠牲、その上に掴んだ勝利と喜び。彼らはシールドが辺りを覆うのを見届けながら、思わず歓喜した。リゲル部隊の彼らもそれを見届けた。その瞬間、様々な思いか胸の奥を駆け巡った。

 ジェイドは小さな声で『やったな』と呟くと、静かにふと笑った。アレックスも彼の呟きに頷いて答えた。

「ああ、これで……! やっとやっと、これで――!」

 アレックスは様々な想いが一瞬で体中を駆け巡った。胸を焦がす熱い思いは絶え間なく。荒波のように激しく、静寂とはかけ離れた思いが幾つも浮かんでは消えて行った。

失った仲間と犠牲になった仲間達。その屍の上に今生きいる自分達に『生』への感謝が尽きる事はなかった。

彼の思いは皆、誰もが同じだった。彼らは犠牲になった仲間達への弔いに、光り輝く柱に向かって深く敬礼した。誰もがそこで勝利を確信する中、それは突如起きた。

シールドが起動した瞬間、敵は僅かな隙をついて1体だけ物陰に潜んで隠れていた。空戦部隊の彼らが一斉に油断した時に、敵は隠れた場所から出てきて、そこから柱の方にめがけてミサイル弾を数発撃ち放った。

柱の直ぐ近くでミサイル弾が数発放たれると、彼らはその瞬間、隠れていた敵の存在に気がついて驚愕した。

しまったと思った時には既に遅かった。ミサイル弾は一直線に柱の方に向かっていった。その瞬間、彼らは絶望に打ちのめされた。そして、その光景に驚愕して咄嗟とっさに叫んだ。

『しまったっ!!』

誰もが驚いて絶望した瞬間、カーターは放たれたミサイル弾に気がつくと、他の誰よりも俊敏に動いた。それは彼にとっても捨て身の行動だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性転換タイムマシーン

廣瀬純一
SF
バグで性転換してしまうタイムマシーンの話

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】

一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。 しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。 ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。 以前投稿した短編 【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて の連載版です。 連載するにあたり、短編は削除しました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

完璧な頭脳

色部耀
SF
人類の頭脳の到達点。完璧な頭脳と呼ばれた遠野教授の秘密を私だけが知っている。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

処理中です...