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第7章―消えゆく命の残り火―

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「ちょっと待って……! それ、本気で言ってるのかい!?」

「はい。艦長の事は、我々には理解できないのでどうやらそうみたいです」

 ジノは雪矢にそう話すと付け加えた。

「――それに少人数については、今回の件に関係していると思います。グラギウス艦長の話では、ここに来たのはどうやら何か『目的』があるみたいで、大人数で行くとなると目立つ理由から最初から少人数で行くと決めてましたし……」

「え、何それ? そんな話し、僕はアーバスから一度も聞いてないよ?」

 雪矢はその話しに不信感を抱くと、彼を問い詰めた。

「ねぇ、君。何か僕に隠してるみたいだね……。隠し事があるなら早く言った方が良いよ?」

「い、いえ。隠し事なんてありませんよ……」

 ジノのその言葉に雪矢の顔色が急に変わった。

「今のは聞かなかったことにして下さい。でないと、自分があとで艦長に怒られます」

 そう言って彼は急に口を閉ざした。

「言わないならくすぐりの刑に処すよ。それとも無理矢理口を割らそうか?」

 雪矢はそう告げると瞳を怪しく光らせた。

「――くすぐりの刑に処されるのは嫌なので仕方なく言いますが、ですが自分が言ったとは艦長に言わないで下さいよ?」

 ジノはその場で問い詰められると仕方なく話しはじめた。

「これは極秘の気密情報なんですが、我々が地球から出て宇宙に向かったのにはワケがあり。この宇宙基地のラケシスに来たのには何か運ぶ役目があるみたいです」

「何? なにを運ぶって?」

雪矢はその話しに食らいつくと、椅子から前屈みになって尋ねた。

「そっ、それは自分もそこまではわからないですけど…――! 艦長の話では、それは重大のようです! ですから少人数できたのにはそれなりの理由があるんです!」

 少年が事実を伝えると彼はそこで呟いた。 

「ふーん。なんかヤバそうな話だね。もしかしてこの騒ぎに関係してるんじゃないよね? 地上は今、アザゼルの襲撃に混乱しているみたいだし。ここだっていつ敵にバレるかも知れないし……」

 そう話すと不安そうな顔で考え込んだ。

「アーバスはどっか行ったきり全然戻らないし。あの3人は未だに戻らないし。戦闘に出れるパイロットは不足しているし。とにかくヤバい状況なのは確かだよ。何を運ぶか知らないけどさ、早く用事を済ましてこの基地を出た方がいいよ。皆もそう思うだろ?」

 雪矢のその話しに指令室にいたオペレーターやクルー達は、深刻そうな顔色で同じく頷いた。
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