共鳴のヴァルキュリア (全話再編集完)

成瀬瑛理

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第5章―生と死の輪舞―(ロンド)

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「凄い、信じられません……! 彼はアークⅡの隊長機を一人で撃破させました! もはや彼は、驚異的としか言いようがありません…――!」

 オペレーターのディックはその事を呟きながら報告した。指令室にいた彼らは美岬の活躍に驚きながらも喜んだ。冴嶋は彼の活躍をモニター画面で見ながら真っ直ぐ前を見た。

「待たせたな、次はお前だ!」

 美岬はゲルマンを倒すと、次はカインに狙いを定めた。彼はアレスの失った左手をカバーすると右手で鎌を持って立ち上がった。

「よくもゲルマンを……! こいつ、こいつ! 絶対にブッ殺してやるっ!!」

 カインは操縦桿を握り締めながら、激しい怒りを込み上げた。

『こいつーーっ!!』

怒り任せに身を任せて叫ぶと、両肩からミサイルポットを数百発放った。更に続けざまにラードンから高熱エネルギーのビームを勢いよく撃った。

美岬はカインの攻撃を素早く回避しながら後方に下がった。そして、そこから放たれたミサイル弾をビームライフルで撃ち落とした。

 彼がカインに気をとられていると、ゲルマンは背後から忍び寄るように彼の左足に右手で突如、ガシッと掴まってきた。

「捕まえたぞ!」

「何っ!?」

ゲルマンは機体の半身を失ったのにも関わらず、そのまま地べたを這うと彼の所まで辿り着いた。その恐るべき執念に美岬はそこで唖然となった。

彼の左足に掴まると、その手を絶対に離そうとはしなかった。ゲルマンは操縦席の前で狂気の笑みを浮かべながら笑った。

「ガッハッハッ! ついに捕まえたぞ、小僧! これで貴様は自由に動けまい! このゲルマンを侮った事を今から後悔させてやる!」

「くっ……! は、離せっ!!」

「ガッハッハッ! だれがこの手を離すものか、このまま貴様を道連れにしてやる!」

「な、何だと…――!?」

 美岬は掴まれた手を振り払おうと真上から機体を踏みつけた。しかし、ゲルマンはそんなのには動じる事もなく、トラップシステムを作動させて機体の手を完全にロックした。

「こっ、こいつ……!」

 その瞬間、彼の脳裏にある事が過った。それは最悪なシナリオだった。ゲルマンは操縦席の前でパスワードを打つと、ソロモンのシステムを起動させた。


 こいつ、俺と自爆する気か――!?


 美岬はその事を勘づくと咄嗟に持っている銃で腕を吹き飛ばそうとした。するとゲルマンは咄嗟に口走った。
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