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第4章―舞い降りた翼―

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「そうだ思い出した! 確かアイツ天才って呼ばれてるわりにはスゲー態度がデカくて生意気で、誰にでも直ぐ反抗するって噂で聞いた事がある。まさか本当に噂通りの男だったんだな……!」

 周りはヒソヒソとその事を話した。冴嶋は少し呆れた顔をした。

「君が我々に協力する気がないと言うならアビスに搭乗する許可は出来ない!」

「チッ、それで俺を脅しているつもりなのか? 分かった。仕方ないから命令を聞いてやる。でも最後の判断は俺が決めることだ。アンタはそこでサポートしてくれれば良い」

 美岬はそう話すと仕方なく彼の命令を聞く事にした。

「取り合えず君には協力してもらう。いいな?」

「ああ、わかった。で、アンタの命令は何だ?」

「君の前にいる敵はアークⅡを率いるミストラル部隊の隊長だ。そして赤い機体は敵のエースだ。今から君にはそのどちらかを撃破して欲しい」

「あの白い機体がミストラル部隊の隊長機? で、あの赤いのがエースの機体か……?」

「ああ、そう言う事になる。ちなみに赤い機体についてだが、Zナンバーの特殊な機体である事がわかった。恐らくその機体ではZナンバーの機体を倒すのは非常に難しい。だからエースが乗っている機体は行動不能にさせることを目的に戦って欲しい」

 冴嶋の無謀なオーダーに、美岬は舌打ちをして表情を険しくさせた。

「Zナンバーの機体か…――。確かにこの機体でアレを倒すのは難しい。あれさえあれば、倒せるかも知れないが……」

 不意に呟くと操縦桿を握り締めた。

「わかった。隊長機の方は何とか倒してみせる。でも、Zナンバーの方は余り期待するなよ?」

 冴嶋は彼の一言に頷いて答えた。

「ああ、では頼んだぞ……!」

「了解!」

 美岬は彼に返事をすると、操縦桿を強く握って前を見た。冴嶋は近くにいた2機のアビスに命令を出した。

「お前達は今から東のサポートに回れ!」

「りょ、了解です……!」

 2人のパイロットは冴嶋の命令に従って、彼のサポートに回る事にした。美岬は冴嶋に敵の機体についての詳しい情報を送るように要求した。

「アークⅡについての機体の情報を頼む。あと、ヒート系の武器が必要だ。この機体にはヒート系の武器が装備されていないが、何か使える武器はないか?」

 美岬の質問に彼は答えた。
    
「それなら『DT―Glitnirディーティーグリトニル』の武器がある。旧式の機体の武器だが、まだ使える。整備班に連絡をしたのち、空戦部隊でそちらに輸送しよう!」

「了解!」
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