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第22章ーセフィロトの兄弟ー

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――冷たい風が吹く草原の丘に、大きな大樹の木がひっそりと立っていた。そこには人の気配も、獣の気配も無かった。その木の下にガブリエルの姿があった。彼は兄のウリエルと、些細なことで喧嘩をすると2人の前から飛び去った。そして、暫く天空の青空を翼で翔ると、彼はそこで羽根を休める為に草原へと舞い降りた。

 誰もいない静かな場所で、彼は悲しそうな表情で物思いにふけた。目に浮かぶのはあの時の光景だった。ウリエルが、ラファエルに助けを求めた姿が頭から離れられなかった。

 同じ『兄弟』なのに、彼は其処に孤独を感じていた。その孤独は、彼が生まれてからずっと今も感じていたものだった。自分は彼に触れる事さえ許さないのに。同じ兄弟なのに何故、兄のラファエルは許されて、自分は駄目なのかと言う疑問と思いが、胸の奥を小波さざなみが感情の波を掻き乱すように揺れた。

「チッ、くそ……!」

 ガブリエルはそこで思い詰めると、足元に生えている草を握ってむしり取ると手の中で離した。草は風に吹かれて宙を舞った。夕暮れ時の丘に、黄昏れ色に染まった空を見上げながら、悲しげな表情で呟いた。

「どうして俺だけ……」

「此処に居たのか、ガブリエル――」

『ッ……!?』

 急に名前を呼ばれると後ろを振り向いた。其処にはラファエルの姿があった。彼は丘の下から登ってくると、彼の側に佇んだ。

「ラファ兄ぃ、何でここに……?」

「お前が突然、私達の前から居なくなるから心配したぞ。探すのに苦労した。でも、きっとお前のことだから此処に来れば居ると思ったんだ」

「兄貴…――」

「私にも『翼』があれば、お前の後を直ぐに追えたのにな……」

「悪かったな、手間をかけさせたみたいで」

「まったくだよ。本当に困った弟だ」

 そう言って彼の隣に座ると呆れたように優しく笑った。ガブリエルはその言葉に急に照れると、顔を反らして下を俯いた。

「何だ? わざわざ人が迎えに来てやったのに、嬉しくないのか?」
 
 そう言って彼の顔を覗くと、彼はぶっきら棒な言葉で照れ隠しした。

「ばっ、バカ……! 誰が兄貴に迎えに来てくれなんて言ったかよ! 俺は一人が好きなんだ! ほっとけ!」

「ふーん。顔に『迎えに来て欲しい』って書いてあるぞ?」

「はっ!? なっ、バカな……!」

 ラファエルに冷やかされると、彼は慌てた様子で自分の顔を手で擦った。単純に引っ掛かる弟がついつい可愛くて、隣で声を出して笑った。
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