上 下
255 / 316
第21章ー竜と少年ー

7

しおりを挟む
「ユングよ、大丈夫か?」

「う~ん…あれ……? なんでだろう…リーゼルバーグ隊長が逆さまに見える……」

 寝ぼけた頭で彼を逆さまから見た。なんで逆さまなのかその事さえ気づかなかった。リーゼルバーグ隊長は、少し呆れた顔をすると、そこで指摘した。

「お前さん、ベッドから落ちてるぞ?」

「えっ…?」

「早く起き上がらぬか。朝食を持ってきたぞ?」


 リーゼルバーグ隊長にそのことを言われると、ベッドから落ちた事に気がついた。体を起き上がらすと、僕は寝ぼけた頭を片手でかいた。

「あれ、なんでベッドから落ちてるんだ…?」

「それくらい元気なら、もう療養しなくても大丈夫じゃろう。さあ、朝食をとるのだ」

「は、はい…!」

 ベッドに戻ると、運ばれてきた朝食を食べた。ハムとチーズとレタスが挟まったクロワッサンを食べながら、彼と話した。

「お前さんマードックから聞いておるか?」

「は、はい……! 人手不足だから、竜達の世話をするように頼まれました…!」

「ああ、そうじゃ。今回の戦闘で竜達を世話する隊員が3人死んでしまって竜達を世話する係りが今、人手不足なのだ。それにマードックも今動けない状況だ。竜達の世話をする係りは今4人で切り盛りしている所だ。お前が彼らを手助けしてくれれば心強いだろう」

 リーゼルバーグはユングにその事を話すと、淹れたてのコーヒーを一口飲んだ。

「ぼ、ぼくにできるでしょうか…? だって僕は見回りしかまだやった事がないですし…――」

 ユングは自信無さげに話すと彼は背中をポンと叩いて励ました。

「ああ、それなら大丈夫だ。他の隊員達や、私が教えるから安心するが良い」

「は、はい…! それなら安心ですね…! わ、わかりました…! 僕、がんばります…!」

 ユングは不安げな顔をしつつも、新しい持ち場に意欲を持った。リーゼルバーグはユングの素直な返事に目を細めて優しく微笑んだ。不意に彼に頭を撫でられると、少し照れた。

「ユングよ、お前は本当に素直な子だ。そういった良い所はもっと伸ばすとよい」

「は、はい…――!」

 彼に褒められると、顔をパァッと明るくさせて返事をした。

「あの、見回りとかどうしますか…?」

「それなら大丈夫じゃ。ハルバートや私が見回りをするから、今療養している隊員達の怪我が治るまでの辛抱だ」

「わかりました。じゃあ僕は時間が余った時、見回りします」

「うむ。そうしてくれると私達も助かる。頼んだぞ」

 リーゼルバーグはそう話すと、感心した表情で返事をした。

「さあ、早く食べてマードックのところに行くのだ。詳しい話しは彼から聞くといい」

「はい…!」

 ユングは返事をするとクロワッサンを急いで食べた。食事をし終えるとベッドから出て彼とそこで別れた。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

下げ渡された婚約者

相生紗季
ファンタジー
マグナリード王家第三王子のアルフレッドは、優秀な兄と姉のおかげで、政務に干渉することなく気ままに過ごしていた。 しかしある日、第一王子である兄が言った。 「ルイーザとの婚約を破棄する」 愛する人を見つけた兄は、政治のために決められた許嫁との婚約を破棄したいらしい。 「あのルイーザが受け入れたのか?」 「代わりの婿を用意するならという条件付きで」 「代わり?」 「お前だ、アルフレッド!」 おさがりの婚約者なんて聞いてない! しかもルイーザは誰もが畏れる冷酷な侯爵令嬢。 アルフレッドが怯えながらもルイーザのもとへと訪ねると、彼女は氷のような瞳から――涙をこぼした。 「あいつは、僕たちのことなんかどうでもいいんだ」 「ふたりで見返そう――あいつから王位を奪うんだ」

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...