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第20章―消せない罪―

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「貴様は誰だ…!? 私の弟はそんな愚か者ではない! この兄である私に逆らうはずがないんだ!」

「に、兄さん……!!」

『僕に馴れ馴れしく、兄さんと呼ぶなーっ!!』

ウリエルは剣を振り回しながら怒り狂った。彼の常軌を逸した行動にラジエルは彼の身を按じた。

「危険ですラファエル様…――! 今の状況ではまともにウリエル様とお話できません…! ここは一旦、退室した方が宜しいです….!」

 ラジエルは彼にそう話すと、今すぐ部屋から退室するように促した。するとウリエルは目の前にいるラジエルに敵意を剥き出した。

「退室だと…? 貴様、何処へ連れて行く気だ……? 僕から可愛い弟を奪う気か…?」

「兄さん、しっかりしてくれ…――!」

「ふっ…ふはははっ…! あははははっ! そうはさせないぞ! 僕から大切な弟を奪う気ならこの手でお前を葬り去ってやるっ!!」
 
「私は決してそのようなことは…!!」

 ウリエルはラジエルに剣先を向けると、激しい怒りに満ちながら表情を歪めた。そして、怒りながらラジエルの方へ剣を振り上げた。

 鋭い剣さばきが彼を襲った。ラジエルは彼の剣をかわしながら必死で対話を試みた。しかし、ウリエルの怒りはおさまらなかった。彼は本気でラジエルに刃を向けて襲って来た。

「ラ、ラジエル…――!!」

「来てはなりませんラファエル様っ!!」

「兄さんやめろ! ラジエルは関係ないんだ!」

「うるさい…! 私から大事な弟を奪うとは、なんて浅ましい男なんだ…! 我ら聖天使の兄弟仲をバラバラにさせるのがお前の魂胆か…!? お前は利口な男だと思っていたが、なんて浅ましい奴なんだ!!」

「ウリエル様、どうか私の話を聞いて下さい…!」

『黙れ黙れ黙れぇーーっ!!』

 怒り狂うとウリエルはラジエルの話に耳をかさずに、一方的に剣を振り回した。兄の狂乱ぶりにラファエルは絶句した表情で立ち尽くした。

『おのれ貴様っ…!!』

 ウリエルはラジエルに目掛けて、剣を振り降ろした。我を忘れて剣を振る兄の前に、ラファエルは咄嗟に前に出て叫んだ。

『やめてくれ兄さんっ!!』

「ッ…――!」

 剣を振り降ろした先にラファエルが目の前に立ちはだかると、ウリエルは瞬時に手元を止めた。しかし、その弾みで剣先は弟の頬を切り裂いた。

 その瞬間、床に血がポタポタと落ちた。ラファエルの右頬を剣がかすめると血は頬から流れ落ちた。ウリエルは誤って弟を斬りつけるとそこで愕然となった。

「ッ…兄さんやめてくれ! 彼を斬るなら、私を斬れっ!!」

『ラ、ラファエルっ…!!』

 自分の危険をもかえりみずにラジエルを庇った。その光景にあ然となって目を奪われて佇んだ。
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