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第20章―消せない罪―

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 そこにはラジエルの死体ではなく、仲間の死体が横たわっていた。親玉のグールはそれを見るなり驚愕した。

『バカなっ…!? これは一体、どうなって……!?』

 周りにいたグール達も、それに気がつくと驚いた表情で辺りを見渡した。噛みちぎった手足は、彼の手足ではなかった。グール達はいつの間にか、仲間を喰い殺していた。そこで騒然となると空の上から声が聞こえた。

「――愚かな。私を喰う事に気をとられて何が本当かも見えないとは、やはりお前達は下等生物に等しいな」


『!!!!』


 ラジエルは純白の翼を広げながら、空の上から彼らを見下ろしていた。

「この私がお前らゴトキに簡単に殺られると思ったか? お前らみたいな野蛮な獣に殺られるほど愚かではない――」

 彼は空の上から話すと、眼鏡の奥を怪しく光らせた。ただならぬ威圧感にグール達は、一斉に震え上がった。

「本を奪うなら、ちゃんと奪うんだったな。幸い、本が開いていたから呪文を完成させることが出来た。よってお前達は私の唱えた幻術魔法に今、操られているのだ!」

『なっ、何だと…――!?』

 その言葉に親玉のグールは息を呑んだ。ラジエルは、持っている魔導書を片手に眼鏡の奥を光らせた。

「お前達にかけた幻術は広範囲に効果を現す高等魔法の一つだ。大概の者はこの幻術によって騙される。よってお前達がだれを殺したかさえもわからない。これが幻術魔法の恐ろしさだ!」

「クソッ! フォーリアめっ…!!」

「だが、私みたいに魔法能力が優れている者は、こんな魔導書が無くても魔法は唱えられる。貴様の行動は最初から無意味だったな」

 ラジエルは冷静な口調でそう話しながらも、目の前の敵に殺意を燃やした。

「さあ、醜いお前達に終焉の終わりを与えてやる!」

 そう言って話すと、右手を翳して大地の力を呼び起こした。すると地面から無数の草のつるが伸びて、そこにいたグール達の動きを一気に封じた。足と手に絡みつくように草のつるが邪魔すると怪物達は身動きがとれずに暴れた。

「おのれぇ! 忌まわしき天族フォーリアッ!!」

「幻術はこれを唱える為に使ったにしか過ぎない。お前達のいる場所は、既に魔法が広範囲に行き届いている。よってこの魔法から逃れる事も出来ない。お前達は既に私の手の中だ! そしてこれをする事でお前達の動きを完全に封じさせてもらった。さあ、次のターンでお前達は終わりだ!」

『な、なにぃっ!?』
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