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第19章―温かいスープ―

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――その日の夕方、少年はあの看守にイビられた。少年がクロビスにイビられる様子をケイバーは、牢屋の外から林檎を食べながら傍観した。今日はいつもよりも酷く、機嫌が悪かった。彼は少年を殴って蹴った。

 ことの発端は、少年が真夜中に夜泣きをすると言う周囲からの苦情だった。少年がいるフロアには大人の囚人が3人程いたが、彼らは少年がいる牢屋からは離れていた。だが、余りにも夜泣きがうるさいので、その事を彼らに告げ口された。

 少年はそんな理由で彼にイビられた。だが、本人は何にも話さない。ぶたれて叩かれても声すら上げない。そんなところが余計に不気味だった。それどころか、反抗的な目付きで彼を睨んだ。その目付きが気に入らないのか、クロビスは革の手袋をはずして、それで顔をひっぱたいた。

「どうだ小僧。革の手袋で叩かれて痛いだろ? 痛いなら痛いって素直に言ったらどうだ? ああ、それとも痛い目に合うのが好きなのか? どうなんだ?」

 彼は後ろから少年の背中を足で蹴った。その弾みで地面に頭をつけるとクロビスは少年の頭を足で踏みつけて冷酷な瞳で、上から見下ろした。


「おい、何だその目は? 可愛げもなければ、なんもないな。本当に気味の悪いガキだな。貴様がどんなに反抗的な態度をとってもここのフロアは私が管理している。この私に楯突くと、痛い目見るぞ?」


 クロビスは少年にそう話すと、頭をギリギリと踏んづけた。すると少年は黙っていた口を開いた。

「おっ、お前なんか怖くない…! お前なんか…――! お前なんか、いつかこの手で…!」

 少年がカッとなりながら言い返すとその瞬間、得体の知れない寒気を2人は感じた。クロビスは異様な空気をそこで感じると、本能的に何かを感じとった。彼はそこで鼻で笑うと少年の頭を後ろから掴みかかった。

「なんだ。喋れるじゃないか? 口のきけない人形かと思ったぞ。いや、人形の方がまだ可愛げがあるな。フン。この手で何だって? さっきの続きを言ってみろ、お前ごときが私を殺すとでも言いたいのか?」


「くっ…――!」


 クロビスは後ろから髪の毛を引っ張ると耳元で話しかけた。

「お前みたいなガキが、私を殺せるとでも思っているのか? お前は何も出来ない無力なガキだ。力もなければまともに抵抗すら出来ない。ただのガキだ。青二才のガキに何が出来る? お前を一生、ここから出しはしないさ。何せお前は罪人だからな。それもそこらのガキじゃない事はわかっているんだ。私を舐めるなよ。ここでは私が恐怖の支配者だ。そしてお前はその恐怖の前に跪く憐れな子羊だ。ここで長生きしたければ、私に楯突かないことだな――」

 少年にそう言って話すと掴んだ頭を離した。少年は彼のその言葉に小刻みに震えていた。それは怒りの震えか、恐怖の震えかはわからないが、少年はジッと彼を睨んだ。

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