181 / 316
第17章―天上の刃―
2
しおりを挟む「おいテメェらこれは何のつもりだ!? いきなり奇襲攻撃とは良い度胸してるじゃねーか! 鳥人族が俺達、人間族に一体何の用だ!?」
ハルバートは敵意を剥き出した。バンダナを巻いた男は鋭い眼光で睨みつけながらジッと動かずに佇んだ。男は質問には何も答えずに再び手で合図を送った。部下達は弓矢を引くと真下に向かって攻撃を仕掛けた。真下にいた竜騎兵達は、再び弓矢の的になった。天から降り注ぐ弓矢の嵐に多数の者が負傷を負った。
ケイバーは前に居る隊員に向かって物陰に隠れろと命令した。彼を乗せた隊員は弓矢をかわしながら、近くの森に向かって降下した。ギュータスは果敢にも、斧で弓矢を弾き返して防御姿勢をとった。リーゼルバークはこの状況に対して、守りに入ることに専念した。鳥人族は彼らに向かって容赦なく攻撃を仕掛けた。ハルバートは彼らの横暴な態度に腹をたてると、斧を大きく振りかざして稲妻の雷撃を撃ち放った。
『竜奥義、爆風雷撃破弾光! 鳥野郎どもこれでも喰らえぇええっつ!!』
ハルバートはヴァジュラに合図をおくった。竜は彼のかけ声と共に翼を大きく広げると、一瞬で強風の風を扇いだ。斧に雷の力が集まると、彼はその斧を振りかざして彼らの方に向けて放出した。強風の風に雷の力が加わることで、周囲に爆風と雷の輪が駆け巡った。風の力で彼らは弾き飛ばされると、続いて雷の嵐を浴びた。弓矢を持っていた部下達は、感電して即死した。空からは雷を浴びた彼らの死体が次々に真下に向かって落ちていった。ハルバートは周りにいた敵を次々に蹴散らすと、そのままバンダナを巻いた男の方へと突撃しに行った。
『でやああああああああああっっ!!』
けたたましく叫びながら果敢にも一人で立ち向かった。斧を振り上げると、男は長い槍で攻撃を受け止めた。その瞬間、二つの力がぶつかり合った。男は槍で攻撃を防ぐと薄笑いを浮かべた。その男の瞳は獣のような鋭い瞳だった。幾多の戦いにおいて研ぎ澄まされたその眼光は見る者を恐怖へとのみ込むような、ただならぬ威圧感を放っていた。刃を交えた瞬間ハルバートは本能で何かを悟った。それは、いきなり奇襲してきたこの男がただ者ではないと言う直感だった。男は槍で攻撃を防ぐとニヤリと笑った。
「νπρησχ、ъпсеκικικι……」
男は人間にはわからない種族の言葉を話すと再びニヤリと笑った。ハルバートはその男の薄笑いに腹をたてると、再び攻めた。
「このクソ野郎、意味のわからねえ言葉を話すな!」
怒り任せに斧を振り上げると、男は槍で攻撃を弾き返した。
『ζЙйЁЁΛπππππιιιι!!』
「な、何ぃっ…!?」
瞬時に何かを唱えると槍の先から光の光線を放った。その眩い光にハルバートは思わず目が眩んだ。
『ウワァアアアアアアッッ!!』
「ハルバート…――!」
リーゼルバークはその様子を下から見ると直ぐに駆けつけようとした。すると彼の目の前に、背が高い男が立ちはだかった。男は彼と同じく背中に翼がはえていた。片目を閉じた男は目の前に立ちはだかるとそこで突如雄叫びをあげて化身してみせた。その姿は人の姿ではなく、鳥の姿だった。大きな鷲の姿に変身すると、鳥に変身した男は攻撃しにかかった。鋭い大きな爪が襲いかかると竜は咄嗟に氷結界でガードした。鳥は攻撃を防がれると、今度は体当たりして突撃しにきた。体当たりしてくるたびに氷結界には僅に亀裂が入った。
「クッ、鳥人族の奴らめ……! 手加減なしにいきなり襲いかかるとは、なんて奴らだ! あいつらは一体――!? このままでは、奴らに全滅させらてしまうかも知れんぞ!」
リーゼルバークは攻撃を防ぎながらも、冷静に状況を見極めようとした。雪が舞い落ちる中、彼らは戦うことを余儀なくされた。竜騎兵達は突然襲いかかってきた敵に奇襲攻撃を受けると隊列は見事に崩されて、敵に翻弄されたのだった。剣や槍を持った複数の男がギュータスやケイバーの方にも襲いかかった。彼らはそこで攻撃を防ぎながらも反撃した。
「チッ、火の鳥の次は鳥野郎だと!? クソッタレ! こうなったら返り討ちにしてやる!」
ギュータスは予備の斧を手に持つと、ハチェットを勢いよく投げつけた。投げつけた斧は敵の頭に命中した。剣を持った男は、そのまま下へと落ちた。
「ケッ、ざまぁみろ!」
その場で一人倒すと次にもう一人を斧で倒した。森に隠れて様子を伺っていたケイバーの方にも、槍を持った男が襲いかかってきた。彼は頭を使って裏をかくと先回りして敵をボウガンで射ぬいた。
「ケイバー様を舐めてもらっちゃ困るぜ! どこの連中だか知らねーけどな! 襲いにかかってきた事を死ぬほど後悔させてやる!」
彼はボウガンに矢を込めると、森の中から上に向かって狙い打ちした。
0
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】あなたの思い違いではありませんの?
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
複数の物語の登場人物が、一つの世界に混在しているなんて?!
「カレンデュラ・デルフィニューム! 貴様との婚約を破棄する」
お決まりの婚約破棄を叫ぶ王太子ローランドは、その晩、ただの王子に降格された。聖女ビオラの腰を抱き寄せるが、彼女は隙を見て逃げ出す。
婚約者ではないカレンデュラに一刀両断され、ローランド王子はうろたえた。近くにいたご令嬢に「お前か」と叫ぶも人違い、目立つ赤いドレスのご令嬢に絡むも、またもや否定される。呆れ返る周囲の貴族の冷たい視線の中で、当事者四人はお互いを認識した。
転生組と転移組、四人はそれぞれに前世の知識を持っている。全員が違う物語の世界だと思い込んだリクニス国の命運はいかに?!
ハッピーエンド確定、すれ違いと勘違い、複数の物語が交錯する。
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/11/19……完結
2024/08/13……エブリスタ ファンタジー 1位
2024/08/13……アルファポリス 女性向けHOT 36位
2024/08/12……連載開始
間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎
って、何故こんなにハイテンションかと言うとただ今絶賛大パニック中だからです!
何故こうなった…
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
そして死亡する原因には不可解な点が…
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのかのんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています
魔がさした? 私も魔をさしますのでよろしく。
ユユ
恋愛
幼い頃から築いてきた彼との関係は
愛だと思っていた。
何度も“好き”と言われ
次第に心を寄せるようになった。
だけど 彼の浮気を知ってしまった。
私の頭の中にあった愛の城は
完全に崩壊した。
彼の口にする“愛”は偽物だった。
* 作り話です
* 短編で終わらせたいです
* 暇つぶしにどうぞ
乾坤一擲
響 恭也
SF
織田信長には片腕と頼む弟がいた。喜六郎秀隆である。事故死したはずの弟が目覚めたとき、この世にありえぬ知識も同時によみがえっていたのである。
これは兄弟二人が手を取り合って戦国の世を綱渡りのように歩いてゆく物語である。
思い付きのため不定期連載です。
はぐれ聖女 ジルの冒険 ~その聖女、意外と純情派につき~
タツダノキイチ
ファンタジー
少し変わった聖女もの。
冒険者兼聖女の主人公ジルが冒険と出会いを通し、成長して行く物語。
聖魔法の素養がありつつも教会に属さず、幼いころからの夢であった冒険者として生きていくことを選んだ主人公、ジル。
しかし、教会から懇願され、時折聖女として各地の地脈の浄化という仕事も請け負うことに。
そこから教会に属さない聖女=「はぐれ聖女」兼冒険者としての日々が始まる。
最初はいやいやだったものの、ある日をきっかけに聖女としての責任を自覚するように。
冒険者や他の様々な人達との出会いを通して、自分の未熟さを自覚し、しかし、人生を前向きに生きて行こうとする若い女性の物語。
ちょっと「吞兵衛」な女子、主人公ジルが、冒険者として、はぐれ聖女として、そして人として成長していく過程をお楽しみいただければ幸いです。
カクヨム・小説家になろうにも掲載
先行掲載はカクヨム
異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜
九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます!
って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。
ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。
転移初日からゴブリンの群れが襲来する。
和也はどうやって生き残るのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる