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第15章―地に降り立つは黒い羽―

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「し、死神っ……!!」

『何ですと…――!?』

「ユリシーズ、部屋の中に死神が……!」

 ミリアリアは真っ青な顔でその事を呟くと、再び気を失いかけた。

「へぇ、ってことはキミにはボクの姿が見えてるんだ? 面白いね。キミ」

 ラグエルは彼女の傍に近づくと、そこでクスッと笑った。

「ボクはラグエル。言っとくけど死神じゃないよ、お嬢さん」

「しっ、死神が私に喋った…――!」

 目の前でラグエルが興味深くしかけてくると、ミリアリアはそこで完全に意識を失った。絵に描いたようにバタンとベッドの上に横たわって気絶した。

「ひ、姫様……!? 姫様しっかりして下さいっ!!」

 ユリシーズは気を失う彼女に懸命に話しかけた。ラグエルは、再び気を失った彼女を眺めるとそこで呆れてため息をついた。

「はぁ……なんか人間の女って脆いんだね。呆れてため息が出ちゃうよ。ボクのことを死神呼ばわりするなんて、人聞きの悪い女。でも、やっぱり彼女にはボクが見えたんだ。どうみても只の普通の人間の子供なのになんでボクの姿が彼女には見えたんだろう? キミって不思議だねぇ」

 ラグエルは観察しながら独り言を呟くと、少女が目を覚ます前に姿を消した――。



 地上に降り立ったその日の夜、ボクは蒼い月影が満ちる景色を眺めながら時計台の塔の上から街並みを降ろした。彼が言っていた少女は、このローディンと呼ばれる国に住んでいた。それもこの国の王女様らしい。興味深いことに彼女にはボクが見えていた。ただムカつくことに、ボクのことを死神呼ばわりした。初対面での印象は、失礼でちょっとマセタ感じの子だった。彼女はアレンと呼ばれる男に夢中ならしい。久々に人間界に降りたわりには意外と楽しませてもらった。一応、彼には礼を言っとこう。ボクは観光ついでに彼にお土産を買った。

 この国の名物お菓子。ぴよこまんじゅうを手に取って、蒼い月に照らして観賞した。見た目は小鳥のような形をしたお菓子だ。表面は黄色で中にはカスタードと呼ばれるクリームが入っているらしい。中々の味だったのでボクは気に入って、ぴよこまんじゅうを二箱買った。手に乗せると実に可愛らしい。食べるのも勿体ない。でも、やっぱりボクの可愛い小鳥と言えば、ハラリエルだ。彼を思うと急に胸が切なくなった。

「ああ、早く帰って彼と一緒に遊びたい。ハラリエル、ボクはキミの為にも頑張るよ。これと言った収穫はなかったけどね。お土産にキミにぴよこまんじゅうを持って帰るよ。楽しみにしててね、ハラリエル」

 ボクは蒼い月を眺めながら、フと呟いた。

「それにしてもあの子、不思議だねぇ…――」


 月が満ちる景色を眺めながら、地上から闇のベールで覆われた夜空を眺めた――。



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