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第14章―魂の在りか―

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「その者が我が軍に寝返りせぬ場合は殺してしまえ。いいや、捕虜交換の材料となって貰うか? ホホホッ。どちらにせよ良い収穫であった」

「……」

「では、その男は今どこにいる?」

「ベクター捕虜収容所に他の捕虜と一緒に収監しました。そこで恐らく尋問を受けている最中かと――」

「ふむ、ベクターか。では尋問が終わったら奴をこの城に連れて来るがよい。私が直接その者と話をする。よいな?」

「いえ、ですが……」

「何か不満か?」

 バーシルは玉座の上で彼を見下ろした。シュナイゼルは苦悶の表情で顔色を変えた。

「ルワン王が御前に居ない今、そのような重要な話を国王抜きで勝手に我々が決めてよろしいのかと思いまして…――」

「お主は不服と申すのか?」

「……失礼ですが、ルワン王は今どちらに?」

「ホホホッ。ルワン王は気分が優れぬと部屋で休んでおられる。よって私が今、王の代わりで彼の役目を務めておるのだ。つまり私の言葉は王の言葉だと思うがよい。そしてここでの会話は私があとで王に伝えるから安心するがよい。わかったな?」

 バーシルのその話しに、2人は複雑な感情を抱いた。

「何だ? まだ不満と申すのか? 床に伏せて休まれいる王を無理やり起こせと、お主は私に言いたいのか?」

「いえ、決してそのようなことは…――」

 シュナイゼルはそこで黙ると下を向いた。

「まあ、よい。では城にそやつを連れてまいれ。尋問中とのことだが、くれぐれも殺さぬようにな」

 重たい空気がはりつめる中、バーシルは玉座から立ち上がると赤い絨毯が敷かれた階段を降りて彼らの前に立った。はりつめるような緊張感が辺りを包んだ。バーシルはアレンの前に立つと話を切り出した。

「さて――。お前をここに呼んだのは何故かわかるか?」

「いえ、残念ながら私には検討がつきません……」

「よかろう。では、こう言ったらどうだ? 私が貴公を中将から大将へと昇格すると――」

「わっ、私が大将にですか…――!?」

 アレンはその言葉に驚きを隠せなかった。

「私には無理です! 私はまだそのような……!」

 バーシルの思わぬ言葉にアレンは動揺した。

「そ、そうです大臣……! アレンはまだ武将としは未熟です! それに経験だって…――!!」

「ホホホッ。貴公にはわからぬようだな。だが、私にはわかっている。アレンはお前がおもっているよりも腕はたつ男だ。それに武将としての才能も十分ある。何より彼の経歴には目を見張るもがあるだろう。何せ彼は武将の息子で、名高い将軍家に産まれたと言う立派な血筋をひいている。つまり大将としての頭角も十分にある。そうであろうアレンよ?」

「わ、私は……」

「貴公は亡きお父上のような、立派な将軍に成りたいとは思わないのか?」

 バーシルのその言葉にアレンの心は揺れた。

「野心とは常に己を高めるものだ。そしてそれは男に生まれた者なら、誰だって野心くらいはあるものだ。貴公はその上を目指したいとは思わないのか?」

「ッ……!」

「地を這うだけでいいのか? 這うばかりでは何も変わらんとは思わぬか? 貴公はその程度の男ではあるまい――。まあ、よい。いずれわかるだろう。頭の隅にでも入れとくがよい。王には既に話しはしておる。あとは貴公の気持ち次第だと言っておこう」

 バーシルはアレンにその事を告げると、目を細目ながら笑った。

「だ、大臣……」

「何だシュナイゼル?」

「恐れながら何故ゆえ、アレンに昇格の話を…――?」

「ホホホッ。そんなことわかっておるだろ? 我が王宮騎士団は現在は3つの団に別れて成り立っている。シュナイゼルが率いる団とレイドリックが率いる団とブライアンが率いる団だ。それぞれの団にはリーダー格である団長がいるのは貴公も知っているはずだ。だが、ブライアンが率いる団は、団長の彼が一月前に戦いで戦死したと聞いたので、ご覧の通り我が王宮騎士団は現在2つになって稼動しているとも言えよう。今後の予定も含めて我が王宮騎士団は前の体制に立て直すことが急務である。つまり私が言いたいのは、ブライアンの穴埋めをきみにして貰いたいのだよ?」

「わ、私にですか……!?」

 2人はバーシルの話しに唖然となった。


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