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第14章―魂の在りか―

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「バーシル大臣。それは何の真似ですか? その玉座は、王の――」

 大臣の不謹慎ともおもおもえる行動にアレンはそこで問いかけた。すると大臣は椅子の上で拍手しながら出迎えた。

「アレンよくぞ戦から戻って来た。戦いでは、見事な活躍だったと聞いたぞ?」

「――ッ…!」

「ところでシュナイゼルはどうした? お主は一緒に来たのではないか?」

「その、シュナイゼル団長は…――」

「どうした?」

 大臣の質問にアレンは顔色を曇らせた。

「どうしたと聞いておるのだ。早く答えぬか?」

 再び聞き返すと、そこにシュナイゼルが扉を開けて到着した。

「バーシル大臣。遅ればせながら、ただいま参りました」

「おお、よく来たシュナイゼルよ。このたびの戦いでの遠征ご苦労であったな。軍も満たない王宮騎士団とは言えでも、その活躍はガヴェイン将軍が率いる軍をも上回るとも聞いたぞ?」

「いえ、我ら王宮騎士団はガヴェイン将軍が率いる軍にはかないません。彼が率いる軍こそローディンにとって無くてはならない最強の軍隊でしょう」

「ホホホッ。貴公はよくわかっておるな。では道中、ムルドアでガヴェイン将軍とは会ったか?」

「はっ。ムルドアの谷にて、ガヴェイン将軍は敵の軍と交戦したと聞きました。敵のサンドリア軍は我が軍勢に歯が立たず、後退を余儀なく去れたと――」

「ふむ、ではガヴェイン将軍はなんと?」

「将軍はこのまま敵を追撃するとのことです。隣国と戦争中とは言えでも、敵を我が領土(国)から完全に追い出すには、まだ時間がかかるかと――」

「ではまた要請がある場合は、戦地に出向いて共に戦うがよい」

「はっ! 我が王宮騎士団達のいのちは、この国。ローディンと共にあります!」

「よい心掛けた。貴公等の活躍、王に心臓を捧げるつもりで励むがよい」

「はっ…――!」

 玉座に座るバーシルを前に2人は姿勢を正して敬礼したのだった。

「続いて報告いたします。ガヴェイン将軍が敵のサンドリアからの侵攻を防いでいる間、我々王宮騎士団はその戦いで敗れた敵の残党兵の一掃を各地でして参りました。ですが、敵の残党兵はこの国にまだ潜伏しており。これより、我が王宮騎士団は各地から要請がある場合は対応を強化して速やかに敵の排除に取り掛かる次第でございます」

「ほう。では敵がどこに潜伏しておるかは目星はついておるのか?」

「ええ、大体は予測しております――」

 シュナイゼルは報告すると、頭を下げて一礼した。

「それならよい。では敵の残党を見つけたら速やかに排除を致せ、よいな?」

「はっ……!」

 バーシルは玉座に座ったまま腰を深く落とした。彼の振る舞いはまるで、この国を治める王のようだった。

「あと一つ報告いたします。我が国内に蔓延る蛮族共の動きが、ここ1年の間で活発化しております。このままでは国内から内乱が起きると予測されますが如何なさいますか?」

「ホホホッ。我が国に追放された愚かな者達が今では野盗となって村々を襲っていることはすでに知っておる。このままほっとけば、いずれは目の上のタンコブとなる連中だ。この機会に奴らも纏めて一掃するがよい。敵の制圧までの指揮は貴公にまかせよう。シュナイゼル、よい報告を期待しているおるぞ?」

「……御意」

「それより貴公は敵の残党狩りの最中に、何か見つけたそうではないか?」

「ははっ。ミューレンの丘にて残党狩りの最中に、敵国の武将らしき男を引っ捕らえて捕虜に致しました」

「ほう、名は何と?」

「フェルナードと呼ばれる男です。どうやら彼は名のとおった武将のようで殺すには惜しい男かと――」

「ふむ。サンドリアのフェルナードか……。これまた良いものをおぬはみつけたではないか? 奴を上手く手なずけさせて我が軍に迎え入れるとはどうだ?」

「――それはつまり、あの男が我が軍門に下るという意味でしょうか……?」

「フェルナードと言えば、確か腕利きの武将とも聞いた。この戦いでサンドリアも惜しい武将を手離したな」

 バーシルは怪しく笑うと目を細めた。シュナイゼルは彼のその話しに下をうつ向いて息を呑んだ。
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