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第12章―残骸のマリア―

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 焼かれた肉の塊をフォークで削ぐと、その欠片を口に運んで一切れ食べた。

「――さすがエドウィンが作った料理だ。大柄な体格な癖に料理だけは美味い。たとえばこのスープは絶品でたまらない。これがなんの味かをお前に食べさせてやれないのが残念だ。何せ、お前はもうとっくに死んでるからな。死人に口無しとはよく言うが、最後にお前が上げた断末魔は見事だったぞ?」

 クロビスは死体にそう言って話しかけると、皮肉混じりに微笑を浮かべた。

「でも、この肉の塊は不味い。味も不味いし、品もない。ついでに中身もない。まるでお前だな。お前の頭を切り開いても結局はこんな程度か?」

 お皿の上にフォークとナイフを置くと、突如そこで小刻みに笑い始めた。

「クククッ……ハハハッ! アーッハハハハハハッ!」

 彼は笑い出すと、壊れたように笑い続けた。もうそこには狂気だけが渦巻いていた。バイオリンの切り裂くような高い音色が部屋の中に怪しく響いた。それはどこか不気味な雰囲気さえ醸しだしていた。狂ったように笑い続けると、そこでピタリと笑うのを止めた。

「フフフ……。ああ、そうだ。お前を殺す為のシナリオを考えていたんだ。でも少し計算が狂った。お前をどうやって殺すかを考えていた矢先に囚人が逃げた。そのおかげでお前を殺す為のシナリオも少し狂った。ホントはジワジワと地獄のように苦しめて殺してやろうと思ったんだがな、どこかの囚人が逃げたおかげでこの有り様だ。きっとあの方はこんな結果には満足しないだろう。あの方が望むのはただ一つ。お前がどうやって苦しみながらもがいて死んでいくかと言う壮絶な最後だ。そして、お前が苦しみながら死ぬことで、あの方はようやく浮かばれるのだ。勿論、お前だけではなくあいつもまとめて始末してやるけどな――」

 狂気を秘めた瞳で死体の方をジッと見つめると、そこには激しい怒りと憎しみだけが炎の火柱のように混み上がった。それは果てしなく、決して消えることもないほどの憎悪だった。もうそこにはまともな正気すらもない。あるのは憎しみばかり、それが彼の心の奥で永遠に続いた。

「あいつの場合はお前よりも、もっと苦痛に痛めつけてやる! それこそ最後の一時も気が休む暇もない程の地獄のような苦痛をな! あいつは苦痛に泣き叫んで懇願するだろう、早く殺してくれと! そう言って助けを求めてきた時、私は奴を上から見下して冷酷な顔で嘲笑ってやるッ! フフフッ! フハハハッ! アーッハハハハハハハハハッ!」

 クロビスはそこで再び笑うと、壊れた人形のように笑い続けた。何をそこまで彼を狂気に駆り立てるのか。少年の心の奥深くには闇が広がり続けた。顔を片手で覆って可笑しそうに笑うと、肩をすくめながら笑った。そして、狂ったように笑い続けると、もう片方の手でワイングラスを手に持って一口飲んだ。ワインを飲むと再びフォークとナイフを手に持って肉を食べ始めた。
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