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第11章―少年が見たのは―
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しおりを挟む「ハハハッ、たしかにそれはありえるな。俺も若い頃は、戦いや戦場に明け暮れてたけど、中級魔法がかけられているオーブでこれだけの魔法が秘められているオーブは初めてみる。それも中級魔法がかけられているオーブにな。自分の経験から言うと幻術魔法には色々な効果や魔法があるが、オーブから火の鳥を出現させるなんてのは見たことがない。守護の風とかそんな魔法はよく見るが、あれは明らかに他とは違う。中級魔法がかけられているオーブで、そんなものが召喚できるなら召喚土は必要ないだろう。まあ今は召喚土自体、後継者が衰退しているからな。そのうちなくなる分野だろう。昔で言えば、天馬騎士なんてのがあったけど、今はどこ探してもいないだろうけどな…――」
ハルバートはそう話すと、シリアスな事を言いつつ苦笑いした。
「それにアンタはあの火の鳥と闘って、何か感じたんだろ?」
「――ああ、そうだな。精霊剛殺剣を会得していなければ倒せない相手だった。幻術魔法とは言えでもあれだけの力なら、本物の火の鳥は想像以上に遥かに強いかもしれん。何にせよ、今は城に戻ることが先だ。考えごとはそれからだ」
リーゼルバーグはそう言い返すと前を見た。ハルバートは彼の意見を聞くと、黙ってオーブを懐に納めた。
「フッ……。ペガサスナイトか――。随分と懐かしいな。そう言えばそんな奴らもいたな。昔は盛んにいたようだが、時代が移ろうごとにそれも居なくなった。今では生きたペガサスを見る機会もなくなった。もしまだいるなら、自分が生きてるうちにもう一度目にしたいものだ」
リーゼルバーグはフと呟くと、不意に懐かしさをこみあげた。
「ああ、そうだな。俺も一度はペガサスを見たいぜ。でも、なんであいつら急にいなくなったんだろう?」
ハルバートは隣で話すと、フと疑問を抱いた。
「それが時代の移ろいだということだ…――」
「ああ、時が流れるのは早いな……。今あるのはいずれは過去になるんだ。それは人の記憶だったり、人の文化や歴史だったりする。立ち止まろうとおもえば、いくらだってできるのに人はその時間の流れの中で前に進もうとする。人間ってのは何故なんだろうな?」
「――それが人間だからだ。生きることは常に戦いであり。前に進むことは簡単ではないが、人は何かを見つけながら前に進もうとするのだ。そして、過去に振り返ることで自分の歴史を積み重ねて今に刻むのだ。私はそうだと信じている。でなければ、前には進めまい。どんなに過去が懐かしくても、そこに戻ることは出来ないのだからな」
「フッ、そうだったな。本当あんたには敵わないぜ」
ハルバートは彼の隣でフと笑うと、そっと瞳を閉じた。
「さあ、城に戻るぞ…――!」
「ああ……!」
2人はかけ声をかけると、隊員達の方へと歩み寄った。吹雪きが今だ吹き荒れる中、風は冷たく大地には雪が降り積もった。雪に覆い尽くされた大地は銀河の世界へと、その姿を変える。彼らがあそこで見たものは一体、何だったのか? 謎はさらに深まっていく。そんな中でオーブは不気味な輝きを放っていた。まるで何かを予感させるかのように――。
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