132 / 316
第11章―少年が見たのは―
13
しおりを挟む「ハハハッ、たしかにそれはありえるな。俺も若い頃は、戦いや戦場に明け暮れてたけど、中級魔法がかけられているオーブでこれだけの魔法が秘められているオーブは初めてみる。それも中級魔法がかけられているオーブにな。自分の経験から言うと幻術魔法には色々な効果や魔法があるが、オーブから火の鳥を出現させるなんてのは見たことがない。守護の風とかそんな魔法はよく見るが、あれは明らかに他とは違う。中級魔法がかけられているオーブで、そんなものが召喚できるなら召喚土は必要ないだろう。まあ今は召喚土自体、後継者が衰退しているからな。そのうちなくなる分野だろう。昔で言えば、天馬騎士なんてのがあったけど、今はどこ探してもいないだろうけどな…――」
ハルバートはそう話すと、シリアスな事を言いつつ苦笑いした。
「それにアンタはあの火の鳥と闘って、何か感じたんだろ?」
「――ああ、そうだな。精霊剛殺剣を会得していなければ倒せない相手だった。幻術魔法とは言えでもあれだけの力なら、本物の火の鳥は想像以上に遥かに強いかもしれん。何にせよ、今は城に戻ることが先だ。考えごとはそれからだ」
リーゼルバーグはそう言い返すと前を見た。ハルバートは彼の意見を聞くと、黙ってオーブを懐に納めた。
「フッ……。ペガサスナイトか――。随分と懐かしいな。そう言えばそんな奴らもいたな。昔は盛んにいたようだが、時代が移ろうごとにそれも居なくなった。今では生きたペガサスを見る機会もなくなった。もしまだいるなら、自分が生きてるうちにもう一度目にしたいものだ」
リーゼルバーグはフと呟くと、不意に懐かしさをこみあげた。
「ああ、そうだな。俺も一度はペガサスを見たいぜ。でも、なんであいつら急にいなくなったんだろう?」
ハルバートは隣で話すと、フと疑問を抱いた。
「それが時代の移ろいだということだ…――」
「ああ、時が流れるのは早いな……。今あるのはいずれは過去になるんだ。それは人の記憶だったり、人の文化や歴史だったりする。立ち止まろうとおもえば、いくらだってできるのに人はその時間の流れの中で前に進もうとする。人間ってのは何故なんだろうな?」
「――それが人間だからだ。生きることは常に戦いであり。前に進むことは簡単ではないが、人は何かを見つけながら前に進もうとするのだ。そして、過去に振り返ることで自分の歴史を積み重ねて今に刻むのだ。私はそうだと信じている。でなければ、前には進めまい。どんなに過去が懐かしくても、そこに戻ることは出来ないのだからな」
「フッ、そうだったな。本当あんたには敵わないぜ」
ハルバートは彼の隣でフと笑うと、そっと瞳を閉じた。
「さあ、城に戻るぞ…――!」
「ああ……!」
2人はかけ声をかけると、隊員達の方へと歩み寄った。吹雪きが今だ吹き荒れる中、風は冷たく大地には雪が降り積もった。雪に覆い尽くされた大地は銀河の世界へと、その姿を変える。彼らがあそこで見たものは一体、何だったのか? 謎はさらに深まっていく。そんな中でオーブは不気味な輝きを放っていた。まるで何かを予感させるかのように――。
0
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
別に構いませんよ、離縁するので。
杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。
他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。
まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。
大好きな母と縁を切りました。
むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。
領地争いで父が戦死。
それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。
けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。
毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。
けれどこの婚約はとても酷いものだった。
そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。
そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる