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第9章―ダモクレスの岬―
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しおりを挟む火の鳥は攻撃の手を緩めずにその場で一気に畳み掛けに来た。フレア・ボールの威力が強まると、氷の表面が徐々に溶けてきた。
「くっ、このままでは結界がもたんぞ……!」
彼が鬼気迫るように前で呟くと、後ろにいたギュータスが野次を飛ばした。
「なんとかしやがれクソじじい! 俺は丸焼きだけはごめんだ!」
「うるさい黙れ! 集中が乱れる!」
「なんだとぉ~っ!?」
火の鳥の攻撃を受けつつも、彼らはそこで言い合いした。絶対絶命のピンチを目の前にして突如、一筋の矢が火の鳥の方にめがけて放たれた。矢の先が金色に光輝くと、たちまち雷が火の鳥の頭上にドンと落ちた。雷を喰らった火の鳥は、攻撃の手を一瞬だけ怯ませた。そして、彼らの近くで大きな声が聞こえてきた。
『リーゼルバーグ隊長!』
ユングはそこで彼らに声をかけると、弓矢を片手に大きく手を振った。
「その声はユングか!?」
「ああ、なんとか間に合って良かったです!」
「ばっ、ばか者……! 何故ここに来た!?」
「あそこから無断で離れて来てすいません隊長……! でも、何もしないでただ見てるのだけは出来ませんでした! 僕だって竜騎兵の仲間です! 隊長を守るのは部下として当然の役目です!」
「新人の割には度胸があるやつだ! よし、私に力を貸せ!」
「はい、隊長…――!」
ユングはその一言に顔をパァッと明るくさせて返事をした。
「言いか、ユングよ! 今の攻撃をもう一度やつに喰らわせるのだ! お前ならできる! 自分の力を信じるのだ!」
「わっ、わかりました……!」
慌てて返事をすると、再び持っている弓矢を前で構えた。
「一瞬の隙でいい! お前があの火の鳥を引き付けるのだ!」
「了解です!」
彼は返事をすると弓矢を構えて火の鳥に向かって真っ直ぐ射ぬくように狙いを定めた。そして、奮い立つように覚悟を決めた。
「僕だって男です! やるときはやりますよ!」
ユングは自分を奮い立たせると勇敢にも火の鳥に立ち向かった。
「さあ、こっちだ! 僕が相手になってやる!」
そう言って大声で火の鳥を挑発すると、勇気を振り絞って太刀打ちした。劣りになって引き付ける役目をやると、彼は自分の危険を顧みないまま、そこで火の鳥にめがけて弓矢を向けた。火の鳥はリーゼルバーグの方から離れると、真っ先にユングの方へと攻撃しに来た。恐怖に震え立つとその場から逃げ出したい気持ちに襲われた。でも、彼は心の中で恐怖心を抑えて度胸をみせると、自分の方に向かってくる火の鳥に真正面から矢を射った。
『雷の矢を喰らえーっ!』
ユングは力強く弓を引くと矢を勢いよく放った。その瞬間、雷の矢は火の鳥の体に鋭く突き刺さった。
「や、やった……!?」
放った矢が火の鳥の体に突き刺さると、僅かに一瞬、喜びの声を上げた。だがしかし、突き刺さった矢は火の鳥の体の熱で瞬く間に溶けてしまった。
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